数学Ⅰ : 数と式 命題の真偽と必要条件・十分条件
例題
下の(1)~(5)の場合について、
AであることはBであるための 1.必要条件 2.十分条件 3.必要十分条件 4.必要条件でも十分条件でもない のいずれにあたるか答えなさい。
また、命題「AであればBである」の真偽と、偽の場合は反例をひとつ答えなさい。
(1).全体集合を整数とするとき、
A.3の倍数 かつ 奇数
B.3の倍数 または 偶数
(2).$m$,$n$を整数とするとき、
A.$mn$は偶数である
B.$m+n$は偶数である
(3).全体集合を8以下の自然数とするとき、
A.3以下 または 素数
B.奇数
(4).$x$を実数とするとき、
A.$x^{2}-2x-3\leqq 0$
B.$\left\{\begin{array}{l} x^{2}\leqq 9\\ 3x+5\geqq 2 \end{array}\right.$
(5).$x$,$y$を実数とするとき、
A.$x^{2}+y^{2}\leqq 1$
B.$|x|+|y|\leqq 1$
アドバイス
必要条件・十分条件の問題は、一般的には
$p\Rightarrow q$ ×
$p\Leftarrow q$ ○
なので、必要条件
って解くことが多いけど、○×の判定で混乱したり間違えたりすることが多い。なので、図や表で表せるときは、集合の大小で考える方がおすすめ。
必要条件・十分条件と集合
図Aで、
$p$は$q$の必要条件
$q$は$p$の十分条件
である。
つまり、片方の集合がもう片方に含まれるとき、
大きい集合は小さい集合の必要条件
小さい集合は大きい集合の十分条件
である。
「大は小の必要条件・小は大の十分条件。」
呪文のように憶えておこう。
図Bのようにふたつの集合が等しい場合は、必要十分条件となる。
図Cのように、片方がもう片方を含むような関係でない場合には、必要条件でも十分条件でもない。
さらに、命題の真偽と集合の関係も復習しておこう。
命題の真偽と集合
命題「仮定であれば結論である」について、
仮定 が 結論 に含まれていれば真
仮定 が 結論 からはみ出していれば偽
である。
つまり、仮定の集合を赤、結論の集合を青とすると、命題が真になるのは図Dのような場合である。
また、命題が偽になるのは図Eのような場合である。
反例は、仮定に含まれるけれど結論には含まれない部分にあたる。
なので、図Eの、赤い斜線はあるけど青い斜線がない部分が反例だ。
こんな感じで、集合の図や表から考えると効果的な場合がよくある。
とは言っても、適切な図や表をすぐに思いつくのは難しいかも。でも、いろいろな図や表のかきかたを知っていれば、まねすることは難しくない。
なので、ここでは、こんなかきかたがあるってことを知ってもらえればいいです。
(1)
A.3の倍数 かつ 奇数 B.3の倍数 または 偶数
図Fのようなベン図をかくと、
Aの集合は、オレンジの斜線の範囲のうち、緑の斜線がない部分。
つまり、図Gの赤い部分。
Bの集合は、図Fのオレンジの斜線の部分または緑の斜線の部分。
つまり、図Hの青い部分。
図Gと図Hを重ねると、図Iができる。
図Iを見ると、赤い部分(Aの集合)が青い部分(Bの集合)に含まれている。
「小は大の十分条件」なので、十分条件。
また、仮定(赤い部分)が結論(青い部分)に含まれている。
よって、命題は真である。
解答2,真
(2)
A.$mn$は偶数である B.$m+n$は偶数である
整数$m$,$n$を偶数と奇数に分けて考えると、表Jができる。
$m$ | |||
---|---|---|---|
偶数 | 奇数 | ||
$n$ | 偶数 | ||
奇数 |
$m$,$n$の一方でも偶数であれば$mn$は偶数になるので、Aの集合の範囲は表Kの赤い範囲。
$m$ | |||
---|---|---|---|
偶数 | 奇数 | ||
$n$ | 偶数 | ||
奇数 |
たして偶数になるのは、偶数+偶数のときと、奇数+奇数のとき。なので、Bの集合の範囲は表Lの青い範囲。
$m$ | |||
---|---|---|---|
偶数 | 奇数 | ||
$n$ | 偶数 | ||
奇数 |
表Kと表Lを重ねると、表Mができる。
$m$ | |||
---|---|---|---|
偶数 | 奇数 | ||
$n$ | 偶数 | ||
奇数 |
表Mを見ると、どちらの集合も他方を含んでいない。
なので、必要条件でも十分条件でもない。
命題も偽である。反例は仮定(赤い部分)が結論(青い部分)からはみ出している部分から、何かひとつ答えればよい。
解答4,偽(反例:$m=1$,$n=2$)
(3)
A.3以下 または 素数 B.奇数
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
B | ○ | ○ | ○ | ○ |
全体集合は8つの要素しかないので、全部書いた。
表Nより、Aの集合がBの集合を含んでいる。
「大は小の必要条件」なので、必要条件。
また、仮定(赤い部分)が結論(青い部分)からはみ出している。
よって命題は偽で、反例ははみ出した部分の$2$である。
解答1,偽(反例:$2$)
(4)
A.$x^{2}-2x-3\leqq 0$ B.$\left\{\begin{array}{l} x^{2}\leqq 9\\ 3x+5\geqq 2 \end{array}\right.$
Aの不等式を解いて、
$(x+1)(x-3)\leqq 0$
$-1\leqq x\leqq 3$
これを数直線に表すと、図Oの赤い範囲になる。
Bの連立不等式を解いて、
$x^{2}\leqq 9$
$-3\leqq x\leqq 3$
$3x+5\geqq 2$
$-1\leqq x$
これを数直線に表すと、図Pの青い範囲になる。
図Oと図Pを見比べると、Aの集合とBの集合は等しい。
なので、必要十分条件で、命題も真である。
解答3,真
(5)
A.$x^{2}+y^{2}\leqq 1$ B.$|x|+|y|\leqq 1$
アドバイス
二つの実数の変数(この問題では$x$,$y$)の関係を図にしようとすると、どうしても数Ⅱで学習する「領域」になってしまう。入試で数ⅠAしか必要ない人には申し訳ないんだけれど、領域で解く方法が合理的なので、ここでは数Ⅱの範囲に入って説明する。
Aの集合からはじめよう。
$x^{2}+y^{2}=1$は原点中心で半径1の円。
なので、$x^{2}+y^{2}\leqq 1$は、その円の円周上および内部になるから、図Qの赤い範囲にあたる。ただし、境界線を含む。
次は、Bの集合だ。
$x$,$y$ともに負のときと0以上のときに場合分けをして、絶対値をはずしたものが表Rである。
$x$ | |||
---|---|---|---|
$x \lt 0$ | $0\leqq x$ | ||
$y$ | $0\leqq y$ | $-x+y\leqq 1$ | $x+y\leqq 1$ |
$y \lt 0$ | $-x-y\leqq 1$ | $x-y\leqq 1$ |
表Rの緑の部分の場合、
$x+y\leqq 1$
は
$y\leqq-x+1$
と変形できる。この場合の領域は、場合分け$0\leqq x$,$0\leqq y$とあわせて、連立不等式
$\left\{\begin{array}{l}
0\leqq x\\
0\leqq y\\
y\leqq-x+1
\end{array}\right.$
が表す領域であるから、図Sのようになる。ただし、境界線を含む。
同じことを他の場合分けでも繰り返すと、Bの集合の表す領域は図Tの青い範囲になることが分かる。ただし、境界線を含む。
図Qと図Tを重ねると、図Uができる。
図Uを見ると、赤い部分(Aの集合)が青い部分(Bの集合)を含んでいる。
「大は小の必要条件」なので、必要条件。
また、仮定(赤い部分)が結論(青い部分)からはみ出しているので、命題は偽だ。
反例は はみ出した赤い部分のどこでもいいんだけど、例えば図Uの点Aを考えると、座標は
$\left(\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$
なので、
$x=y=\frac{1}{\sqrt{2}}$
となる。
解答1,偽(反例:$x=y=\frac{1}{\sqrt{2}}$)