大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 問題例 マーク式 問題例3 [2] 解説

(1)

解説がややこしくなるのを避けるために、
「47都道府県」を「全国」 「47都道府県全体の平均」を「全国平均」 と書くことにする。

まず、命題の真偽と集合の関係の復習をしよう。

復習

命題「AであればBである」
について、
大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 復習図または大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 復習図 であれば、真 それ以外のとき、偽 だった。

復習より、「全国平均よりも平均気温が低い県が睡眠時間が長い」かどうかを知るためには、
全国平均より平均気温が低い県の集合集合A 睡眠時間が長い県の集合 の2つの集合の関係を調べればよい。

集合Aをつくるには、すべての都道府県について、平均気温が全国平均より低いかどうかを確認しないといけない。
なので、表1の8つの県を調べるだけでは不十分だ。

よって、正しい選択肢は

である。

解答オ:2

(2)

次は、散布図を見て相関係数を答える問題だ。

まず、相関係数は$-1$以上$1$以下の数なので、⓪は不適。

図A
大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 解説図A

散布図の点は、図Aのように、ぼやっとだけど黄色い線に沿って並んでいる。
黄色い線の傾きは負だから、相関係数も負である。
なので、選択肢の③,④,⑤は不適。

よって、答えは①か②だ。

で、ここから先は、どうしてもグラフの「見た感じ」の話になってしまう。

問題文中の太郎さんの発言にもあるように、これは問題文中の図3と図4の、2つの異なる分布のグループが重なったものだ。

問題文中の図3を見ると、東日本の分布はかなり直線状なので、東日本だけ考えると相関係数は$-1$に近そうだ。
なので、問われているのが東日本だけの相関係数なら、答えは選択肢の

だと考えられる。

けれど、ここでは東日本の分布に、異なるパターンの西日本を加えた全体の相関係数を問われている。
これは、①の$-0.8$よりも かなり$0$に近い値になるはず。
よって、

の$-0.4$があてはまる。

解答カ:2

アドバイス

この散布図にはやっかいなところが2つある。


ひとつ目は、問題文中の図1~図4の描きかただ。
散布図の点の分布はかなり直線状に見えるけど、これには目盛のとり方が影響している。
図1~図4では、点は縦方向には広がって分布しているけど、横方向にはあまり広がっていない。
こんな図になったのは、横軸の目盛幅が狭すぎるから。
縦軸と横軸の標準偏差がグラフ上で同じ幅になるように描きなおすと、図Bができる。

図B
大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 解説図B

問題文中の図1と見比べると、かなり印象が変わっている。


ふたつ目は、分布が偏っていること。

図C
大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 解説図C

点があまり散らばらずに、図Cの黄色いあたり、つまり平均付近に偏っている。

散布図を見て相関係数を答える問題では、突き詰めてしまうと最後は「どう見えるか」っていう印象の話になってしまう。
偏った分布の場合、どうしても図Cの青や緑のような少数の点のグループが中心から離れたところにあると、印象が引きずられて直線状に見えがちだ。

(3)

問題文中の図3を見ると、点は左上から右下の直線状に分布している。
なので、東日本では平均気温が低いほど睡眠時間が長い傾向が見られる。

一方、図4を見ると、点は縦軸と平行に分布している。
なので、西日本では睡眠時間は平均気温とほとんど関連がないと考えられる。

以上より、平均気温が低いほど睡眠時間が長い傾向は、
全国よりも東日本の方が強い 全国よりも西日本の方が弱い ことが分かる。

これに合う選択肢は、
①,③,⑤
の3つである。

解答キ:1,3,5

(4)

図6の散布図から、一日の通勤・通学時間の平均の箱ひげ図を作る。
図6の点は、$30$分~$40$分の間に集中して分布しているので、きっと正しい箱ひげ図は③だ。

共通テスト本番で時間がないときはこれでいいんだけど、せっかくなので、ここでは復習しながらもっと詳しく考えることにする。

箱ひげ図の復習をすると、

復習

大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 復習図

だった。

いま、図6の点の数は都道府県の数で$47$。
なので、
第1四分位数はデータの下位から$12$番目の値 第3四分位数はデータの上位から$12$番目の値 である。

で、改めて問題文の図6(このページの図D)を見る。

図D
大学入学共通テスト2017年 マーク式 問題例3[2] 解説図D

通勤・通学時間が$30$分の線より左(図Dの赤い部分)にある点は$12$個未満。
なので、第1四分位数は$30$以上。
$50$分の線およびその左(青い部分)にある点は$12$個未満。
なので、第3四分位数は$50$未満。
以上より、正しい箱ひげ図は、初めの予想通り

である。

解答ク:3

(5)

選択肢をひとつずつ検討しよう。


問題文中の図5,図6と図7,図8の間で、太郎さんが
「散布図を見れば仕事時間と睡眠時間の相関はあまりないね」
と言っているので、⓪は誤り。

問題文に「これまで行ってきた問題解決の過程と結果から」とある。
これまでに気温と通勤・通学時間の相関は全く考えていないので、①は不適。

「これまでに考えていない」を考慮しないとしても、東日本では
平均気温と睡眠時間には負の相関が見られる 通勤・通学時間と睡眠時間には負の相関が見られる ことから、気温と通勤・通学時間の間に相関があるとすれば正の相関だと予想できる。
つまり、平均気温が低いほど通勤・通学時間は短くなると予想できる。
なので、①は誤り。

西日本では、睡眠時間については、問題文中の
図4より、平均気温との相関はほとんどない 図8より、通勤・通学時間と負の相関が見られる ことが分かる。

よって、②は正しい。

睡眠時間と通勤・通学時間については、問題文中の
図7より、東日本で負の相関が見られる 図8より、西日本で負の相関が見られる ことが分かる。

よって、③は正しい。

散布図や相関係数でよく誤解されるんだけど、強い相関があっても、因果関係があるとは限らない。
因果関係とは、片方が原因で片方が結果である関係のことだ。

例えば、テストの点数を考えてみよう。
英語の点数と数学の点数に強い相関があっても、それは因果関係ではない。
因果関係なら、
片方の点数がよかったことが原因で、もう片方の点数がよかった
ことになるけど、これは変だ。

この問題でも同じで、睡眠時間と平均気温の間に相関があったとしても、因果関係、つまり原因と結果とは限らない。

よって、④は誤り。

④と同じ理由で、通勤・通学時間と睡眠時間に相関があっても、因果関係、つまり原因と結果とは限らない。

よって、⑤は誤り。


以上より、正しい選択肢は
②,③
である。

解答ケ:2,3