数学Ⅱ : 微分法と積分法 $ \frac{1}{6}$公式の計算

例題

(1)$y=x^{2}+2x-5$のグラフと $y=3x^{2}-8x+3$のグラフに囲まれた部分の面積を求めなさい。 (2)$y=-\displaystyle \frac{1}{2}x^{2}+2x+5$のグラフ$y=x+1$のグラフに囲まれた部分の面積を求めなさい。

アドバイス

最初に、$\displaystyle \frac{1}{6}$公式の復習をしておこう。
$\displaystyle \frac{1}{6}$公式は定積分の計算を簡単にする方法で、

公式

$\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx=-\frac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}$

だった。

これだけじゃ分かりにくいので、ちょっと補足しておく。

6分の1公式の計算 解説図

図のような、2次関数と直線、または2次関数と2次関数で囲まれたオレンジ色の部分の面積$S$が
$S=a\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}(x^{2}+bx+c)dx$
の形で表せるときを考える。

この式は必ず
$S=a\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx$
と因数分解でき、さらに$\displaystyle \frac{1}{6}$公式によって
$\displaystyle S=a\cdot\left\{-\frac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}\right\}$
とかける。

計算がとても楽になるので、使えるときは必ず使うようにしよう。

(1)

まず、清く正しく解いてみよう。

ふたつのグラフの交点の$x$座標を求めよう。
連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
y=x^{2}+2x-5\\
y=3x^{2}-8x+3
\end{array}\right.$
を解いて、
$x^{2}+2x-5=3x^{2}-8x+3$
$(x^{2}+2x-5)-(3x^{2}-8x+3)=0$
$-2x^{2}+10x-8$$=0$式A
$x^{2}+5x-4=0$
$(x-$$1$$)(x-$$4$$)=0$式B
より$x=1,4$なので、$x=1$から$x=4$まで積分すればよい。

$1 \lt x \lt 4$でふたつのグラフの上下関係を考えると、
$(x^{2}+2x-5)\ \gt \ (3x^{2}-8x+3)$
である。

以上より、求める面積$S$は、
$S=\displaystyle \int_{1}^{4}\{(x^{2}+2x-5)-(3x^{2}-8x+3)\}dx$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\int_{1}^{4}($$-2x^{2}+10x-8$$)dx$式C
$S\displaystyle $$\displaystyle =\int_{1}^{4}-2(x^{2}+5x-4)dx$
$S\displaystyle $$\displaystyle =-2\int_{1}^{4}(x^{2}+5x-4)dx$
$S\displaystyle $$\displaystyle =$$-2$$\displaystyle \int$ 1 4 $(x^{2}+5x-4)dx$式D

$\displaystyle \frac{1}{6}$公式より、
$S=$$-2$$ \biggl\{ -\displaystyle \frac{1}{6}($$4$-$1$$)^{3} \biggr\}$式E
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{2\cdot 3^{3}}{6}$
$S$$=9$
となる。

解答$9$


アドバイス

さて、ちょっと上の計算を見直してみよう。
最終的に面積を求めたのは式Eの部分で、実際に使った値は、色つきの部分の$-2$$1$$4$の3つだ。
これは式Dの同じ色の部分からきている。

このうち、積分区間の$1$$4$は式Bで求めた。

$-2$は式Cの$x^{2}$の係数からきているけれど、この緑の部分は式Aの左辺と同じだ。
なので、式Aの$x^{2}$の係数が、そのまま式Eで使った$-2$になる。

以上から、センター試験などマークシート形式の問題で、答だけ分かればよい場合、空色の部分の計算は省略できることが分かる。

この省略方式で解くと、次のようになる。

連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
y=x^{2}+2x-5\\
y=3x^{2}-8x+3
\end{array}\right.$
より、
$x^{2}+2x-5=3x^{2}-8x+3$式F
$(x^{2}+2x-5)-(3x^{2}-8x+3)=0$
$-2$$x^{2}+10x-8=0$
$x^{2}+5x-4=0$
$(x-$$1$$)(x-$$4$$)=0$

$\displaystyle \frac{1}{6}$公式より、
$S=$$-2$$ \biggl\{ -\displaystyle \frac{1}{6}($$4$-$1$$)^{3} \biggr\}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{2\cdot 3^{3}}{6}=9$

解答$9$


アドバイス

ここでちょっと気にしてぼしいのは、式Fだ。左辺と右辺を入れ替えて
$3x^{2}-8x+3=x^{2}+2x-5$
とすると、
$(3x^{2}-8x+3)-(x^{2}+2x-5)=0$
$2x^{2}-10x+8=0$
となって、$x^{2}$の係数が$\pm$逆になってしまう。
すると、$\displaystyle \frac{1}{6}$公式に代入したとき、面積が負になってちょっとびっくりする。
こんなときは、慌てずに$x^{2}$の係数に$-1$をかけて負にしてほしい。

(2)

まずは、正しい解き方から。

ふたつのグラフの交点の$x$座標を求めよう。
連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
y=-\frac{1}{2}x^{2}+2x+5\\
y=x+1
\end{array}\right.$
を解いて、
$-\displaystyle \frac{1}{2}x^{2}+2x+5=x+1$
$\left(-\frac{1}{2}x^{2}+2x+5\right)-(x+1)=0$
$-\displaystyle \frac{1}{2}x^{2}+x+4=0$
$x^{2}-2x-8=0$
$(x+2)(x-4)=0$
より$x=-2,4$なので、$x=-2$から$x=4$まで積分すればよい。

$-2 \lt x \lt 4$でふたつのグラフの上下関係を考えると、
$\left(-\frac{1}{2}x^{2}+2x+5\right) \gt (x+1)$
である。

以上より、求める面積$S$は、
$S=\displaystyle \int_{-2}^{4}\left\{\left(-\frac{1}{2}x^{2}+2x+5\right)-(x+1)\right\}dx$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\int_{-2}^{4}\left(-\frac{1}{2}x^{2}+x+4\right)dx$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\int_{-2}^{4}-\frac{1}{2}(x^{2}-2x-8)dx$
$S\displaystyle $$\displaystyle =-\frac{1}{2}\int_{-2}^{4}(x^{2}-2x-8)dx$

$\displaystyle \frac{1}{6}$公式より、
$S=-\displaystyle \frac{1}{2}\left\{-\frac{1}{6}\{4-(-2)\}^{3}\right\}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{6^{3}}{2\cdot 6}$
$S$$=18$
となる。

解答$18$


省略法式でも解いてみよう。

ふたつのグラフの交点の$x$座標を求めよう。

連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
y=-\frac{1}{2}x^{2}+2x+5\\
y=x+1
\end{array}\right.$
を解いて、

$-\displaystyle \frac{1}{2}x^{2}+2x+5=x+1$式G
$\left(-\frac{1}{2}x^{2}+2x+5\right)-(x+1)=0$
$-\displaystyle \frac{1}{2}$$x^{2}+x+4=0$式H
$x^{2}-2x-8=0$
$(x+2)(x-4)=0$
より、$x=$$-2$,$4$のとき、二つのグラフは共有点をもつ。
ここまで、省略しない方式と同じ。

$\displaystyle \frac{1}{6}$公式より、
$S=$$\displaystyle - \frac{1}{2} $$\biggl\{ \displaystyle -\frac{1}{6}\{$$4$$-($$-2$$)\}^{3}$$\biggr\}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{6^{3}}{2\cdot 6}$
$S$$=18$
となる。

解答$18$

アドバイス

ポイントは、式Gから式Hの変形の際に 両辺に$2$をかけて分母を払ったりしないこと。
式Hの形になるまでは、両辺にかけたり割ったりしないように注意。でないと、$x^{2}$の係数が変わってしまう。

アドバイス

以上、$\displaystyle \frac{1}{6}$公式を使うときの計算の省略方法を説明した。
誤解しないでほしいのだが「省略して計算するべきだ」とは思っていない。
センター試験は時間との戦いになるので「時間節約のために 計算を省略するのもやむを得ない」と思っている。
あくまで数学の基本は「ちゃんと書いて目で見て考える」である。時間に余裕がある場合は省略せずに解いてほしい。