大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 本試 数学ⅡBC 第4問 解説

(1)

この解説では、図形の内部にある格子点を
●
とかく。


問題中の図1にちょっと描きたして、図Aをつくった。

図A
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第4問 解説図A

図Aを見ると、$S$の内部にある格子点の数は$6$個で、そのうちわけは
直線 $x=1$ 上に$3$個 直線 $x=2$ 上に$2$個 直線 $x=3$ 上に$1$個 だ。

つまり、
$x$ が$1$増えると、●の数は$1$減っている。

こうなる理由は図Aを見れば一目瞭然なんだけど、念のためにちょっと確認しておく。

図Aのように、直線 $y=-x+5$ 上にある格子点を◎とする。
このとき、$y=-x+5$ の傾きは$-1$なので、$x$が$1$増えると◎の$y$座標は$1$減る。
したがって、●の数は$1$減る。


上のように考えると、直線の式が $y=3x$ の場合、傾きが$3$なので
$x$が$1$増えると●の数は$3$増える。

よって、

$$ \begin{align} a_{2}&=a_{1}+3\\ &=2+3\\ &=5 \end{align} $$

解答ア:5

$$ \begin{align} a_{3}&=a_{2}+3\\ &=5+3\\ &=8 \end{align} $$

解答イ:8

である。

別解

図B
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第4問 解説図B

図形$T$で、$x=3$までの格子点を図にすると、図Bができる。

図Bより、

$a_{2}=5$

解答ア:5

$a_{3}=8$

解答イ:8

である。

また、$n$が$1$増えると$a_{n}$は$3$増えるから、$\{a_{n}\}$は公差が$3$の等差数列だ。

解答ウ:0, エ:3, オ:0

さらに、$\{a_{n}\}$の初項$a_{1}$は
$a_{1}=2$
だから、一般項$a_{n}$は
$$ \begin{align} a_{n}&=2+3(n-1)\\ &=3n-1\class{tex_formula}{式A} \end{align} $$ とかける。

$T$の●の数は、この数列の$a_{1}$~$a_{20}$までの和にあたる。
よって、●は、等差数列の和の公式より
$$ \begin{align} \dfrac{1}{2}\cdot 20(a_{1}+a_{20})&=\dfrac{1}{2}\cdot 20(2+3\cdot 20-1)\\ &=10\cdot 61\\ &=610 \end{align} $$ 個ある。

解答カ:6, キ:1, ク:0

(2)

図C
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅡBC 第4問 解説図C

図形$U$で、$x=3$までの格子点を図にすると、図Cができる。

図Cのように、$y=2^{x}$ 上にある格子点を◎とする。

$x=k$ 上にある●◎について考えると、
●◎の数の合計 $=$ ◎の$y$座標 なので、 ●◎の数の合計 $=2^{k}$ であることが分かる。

また、$x=k$上にある◎の個数は
つねに$1$個
だ。

よって、
(直線$x=k$上にある●の数)$+1=2^{k}$
より
(直線$x=k$上にある●の数)$=2^{k}-1$ 式B
とかける。

解答ケ:7

別解

図Cより、●◎を合わせた数は
直線$x=1$上に$2=2^{1}$個 直線$x=2$上に$4=2^{2}$個 直線$x=3$上に$8=2^{3}$個 ある。

したがって、$x=k$上にある●◎を合わせた数は
$2^{k}$個
ある。

また、$x=k$上にある◎の個数は
つねに$1$個
だ。

よって、$x=k$上にある●の個数は
$2^{k}-1$式B
とかける。

解答ケ:7

以上より、$U$における●の個数は、
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\left(2^{k}-1\right)$
と表せる。

解答コ:1

あとはこれを計算して、求める●の個数は
$$ \begin{align} \sum_{k=1}^{n}\left(2^{k}-1\right)&=\sum_{k=1}^{n}2^{k}-\sum_{k=1}^{n}1\\ &=\dfrac{2(1-2^{n})}{1-2}-n\\ &=2(2^{n}-1)-n\\ &=2^{n+1}-n-2 \end{align} $$ 個となる。

解答サ:7

(3)

アドバイス

突然 あんまり見たことがないような問題が出てきた。
びっくりするかも知れないけれど、大丈夫。
鉄則は「分からなくなったら上を見る」だ。
というわけで、(1)(2)の作業を振り返ることからはじめよう。

(1)での作業を振り返ると、
関数が$y=\textcolor{red}{3x}$のとき、
$x=n$上の●の個数は、式Aの
$\qquad\textcolor{red}{3n}-1$
だった。

(2)での作業を振り返ると、
関数が$y=\textcolor{red}{2^{x}}$のとき、
$x=k$上の●の個数は、式Bの
$\qquad\textcolor{red}{2^{k}}-1$
だった。

つまり、(1)(2)では、
関数が$y=\textcolor{red}{f(x)}$のとき、
$x=k$上の●の個数は
$\qquad\textcolor{red}{f(k)}-1$
になった。

考えてみると、これは偶然じゃない。
(2)の解説のくり返しになるけど、この部分がこの問題のポイントだから、もう一度 言い方を変えて説明する。

(1)(2)の関数は
$\left\{\begin{array}{l}
0 \lt x\text{の範囲で}0 \lt y\\
x\text{が整数であれば}y\text{も整数}
\end{array}\right.$※※
なので、$k$が正の整数のとき、$y=f(x)$と$x=k$は$x$軸より上の格子点で交わる。
これまでと同様に、この格子点を◎とする。

このとき、直線$x=k$上の◎の座標は
$(k,f(k))$
である。

よって、直線$x=k$上にある●それぞれの座標は
$(k,1)$,$(k,2)$,$(k,3)$,$\cdots$,$(k,f(k)-1)$
となるから、●は$f(k)-1$個ある。

したがって、※※のとき、※は必ず成り立つ。


ここで、$y=\color{red}{ax^{2}+bx+c}$ は
$\left\{\begin{array}{l} a \gt 0\\ b^{2}-4ac \lt 0 \end{array}\right.$
なので、※※にあてはまる。

ということは、(3)でも※が成り立つから、図形$V$について
$x=k$上の●の個数は
$\qquad\textcolor{red}{ak^{2}+bk+c}-1$
だ。

よって、図形$V$の●の個数は
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(ak^{2}+bk+c-1)$
とかける。

これが$n^{3}$になればよいので、$n$についての恒等式
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(ak^{2}+bk+c-1)=n^{3}$式C
を解けば $a$,$b$,$c$ の値が求められる。


ということで、あとは計算だ。

式Cより

途中式

$\displaystyle a\sum_{k=1}^{n}k^{2}+b\sum_{k=1}^{n}k+\sum_{k=1}^{n}(c-1)=n^{3}$
$\begin{aligned}a\cdot\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+b&\cdot\dfrac{1}{2}n(n+1)\\&+(c-1)n=n^{3}\end{aligned}$

両辺に$6$をかけて、
$\begin{aligned}an(n+1)(2n+1)+3bn(n+1)+& 6(c-1)n\\&=6n^{3}\end{aligned}$

$n\neq 0$なので、両辺を$n$で割って、
$\begin{aligned}a(n+1)(2n+1)+3b(n+1)+6&(c-1)\\&=6n^{2}\end{aligned}$

しかたがないから展開すると、
$2an^{2}+3an+a+3bn+3b+6c-6=6n^{2}$

$2an^{2}+3(a+b)n+a+3b+6c-6=6n^{2}$

これが$n$についての恒等式なので、
$2a=6$式D $3(a+b)=0$式E $a+3b+6c-6=0$式F だ。

式Dより、
$a=3$

解答シ:3

これを式Eに代入して、
$3+b=0$
$b=-3$

解答ス:-, セ:3

以上を式Fに代入して、
$3+3(-3)+6c-6=0$
$1-3+2c-2=0$
$2c=4$
$c=2$

解答ソ:2

である。