大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 問題例 記述式を含む 問題例3 [2] 解説

はじめに

問題文にある△$\mathrm{ABC}$が2通り存在する場合とは、例えば図Aのような状態だ。

図A
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例3[2] 解説図A

図Aの場合、
$\mathrm{AB}=8$ $\mathrm{AC}=t$ $\angle \mathrm{ABC}=60^{\circ}$ であるような△は、△$\mathrm{ABC}_{1}$と△$\mathrm{ABC}_{2}$の2通りできる。

このような図形になるような $t$の範囲を求める問題である。

(1)

△$\mathrm{ABC}$に余弦定理を使うと
$\mathrm{AC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{BC}^{2}-2\cdot \mathrm{AB}\cdot \mathrm{BC}\cos\angle \mathrm{ABC}$式A
とかける。

これに、それぞれの値と$\mathrm{BC}=x$を代入すると、
$t^{2}=8^{2}+x^{2}-2\displaystyle \cdot 8x\cdot\frac{1}{2}$
より
$x^{2}-8x+64-t^{2}=0$式B
といえる。

解答コ:8, サ:6, シ:4, ス:2

(2)

$x$は$\mathrm{BC}$の長さなので、正の実数だ。
△$\mathrm{ABC}$が2通り存在する場合、つまり図Aのような場合、式Aを満たす$x$の値が$\mathrm{BC}_{1}$と$\mathrm{BC}_{2}$の2つ存在しないといけない。
つまり、式Bが異なる二つの正の実数解をもたないといけない。

よって、正しい選択肢は

である。

解答セ:1

(3)

図Aより、$\mathrm{B}$,$\mathrm{C}_{1}$,$\mathrm{C}_{2}$は$\mathrm{AB}$と$60^{\circ}$で交わる同一直線上にあるので、
点$\mathrm{C}$は直線$\mathrm{AB}$と$60^{\circ}$の角をなす半直線上にある。

同じく図Aより、$\mathrm{AC}_{1}=\mathrm{AC}_{2}=t$なので、
点$\mathrm{C}$は点$\mathrm{A}$を中心とする半径$t$の円周上にある。

以上より、選択肢のうちで正しいのは

である。

解答ソ:0

(4)

【方針2】の方法が視覚的に考えられるので、おすすめ。


図Bのように、点$\mathrm{B}$を通り、直線$\mathrm{AB}$と$\theta$の角をなす半直線を$\ell$とする。
点$\mathrm{A}$から$\ell$におろした垂線の足を点$\mathrm{H}$とする。
このとき、点$\mathrm{A}$を中心とする半径$b$の円を考える。
$b$は半径なので、$0 \lt b$だ。

図B
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例3[2] 解説図B

$0 \lt b \lt \mathrm{AH}$のとき、例えば図Bのグレーの円ができる。
グレーの円と$\ell$は共有点がないので、△$\mathrm{ABC}$はできない

$b=\mathrm{AH}$のとき、赤い円ができる。
赤い円と$\ell$の共有点は1個なので、△$\mathrm{ABC}$は1つできる

$\mathrm{AH} \lt b\lt a$のとき、例えばオレンジの円ができる。
オレンジの円と$\ell$の共有点は2個なので、△$\mathrm{ABC}$は2つできる

$b=a$のとき、青い円ができる。
青い円と$\ell$の共有点は2個だけど、ひとつは点$\mathrm{B}$なので不適だから、△$\mathrm{ABC}$は1つできる

$a \lt b$のとき、例えば緑の円ができる。
緑の円と$\ell$の共有点は1個なので、△$\mathrm{ABC}$は1つできる

ことが分かる。


これで大体答えなんだけど、場合分けに使った$\mathrm{AH}$は問題文に出てこない。
なので、$\mathrm{AH}$を問題文に出てくる値で表そう。

図Bの△$\mathrm{ABH}$は直角三角形なので、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{ABH}=\frac{\mathrm{A}\mathrm{H}}{\mathrm{A}\mathrm{B}}$
とかける。

これにそれぞれの値を代入して、
$\displaystyle \sin\theta=\frac{\mathrm{A}\mathrm{H}}{a}$
より
$\mathrm{AH}=a\sin\theta$
と表せる。

以上より、△$\mathrm{ABC}$は、
$ 0 \lt b \lt a\sin\theta$のとき、0通り $ b=a\sin\theta$,$a\leqq b$のとき、1通り $a\sin\theta \lt b \lt a$のとき、2通り できることが分かる。

解答い:$\left\{\begin{array}{l} 0 \lt b \lt a\sin\theta \text{のとき、0通り}\\ b=a\sin\theta\text{,}a\leqq b\text{のとき、1通り}\\ a\sin\theta \lt b \lt a\text{のとき、2通り} \end{array}\right.$

(4) 別解

手間はかかるし面倒だし、ゼンゼンお勧めしないけど、【方針1】で解くと次のようになる。


式Aにそれぞれの値と$\mathrm{BC}=x$を代入すると、
$b^{2}=a^{2}+x^{2}-2a\cos\theta\cdot x$
より
$x^{2}-2a\cos\theta\cdot x+a^{2}-b^{2}=0$式C
ができる。

(2)より、式Cの正の解の数が、できる△$\mathrm{ABC}$の数だ。
式Cは二次方程式なので、解の数は最大2つ。
なので、正の解が2つ,1つ,なしの場合を考える。

式Cを
$y=x^{2}-2a\cos\theta\cdot x+a^{2}-b^{2}$式D
とおくと、式Dのグラフと$x$軸との共有点が、式Cの解だ。
なので、式Cを解く代わりに、式Dのグラフと$x$軸との共有点を考えよう。


正の解が2つのとき

このとき、式Dのグラフは、例えば図Cのようになる。

図C
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例3[2] 解説図C

図Cのようなグラフになるためには、
判別式が正条件A 放物線の軸(頂点の$x$座標)が正条件B $y$切片($y$軸との交点の$y$座標)が正条件C でなければならない。


まず、条件Aから。

式Dの判別式は、
$D=(2a\cos\theta)^{2}-4\cdot 1\cdot(a^{2}-b^{2})$
$D$$=4(a^{2}\cos^{2}\theta-a^{2}+b^{2})$
$D$$=4\{a^{2}(\cos^{2}\theta-1)+b^{2}\}$
$D$$=4(-a^{2}\sin^{2}\theta+b^{2})$式E
とかける。

この$D$が正なので、
$4(-a^{2}\sin^{2}\theta+b^{2}) \gt 0$
より
$-a^{2}\sin^{2}\theta+b^{2} \gt 0$式F
である。

アドバイス

$x$の係数が$2$の倍数で、$2b$とかけるとき、
解の公式:$x=\displaystyle \frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-ac}}{a}$
判別式:$D/4=b^{2}-ac$
っていうのもあるけど、使わないことをお薦めする
この公式に頼ってしまうと、因数分解するのがおろそかになりがちだから。
てか、こんなもん憶える余裕があったら、英単語のひとつでも憶えた方がいいです。

式Fは文字だらけで、これからどうしようか一瞬迷う。
けれど、今は$b$だけが変数扱いで、他は定数だ。
なので、$b$について解けばOK。

式Fより、
$ b^{2} \gt a^{2}\sin^{2}\theta$
だけど、$0 \lt a$,$0 \lt b$,$ 0 \lt \sin\theta$なので、これは
$ b \gt a\sin\theta$式G
となる。


次に、条件Bだ。

復習

放物線
$y=ax^{2}+bx+c$
の軸(頂点の$x$座標)は、
$x=\displaystyle \frac{-b}{2a}$
とかける。

軸が正なので、復習より、
$0 \lt \displaystyle \frac{2a\cos\theta}{2}$
とかける。

これを整理すると
$ 0 \lt a\cos\theta$式H
となるけど、
$0 \lt a$ $\theta$は鋭角なので$ 0 \lt \cos\theta$ なので、式Hは必ず成り立つ。
よって、式Dのグラフの軸は必ず正である。


最後に、条件Cだ。

式Dに$x=0$を代入すると
$y=a^{2}-b^{2}$
となる。

これが正なので、
$0 \lt a^{2}-b^{2}$
より
$b^{2} \lt a^{2}$
だけど、$0 \lt a$,$0 \lt b$なので、これは
$b \lt a$式I
となる。


よって、式G,式Iより、
$a\sin\theta \lt b \lt a$
のとき、式Cの方程式の正の解は2個なので、△$\mathrm{ABC}$は2通りできる。


正の解が1つのとき

このとき、式Dのグラフは、例えば図Dのように2種類考えられる。

図D
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例3[2] 解説図D

黒いグラフの場合から始める。

図Dの黒いグラフになるためには、
判別式が$0$条件D 放物線の軸(頂点の$x$座標)が正条件E でなければならない。

まず、条件Dから。

式Eより、判別式は
$D=4(-a^{2}\sin^{2}\theta+b^{2})$
だけど、これが$0$なので、式Gをちょっと変えて、条件Dは
$ b=a\sin\theta$式J
となる。

また、式Dのグラフの軸は必ず正なので、条件Eは必ず満たされる。

よって、図Dの黒いグラフになるのは、式Jの
$ b=a\sin\theta$
のとき。


図Dの緑のグラフになるのは、
$y$切片($y$軸との交点の$y$座標)が$0$以下条件F でなければならない。

条件Eは、条件Cと不等号が違うだけ。
なので、式Iをちょっと変えて
$b\geqq a$
のとき。


以上より、
$ b=a\sin\theta$ または $a\leqq b$
のとき、式Cの方程式の正の解は1個なので、△$\mathrm{ABC}$は1通りできる。


正の数がないとき

数直線に これまで分かった結果を書き込んで、図Eをつくった。

図E
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例3[2] 解説図E

図E中、緑の部分は$b$の定義域、オレンジの部分が式Cの正の解が2個の範囲、赤い部分が1個の範囲だ。

式Cの方程式の正の解の数は、
2個 1個 0個 の場合しかない。

なので、図Eで、オレンジの範囲でも赤い範囲でもない
$ 0 \lt b \lt a\sin\theta$
の部分が、式Cが正の解をもたない範囲、つまり△$\mathrm{ABC}$ができない範囲だ。


以上より、△$\mathrm{ABC}$は、
$ 0 \lt b \lt a\sin\theta$のとき、0通り $ b=a\sin\theta$,$a\leqq b$のとき、1通り $a\sin\theta \lt b \lt a$のとき、2通り できることが分かる。

解答い:$\left\{\begin{array}{l} 0 \lt b \lt a\sin\theta \text{のとき、0通り}\\ b=a\sin\theta\text{,}a\leqq b\text{のとき、1通り}\\ a\sin\theta \lt b \lt a\text{のとき、2通り} \end{array}\right.$