大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 試作問題 数学ⅡBC 第7問 [1] 解説

解説

$a=2$,$b\geqq 0$,$c=-8$,$d=-4$,$f=0$
のときの方程式
$ax^{2}+by^{2}+cx+dy+f=0$

つまり
$2x^{2}+by^{2}-8x-4y=0\quad$($b\geqq 0$)
式A
について考える。


まず、2次曲線の式の復習をしておこう。

復習1

2次曲線の基本の式は
放物線:$p\neq 0$ として、
$y^{2}=4px$ $x^{2}=4py$
楕円:$a \gt 0$,$b \gt 0$ として、
$\dfrac{x^{2}}{a^{2}}+\dfrac{y^{2}}{b^{2}}=1\quad$($a=b$ のとき円)
双曲線:$a \gt 0$,$b \gt 0$ として、
$\dfrac{x^{2}}{a^{2}}-\dfrac{y^{2}}{b^{2}}=\pm 1$

だった。

これを平行移動した式についても復習しておく。

復習2

$xy$平面上の図形を
$x$ 軸方向に $p$
$y$ 軸方向に $q$

平行移動した図形の式は、もとの図形の式の
$x$ に $(x-p)$ を
$y$ に $(y-q)$ を

代入したものである。

よって、復習1の2次曲線の式を復習2のように平行移動した式は、$A$,$B$,$C$ を正の実数として

 ※ 放物線
$x=y$の2次式 $y=x$の2次式 式B
楕円
$\dfrac{(x-p)^{2}}{a^{2}}+\dfrac{(y-q)^{2}}{b^{2}}=1$
($a=b$ のとき円)式C
双曲線
$\dfrac{(x-p)^{2}}{a^{2}}-\dfrac{(y-q)^{2}}{b^{2}}=\pm 1$
$\qquad$式D
とかける。
式Aに $xy$ の項がないから、ここでは回転移動は考えない。


いま問われているのは式Aが表す図形の種類だ。
なので、式Aを変形して、式B,式C,式Dのどの形になるか考えよう。
その他の形になれば、そのとき考えることにする。

というわけで、式Aを変形する。
変形は具体的には平方完成だから、$b=0$ のときと $b \gt 0$ のときに場合分けしないといけない。。

$b=0$ のとき

式Aは
$2x^{2}-8x-4y=0$
より

$y=\dfrac{1}{4}\left(2x^{2}-8x\right)$
となるけど、これは※の式Bの形だから、放物線の方程式だ。

したがって、
コンピューターソフトの座標平面上に放物線が現れることがある。

$b \gt 0$ のとき

式Aは

途中式 $\begin{aligned} & 2\left(x^{2}-4x+4-4\right)\\ &\qquad+b\left\{y^{2}-\dfrac{4}{b}y+\left(\dfrac{2}{b}\right)^{2}-\left(\dfrac{2}{b}\right)^{2}\right\}=0 \end{aligned}$
$\begin{aligned} & 2\left(x-2\right)^{2}-2\cdot 4\\ &\qquad+b\left(y-\dfrac{2}{b}\right)^{2}-b\left(\dfrac{2}{b}\right)^{2}=0 \end{aligned}$
$\begin{aligned} & 2\left(x-2\right)^{2}+b\left(y-\dfrac{2}{b}\right)^{2}\\ &\hspace{60px}=2\cdot 4+b\left(\dfrac{2}{b}\right)^{2}\class{tex_formula}{式E} \end{aligned}$
と平方完成できる。

いま $b \gt 0$ なので、この式の右辺は正だ。

この右辺を $M$($M \gt 0$)とおくと、式Eは

途中式 $2\left(x-2\right)^{2}+b\left(y-\dfrac{2}{b}\right)^{2}=M$
$\dfrac{2\left(x-2\right)^{2}}{M}+\dfrac{b\left(y-\cfrac{2}{b}\right)^{2}}{M}=1$
$\dfrac{\left(x-2\right)^{2}}{\textcolor{red}{\cfrac{M}{2}}}+\dfrac{\left(y-\cfrac{2}{b}\right)^{2}}{\textcolor{red}{\cfrac{M}{b}}}=1\class{tex_formula}{式F}$
と変形できる。

この式の赤い部分は正だから、式Cの形だ。

よって、 式Fの赤い部分が等しいとき、つまり
$b=2$
のとき、式Aは円の方程式
それ以外、つまり
$0 \lt b \lt 2$,$2 \lt b$
のとき、式Aは円以外の楕円の方程式
になるので、
コンピューターソフトの座標平面上に楕円と円が現れることがある。

$b\geqq 0$ の範囲で これ以外の場合はないので、他の図形は現れない。


以上より、$b$ が $b\geqq 0$ の範囲で変化するとき、コンピューターソフトの座標平面上に現れる図形は
放物線 楕円 だけであることが分かる。

したがって、の解答群のうち正しいものは

である。

解答ア:2

アドバイス

2次曲線の形の見分け方に

復習3

$ax^{2}+bxy+cy^{2}+dx+ey+f=0$
2次曲線の式であるとき
$D=b^{2}-4ac$
とおくと、グラフの形は
$D \lt 0 \Leftrightarrow$ 楕円
($b=0$ かつ $a=c$ のとき円)

$D=0 \Leftrightarrow$ 放物線
$0 \lt D \Leftrightarrow$ 双曲線

っていうのがあった。

いまは
$2x^{2}+by^{2}-8x-4y=0\quad$($b\geqq 0$)
を考えているので、
$D=0^{2}-4\cdot 2\cdot b=-8b$
だから、復習より

$D=0$ つまり $b=0$ のとき、放物線 $D \lt 0$ つまり $b \gt 0$ のとき、楕円
特に $b=2$ のとき、円

となって、解答群のうち正しいものは②
って簡単に解けるじゃん。何でこの方法を使わないの?
という疑問を持つ人もいると思う。

確かに正解は求められたけど、偶然そういう問題だったからで、いつもうまくゆくとは限らない。

注意しなければいけないのは、復習3の
2次曲線の式であるとき
の部分だ。
2次曲線の式じゃないときには、復習3の方法は使えない。
なので、その確認をしないといけない。

この問題の場合には、上の解説のように、式Aは
$b=0$ のとき、式Bの形に
$b \gt 0$ のとき、平方完成すると式Cの形に

変形できるから、$b \geqq 0$ の範囲で2次曲線の式だ。
けれど、それを確認する作業だけで問題が解けてしまう。

そのほか、例えば
$D=0$ かつ{$2ae-bd\neq 0$ または($b=0$ かつ $a$,$c$ の一方が $0$)}のとき、グラフは2次曲線の放物線 みたいな見分け方もある。
$b\neq 0$ のときには便利だけれど、共通テストで出題される可能性は低い。
この複雑な条件を憶えるよりも、平方完成して解いた方がいい。