大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 試作問題 数学ⅡBC 第7問 [2] 解説
イウエ
複素数平面の問題は図で考えるのがおすすめだ。
けれど、この問題の前半は出題者が計算で解くことを想定しているようで、図で解くよりも計算で解いた方が早い。
なので、エまでは計算メインで説明する。
図で解く方法は別解に載せたけど、エについてはムリヤリ感があるかも。
また、以下の解説では、複素数$w$の
絶対値 $|w|$ を $r \quad$($0 \lt r$)
偏角 $\arg w$ を $\theta\quad$($ 0 \lt \theta \lt \pi$)
とかく。
$\mathrm{A}_{1}$と$\mathrm{A}_{n}$が重なるとき、つまり
$w=w^{n}$式A
であるときを考える。
$w=r(\cos\theta+i\sin\theta)$
と表すと、ド・モアブルの定理より、
$$
\begin{align}
w^{n}&=\{r(\cos\theta+i\sin\theta)\}^{n}\\
&=r^{n}(\cos n\theta+i\sin n\theta)
\end{align}
$$
とかける。
なので、式Aは
$r(\cos\theta+i\sin\theta)=r^{n}(\cos n\theta+i\sin n\theta)$
となるから
$r=r^{n}$
より
$r^{n}-r=0$
$r(r^{n-1}-1)=0$式B
であることが分かる。
ここで、$w\neq 0$ なので
$0 \lt r$
だから、式Bを満たす実数$r$は
$r=1$
しかない。
よって、
$|w|=1$
である。
解答イ:1
$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$は 点$\mathrm{A}_{k}\left(w^{k}\right)$ と点$\mathrm{A}_{k+1}\left(w^{k+1}\right)$ の距離なので、
$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}=\left|w^{k+1}-w^{k}\right|$
とかける。
これは
$$
\begin{align}
\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}&=\left|w^{k}(w-1)\right|\\
&=\left|w^{k}\right|\left|w-1\right|\\
&=\left|w\right|^{k}\left|w-1\right|\class{tex_formula}{式C}
\end{align}
$$
と変形できる。
ここで、イより $\left|w\right|=1$ なので、式Cは
$$
\begin{align}
\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}&=1^{k}\left|w-1\right|\\
&=\left|w-1\right|
\end{align}
$$
となる。
解答ウ:1
別解
図で考えると、次のようになる。
$\mathrm{A}_{1}$と$\mathrm{A}_{n}$が重なるとき、点$\mathrm{A}_{n-1}$(図Aの赤い点)は必ず点$1$になる。
詳しく
点$\mathrm{A}_{n}$を原点を中心に$-\theta$回転させると、点$\mathrm{A}_{n-1}$(赤い点)になる。
なので、点$\mathrm{A}_{n-1}$は実軸上の正の部分にあり、原点との距離は$r=1$だ。
よって、$\mathrm{A}_{n-1}$は必ず点$1$である。
これを図Aに書き込むと、図Bができる。
$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$はつねに一定だ。
詳しく
$1 \lt k \lt n-1$ のとき、
原点と点$\mathrm{A}_{k}$との距離はつねに$1$
$\angle \mathrm{A}_{k}\mathrm{OA}_{k+1}$はつねに$\theta$
だから、$\triangle \mathrm{OA}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$はすべて合同な二等辺三角形になる。
よって、$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$はつねに一定である。
$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}=$点$w$と点$1$の距離
より
$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}=\left|w-1\right|$
である。
解答ウ:1
$\angle \mathrm{A}_{k-1}\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$ は、線分$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$ と線分$\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k-1}$ のなす角なので、
$\angle \mathrm{A}_{k-1}\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}=\arg\dfrac{w^{k-1}-w^{k}}{w^{k+1}-w^{k}}$
とかける。
これを計算すると、
$$
\begin{align}
\angle \mathrm{A}_{k-1}\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}&=\arg\dfrac{w^{k-1}\left(1-w\right)}{w^{k}\left(w-1\right)}\\
&=\arg\left\{-\dfrac{w^{k-1}\left(w-1\right)}{w^{k}\left(w-1\right)}\right\}\\
&=\arg\left(-\dfrac{1}{w}\right)
\end{align}
$$
となる。
解答エ:3
別解
図で考えると、以下のようになる。
ちょっとムリヤリ感があるかも。
図Cの紫の角はすべて等しい。
詳しく
ウの別解の[詳しく]で説明したように、$\triangle \mathrm{OA}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$はすべて合同な二等辺三角形だ。
よって、図Cの紫の角はすべて等しい。
例えば$k=n-1$のときを考えると、問われている$\angle \mathrm{A}_{k-1}\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}$は図Cのオレンジの角で、紫の角2つ分にあたる。
ここで、三角形の内角の和は$\pi$なので、
$\theta+$紫の角2つ分$=\pi$
紫の角2つ分$=\pi-\theta$
より
$\angle \mathrm{A}_{k-1}\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}=\pi-\theta$
である。
ところが、この $\theta-\pi$ は解答群にない。
しかたかないから、もうちょっと考えよう。
偏角が $\pi-\theta$ で絶対値が $1$ の複素数が表す点は、図Cの赤い点だ。
これは、点$-1$ を原点を中心に$-\theta$ 回転した点である。
よって、その偏角は
$\arg\left(\dfrac{-1}{w}\right)$
とかけるから、
$\pi-\theta=\arg\left(\dfrac{-1}{w}\right)$
より
$\angle \mathrm{A}_{k-1}\mathrm{A}_{k}\mathrm{A}_{k+1}=\arg\left(-\dfrac{1}{w}\right)$
である。
解答エ:3
オ
次に、$\mathrm{A}_{1}$と$\mathrm{A}_{25}$が重なって正多角形をつくる場合を考える。
$\mathrm{A}_{1}$に重なる点が$\mathrm{A}_{25}$だと図が複雑になるので、問題文中の図4のように、$\mathrm{A}_{10}$が$\mathrm{A}_{1}$に重なる場合を例に解説する。
図中の赤い点は$\mathrm{A}_{1}=\mathrm{A}_{10}$,緑の角は$\theta$だ。
図のように、線分$\mathrm{A}_{1}\mathrm{A}_{2}$を①,線分$\mathrm{A}_{2}\mathrm{A}_{3}$を②,$\cdots$ とすると、点$\mathrm{A}_{1}$と$\mathrm{A}_{10}$を①~⑨の9本の線分でできた折れ線で結ぶことができる。
この折れ線が原点のまわりを
1周($ 2\pi$)するとき、図Dの左の図になる。
1周あたりの線分の数は
$\dfrac{9}{1}=9$
なので、正9角形ができる。
2周するとき、図Dの中央の図になる。
1周あたりの線分の数は
$\dfrac{9}{2}$
で整数にならないから、正多角形はできない。
3周するとき、図Dの右の図になる。
1周あたりの線分の数は
$\dfrac{9}{3}=3$
なので、正3角形ができる。
図のように、この正3角形の各辺は3周分($3$本)の線分が重なっている。
このことから、できる正多角形を$m$角形とすると、
$m$は$3$以上の$9$の約数
であることが分かる。
$m$が$3$以下の約数の場合、1角形とか2角形とかになってしまう。
また、図Dを見ると、正多角形ができるときは
緑の角の和 $=2\pi$
緑の角の数は辺の数$m$と等しい
だから、
$m\theta =2\pi$
$\theta=\dfrac{2\pi}{m}$式D
とかける。
いま、$\theta$の範囲は
$ 0 \lt \theta \lt \pi$
だけど、これに式Dを代入すると
$ 0 \lt \dfrac{2\pi}{m} \lt \pi$
より、$m$の範囲は
$2 \lt m$
となる。
以上より、
$\mathrm{A}_{1}$と$\mathrm{A}_{10}$が重なるとき、折れ線がつくる正多角形の数は $3$以上の$9$の約数の個数と等しい
ので、
$3$以上の$9$の約数の数だけ条件を満たす$w$が存在する
ことが分かる。
このことから、
$\mathrm{A}_{1}$と$\mathrm{A}_{25}$が重なるとき、$3$以上の$24$の約数の数だけ 条件を満たす$w$が存在する
と考えられる。
$3$以上の$24$の約数は
$3$,$4$,$6$,$8$,$12$,$24$
の6個ある。
したがって、条件を満たす$w$も6個ある。
解答オ:6
カ
最後に、点$\mathrm{A}_{1}$~$\mathrm{A}_{n}$がつくる正多角形の内接円(図Eの緑の円)の周上にある点$z$について問われている。
図Eの緑の円の中心は原点だ。
よって、原点と点$z$の距離はつねに等しいから、$\left|z\right|$ は一定である。
ということで、$\left|z\right|$ を求めよう。
点$z$ が図Eの位置にあるときの $\left|z\right|$ を考える。
点$z$ は点$\mathrm{A}_{1}(w)$ と点$\mathrm{A}_{n-1}(1)$ の中点なので、
$z=\dfrac{w+1}{2}$
とかける。
したがって、
$\left|z\right|=\left|\dfrac{w+1}{2}\right|$
と表せるので、解答群のうち正しいものは
⑥
である。
解答カ:6