大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 追試 数学ⅡB 第2問 解説
(1)
$f(x)=x^{3}-3x^{2}+6$
を微分すると
$f'(x)=3x^{2}-6x$
となる。
解答ア:3, イ:6
この $f'(x)$ はさらに
$f'(x)=3x(x-2)$式A
と因数分解できるから、$f'(x)$ が $0$ になるのは、
$x=0$,$2$式B
のとき。
また、$f(x)$ は三次関数で、$x^{3}$の係数は正だ。
ここで、三次関数のグラフの概形の復習をしておくと、
復習
三次関数のグラフは、
$x^{3}$の係数が正のとき、全体として右上がりの、上図のような形 $x^{3}$の係数が負のとき、全体として右下がりの、下図のような形
である。
なので、$y=f(x)$ のグラフは全体として右上がりで、$x=0$ と $x=2$ の2か所で水平になる、図Aのような形をしている。
よって、$f(x)$ は、
$x=0$ のとき、極大値
$f(0)=6$
をとり、
解答ウ:0, エ:6
$x=2$ のとき、極小値
$$
\begin{align}
f(2)&=2^{3}-3\cdot 2^{2}+6\\
&=2
\end{align}
$$
をとる
解答オ:2, カ:2
ことが分かる。
別解
増減表で考えると、次のようになる。
式Aより、導関数 $f'(x)$ のグラフを描くと 図Bができる。
図Bより
$x=0$,$2$ のとき $f'(x)=0$
$x \lt 0$,$2 \lt x$ のとき $0 \lt f'(x)$
$0 \lt x \lt 2$ のとき $f'(x) \lt 0$
なので、$f(x)$の増減表を書くと表Cのようになる。
$x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ |
$f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$f(x)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ |
計算だけで増減表をつくる別解
$f'(x)$ のグラフを考えずに、計算だけで増減表を書くと 次のようになる。
式Bより、$x=0$,$2$ のとき $f'(x)=0$
$x \lt 0$ である数、例えば $x=-1$ を式Aに代入すると、
$f'(-1)=3(-1)(-1-2) \gt 0$
$0 \lt x \lt 2$ である数、例えば $x=1$ を式Aに代入すると、
$f'(1)=3\cdot 1(1-2) \lt 0$
$2 \lt x$ である数、例えば $x=3$ を式Aに代入すると、
$f'(3)=3\cdot 3(3-2) \gt 0$
以上より、$f(x)$の増減表を書くと表Cができる。
表Cより、$f(x)$ は、
$x=0$ のとき、極大値
$f(0)=6$
をとり、
解答ウ:0, エ:6
$x=2$ のとき、極小値
$$
\begin{align}
f(2)&=2^{3}-3\cdot 2^{2}+6\\
&=2
\end{align}
$$
をとる
解答オ:2, カ:2
ことが分かる。
次は、$x$の定義域が与えられたときの、$f(x)$ の最大最小の問題だ。
図Aに、$x$の定義域
$3\leqq x\leqq 5$ を青い範囲
$1\leqq x\leqq 3$ を黄色い範囲
として書き込むと、図Dができる。
$3\leqq x\leqq 5$ のとき、図Dより、$f(x)$ が
最大値をとるのは、$x=5$ のとき
解答キ:5
最小値をとるのは、$x=3$ のとき
解答ク:3
である。
また、$1\leqq x\leqq 3$ のとき
$f(x)$ の最大値は $f(1)$ と $f(3)$ の大きい方だけど、
$$ \begin{align} f(3)&=3^{3}-3\cdot 3^{2}+6\\ &=6 \end{align} $$
図Dより $f(1) \lt f(0)$ で、
ウより $f(0)=6$ なので、
$f(1) \lt 6$
だから、
$f(1) \lt f(3)$
だ。
したがって、$f(x)$ は $x=3$ で最大値をとる。
解答ケ:3
図Dより、最小値は $x=2$ のときである。
解答コ:2
(2)
さらに、$x$の定義域が $t\leqq x\leqq t+1$ のときを考える。
$M(t)=f(t+1)$ かつ $m(t)=f(t)$ となるのは、
定義域の右端で最大値
定義域の左端で最小値
をとる場合だ。
これは、図E~図Gの3パターン考えられる。
図Eになるのは、定義域の右端が $y$ 軸よりも左のとき( $y$ 軸と重なるときを含む)なので、
$t+1\leqq 0$
より
$t\leqq-1$
のとき。
解答サ:-, シ:1
図Fについては、図中に示したように、
極大値と極小値のときの$x$の差は$2$
定義域の幅は$1$
なので、矛盾がある。
つまり、この図のようになる場合はない。
図Gになるのは、定義域の左端が $x=2$ よりも右のとき( $x=2$ と重なるときを含む)なので、
$2\leqq t$
のとき。
解答ス:2
また、$M(t)=f(t)$ かつ $m(t)=f(t+1)$ となるのは、
定義域の左端で最大値
定義域の右端で最小値
をとる場合なので、図Hの1パターンしかない。
これは
定義域の左端が $y$ 軸よりも右
( $y$ 軸と重なるときを含む)
定義域の右端が $x=2$ よりも左
( $x=2$ と重なるときを含む)
のときなので、
$\left\{\begin{array}{l}
0\leqq t\\
t+1\leqq 2
\end{array}\right.$
より
$0\leqq t\leqq 1$
のときである。
解答セ:0, ソ:1
このとき、$M(t)-m(t)$ は
$M(t)-m(t)=f(t)-f(t+1)$式C
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{M(t)-m(t)}&=(t^{3}-3t^{2}+6)\\
&\hspace{40px}-\{(t+1)^{3}-3(t+1)^{2}+6\}\\
&=(t^{3}-3t^{2}+6)\\
&\hspace{40px}-\left\{\begin{split}(&t^{3}+3t^{2}+3t+1)\\&-3(t^{2}+2t+1)+6\end{split}\right\}\\
&=t^{3}-3t^{2}+6-t^{3}-3t^{2}-3t-1\\
&\hspace{40px}+3t^{2}+6t+3-6
\end{align}
$$
とかける。
このグラフは上に凸の放物線で、頂点の $t$ 座標は
$\dfrac{-3}{2\cdot(-3)}=\dfrac{1}{2}$
だ。
詳しく
復習
二次関数
$y=ax^{2}+bx+c$
の頂点の$x$座標は
$\dfrac{-b}{2a}$
である。
復習より、式Dのグラフの頂点の $t$ 座標は
$\dfrac{-3}{2\cdot(-3)}=\dfrac{1}{2}$
である。
したがって、$M(t)-m(t)$ のグラフは図Iのようになる。
図Iの緑の範囲が定義域だ。
図Iより、
$t=\dfrac{1}{2}$
のとき、$M(t)-m(t)$ は最大値をとることが分かる。
解答タ:1, チ:2
(3)
ここからは面積についての問題だ。
問題文は長くてややこしいけど、要するに 問題文中の図1の図形の面積を問われている。
問題文中の図1に、少し描きたして図Jをつくった。
問題文より、図Jの赤い線は $y=f(x)$ のグラフの $0\leqq x\leqq 1$ の部分だから、赤い点の$x$座標は$1$だ。
なので、緑の直線は$x$軸に垂直である。
したがって、灰色部分の面積を求めるには、$f(x)$ を $0$ から $1$ まで定積分すればよい。
よって、求める灰色部分の面積は、
$\text{灰色}=\displaystyle \int_{0}^{1}f(x)\,dx$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{\text{灰色}}&=\int_{0}^{1}(x^{3}-3x^{2}+6)dx\\
&=\left[\dfrac{x^{4}}{4}-\dfrac{3x^{3}}{3}+6x\right]_{0}^{1}\\
&=\dfrac{1}{4}-1+6
\end{align}
$$
となる。
解答ツ:2, テ:1, ト:4
(4)
今回も問題文はややこしいけれど、要するに $S$ は
$y=f(x)$
$y=g(x)$
直線$x=r$
直線$x=r+1$
の4つの図形に囲まれた部分の面積だ。(図K)
(i)
ここで、$f(x)-g(x)$ を計算すると、
$$
\begin{align}
f(x)-g(x)&=(x^{3}-3x^{2}+6)\\
&\hspace{40px}-(x^{3}-6x^{2}+6x+2)\\
&=3x^{2}-6x+4\class{tex_formula}{式E}
\end{align}
$$
となる。
式Eの
グラフは下に凸の放物線
判別式$D$は $D=6^{2}-4\cdot 3\cdot 4 \lt 0$
だ。
よって、式E、つまり $f(x)-g(x)$ はつねに正である。
解答ナ:0
つまり、$y=f(x)$ のグラフはつねに $y=g(x)$ のグラフより上にある。
以上より、面積$S$は
$S=\displaystyle \int_{r}^{r+1}\{f(x)-g(x)\}\,dx$式F
と表せる。
解答ニ:4
(ii)
問題文より、式Fを計算すると
$S=\textcolor{red}{f(r+1)-f(r)}+4$式G
になるらしい。
式Gの赤い部分は、どこかで見たような気がする。
思い出してみると、(2)で計算した
$M(t)-m(t)=f(t)-f(t+1)$式C
の右辺が似た形だ。
というわけで、(2)の式Cの前後の作業を振り返ってみると、
$0\leqq t\leqq 1$ のとき、式Cのグラフは図I
だった。
このことから、$0\leqq r\leqq 1$ のとき、
$f(r)-f(r+1)=h(r)$
とおくと、
$y=h(r)$ のグラフは図I
式Gの赤い部分は$-h(r)$ なので、
$S=-h(r)+4$式H
になるといえる。
したがって、式Hのグラフは、図Iを
$x$軸に関して対称移動して
(上下をひっくり返して)
$y$軸方向に$4$平行移動
したものだから、図Lのような形だ。
図Lより、$r$が$0$から$1$まで変化するとき、$S$の値は
$r=\dfrac{1}{2}$までは減少して、
その後増加する
ことが分かる。
解答ヌ:3
別解
計算が面倒なのでおすすめじゃないけど、式Gをそのまま計算すると次のようになる。
式Gを計算すると
$S=f(r+1)-f(r)+4$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{S}&=\{(r+1)^{3}-3(r+1)^{2}+6\}\\
&\hspace{40px}-(r^{3}-3r^{2}+6)+4\\
&=\{(r^{3}+3r^{2}+3r+1)-3(r^{2}+2r+1)+6\}\\
&\hspace{40px}-(r^{3}-3r^{2}+6)+4\\
&=r^{3}+3r^{2}+3r+1-3r^{2}-6r-3+6\\
&\hspace{40px}-r^{3}+3r^{2}-6+4
\end{align}
$$
とかける。
このグラフは下に凸の放物線で、頂点の $r$ 座標は
$\dfrac{3}{2\cdot 3}=\dfrac{1}{2}$
だから、図Lのような形だ。
図Lより、$S$の値は、$r$が$0$から$1$まで変化するとき
$r=\dfrac{1}{2}$までは減少して、
その後増加する
ことが分かる。
解答ヌ:3