大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 本試 数学ⅡBC 第5問 解説
(1)
まず、レモンのサイズがLになる確率から。
レモンの重さ(確率変数$X$)は正規分布
$N(110,20^{2})$
に従う。
なので、サイズがLになる確率は、図Aの赤い部分の面積にあたる。
この面積を正規分布表で求めるんだけど、
図Aの正規分布は、$N(110,20^{2})$
正規分布表に載っているのは、$N(0,1)$
だから、そのままでは比較できない。
そのため、図Aを標準化して$N(0,1)$にそろえよう。
標準化の計算を思い出すと、
復習
もとの確率変数を$X$とし、$X$の
平均値が$m$
標準偏差が$\sigma$
のとき、$X$を標準化した確率変数は
$\dfrac{X-m}{\sigma}$
だった。
図Aの
$110$は$X$の平均値なので、
計算するまでもなく 標準化すると$0$
$140$を標準化すると、復習より
$\dfrac{140-110}{20}=1.5$
になるから、標準化したものは図Bだ。
正規分布表で$z_{0}=1.50$をさがすと、赤い部分の面積、つまり求める確率は、
$0.4332$
であることが分かる。
解答ア:4, イ:3, ウ:3, エ:2
なので、
$20$万個のレモンの中のLサイズの個数$Y$
は
試行を$20$万回行ったとき、確率$0.4332$で起こる事象が起こった回数$Y$
と言いかえられる。
よって、確率変数$Y$は 二項分布
$B(200000,0.4332)$
に従う。
ここで、二項分布について復習しておくと、
復習
確率変数$Y$が二項分布$B(n,p)$に従うとき、
$Y$の
平均$E(Y)=np$
分散$V(Y)=np(1-p)$
標準偏差$\sigma(Y)=\sqrt{V(Y)}=\sqrt{np(1-p)}$
だった。
復習より、$Y$の平均は
$200000\times 0.4332=86640$
である。
解答オ:4
(2)
次は、母平均の推定だ。
標本平均の復習から始めよう。
復習
平均$m$,分散$\sigma^{2}$の母集団から大きさ$n$の標本を取り出す。
このとき、標本平均は
母集団が正規分布に従うときには、$n$の値にかかわらず完全に
母集団がその他の確率分布に従うときには、$n$が大きければ近似的に
正規分布
$N\left(m,\dfrac{\sigma^{2}}{n}\right)$
に従う。
復習より、確率変数$W$の平均$\overline{W}$は、近似的に
$N\left(m,\dfrac{\sigma^{2}}{n}\right)$
に従う。
解答カ:6
さらに、母平均の推定についての復習だ。
これには公式があった。
公式
母標準偏差を$\sigma$,標本平均を$\overline{W}$,標本の大きさを$n$とすると、母平均$m$の信頼区間を求める式は
$\overline{W}-z\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq\overline{W}+z\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}$
ただし、信頼区間が$c$%のとき、$z$は 図Cの$z_{0}$の値。
特に
信頼度$95$%のとき、$z=1.96$
信頼度$99$%のとき、$z=2.56$
である。
公式より、母平均$m$に対する信頼度$95$%の信頼区間は
$\overline{W}-1.96\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq\overline{W}+1.96\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}$
とかける。
なので、信頼区間の幅は
$$
\begin{align}
&\left(\overline{W}+1.96\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\right)-\left(\overline{W}-1.96\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\right)\\
&\qquad=1.96\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\times 2\\
&\qquad=\dfrac{3.92\sigma}{\sqrt{n}}\class{tex_formula}{式A}
\end{align}
$$
と表せる。
解答キ:5
この信頼区間の幅が$4$g以下になるのは
$\dfrac{3.92\sigma}{\sqrt{n}}\leqq 4$①
のとき。
これを解く。
問題文の指示に従って ①式の両辺を2乗すると
$\dfrac{(3.92\sigma)^{2}}{n}\leqq 16$
$(3.92\sigma)^{2}\leqq 16n$
となる。
この式は、母標準偏差$\sigma$を$20$とすると
途中式
$(3.92\cdot 20)^{2}\leqq 4^{2}n$
$3.92$は式Aで$1.96\times 2$を計算した結果なので
$(1.96\cdot 2\cdot 20)^{2}\leqq 4^{2}n$
両辺を$4^{2}$で割ると、
$(1.96\cdot 10)^{2}\leqq n$
$19.6^{2}\leqq n$
より
$384.16\leqq n$
と変形できる。
したがって、信頼区間の幅が$4$g以下になる最小の$n$は
$385$
である。
解答ク:3, ケ:8, コ:5
(3)
ここから検定の話だ。
$\mathrm{Q}$地域の今年のレモンの母平均$m$gが、過去の平均$110$gより軽いといえるかを検定する。
なので、
対立仮説:$m \lt 110$
帰無仮説:$m=110$
だ。
解答サ:0
帰無仮説が正しいと仮定して、レモン$400$個(大きさ$400$の標本)の平均が$108.2$以下になる確率を求めよう。
カで考えたように、標本が十分に大きいとき、標本平均$\overline{W}$は、近似的に正規分布
$N\left(m,\dfrac{\sigma^{2}}{n}\right)$
に従う。
なので、
標本の大きさ$n=400$
母標準偏差$\sigma=20$
帰無仮説が正しいと仮定して、
母平均$m=110$
とすると、$400$は十分に大きいから、標本平均$\overline{W}$は、近似的に正規分布
$N\left(110,\dfrac{20^{2}}{400}\right)=N(110,1)$
に従う。
解答シ:5
よって、
$P(\overline{W}\leqq 108.2)$
つまり
標本平均が$108.2$以下になる確率
は、図Dの赤い部分の面積にあたる。
(1)のときと同じように、今回も標準化だ。
図Dの
$110$は$X$の平均値なので、
標準化すると$0$
$108.2$を標準化すると、(1)の復習より
$\dfrac{108.2-110}{1}=-1.8$
になるから、標準化したものは図Eだ。
図Eの赤い部分の面積を求めるために、正規分布表で$z_{0}=-1.8$をさがす...と言いたいところだけど、正規分布表には正の値、つまり平均値よりも右の値しか載っていない。
正規分布は左右対称だから、代わりに図Eのオレンジの面積を求めよう。
正規分布表で$z_{0}=1.8$をさがすと、$0.4641$とある。
これが、図Eの緑の部分の面積だ。
よって、オレンジの面積は
$0.5-0.4641=0.0359$
だから、赤い部分の面積も
$0.0359$
となる。
したがって、標本平均が$108.2$以下になる確率も
$P(\overline{W}\leqq 108.2)=0.0359$
である。
解答ス:0, セ:3, ソ:5, タ:9
いま行っている検定の有意水準は$5[\%]$だった。
なので、帰無仮説にもとづいて計算した$P(\overline{W}\leqq 108.2)$が $5[\%]$以上でないと、帰無仮説は棄却される。
ここで求めた
$$
\begin{align}
P(\overline{W}\leqq 108.2)&=0.0359\\
&=3.59[\%]
\end{align}
$$
は 有意水準の$5[\%]$よりも小さい。
解答チ:1
以上より
帰無仮説は棄却され、対立仮説が支持される。
つまり、
今年のレモンの母平均は$110$gより軽いと判断できる。
解答ツ:0