数学Ⅰ : 2次関数 解の公式を使う

はじめに

日ごろ何気なく使っている2次方程式の解の公式だけど、方程式の解を求める以外にも使えたりする。
このページでは、解の公式の、解を求める以外の使い方を紹介する。

解の公式

まず、解の公式をちゃんと理解するために、自分で作ってみよう。

2次方程式
$ax^{2}+bx+c=0$
の左辺を平方完成すると、

途中式 $\displaystyle a\left(x^{2}+\frac{b}{a}x\right)+c=0$
$\displaystyle a\left\{x^{2}+2\cdot\frac{b}{2a}x+\left(\frac{b}{2a}\right)^{2}-\left(\frac{b}{2a}\right)^{2}\right\}+c=0$
$\displaystyle a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}-a\left(\frac{b}{2a}\right)^{2}+c=0$
2項目と3項目を通分して、
$a\displaystyle \left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}-\frac{ab^{2}}{(2a)^{2}}+\frac{(2a)^{2}c}{(2a)^{2}}=0$
$ a\biggl(x+$$\displaystyle \frac{b}{2a}$$\biggr)^{2}-a\cdot \displaystyle \frac{b^{2}-4ac}{(2a)^{2}}=0$
となる。

①の両辺を$a$で割る。
最初に2次方程式とことわってあるので、$a\neq 0$だから割っても問題ない。
ちょっと変わった手順で計算しているのは、話の都合による。

$\displaystyle \left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}-\frac{b^{2}-4ac}{(2a)^{2}}=0$
$\displaystyle \left(x+\frac{b}{2a}\right)^{2}=\frac{b^{2}-4ac}{(2a)^{2}}$

両辺の平方根をとって、
$x+\displaystyle \frac{b}{2a}=\pm\sqrt{\frac{b^{2}-4ac}{(2a)^{2}}}$
$x+\displaystyle \frac{b}{2a}$$\displaystyle=\pm\frac{\sqrt{b^{2}-4ac}}{|2a|}$
だけど、右辺の分母の絶対値は今はなくても大丈夫なので
$x+\displaystyle \frac{b}{2a}=\pm\frac{\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
とかける。

あとは、$\displaystyle \frac{b}{2a}$を移項すれば、
$x=-\displaystyle \frac{b}{2a}\pm\frac{\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
$x$$\displaystyle=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
と、解の公式ができる。


計算の途中に気づいたかもしれないけど、解の公式の$\displaystyle \frac{b}{2a}$の部分は、①の赤い部分からきている。
なので、解の公式の前半の$-\displaystyle \frac{b}{2a}$は、放物線$y=ax^{2}+bx+c$の軸(頂点の$x$座標)だ。


また、解の公式の√の中の$b^{2}-4ac$を考えると、

$b^{2}-4ac\lt0$のとき、
$\sqrt{b^{2}-4ac}$は負の数の平方根になってしまうので、実数解にならない

$b^{2}-4ac=0$のとき、方程式の実数解は
$\displaystyle \frac{-b\pm\sqrt{0}}{2a}=\frac{-b}{2a}$
の1個

$b^{2}-4ac\gt0$のとき、方程式の実数解は
$\displaystyle \frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
だけど、これを復号を使わずに書くと、
$\displaystyle \frac{-b+\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$と$\displaystyle \frac{-b-\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
で2個

である。
つまり判別式だ。


さらに、2次方程式が実数解を持つとき、2つの解の差は、解の公式より
$\displaystyle \frac{-b+\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}-\frac{-b-\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
$=\displaystyle \frac{2\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}$
$=\displaystyle \frac{\sqrt{b^{2}-4ac}}{a}$
である。

$a\lt0$のとき、上の計算だと、小さい方の解から大きい方の解を引いてしまうので負の値になる。


以上をまとめると、

図A
解の公式を使う 解説図A

となる。

このうち、放物線の軸と2つの解の差を、下の例題で実際に使ってみよう。

例題1

$a\gt0$とする。$0\leqq x\leqq 3$における2次関数$y=ax^{2}-bx-1$の最大値が$5$,最小値が$-3$のとき、$a$,$b$の値を求めなさい。

解説

問題を見てすぐに気づくのは、
$x=0$のとき$y=-1$なので、定義域の左端($x=0$)は最大値でも最小値でもない ということ。
なので、定義域の左端以外に最大値・最小値がないといけない。

図B
解の公式を使う 解説図B

この場合、
$a\gt0$なので、最小値が頂点、最大値が定義域の右端($x=3$) 最大値が定義域の右端なので定義域の左半分に頂点がある となり、図Bのようなグラフになるはず。

この方針で解いてみよう。


まず、この2次関数のグラフの頂点を求める。
平方完成してもいいんだけど、係数が文字だらけで面倒なので、ここでは上で解説した方法を使う。

図Aより、頂点の$x$座標は
$\displaystyle \frac{-(-b)}{2a}=\frac{b}{2a}$
である。

これが定義域の左半分にあるので、
$0\lt\displaystyle \frac{b}{2a}\lt\frac{3}{2}$
$0\lt\displaystyle \frac{b}{a}\lt3$式A
でないといけない。


頂点の$x$座標を2次関数の式に代入すると、
$y=a\displaystyle \left(\frac{b}{2a}\right)^{2}-b\cdot\frac{b}{2a}-1$
より
$y=\displaystyle \frac{b^{2}}{4a}-\frac{b^{2}}{2a}-1$
$y$$\displaystyle=-\frac{b^{2}}{4a}-1$
となり、これが頂点の$y$座標だ。

頂点が最小値の$-3$なので、
$-\displaystyle \frac{b^{2}}{4a}-1=-3$
より
$\displaystyle \frac{b^{2}}{4a}=2$
$8a=b^{2}$
$a=\displaystyle \frac{b^{2}}{8}$式B
である。


また、定義域の右端の$x=3$を2次関数の式に代入すると、
$y=3^{2}a-3b-1$
$y$$=9a-3b-1$

このとき2次関数は最大値の$5$なので、
$9a-3b-1=5$
$9a-3b-6=0$
$3a-b-2=0$式C
である。


あとは、式Bと式Cの連立方程式を解く。

式Bを式Cに代入して、
$3\displaystyle \cdot\frac{b^{2}}{8}-b-2=0$
より、両辺を$8$倍して
$3b^{2}-8b-16=0$

これをたすきがけすると、

$3b$ $+4$ $4b$
$b$ $-4$ $-12b$
$3b^{2}$ $-16$ $-8b$

となるので、
$(3b+4)(b-4)=0$
と因数分解できる。
よって、
$b=-\displaystyle \frac{4}{3}$,$4$
となる。


$b=-\displaystyle \frac{4}{3}$のとき、これを式Bに代入して、
$a=\displaystyle \frac{\left(-\frac{4}{3}\right)^{2}}{8}$
だけど、このとき、
$\displaystyle \frac{b}{a}=\frac{-\frac{4}{3}}{\frac{\left(-\frac{4}{3}\right)^{2}}{8}}$$\lt0$
となって、式Aに合わない。
よって、不適。

$b=4$のとき、これを式Bに代入して、
$a=\displaystyle \frac{4^{2}}{8}$
$a$$=2$
だけど、このとき、
$\displaystyle \frac{b}{a}=\frac{4}{2}=2$
となるので、式Aの条件を満たす。
なので、これが答えだ。


以上より、
$\left\{\begin{array}{l}
a=2\\
b=4
\end{array}\right.$
である。

解答$a=2$
$b=4$

例題2

放物線$y=x^{2}-x$が、直線$y=2x-1$から切り取る線分の長さを求めなさい。

解説

まず、図を描こう。

図C
解の公式を使う 解説図C

放物線が直線から切り取る線分の長さなので、問われているのは図Cの$\mathrm{AB}$(赤い線)の長さだ。
図Cの緑の三角形を考えると、
赤い線の傾きが$2$なので、$\mathrm{AC}:\mathrm{BC}=1:2$ $\angle \mathrm{C}=90^{\circ}$の直角三角形なので、$\mathrm{AC}^{2}+\mathrm{BC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}$ だから、
$\mathrm{AC}:\mathrm{AB}=1:\sqrt{5}$
より
$\mathrm{AB}=\sqrt{5}\mathrm{AC}$式D
であることが分かる。

というわけで、$\mathrm{AC}$を求めよう。


$\mathrm{AC}$は、点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{B}$の$x$座標の差にあたる。

点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{B}$の座標は、連立方程式
$\left[\begin{array}{l}
y=x^{2}-x\\
y=2x-1
\end{array}\right.$
の解なので、これを求める。

2つの式を辺々引くと、

$y$ $=$ $x^{2}$ $-x$
$-)$ $y$ $=$ $2x$ $-1$
$0$ $=$ $x^{2}$ $-3x$ $+1$

より、
$x^{2}-3x+1=0$
となる。

この2つの解の差が、$\mathrm{AC}$だ。

因数分解はできないので、解の公式を使って解を求めて引き算してもいいんだけど、ここでは図Aの方法を使おう。
図Aより、2つの解の差は
$\displaystyle \pm\frac{\sqrt{(-3)^{2}-4\cdot 1\cdot 1}}{1}$
$=\pm\sqrt{9-4}$
$=\pm\sqrt{5}$
となる。
$\pm$がついているのは、解の大きい方から小さい方を引いたら$+$,逆だと-になるから。
ここでは$\mathrm{AC}$の長さなので、大きい方から小さい方を引いて
$\mathrm{AC}=\sqrt{5}$
である。


あとは、これを式Dに代入して、
$\mathrm{AB}=\sqrt{5}\cdot\sqrt{5}$
$\mathrm{AB}$$=5$
より、図Cの赤い線の長さ、つまり $y=x^{2}-x$が$y=2x-1$から切り取る線分の長さは$5$である。

解答