大学入試センター試験 2015年(平成27年) 問題例 数学ⅠA 第○問 解説

(1)

(i)

1次不定方程式はお約束の解き方があるので憶えておこう。

$k=1$なので、
$8x+5y=1$式A
を解く。

$x$と$y$の係数の$8$と$5$でユークリッドの互除法を行うと、
$8\div5=1\ldots3$式B1
$5\div3=1\ldots2$式B2
$3\div2=1\ldots1$式B3

これを「=余り」の形に変形して、
$8-5\cdot1=3$式B1'
$5-3\cdot1=2$式B2'
$3-2\cdot1=1$式B3'

式B3'に式B2'を代入して、
$3-(5-3\cdot 1)\cdot 1=1$
$3-5+3=1$
$5\cdot(-1)+3\cdot2=1$
これに式B1'を代入して、
$5\cdot(-1)+(8-5\cdot 1)\cdot 2=1$
$5\cdot(-1)+8\cdot 2+5\cdot(-2)=1$
$8\cdot2+5\cdot(-3)=1$式C
ができる。

式Aから式Cを辺々引くと、

$8x$$+5y$$=$$1$
$-)$$8\cdot2$$+5\cdot(-3)$$=$$1$
$8(x-2)$$+5(y+3)$$=$$0$

となるから、
$-8(x-2)=5(y+3)$
とかける。

ここで、$8$と$5$は互いに素なので、この式が成り立つためには、$m$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}x-2=5m\\y+3=-8m\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}x=5m+2\\y=-8m-3\end{array}\right.$式D
でなければならない。

問題より、$x \gt -10$,$y \gt -10$なので、式Dより
$\left\{\begin{array}{l}
-10 \lt 5m+2\\
-10 \lt -8m-3
\end{array}\right.$
となる。

この連立不等式を解いて、
$-10 \lt 5m+2$
$-12 \lt 5m$
$ \displaystyle -\frac{12}{5} \lt m$
だけど、$m$は整数なので、
$-2 \leqq m$
$-10 \lt -8m-3$
$8m \lt 7$
$m \lt \displaystyle \frac{7}{8}$
だけど、$m$は整数なので、
$m \leqq 0$
より
$-2 \leqq m \leqq 0$
なので
$m=\{-2,\ -1,\ 0\}$
であることが分かる。

これを式Dに代入すると答えだ。
$m=-2$のとき、
$(x,y)=(-8,13)$

解答ア:-, イ:8, ウ:1, エ:3

$m=-1$のとき、
$(x,y)=(-3,5)$

解答オ:-, カ:3, キ:5

$m=0$のとき、
$(x,y)=(2,-3)$

解答ク:2, ケ:-, コ:3


(ii)

$k=17$のとき、不定方程式は
$8x+5y=17$式E となる。

式Cの両辺を$17$倍して、
$8\cdot 34+5\cdot(-51)=17$式C'

式Eから式C'を辺々引くと、

$8x$$+5y$$=$$17$
$-)$$8\cdot34$$+5\cdot(-51)$$=$$17$
$8(x-34)$$+5(y+51)$$=$$0$

となるから、
$-8(x-34)=5(y+51)$
とかける。

ここで、$8$と$5$は互いに素なので、この式が成り立つためには、$p$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}x-34=5p\\y+51=-8p\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}x=5p+34\\y=-8p-51\end{array}\right.$式F
でなければならない。

式Fより
$x+y=(5p+34)+(-8p-51)$
$x+y$$=-3p-17$
なので、
$0 \lt x+y \lt 100$

$0 \lt -3p-17 \lt 100$
とかける。
これを満たす整数$p$の数を求めると、それが条件に合う解の数だ。

上の不等式を解いて、
$17 \lt -3p \lt 117$
$ \displaystyle -\frac{117}{3} \lt p \lt -\frac{17}{3}$
$-39 \lt p \lt -\displaystyle \frac{17}{3}$
$-39 \lt p \lt -5.66...$
$p$は整数なので、
$-38 \leqq p \leqq -6$
となるので、これを満たす整数$p$は33個。
よって、$(x,y)$の解の組は33個できる。

解答サ:3, シ:3

(2)

$G$を$a$と$b$の最大公約数として$a=a'G$,$b=b'G$とかくとき、$a'$と$b'$は互いに素であり、最大公約数は1である。

詳しく もし$a'$と$b'$が1でない公約数$g$をもつならば、
$\left\{\begin{array}{l}
a'=a''g\\
b'=b''g
\end{array}\right.$
とかける。これを$a=a'G$,$b=b'G$に代入すると
$\left\{\begin{array}{l}
a=a''gG\\
b=b''gG
\end{array}\right.$
となる。
この場合、$a$と$b$の最大公約数は$gG$となって「$G$を最大公約数とする」に矛盾する。
なので、$a'$と$b'$の最大公約数は$1$でなければならない。

解答ス:1

$600$と$5772$を素因数分解して、
$600=2^{3}\cdot 3\cdot 5^{2}$
$5772=2^{2}\cdot 3\cdot 13\cdot 37$

解答セ:2, ソ:3

となるから、これまでの関係をまとめると
$\left\{\begin{array}{l}
a'G+b'G=2^{3}\cdot 3\cdot 5^{2}\\
a'b'G=2^{2}\cdot 3\cdot 13\cdot 37
\end{array}\right.$式G
である。
よって、$G$は式Gふたつの式の共通部分である
$2^{2}\cdot 3=12$
である。

詳しく 式Gの共通部分がすべて$G$になるのか、ちゃんと考えてみる。

式Gを変形して、
$\left\{\begin{array}{l}
\left(a'+b'\right)G=2^{3}\cdot 3\cdot 5^{2}\\
a'b'G=2^{2}\cdot 3\cdot 13\cdot 37
\end{array}\right.$式G'
とする。
スより、$a'$と$b'$は互いに素である。
このとき、$(a'+b')$と$a'b'$の公約数を考える。

$(a'+b')$と$a'b'$が$1$以外の公約数$c$($c$は素数)をもつ場合、
$a'$と$b'$は互いに素なので、どちらか一方は$c$の倍数であり、もう一方は$c$の倍数ではない。
ここでは、説明のために$a'$が$c$の倍数とする。
$a'=ca''$とかけるので、
$(a'+b')=(ca''+b')$
これが$c$を約数にもつので、
$(a'+b')$$=c(a''+b'')$
と因数分解できる。
これは、$b'$は$c$の倍数ではないので矛盾する。

なので、$(a'+b')$と$a'b'$は素数の公約数をもたない。
$1$以外のすべての自然数は素数の積の形で表せるので、$(a'+b')$と$a'b'$の最大公約数は$1$である。

以上から、式G'の右辺の共通部分$2^{2}\cdot 3$はすべて$G$で、$(a'+b')$や$a'b'$の約数は含まれない。

解答タ:1, チ:2

$G=2^{2}\cdot 3$,$a'b'G=2^{2}\cdot 3\cdot 13\cdot 37$より、
$a'b=13\cdot 37$
ここで、$a \gt b$から$a' \gt b'$なので
$\left\{\begin{array}{l}
a'=37\\
b'=13
\end{array}\right.$
となる。
これを$a=a'G$,$b=b'G$に代入して、
$a=37\cdot 12$
$a$$=444$

解答ツ:4, テ:4, ト:4

$b=13\cdot 12$
$b$$=156$

解答ナ:1, ニ:5, ヌ:6

となる。


$G=ma+nb$に、これまでに分かったことを代入すると
$37\cdot 12m+13\cdot 12n=12$
$37m+13n=1$式H
となる。
これを満たす$m$,$n$を見つけるんだけど、(1)と同じように解こう。

$m$と$n$の係数の$37$と$13$でユークリッドの互除法を行うと、
$37\div13=2\ldots11$式I1
$13\div11=1\ldots2$式I2
$11\div2=5\ldots1$式I3

これを「=余り」の形に変形して、
$37-13\cdot2=11$式I1'
$13-11\cdot1=2$式I2'
$11-2\cdot5=1$式I3'

式I3'に式I2'を代入して、
$11-(13-11\cdot 1)\cdot 5=1$
$11-13\cdot 5+11\cdot 5=1$
$13\cdot(-5)+11\cdot6=1$
これに式I1'を代入して、
$13\cdot(-5)+(37-13\cdot 2)\cdot 6=1$
$13\cdot(-5)+37\cdot 6+13\cdot(-12)=1$
$37\cdot6+13\cdot(-17)=1$式J
ができる。

式Hから式Jを辺々引くと、

$37m$$+13n$$=$$1$
$-)$$37\cdot6$$+13\cdot(-17)$$=$$1$
$37(m-6)$$+13(n+17)$$=$$0$

となるから、
$-37(m-6)=13(n+17)$
とかける。

ここで、$37$と$13$は互いに素なので、この式が成り立つためには、$q$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}m-6=13q\\n+17=-37q\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}m=13q+6\\n=-37q-17\end{array}\right.$式K
でなければならない。

問題文より、$0 \lt m$
よって、式Kより
$0 \lt 13q+6$
$\displaystyle -\frac{6}{13} \lt q$
$q$は整数なので、
$0 \leqq q$
である。

$q$がこの範囲のとき、$m$が最小となる解の組を探す。
式Kより、
$m=13q+6$
なので、$m$が最小になるのは$q$が最小のとき。
よって、式Kに$q=0$を代入して、
$m=13 \cdot 0+6$
$m$$=6$
$n=-37 \cdot 0-17$
$n$$=-17$
が求める解である。

解答ネ:6, ノ:-, ハ:1, ヒ:7