数学B : 確率分布と統計的な推測 母平均の推定

例題

標準偏差が$25.5$の母集団がある。この母集団から$100$個の標本を取り出して調べたところ、その平均値はちょうど$55.0$であった。
$100$を十分に大きい数として、母集団の平均の信頼度95%での信頼区間を、小数第1位までで求めなさい。

公式から求める

公式

母標準偏差を$\sigma$,標本平均を$\overline{X}$,標本の大きさを$n$とすると、母平均$\mu$の信頼区間を求める式は、
$\displaystyle \overline{X}-z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq\mu\leqq\overline{X}+z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$

大学入試センター試験対策 母平均の推定 復習図

ただし、信頼度が$c\%$のとき
$z$は、右図を標準正規分布の確率分布図として、図中の$z_{0}$の値。
特に
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$ 信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.58$

公式より、母平均$\mu$の95%での信頼区間は、
$55.0-1.96\displaystyle \cdot\frac{25.5}{\sqrt{100}}\leqq\mu\leqq 55.0+1.96\cdot\frac{25.5}{\sqrt{100}}$
とかける。

これを解いて、
$55.0-1.96\cdot 2.55\leqq\mu\leqq 55.0+1.96\cdot 2.55$式A
$55.0-4.998\leqq\mu\leqq 55.0+4.998$
で、この$4.998$だけど、答えは小数第1位まで求めればいいし、たし算引き算する相手も小数第1位までの数なので、四捨五入して小数第1位までの数にしておこう。
すると、上の式は
$55.0-5.0\leqq\mu\leqq 55.0+5.0$
となるので、求める信頼区間は
$50.0\leqq\mu\leqq 60.0$
である。

解答$[50.0,\ 60.0]$

アドバイス

これでは原理がゼンゼン分からないので、以下に 公式を使わなず原理通り解く解法を説明した。
ただし、過程がちょっと面倒なので、センター試験本番では公式を使って解くことをおすすめする。

公式を使わない解法

まず最初に思い出さなきゃいけないことは、標本平均の次の性質だ。

復習

母平均$\mu$,母標準偏差$\sigma$の母集団から大きさ$n$の標本を取り出す。
このとき、標本平均は
母集団が正規分布に従うときには $n$の値にかかわらす完全に、 母集団がその他の分布のときには $n$が大きければ近似的に、 正規分布
$\displaystyle N\left(\mu,\frac{\sigma^{2}}{n}\right)$
に従う。

これを思い出したところで、問題を解こう。


$\overline{X}$の確率分布図を考える

最初に、標本平均$\overline{X}$の確率分布曲線のグラフを描く。

この問題では母集団がどんな分布か分からない。
でも、$100$は十分に大きい数と考えるので、上の復習より、$\overline{X}$は近似的に正規分布$N\left(\mu,\frac{25.5^{2}}{100}\right)$に従う。

この確率分布曲線のグラフを描くと、図Aができる。

図A
大学入試センター試験対策 母平均の推定 解説図A

例題で問われているのは、信頼度95%での母平均の信頼区間だ。
これは、図Aの緑の部分に標本平均の$55.0$が入るような$\mu$の範囲と言いかえられる。
つまり、図Bのように、緑の範囲に$55.0$が入ればよい。

図B
大学入試センター試験対策 母平均の推定 解説図B

正規分布を標準化する

ここで、緑の範囲を考えよう。
緑の範囲が95%なので、面積は$0.95$だ。
正規分布のグラフの面積なので、正規分布表を見るんだけど、

正規分布表に載っているのは、標準正規分布で、$N(0,1)$ 面積を求めたいのは、$N\left(\mu,\frac{25.5^{2}}{100}\right)$

だから、そのままでは正規分布表は使えない。
$N\left(\mu,\frac{25.5^{2}}{100}\right)$を標準化して、$N(0,1)$に変換しよう。

復習

確率変数を、
平均$0$ 標準偏差$1$ に変換することを、標準化という。

もとの確率変数を$X$とし、
$X$の平均値を$m$ $X$の標準偏差を$\sigma$ 変換後の標準化された確率変数を$Z$ とすると、変換式は
$Z=\displaystyle \frac{X-m}{\sigma}$
である。

いま、$N\left(\mu,\frac{25.5^{2}}{100}\right)$の
平均値は$\mu$ 標準偏差は$\sqrt{\frac{25.5^{2}}{100}}=2.55$ なので、復習の方法で図Bを標準化すると、図Cができる。

図C
大学入試センター試験対策 母平均の推定 解説図C

正規分布表を見る

これでグラフは標準正規分布になった。
なので、正規分布表が使える。

正規分布表に載っているのは、$0$より右の面積だ。なので、図Cの$0$より右の面積を考えよう。

緑の面積が$0.95$で、正規分布は左右対称なので、$0$より右の面積は
$\displaystyle \frac{0.95}{2}=0.475$
である。

正規分布表で$0.475$を探すと、$1.96$であることが分かる。

なので、図Dのように、緑の部分の右端は$1.96$だ。
また、正規分布は左右対称なので、左端は$-1.96$である。

図D
大学入試センター試験対策 母平均の推定 解説図D

あとは計算

図Dより、
$-1.96\displaystyle \leqq\frac{55.0-\mu}{2.55}\leqq 1.96$式B
ができる。
この式が成り立つときの$\mu$の範囲が、求める母平均の信頼区間だ。

式Bを解く。
各辺に$2.55$をかけて、
$-1.96\cdot 2.55\leqq 55.0-\mu\leqq 1.96\cdot 2.55$
各辺から$55.0$を引いて、
$-55.0-1.96\cdot 2.55\leqq-\mu\leqq-55.0+1.96\cdot 2.55$
各辺に$-1$をかけて、
$55.0+1.96\cdot 2.55\geqq\mu\geqq 55.0-1.96\cdot 2.55$
$55.0-1.96\cdot 2.55\leqq\mu\leqq 55.0+1.96\cdot 2.55$

上の式Aと同じ式ができた。
さらに計算して、
$55.0-4.998\leqq\mu\leqq 55.0+4.998$
で、この$4.998$だけど、答えは小数第1位まで求めればいいし、たし算引き算する相手も小数第1位までの数なので、四捨五入して小数第1位までの数にしておこう。
すると、上の式は
$55.0-5.0\leqq\mu\leqq 55.0+5.0$
となるので、求める信頼区間は
$50.0\leqq\mu\leqq 60.0$
である。

解答$[50.0,\ 60.0]$