数学Ⅱ : 微分法と積分法 $ \frac{1}{6}$公式の利用2

例題

放物線$y=x^{2}-3x+3$,$y=x^{2}+1$と$y$軸で囲まれた図形の面積を求めなさい。

復習

数Ⅱの範囲でよく見る公式のひとつに、いわゆる$\displaystyle \frac{1}{6}$公式

公式

$\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx=-\frac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}$

があった。

これは、図Aのような面積を求めるときに使うことが多い。

図A
6分の1公式の利用2 解説図A

この公式について、もう少し考えてみよう。


図Aのように、2次関数と直線、または2次関数と2次関数で囲まれた面積$S$は
$S=\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}($赤い線の式$-$青い線の式$)dx$
$\phantom{ S\displaystyle } \displaystyle =\int_{\alpha}^{\beta}$二次式$dx$式A
と表せる。

この二次式を
$ax^{2}+bx+c$
とおくと、式Aは
$S=\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}(ax^{2}+bx+c)dx$
より
$S=\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}a(x-\alpha)(x-\beta)dx$
$\phantom{ S\displaystyle } \displaystyle =a\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx$
と変形できる。

これに$\displaystyle \frac{1}{6}$公式を使うと、面積$S$は
$\displaystyle S=a\cdot\left\{-\frac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}\right\}$
$\phantom{ S\displaystyle } \displaystyle =-\frac{a}{6}(\beta-\alpha)^{3}$式B
となる。


式Bを見ると、面積$S$は、
$a$ と$(\beta-\alpha)$だけで決まる ことが分かる。

このうち、$a$は 式Aの二次式の$x^{2}$の係数だった。
$\beta-\alpha$は、積分する範囲の$x$座標の幅だ。

このことから、
積分する式の$x^{2}$の係数が等しく 積分する範囲の幅も等しい ときには面積が等しくなることが分かる。

特に、$x^{2}$の係数が等しい放物線と直線に囲まれた部分の面積を考えるとき、囲まれた部分の$x$方向の幅が等しいときには、面積も等しい。

この性質は、使える場面が意外に多い。


例えば図Bのような場合を考えよう。

図B
6分の1公式の利用2 解説図B

図中の放物線の式を
$y=ax^{2}+bx+c$
とする。

図Bの青い部分の面積は、
青$=\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}\{$赤い直線の式$-(ax^{2}+bx+c)$$\}dx$
とかけるけど、赤い直線の式は一次式なので、この式の赤い部分は
一次式$-(ax^{2}+bx+c)$
$=-ax^{2}+\cdots$
と表せる。
一次以下の項は、省略して$\cdots$とした。

なので、青い部分の面積は、
青$=\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta}(-ax^{2}+\cdots)dx$
$\displaystyle =-a\int_{\alpha}^{\beta}(x^{2}+\cdots)dx$
これに$\displaystyle \frac{1}{6}$公式を使って
青$=\displaystyle \frac{a}{6}(\beta-\alpha)^{3}$式C
となる。

同様に、オレンジの部分の面積は、
オレンジ$=\displaystyle \int_{\gamma}^{\delta}\{$紫の直線の式$-(ax^{2}+bx+c)\}dx$
オレンジ$\displaystyle =-a\int_{\gamma}^{\delta}(x^{2}+\cdots)dx$
オレンジ$\displaystyle =\frac{a}{6}(\delta-\gamma)^{3}$式D
黄色い部分の面積は、
黄$=\displaystyle \int_{\epsilon}^{\zeta}\{$緑の直線の式$-(ax^{2}+bx+c)\}dx$
$\displaystyle =-a\int_{\epsilon}^{\zeta}(x^{2}+\cdots)dx$
$\displaystyle =\frac{a}{6}(\zeta-\epsilon)^{3}$式E
となる。

いま、
$\beta-\alpha=\delta-\gamma=\zeta-\epsilon$
なので、式C,式D,式Eの値はすべて等しい。
つまり、図Bの色のついた部分の面積はすべて等しい。


ふたつ目の例として、図Cのようなグラフを考える。
放物線はすべて$x^{2}$の係数が等しいとする。
このとき、オレンジの部分の面積はすべて等しい。
(説明は省略)

図C
6分の1公式の利用2 解説図C

と、ここまで復習できたところで、例題を解く。

解説

最初に図を描こう。

ふたつの放物線の交点の$x$座標は、連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
y=x^{2}-3x+3\\
y=x^{2}+1
\end{array}\right.$
を解いて、
$x^{2}-3x+3=x^{2}+1$
より
$-3x+2=0$
$x=\displaystyle \frac{2}{3}$
である。

また、それぞれの放物線の$y$軸との交点の$y$座標は、それぞれの式に$x=0$を代入して、
$y=x^{2}-3x+3$が$y=3$ $y=x^{2}+1$が$y=1$ である。

なので、ふたつの放物線の交点を点$A$、それぞれの放物線と$y$軸との交点を点$B$,点$C$として図を描くと、図Dができる。

図D
6分の1公式の利用2 解説図D

いま問われているのは、図中の青い部分の面積だ。


復習より、図Dの黄色い部分の面積と斜線部の面積は等しい。

よって、
青$+$黄$-$斜線部$=$赤い三角形$ABC$
より、
青$=$赤い三角形$ABC$
であることが分かる。

ということで、青い部分の面積の代わりに 赤い三角形$ABC$の面積を求めよう。

$BC$を底辺とすると、赤い三角形の
底辺の長さは $3-1=2$ 高さは $\displaystyle \frac{2}{3}$ なので、面積は
$\displaystyle \frac{1}{2}\times 2\times\frac{2}{3}=\frac{2}{3}$
である。

よって、問われている青い部分の面積も
$\displaystyle \frac{2}{3}$
である。

解答$\displaystyle \frac{2}{3}$

別解

おすすめはしないけど、上のような考え方を使わずに単に積分して解くと 次のようになる。

図Dの青い部分の面積は、
$\displaystyle \int_{0}^{\frac{2}{3}}\{(x^{2}-3x+3)-(x^{2}+1)\}dx$
$=\displaystyle \int_{0}^{\frac{2}{3}}(-3x+2)dx$
$\displaystyle =\left[-\frac{3}{2}x^{2}+2x\right]_{0}^{\frac{2}{3}}$
$=-\displaystyle \frac{3}{2}\cdot\left(\frac{2}{3}\right)^{2}+2\cdot\frac{2}{3}$
$=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot \left(-\frac{3}{2}\cdot \frac{2}{3} + 2 \right)$
$=\displaystyle \frac{2}{3}$
である。

解答$\displaystyle \frac{2}{3}$