大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 本試 数学ⅡBC 第3問 解説

(1)

$F(x)=2x^{3}+3x^{2}$
を微分したものが$f(x)$なので、
$f(x)=6x^{2}+6x$
である。

解答ア:6, イ:6

これは
$f(x)=6x(x+1)$
と因数分解できるから、
$x=-1,\ 0$ のときに
$f(x)=0$ となって、$F(x)$は極値をとる ことが分かる。

このうち、
$x=0$
で $F(x)$ は極小値をとることが分かっているので、極大値は
$x=-1$
のときだ。

解答ウ:-, エ:1


ここで、積分定数について復習しておこう。

復習

積分は微分の逆で、導関数から微分前の関数を求めることだった。
これを図にすると、図Aのようになる。

図A
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第3問 復習図A

けれど、ここで問題が出てくる。
図Aで$F(x)$を微分して$f(x)$を計算するとき、定数項は消えてしまう。
この$f(x)$を積分して$F(x)$を求めても、定数項は戻ってこない。
仕方がないから、消えてしまった定数項の代わりに積分定数をつけるんだった。

復習より、
定数項(積分定数)の値を変えることで、ひとつの$f(x)$から原始関数は無限に作れる。

逆にいうと

ポイント

ひとつの$f(x)$からつくった原始関数は、定数項以外すべて等しい。

このことを知っていれば、すぐに
$G(x)=F(x)+$定数
であることが分かる。

これに$F(x)$の式を代入して 定数項を$C$とおくと
$G(x)=2x^{3}+3x^{2}+C$式A
と表せる。

解答オ:2, カ:3

別解

おすすめじゃないけど、計算で解くと次のようになる。

復習

$\displaystyle f(x)=\int f'(x)\,dx$

いま
$\left\{\begin{array}{l} G'(x)=f(x)\\ \FB{ア}\FB{イ} \text{より} f(x)=6x^{2}+6x \end{array}\right.$
なので、復習より
$$ \begin{align} G(x)&=\int f(x)\,dx\\ &=\int (6x^{2}+6x)\,dx \end{align} $$ とかける。

これを計算すると、$C$を積分定数として
$G(x)=2x^{3}+3x^{2}+C$式A
と表せる。

解答オ:2, カ:3


したがって、
$y=G(x)$
のグラフは
$y=F(x)$
のグラフを$y$軸方向に平行移動したものだ。

よって、
$F(x)$が$x=0$で極小値をとるなら、
$G(x)$も$x=0$で極小値をとる。

解答キ:0

また、ウエより、$F(x)$は$x=-1$で極大値をとるから、$G(x)$も$x=-1$で極大値をとる。

この極大値が$0$なので、$y=G(x)$のグラフは
$(-1,\ 0)$
を通ることが分かる。

これを式Aに代入すると、
$2(-1)^{3}+3(-1)^{2}+C=0$
より
$-2+3+C=0$
$C=-1$
が求められる。

解答ク:-, ケ:1

(2)

(i)

$0 \lt k$ のときを考える。

$f(x)$が2次関数なので、$F(x),\ G(x)$は3次関数だ。

また、(1)で考えたように、$y=G(x)$ のグラフは $y=F(x)$ のグラフを$y$軸方向に平行移動したものだから、

$x=0$で $F(x),\ G(x)$ は 極小値をとり、
$F(x)$ の極小値は$0$
$x=k$で $F(x),\ G(x)$ は 極大値をとり、
$G(x)$ の極大値は$0$
である。

以上より、$0 \lt k$ のとき、$y=F(x)$ と$y=G(x)$ のグラフは図Bのようになる。

図B
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第3問 解説図B

一方、$F(x),\ G(x)$ が $x=0,\ k$ で極値をとるから、$f(x)$は
$\left\{\begin{array}{l} f(0)=0\\ f(k)=0 \end{array}\right.$
である2次関数だ。

解答コ:0, シ:0

さらに、図Bを見ると、$F(x),\ G(x)$ は $0 \lt x \lt k$ で増加しているので、
$0 \lt x \lt k$ で $0 \lt f(x)$ である。

よって、$y=f(x)$ のグラフは図Cのようになる。

図C
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第3問 解説図C

図Cより、$f(x)$は

$x=0$の左では$-$,右では$+$

解答サ:0

$x=k$の左では$+$,右では$-$

解答ス:1

である。

また、図Bより、$y=F(x)$のグラフの概形は、選択肢の

が適当だ。

解答セ:3

別解

できるだけグラフで考えることがおすすめなんだけど、あえてグラフを使わずに解くと次のようになる。

$F(x)$が$x=0$で極値をとるので、
$f(0)=0$ である。

解答コ:0

また、$F(x)$は$x=0$で極小値をとるから
$x=0$の左では減少,右では増加 する。

よって、$f(x)$の符号は
$x=0$の左では-,右では$+$ だ。

解答サ:0

さらに、$G(x)$が$x=k$で極値をとるので、
$f(k)=0$ である。

解答シ:0

また、$G(x)$は$x=k$で極大値をとるから
$x=k$の左では増加,右では減少 する。

よって、$f(x)$の符号は
$x=k$の左では$+$,右では- だ。

解答ス:1

以上より、$f(x)$の値は表Cのようになる。

表C
$x$ $\cdots$ $0$ $\cdots$ $k$ $\cdots$
$f(x)$$-$ $0$ $+$ $0$$-$

表Cをもとに$F(x)$の増減表を書くと、表Dができる。

表D
$x$ $\cdots$ $0$ $\cdots$ $k$ $\cdots$
$f(x)$$-$ $0$ $+$ $0$$-$
$F(x)$ $\searrow$極小値$0$ $\nearrow$極大値$\searrow$

表Dにあてはまるのは、選択肢の

しかない。

解答セ:3

(ii)

$\displaystyle F(x)=\int_{\FB{タ}}^{\FB{ソ}}f(t)\,dt$
を計算すると
$$ \begin{align} F(x)&=\Bigl[F(t)\Bigr]_{\FB{タ}}^{\FB{ソ}}\\ &=F(\FB{ソ})-F({\FB{タ}})\TF{式B} \end{align} $$ とかける。

一方、解答群の4つの選択肢を$F(x)$に代入すると
$F(0)=0$
$F(1)$は値が分からない
$F(k)$は極大値だけど、値が分からない
$F(x)$

だ。

なので、式Bが成り立つ組合せは
$\left\{\begin{array}{l} \FB{ソ}\text{が} x\\ \FB{タ}\text{が} 0 \end{array}\right.$
しかない。

解答ソ:3, タ:0


したがって、$F(x)$は
$F(x)=\displaystyle \int_{0}^{x}f(t)\,dt$
と表せる。

よって、$x=k$のとき$F(x)$が極大値をとることは
$F(x)$の極大値$=\displaystyle\int_{0}^{k}f(t)\,dt$
とかける。

解答チ:2, ツ:0

(i)で考えたように、$y=f(x)$のグラフは図Cだった。
図Cにすこし描きたしたものを図Dとして もう一度載せておく。

図D
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第3問 解説図D

$\displaystyle\int_{0}^{k}f(t)\,dt$ は、図Dの緑の部分の面積にあたる。
つまり、$F(x)$の極大値は
$\left\{\begin{array}{l}
y=f(x)\\
x\text{軸}
\end{array}\right.$
に囲まれた部分の面積と等しい。

解答テ:0, ト:0


また、$y=F(x)$と$y=G(x)$のグラフは図Bだった。
これにすこし描きたしたものを図Eとして もう一度載せておく。

図E
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第3問 解説図E

(i)で考えたように
$y=G(x)$のグラフは$y=F(x)$のグラフを$y$軸方向に平行移動したもの なので、図Bの2本の緑の線分の長さは等しい。
したがって、
$F(x)$の極大値は、$G(x)$の極小値の$-1$倍 である。

解答ナ:2