大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 試作問題 数学ⅠA 第4問 解説
(1)
$3$回中ちょうど$1$回当たるのは、
$1$回当たって
$2$回はずれる
場合なので、
箱Aでの確率は
$\dfrac{1}{2}\times\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}\times {}_{3}\mathrm{C}_{1}=\dfrac{3}{8}$
解答ア:3, イ:8
箱Bでの確率は
$\dfrac{1}{3}\times\left(\dfrac{2}{3}\right)^{2}\times {}_{3}\mathrm{C}_{1}=\dfrac{4}{9}$
解答ウ:4, エ:9
である。
次は期待値で、
解法1:数学Aの知識だけ使う方法
解法2:数学Bの二項分布を使う方法
の二通りの解き方が考えられる。
どちらの方法を使ってもらってもいいんだけど、解法1はちょっと作業が面倒かも。
数学Bの「統計的な推測」の単元が嫌いじゃなければ、解法2が圧倒的におすすめだ。
解法1:数学Aの知識だけ使う方法
箱Aから$3$回引いたとき、
$3$回当たる確率は、
$\left(\dfrac{1}{2}\right)^{3}=\dfrac{1}{8}$
$2$回当たる確率は、
$\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}\times\dfrac{1}{2}\times {}_{3}\mathrm{C}_{2}=\dfrac{3}{8}$
$1$回当たる確率は、
アイより $\dfrac{3}{8}$
全部はずれる確率は、
$\left(\dfrac{1}{2}\right)^{3}$
だ。
以上から確率分布表をかくと、表Aができる。
| 当たりくじを引く回数 | $3$ | $2$ | $1$ | $0$ | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 | $\dfrac{1}{8}$ | $\dfrac{3}{8}$ | $\dfrac{3}{8}$ | $\left(\dfrac{1}{2}\right)^{3}$ | $1$ |
表Aより、箱Aで当たりくじを引く回数の期待値は
$$
\begin{align}
& 3\times\dfrac{1}{8}+2\times\dfrac{3}{8}+1\times\dfrac{3}{8}+0\times\left(\dfrac{1}{2}\right)^{3}\\
&\qquad=\dfrac{3(1+2+1)}{8}\\
&\qquad=\dfrac{3}{2}
\end{align}
$$
である。
解答オ:3, カ:2
箱Bから$3$回引いたとき、
$3$回当たる確率は、
$\left(\dfrac{1}{3}\right)^{3}=\dfrac{1}{3^{3}}$
$2$回当たる確率は、
$$
\begin{align}
\left(\dfrac{1}{3}\right)^{2}\times\dfrac{2}{3}\times {}_{3}\mathrm{C}_{2}&=\dfrac{2\cdot 3}{3^{3}}\\
&=\dfrac{2}{9}
\end{align}
$$
$1$回当たる確率は、
ウエより $\dfrac{4}{9}$
全部はずれる確率は、
$\left(\dfrac{2}{3}\right)^{3}$
だ。
以上から確率分布表をかくと、表Bができる。
| 当たりくじを引く回数 | $3$ | $2$ | $1$ | $0$ | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 | $\dfrac{1}{3^{3}}$ | $\dfrac{2}{9}$ | $\dfrac{4}{9}$ | $\left(\dfrac{2}{3}\right)^{3}$ | $1$ |
表Bより、箱Bで当たりくじを引く回数の期待値は
$$
\begin{align}
& 3\times\dfrac{1}{3^{3}}+2\times\dfrac{2}{9}+1\times\dfrac{4}{9}+0\times\left(\dfrac{2}{3}\right)^{3}\\
&\qquad=\dfrac{1+4+4}{9}\\
&\qquad=1
\end{align}
$$
である。
解答キ:1
解法2:数学Bの二項分布を使う方法
まず、二項分布の復習から。
復習
確率$p$で事象$A$が起こる独立な試行を$n$回くり返す。
このとき、$A$が起こった回数を$X$とすると、確率変数$X$は 二項分布
$B(n,p)$
に従う。
このとき、
確率変数$X$の平均(期待値)$=np$式A
である。
なので、この問題の場合は以下のようになる。
箱Aについては、
確率$\dfrac{1}{2}$で事象(当たり)が起こる独立な試行を$3$回くり返す
から、事象(当たり)が起こる回数は、二項分布
$B\left(3,\dfrac{1}{2}\right)$
に従う。
よって、式Aより、当たりの回数の期待値(平均)は
$3\times\dfrac{1}{2}=\dfrac{3}{2}$
となる。
解答オ:3, カ:2
箱Bについては、
確率$\dfrac{1}{3}$で事象(当たり)が起こる独立な試行を$3$回くり返す
から、事象(当たり)が起こる回数は、二項分布
$B\left(3,\dfrac{1}{3}\right)$
に従う。
よって、式Aより、当たりの回数の期待値(平均)は
$3\times\dfrac{1}{3}=1$
となる。
解答キ:1
(2)
箱Aと箱Bをそれぞれ$\dfrac{1}{2}$の確率で選ぶとき、
箱Aで$3$回中$1$回当たる確率$P(A\cap W)$は
$\dfrac{1}{2}\times \dfrac{\fbox{ ア }}{\fbox{ イ }}$ なので、
$P(A\cap W)=\dfrac{1}{2}\times\dfrac{3}{8}$
箱Bで$3$回中$1$回当たる確率$P(B\cap W)$は
$\dfrac{1}{2}\times \dfrac{\fbox{ ウ }}{\fbox{ エ }}$ なので、
$P(B\cap W)=\dfrac{1}{2}\times\dfrac{4}{9}$
である。
これを表にすると、表Cができる。
| 当たりくじを引く回数 | |||
|---|---|---|---|
| $1$ | それ以外 | ||
| 太郎さんが 選んだ箱 | A | $\dfrac{1}{2}\times\dfrac{3}{8}$ | 省略 |
| B | $\dfrac{1}{2}\times\dfrac{4}{9}$ | 省略 | |
表Cの青で囲んだ字部分が事象$A$,緑の部分が事象$W$だ。
ここで、条件付き確率の復習をしておこう。
復習
条件付き確率$P_{X}(Y)$とは、事象$X$が起こる場合を全事象と考えたときの 事象$Y$が起こる確率のことである。
問題で問われているのは $W$が起こったとき$A$が起こる確率だから、表Cの緑の部分を全事象として、グレーの部分は存在しないものと考える。
このとき $A$が起こる確率は
$$
\begin{align}
\dfrac{\text{表Cの赤文字部分}}{\text{表Cの緑の部分}}&=\dfrac{\AKA{\cancel{\KURO{\dfrac{1}{2}}}}\times\dfrac{3}{8}}{\AKA{\cancel{\KURO{\dfrac{1}{2}}}}\times\dfrac{3}{8}+\AKA{\cancel{\KURO{\dfrac{1}{2}}}}\times\dfrac{4}{9}}
\end{align}
$$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{\dfrac{\text{表Cの赤文字部分}}{\text{表Cの緑の部分}}}&=\dfrac{\dfrac{3}{8}\times 8\cdot 9}{\left(\dfrac{3}{8}+\dfrac{4}{9}\right)\times 8\cdot 9}\\
&=\dfrac{3\cdot 9}{3\cdot 9+4\cdot 8}\\
\end{align}
$$
これが、求める条件付き確率$P_{W}A$だ。
解答ク:2, ケ:7, コ:5, サ:9
ちょっとややこしくなってきたから、いったん整理しよう。
それぞれの箱で当たる回数の期待値は、
箱Aは $\dfrac{\FB{オ}}{\FB{カ}}=\dfrac{3}{2}$式B
箱Bは $\FB{キ}=1$式C
いま、太郎さんが選んだ箱が
箱Aである確率は
$P_{W}(A)=\dfrac{27}{59}$式D
箱Bである確率は
$$
\begin{align}
\hspace{40px}P_{W}(B)&=1-P_{W}(A)\\
&=\dfrac{32}{59}\class{tex_formula}{式E}
\end{align}
$$
だった。
これを使って、(X),(Y) それぞれの場合で、花子さんがあたりくじを引く回数の期待値を求めよう。
(X) の場合
(X) の場合、花子さんがそれぞれの箱を選ぶ確率は 太郎さんと同じだ。
よって、花子さんが
箱Aから$3$回引いて$1$回当たる確率は
$P_{W}(A)\times P(A_{1})$
箱Bから$3$回引いて$1$回当たる確率は
$P_{W}(B)\times P(B_{1})$
となる。
解答シ:3
同様に考えると、花子さんがそれぞれの箱から当たりくじを引く回数の確率は、表Dのようになる。
| (X)の場合 | 当たりくじを引く回数 | |||
|---|---|---|---|---|
| $3$ | $\cdots$ | $0$ | ||
| 花子さんが 選んだ箱 | 箱A | $P_{W}(A)$ $\times$ $ P(A_{3})$ | $\cdots$ | $P_{W}(A)$ $\times$ $ P(A_{0})$ |
| 箱B | $P_{W}(B)$ $\times$ $ P(B_{3})$ | $\cdots$ | $P_{W}(B)$ $\times$ $ P(B_{0})$ | |
表Dより、(X)のときの期待値を$E(X)$とすると、
$$
\begin{align}
& E(X)=3\times P_{W}(A)\times P(A_{3})+\\
&\hspace{104px}\cdots+0\times P_{W}(A)\times P(A_{0})\\
&\hspace{80px}+3\times P_{W}(B)\times P(B_{3})+\\
&\hspace{140px}\cdots+0\times P_{W}(B)\times P(B_{0})\\
&\qquad=P_{W}(A)\{\AKA{3\cdot P(A_{3})+\cdots+0\cdot P(A_{0})}\}\\
&\hspace{50px}+P_{W}(B)\{\MIDORI{3\cdot P(B_{3})+\cdots +0\cdot P(B_{0})}\}
\end{align}
$$
とかける。
この式の
赤い部分は 箱Aで当たりが出る回数の期待値
緑の部分は 箱Bで当たりが出る回数の期待値
だ。
なので、この式はさらに
$E(X)=P_{W}(A)\times\dfrac{\fbox{ オ }}{\fbox{ カ }}+P_{W}(B)\times\fbox{ キ }$
と表せる。
解答ス:2, セ:3
これにそれぞれの値を代入すると、$E(X)$の値は
$$
\begin{align}
E(x)&=\dfrac{27}{59}\times\dfrac{3}{2}+\dfrac{32}{59}\times 1\\
&=\dfrac{81}{118}+\dfrac{64}{118}\\
&=\dfrac{145}{118}
\end{align}
$$
である。
(Y) の場合
(Y) についても同様に考える。
(Y) の場合、花子さんが
箱Aを選ぶのは 太郎さんが箱Bを選んだときなので、確率は $P_{W}(B)$
箱Bを選ぶのは 太郎さんが箱Aを選んだときなので、確率は $P_{W}(A)$
となる。
なので、このときの確率分布は表Eだ。
| (Y)の場合 | 当たりくじを引く回数 | |||
|---|---|---|---|---|
| $3$ | $\cdots$ | $0$ | ||
| 花子さんが 選んだ箱 | 箱A | $P_{W}(B)$ $\times$ $ P(A_{3})$ | $\cdots$ | $P_{W}(B)$ $\times$ $ P(A_{0})$ |
| 箱B | $P_{W}(A)$ $\times$ $ P(B_{3})$ | $\cdots$ | $P_{W}(A)$ $\times$ $ P(B_{0})$ | |
表Eをもとに (X) の場合と同様に考えると、このときの期待値 $E(Y)$ は
$$
\begin{align}
E(Y)&=P_{W}(B)\times\dfrac{\fbox{ オ }}{\fbox{ カ }}+P_{W}(A)\times\fbox{ キ }\\
&=\dfrac{32}{59}\times\dfrac{3}{2}+\dfrac{27}{59}\times 1\\
&=\dfrac{75}{59}
\end{align}
$$
となる。
解答ソ:7, タ:5, チ:5, ツ:9
以上より、
(X)のときの期待値$=\dfrac{145}{118}$
(Y)のときの期待値$=\dfrac{75}{59}=\dfrac{150}{118}$
である。
(Y)の方が期待値が大きいから、
花子さんは太郎さんが選んだ箱と異なる箱を選ぶ方がよい
ことが分かる。
解答テ:1