大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 試作問題 数学ⅡBC 第3問 解説
(1)
①のグラフの$y$軸との交点における接線を$m$とする。
$y=3x^{2}+\AKA{2}x+\MIDORI{3}$①
を微分すると
$y'=6x+\AKA{2}$式A
となる。
式Aに$x=0$を代入すると
$y'=\AKA{2}$
なので、$m$の傾きは$\AKA{2}$である。
①式に$x=0$を代入すると
$y=\MIDORI{3}$
なので、$m$は$(0,\MIDORI{3})$を通る。
よって、$m$の式は
$y=\AKA{2}x+\MIDORI{3}$
である。
解答ア:2, イ:3
ここまでの計算式をもとに 2次関数のグラフの$y$軸との交点における接線を考えると、
※
赤文字の部分から、接線の式の$x$の項の係数は2次関数の$x$の項の係数と等しい
緑文字の部分から、接線の式の定数項は2次関数の定数項と等しい
ことが分かる。
※より、$y$軸との交点における接線の方程式が
$y=\AKA{2}x+\MIDORI{3}$
である2次関数は
$x$の項の係数が$\AKA{2}$
定数項が$\MIDORI{3}$
だ。
ウの解答群のうち、これに当てはまるものは
④
しかない。
解答ウ:4
また、
$y=ax^{2}+bx+c$
のグラフと$y$軸は
$(0,c)$
で交わる。
解答エ:c
この点における接線を$\ell$とすると、※より、$\ell$の方程式は
$y=bx+c$式B
であることが分かる。
解答オ:b, カ:c
$\ell$と$x$軸との交点の座標は、式Bに$y=0$を代入して、
$bx+c=0$
$bx=-c$
$x=-\dfrac{c}{b}$
である。
解答キ:-, ク:c, ケ:b
$a$,$b$,$c$が正の実数であるとき、
$y=ax^{2}+bx+c$ のグラフは、
$a \gt 0$ なので、下に凸
$\dfrac{-b}{2a} \lt 0$ なので、頂点の$x$座標は負
$c \gt 0$ なので、$y$切片は正
接線$\ell$は
$b \gt 0$ なので、傾きは正
$c \gt 0$ なので、$y$切片は正
だ。
したがって、このときのグラフを描くと、例えば図Aのようになる。
図Aでは、放物線の頂点の$y$座標は正になっているけれど、$a$,$b$,$c$ の値によっては $0$以下になることもある。
また、$\ell$と$x$軸の交点も、図Aのように放物線の軸より左とは限らない。
ここで問われているのは図Aの赤い部分の面積$S$だ。
これは
$$
\begin{align}
S&=\int_{-\tfrac{c}{b}}^{0}\{(ax^{2}+bx+c)-(bx+c)\}\,dx\\
&=\int_{-\tfrac{c}{b}}^{0}ax^{2}\,dx\\
&=\left[\dfrac{a}{3}x^{3}\right]_{-\tfrac{c}{b}}^{0}\\
&=-\dfrac{a}{3}\left(-\dfrac{c}{b}\right)^{3}\\
&=\dfrac{ac^{3}}{3b^{3}}\class{tex_formula}{③}
\end{align}
$$
である。
解答コ:3, サ:3, シ:3
$a=1$として、③式の値が一定のとき、この一定の値を$k$とおくと、$b$と$c$の関係式は
$\dfrac{c^{3}}{3b^{3}}=k$
$c^{3}=3kb^{3}$
より
$c=\sqrt[3]{3k}b$
と表せる。
$\sqrt[3]{3k}$は定数なので、このときの$b$と$c$の関係を表すグラフは原点を通る直線である。
また、$k \gt 0$ だから、
$\sqrt[3]{3k} \gt 0$
なので、直線の傾きは正だ。
これにあてはまるのは、スの選択肢のうち
⓪
しかない。
解答ス:0
(2)
次は、3次関数だ。
$f(x)=ax^{3}+bx^{2}+cx+d$
で※と同様に考えると、$y=f(x)$のグラフと$y$軸との交点における接線の方程式は
$y=cx+d$
であることが分かる。
解答セ:c, ソ:d
さらに
$g(x)=cx+d$
とおくと、$y=f(x)$と$y=g(x)$のグラフの共有点の$x$座標は、方程式
$f(x)=g(x)$
の解だ。
これを計算すると、
$f(x)-g(x)=0$式C
より
途中式
$(ax^{3}+bx^{2}+cx+d)-(cx+d)=0$
$ax^{3}+bx^{2}=0$
$x^{2}(ax+b)=0$
となるから、ふたつのグラフの共有点の$x$座標は
である。
解答タ:-, チ:b, ツ:a, テ:0
最後に、$x$が$-\dfrac{b}{a}$と$0$の間を動くときの$\left|f(x)-g(x)\right|$の最大値を求める。
タ~テより
$x=-\dfrac{b}{a},0$ のとき
$\quad f(x)-g(x)=0$なので、
$\qquad \left|f(x)-g(x)\right|=0$
である。
また、絶対値$\geqq 0$なので
$\left|f(x)-g(x)\right|\geqq 0$
だから、
$y=\left|f(x)-g(x)\right|$のグラフは
$x$軸を含んでそれより上
にある。
よって、$x$が$-\dfrac{b}{a}$と$0$の間のときの $y=\left|f(x)-g(x)\right|$の増減表みたいなものを書くと、
$-\dfrac{b}{a} \lt 0$ のときは表B
$0 \lt -\dfrac{b}{a}$ のときは表C
になる。
| $x$ | $-\dfrac{b}{a}$ | $\cdots$ | $0$ |
|---|---|---|---|
| $\left|f(x)-g(x)\right|'$ | |||
| $\left|f(x)-g(x)\right|$ | $0$ | 正 | $0$ |
| $x$ | $0$ | $\cdots$ | $-\dfrac{b}{a}$ |
|---|---|---|---|
| $\left|f(x)-g(x)\right|'$ | |||
| $\left|f(x)-g(x)\right|$ | $0$ | 正 | $0$ |
表B,表Cを見ると、どちらの場合でも、この区間で
$y=\left|f(x)-g(x)\right|$のグラフは
増加してから減少
しているはずだから、$x$が$-\dfrac{b}{a}$と$0$の間に極大値がある。
この極大値が、$-\dfrac{b}{a}$と$0$の間での最大値だ。
以上より、問われている最大値のときの$x$は、
$\left|f(x)-g(x)\right|'=0$となる$x$のうち、
$-\dfrac{b}{a}$と$0$の間にあるもの
だ。
いまは $\left|f(x)-g(x)\right|'=0$ となる$x$ だけ求められればいい。
$\left|f(x)-g(x)\right|'=0$ となるのは $\left\{f(x)-g(x)\right\}'=0$ のときだ。
というわけで $\left|f(x)-g(x)\right|$の代わりに$f(x)-g(x)$を微分すると、
$$
\begin{align}
\{f(x)-g(x)\}'&=(ax^{3}+bx^{2})'\\
&=3ax^{2}+2bx\\
&=x(3ax+2b)
\end{align}
$$
これが$0$になる$x$は、
$x=-\dfrac{2b}{3a},0$
だ。
このうち、$x=0$は$-\dfrac{b}{a}$と$0$の間にないから不適。
求める$x$は
$x=-\dfrac{2b}{3a}$
である。
解答ト:-, ナ:2, ニ:b, ヌ:3, ネ:a