数学B : 数列 漸化式と確率

例題

2つの箱A,Bがあり、それぞれに白球と黒球が1個ずつ入っている。それぞれの箱から無作為に球を1個ずつ取り出して交換する試行を行う。$n$回の試行後に、箱Aに入っている球が、
白球と黒球である確率を$a_{n}$ 白球2個または黒球2個である確率を$b_{n}$ とする。
このとき、
(1) $a_{1}$,$b_{1}$を求めなさい。
(2) $a_{2}$,$b_{2}$を求めなさい。
(3) $a_{n+1}$,$b_{n+1}$を$a_{n}$,$b_{n}$を使って表しなさい。
(4) $a_{n}$,$b_{n}$を求めなさい。

アドバイス

数列の単元の問題として、漸化式を使って場合の数や確率を求める問題が、過去のセンター試験に出たことがある。
このタイプの問題が出題される可能性は低いけれど、もし出された場合、初めて見るときっと相当動揺する。
なので、慣れるために1問解いておこう。
同じような問題のセンター試験の過去問はこちら

(1)

表Aのような状態からスタートする。

表A
箱A
○●
箱B
○●

両方の箱から球を1個ずつ取り出すのだけれど、取り出された球と、交換した後の箱の中身は表Bのような関係になる。

表B
箱Aから
箱Bから ○● ○● ○○ ●●
●● ○○ ○● ○●

表Bのそれぞれのマスは同じ確率で起こるので、
○● ○● になる確率は$\displaystyle \frac{2}{4}=\frac{1}{2}$ ○○ ●● または ●● ○○ になる確率は$\displaystyle \frac{2}{4}=\frac{1}{2}$ である。
なので、
$a_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$ $b_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$ である。

解答$a_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$
$b_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$

(2)

(1)から、1回の試行後に
○● ○● になる確率は$\displaystyle \frac{1}{2}$ ○○ ●● または ●● ○○ になる確率は$\displaystyle \frac{1}{2}$ である。


また、上のことは、試行前に ○● ○● だったとき、試行後に
○● ○● になる確率は$\displaystyle \frac{1}{2}$ ○○ ●● または ●● ○○ になる確率は$\displaystyle \frac{1}{2}$ とも考えられる。


さらに、試行前に ○○ ●● だったときは、
箱Aからは必ず○が出る 箱Bからは必ず●が出る ので、試行後は必ず(つまり確率$1$で) ○● ○● になる。

同様に、試行前に ●● ○○ だったときも、試行後は必ず ○● ○● になる。


以上をまとめると、図Cができる。

図C
漸化式と確率 解説図C

図Cより、2回の試行後に
○● ○● になる確率$a_{2}$は、
$a_{2}=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\cdot 1$
$a_{2}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3}{4}$
○○ ●● または ●● ○○ になる確率$b_{2}$は、
$b_{2}=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}$
$b_{2}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{4}$
である。

解答$a_{2}=\displaystyle \frac{3}{4}$
$b_{2}=\displaystyle \frac{1}{4}$

(3)

(2)の考え方を整理すると、
試行前に ○● ○● だったら、試行後は
$\displaystyle \frac{1}{2}$の確率で ○● ○● $\displaystyle \frac{1}{2}$の確率で ○○ ●● または ●● ○○
試行前に ○○ ●●
または ●● ○○ だったら、試行後は
$1$の確率で ○● ○●
である。

なので、試行前に
○● ○● である確率を$a_{n}$ ○○ ●● または ●● ○○ である確率を$b_{n}$ とし、試行後に
○● ○● である確率を$a_{n+1}$ ○○ ●● または ●● ○○ である確率を$b_{n+1}$ とすると、図Dのような関係であるから、

図D
漸化式と確率 解説図D

次のような式ができる。
$a_{n+1}=a_{n}\displaystyle \times\frac{1}{2}+b_{n}\times 1$
$a_{n+1}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{2}a_{n}+b_{n}$
$b_{n+1}=a_{n}\displaystyle \times\frac{1}{2}$
$b_{n+1}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{2}a_{n}$

解答$a_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{2}a_{n}+b_{n}$
$b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{2}a_{n}$

(4)

(1),(3)より、
$a_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$式A $b_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$ $a_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{2}a_{n}+b_{n}$式B $b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{2}a_{n}$ であることが分かった。
これを$a_{n}$,$b_{n}$について解く。

アドバイス

とは言いつつ、センター試験のようなマークシート形式の問題では、この先は出題者の誘導にあわせて解くことになるので、ここで解説してもあんまり意味がない。この問題のポイントは(3)である。
なので、簡単に解いておく。


箱A,Bへの球の入り方は、
○● ○●パターンA ○○ ●●パターンB ●● ○○パターンC の3通りしかない。
パターンAになる確率は、$a_{n}$ パターンBまたはパターンCになる確率は、$b_{n}$ なので、$a_{n}$,$b_{n}$以外の確率は存在しない。
よって、
$a_{n}+b_{n}=1$
より
$b_{n}=1-a_{n}$式C
である。

式Cを式Bに代入して、
$a_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{2}a_{n}+(1-a_{n})$
$a_{n+1}\displaystyle $$\displaystyle =-\frac{1}{2}a_{n}+1$式D
となる。


式Dは、漸化式の基本の形
$a_{n+1}=pa_{n}+q$
だ。なので、あとは機械的に解ける。(詳しい解き方はこのページ参照。)

式Dの両辺から$\displaystyle \frac{2}{3}$を引いて、
$a_{n+1}-\displaystyle \frac{2}{3}=-\frac{1}{2}a_{n}+1-\frac{2}{3}$
$a_{n+1}-\displaystyle \frac{2}{3}$$\displaystyle =-\frac{1}{2}a_{n}+\frac{1}{3}$

右辺を$-\displaystyle \frac{1}{2}$でくくって、
$a_{n+1}-\displaystyle \frac{2}{3}=-\frac{1}{2}\left(a_{n}-\frac{2}{3}\right)$式E
ここで、
$a_{n}-\displaystyle \frac{2}{3}=p_{n}$式F
とおくと、式Eは
$p_{n+1}=-\displaystyle \frac{1}{2}p_{n}$
とかける。


式Fより、
$p_{1}=a_{1}-\displaystyle \frac{2}{3}$
式Aより
$a_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$
なので、
$p_{1}=-\displaystyle \frac{1}{6}$
となるから、数列$\{p_{n}\}$は
初項$-\displaystyle \frac{1}{6}$ 公比$-\displaystyle \frac{1}{2}$ の等比数列である。
よって、
$p_{n}=-\displaystyle \frac{1}{6}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}$
$p_{n}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}$
となる。


これを式Fに代入して、
$a_{n}-\displaystyle \frac{2}{3}=\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}$
$a_{n}=\displaystyle \frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}+\frac{2}{3}$式G
これを式Cに代入して
$b_{n}=1-\left\{\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}+\frac{2}{3}\right\}$
$b_{n}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{3}\left\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}\right\}$式H
である。

(1)より、$a_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$,$b_{1}=\displaystyle \frac{1}{2}$なので、式G,式Hは$n=1$のときも成り立つ。

解答$a_{n}=\displaystyle \frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}+\frac{2}{3}$
$b_{n}=\displaystyle \frac{1}{3}\left\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n}\right\}$