大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 問題例 記述式を含む 問題例4 解説

(1)

(1)では、
銅像と花子さんの水平距離は$12$m 銅像の台座の高さは$1.5$m 銅像の高さは$4$m 花子さんの目の高さ$1.5$m の場合を考える。

図A
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例4 解説図A

銅像と花子さんの関係を表すと図Aができる。
像が武将じゃないけど(笑)。

図Aで、
銅像の台座の高さと花子さんの目の高さは等しいので、考えない $\mathrm{AB}$は銅像の高さで、$4$m $\mathrm{PB}$は銅像と花子さんの距離で、$12$m である。

なので、
$\displaystyle \tan\angle \mathrm{APB}=\frac{4}{12}$
$\displaystyle \tan\angle \mathrm{APB}$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
$\tan\angle \mathrm{APB}$$=0.\dot{3}$
であることが分かる。

三角比の表を見ると、選択肢のうちで$\tan$が$0.\dot{3}$に最も近いのは

の$18^{\circ}$である。

解答ア:7

(2) (i)

ちょっと分かりにくいけど、ここからは銅像の台座の高さなどは決まっていないものとして考える。

$\mathrm{AB}$,$\mathrm{AP}$,$\mathrm{BP}$の長さが分かっているときに、$\angle \mathrm{APB}$が鋭角であることを示す方法を問われている。
つまり、三角形の3つの辺の長さが分かっているときに、ひとつの角が鋭角であることを示す方法を問われている。

なので、辺と角の関係の復習をしておこう。

復習

下表の図のような三角形において、

大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例4 復習図 大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例4 復習図 大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例4 復習図
$a^{2} \lt b^{2}+c^{2}$
↑↓
$\theta \lt 90^{\circ}$
$a^{2}=b^{2}+c^{2}$
↑↓
$\theta=90^{\circ}$
$a^{2} \gt b^{2}+c^{2}$
↑↓
$\theta \gt 90^{\circ}$

である。

復習より、△$\mathrm{ABP}$において、
$\mathrm{AB}^{2} \lt \mathrm{AP}^{2}+\mathrm{BP}^{2}$
であることを確認すればよい。

正解例はここでは省略する。
公開されている正解例はリンクを参照してほしい。

→ 数学入試問題データベースサイト
       大学入試数学問題集成さんで
          正解例を見る。

別解

余弦定理を使っても、同じ事が示せる。

図Aの三角形に余弦定理を使って、
$\mathrm{AB}^{2}=\mathrm{AP}^{2}+\mathrm{BP}^{2}-2\mathrm{AP}\cdot \mathrm{BP}\cos\angle \mathrm{APB}$
より
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{APB}=\frac{\mathrm{A}\mathrm{P}^{2}+\mathrm{B}\mathrm{P}^{2}-\mathrm{A}\mathrm{B}^{2}}{2\mathrm{A}\mathrm{P}\cdot \mathrm{B}\mathrm{P}}$
とかける。

いま、$\angle \mathrm{APB}$は三角形のひとつの角なので
$0 \lt \angle \mathrm{APB} \lt 180^{\circ}$
である。

なので、
$\cos\angle \mathrm{APB} \gt 0$
であれば、$\angle \mathrm{APB}$が鋭角だといえる。

よって、△$\mathrm{ABP}$において、
$0 \lt \displaystyle \frac{\mathrm{A}\mathrm{P}^{2}+\mathrm{B}\mathrm{P}^{2}-\mathrm{A}\mathrm{B}^{2}}{2\mathrm{A}\mathrm{P}\cdot \mathrm{B}\mathrm{P}}$
であることを確認すればよい。

正解例はリンクを参照。

→ 数学入試問題データベースサイト
       大学入試数学問題集成さんで
          正解例を見る。

(2) (ii)

図B
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例4 解説図B

この小問では、図Bにおいて、$\mathrm{AB}$が一定のとき、外接円の半径$R$が小さいほど$\sin\angle \mathrm{APB}$が大きくなることを示す式を問われている。
ひとつの角の$\sin$と向かいあう辺、それに外接円の半径が含まれる式なので、考えるまでもなく正弦定理だ。

図Bの△$\mathrm{ABP}$に正弦定理を使うと
$\displaystyle \frac{\mathrm{A}\mathrm{B}}{\sin\angle \mathrm{A}\mathrm{P}\mathrm{B}}=2R$
より
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APB}=\frac{\mathrm{A}\mathrm{B}}{2R}$式A
とかける。

$\mathrm{AB}$は一定なので、式Aより、$R$が小さいほど$\sin\angle \mathrm{APB}$は大きくなることが分かる。

には、式Aまたは式Aを変形したものを答えればよい。
正解例はここでは省略する。
公開されている正解例はリンクを参照してほしい。

→ 数学入試問題データベースサイト
       大学入試数学問題集成さんで
          正解例を見る。

(2) (iii)

ここからは、
銅像の台座の高さは$6.5$m 銅像の高さは$4$m 花子さんの目の高さ$1.5$m のときを考える。

先生に教わったことから、$R$が最小になるのは、図Cのとき。
図C中、$\mathrm{M}$は$\mathrm{AB}$の中点、$\mathrm{O}$は△$\mathrm{ABP}$の外心、$\mathrm{H}$は点$\mathrm{P}$を通り水平な直線と直線$\mathrm{AB}$の交点だ。

図Cにおいて、
△$\mathrm{OAB}$は二等辺三角形なので、
$\mathrm{OM}$⊥$\mathrm{AB}$
$\mathrm{PH}$は円$\mathrm{O}$の接線なので、
$\mathrm{OP}$⊥$\mathrm{PH}$
$\mathrm{AB}$は地面に対して垂直なので、
$\mathrm{AH}$⊥$\mathrm{PH}$
である。

図C
大学入学共通テスト2017年 記述式を含む 問題例4 解説図C

図Cの四角形$\mathrm{OPHM}$は長方形なので、
$\mathrm{MH}=\mathrm{OP}=R$
である。

また、
$\displaystyle \mathrm{MB}=\frac{1}{2}\mathrm{AB}$
       $=2$
$\mathrm{BH}=6.5-1.5$
       $=5$
なので、
$\mathrm{MH}=2+5$
       $=7$
となる。

よって、この図になるのは、円$\mathrm{O}$の半径$R$が
$R=\mathrm{MH}$
$R$$=7$
のとき。

解答:イ:7


このとき、式Aより、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APB}=\frac{\mathrm{A}\mathrm{B}}{2R}$
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APB}$$\displaystyle =\frac{4}{2\cdot 7}$
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APB}$$\displaystyle =\frac{2}{7}$
$\sin\angle \mathrm{APB}$$\doteqdot 0.2857$
であることが分かる。

三角比の表より、
$\sin 16^{\circ} \lt 0.2857 \lt \sin 17^{\circ}$
なので、
$16^{\circ} \lt \angle \mathrm{APB} \lt 17^{\circ}$
だ。

よって、選択肢のうちで$\angle \mathrm{APB}$、つまり見込む角に最も近いのは

の$17^{\circ}$である。

解答ウ:3


最後に、このときの$\mathrm{PH}$を求める。
けれど、$\mathrm{PH}$は求めにくいので、
$\mathrm{PH}=\mathrm{OM}$
より、代わりに$\mathrm{OM}$を求めよう。

△$\mathrm{OAM}$は直角三角形なので、三平方の定理より
$\mathrm{OM}^{2}+\mathrm{AM}^{2}=\mathrm{OA}^{2}$式B
と表せる。

ここで、
$\displaystyle \mathrm{AM}=\frac{1}{2}\mathrm{AB}$
      $=2$
$\mathrm{OA}=R$
      $=7$
なので、式Bは
$\mathrm{OM}^{2}+2^{2}=7^{2}$
とかける。

これを解いて、
$\mathrm{OM}^{2}=(7+2)(7-2)$
       $=9\cdot 5$
$\mathrm{OM}=3\sqrt{5}$
となる。

ここで、$\sqrt{5}\doteqdot 2.236$なので、
$3\sqrt{5}\doteqdot 3\times 2.236$
より
$3\sqrt{5}\doteqdot 6.708$
だから、一番近い選択肢は

の$6.7$である。

解答エ:3

③の別解

上の解と同じように$\mathrm{PH}$の代わりに$\mathrm{OM}$を求めるんだけど、三角比の表を使う方法もある。

図C中の△$\mathrm{AOM}$は直角三角形なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{O}\mathrm{M}}{\mathrm{A}\mathrm{O}}=\cos\angle \mathrm{AOM}$式C
とかける。
これを使って$\mathrm{OM}$を求める。

図Cで、
$\angle \mathrm{AOB}$は、円$\mathrm{O}$の弧$\mathrm{AB}$に対する中心角。
また、△$\mathrm{OAB}$は二等辺三角形なので、
$\displaystyle \angle \mathrm{AOM}=\frac{1}{2}\angle \mathrm{AOB}$
となり、$\angle \mathrm{AOM}$は弧$\mathrm{AB}$に対する円周角と等しい。
だから、
$\angle \mathrm{APB}=\angle \mathrm{AOM}$
である。

さらに、より、
$\angle \mathrm{APB}\doteqdot 17^{\circ}$
なので、
$\angle \mathrm{AOM}\doteqdot 17^{\circ}$
といえる。

また、$\mathrm{AO}$は円$\mathrm{O}$の半径$R$だけど、より、$R$は
$R=7$
だった。

以上より、式Cは
$\displaystyle \frac{\mathrm{O}\mathrm{M}}{7}\doteqdot\cos 17^{\circ}$
より
$\mathrm{OM}\doteqdot 7\cos 17^{\circ}$式C'
とかける。

三角比の表を見ると
$\cos 17^{\circ}=0.9563$
なので、式C'は
$\mathrm{OM}\doteqdot 7\times 0.9563$
より
$\mathrm{OM}\doteqdot 6.6941$
となる。

よって、一番近い選択肢は

の$6.7$である。

解答エ:3