大学入学共通テスト 2021年(令和3年) 追試 数学ⅠA 第5問 解説

(1)

アドバイス

手順通り作図すると、下図のどちらかができる。
(Step2)で点$\mathrm{Z}$に近い方の交点を使うと左側の図に、点$\mathrm{S}$に近い方を使うと右側の図になる。
解説では左側の図を使うけど、右側の図を使っても全く同じ解法になる。

大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図

手順によって図Aを作図したときに、円$\mathrm{O}$(図A中の青い円)が目的の円であることを示したい。

図A
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図A

直線$\ell$は∠$\mathrm{XZY}$の二等分線だ。
なので、中心が$\ell$上で半径が$\mathrm{OH}$の青い円は、図Aのように紫の点で$\mathrm{ZX}$および$\mathrm{XY}$に必ず接する。

あとは、この円が点$\mathrm{S}$を通ることを示せばよい。
つまり、$\mathrm{OS}$(図Aの赤い線)が円の半径であればよいから、
$\mathrm{OH}$(緑の線)$=\mathrm{OS}$(赤い線)
であることを示せばよい。

これが、構想だ。

解答ア:5


構想を、△$\mathrm{CDG}$(図Aのオレンジの三角形)と△$\mathrm{OHS}$(黄色い三角形)の相似を使って示そう。

三角形と比の定理より、
$\mathrm{DG}$∥$\mathrm{HS}$なので、
$\mathrm{DG}:\mathrm{HS}=\mathrm{ZD}:\mathrm{ZH}$

解答イ:2, ウ:6, エ:7

$\mathrm{DC}$∥$\mathrm{HO}$なので、
$\mathrm{DC}:\mathrm{HO}=\mathrm{ZD}:\mathrm{ZH}$

解答オ:1

だから、
$\mathrm{DG}:\mathrm{HS}=\mathrm{DC}:\mathrm{HO}$式A
である。

また、3点$\mathrm{S}$,$\mathrm{O}$,$\mathrm{H}$が一直線上にないとき、
$\mathrm{DG}$∥$\mathrm{HS}$なので、
$\angle \mathrm{GDZ}=\angle \mathrm{SHZ}$
$\angle \mathrm{CDZ}=\angle \mathrm{OHZ}=90^{\circ}$ だから、
$\angle \mathrm{CDG}=\angle \mathrm{OHS}$式B
となる。

解答カ:2

式A,式Bより、2辺の比と間の角が等しいので、
オレンジの三角形∽黄色い三角形
であることが分かる。

オレンジの三角形は、$\mathrm{CD}=\mathrm{CG}$の二等辺三角形。
それと相似の黄色い三角形も二等辺三角形で、
$\mathrm{OH}=\mathrm{OS}$
である。


一方、3点$\mathrm{S}$,$\mathrm{O}$,$\mathrm{H}$が一直線上にある場合は、図Bのような状態だ。

図B
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図B

このとき、3点$\mathrm{G}$,$\mathrm{C}$,$\mathrm{D}$も一直線上にあるので、$\mathrm{DG}$は円$\mathrm{C}$の直径になる。
なので、
$\mathrm{DG}=2\mathrm{DC}$
である。

解答キ:2

(2) クケコ

次は、定期テストなんかでよく見る問題だ。

図C
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図C

問われているのは$\mathrm{IJ}$だけど、図C中の緑の四角形は長方形なので、
$\mathrm{IJ}=$赤い線
だ。
なので、赤い線の長さを求める。

図C中、
黄色い三角形は直角三角形 青い辺の長さは、
$5-3=2$
$\mathrm{O}_{1}\mathrm{O}_{2}$は、
$5+3=8$
である。

なので、三平方の定理より、
赤${}^{2}=8^{2}-2^{2}$
$\hspace{27px} =60$
となるから、
赤$=\sqrt{60}$
$\hspace{16px} =2\sqrt{15}$
だ。

よって、$\mathrm{IJ}$も、
$\mathrm{IJ}=2\sqrt{15}$
である。

解答ク:2, ケ:1, コ:5

ここで、
$\displaystyle \frac{1}{2} \angle \mathrm{XZY} =$◎
とおくと、
赤い線∥$\mathrm{ZY}$
だから、黄色い三角形は、2角が◎と直角の三角形だ。

以上より、
2角が◎と直角の三角形は、辺の比が
$8:2:2\sqrt{15}=4:1:\sqrt{15}$式C
である。
このことはあとでまた使うことになる。

(2) サ~チ

図D
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図D

さらに、図Dのような状況で
$\mathrm{LM}\cdot \mathrm{LK}$
を求める。
見るからに方べきの定理だ。

図D中の赤い線に方べきの定理を使って、
$\mathrm{LM}\cdot \mathrm{LK}=\mathrm{LJ}^{2}$式D
とかける。

ということで、$\mathrm{LJ}$を求めないといけない。

図Dを見ると、
$\mathrm{LI}$と$\mathrm{LS}$は点$\mathrm{I}$,$\mathrm{S}$で円$\mathrm{O}_{2}$に接しているので、
$\mathrm{LI}=\mathrm{LS}$
$\mathrm{LJ}$と$\mathrm{LS}$は点$\mathrm{J}$,$\mathrm{S}$で円$\mathrm{O}_{1}$に接しているので、
$\mathrm{LJ}=\mathrm{LS}$
なので、
$\mathrm{LI}=\mathrm{LJ}$式E
であることが分かる。

よって、
$\displaystyle \mathrm{LJ}=\frac{1}{2}\mathrm{IJ}$
$\phantom{ \mathrm{LJ} } \displaystyle =\frac{1}{2}\cdot 2\sqrt{15}$
$\phantom{ \mathrm{LJ} } =\sqrt{15}$式F
である。

これを式Dに代入して、
$\mathrm{LM}\cdot \mathrm{LK}=\sqrt{15}^{2}$
$\phantom{ \mathrm{LM}\cdot \mathrm{LK} } =15$
となる。

解答サ:1, シ:5

また、図Dの黄色い三角形は、2角が◎と直角なので、式Cより
$\mathrm{O}_{2}\mathrm{I}:\mathrm{ZI}=1:\sqrt{15}$
だ。

なので、
$3:\mathrm{ZI}=1:\sqrt{15}$
$\mathrm{ZI}=3\sqrt{15}$
である。

解答ス:3, セ:1, ソ:5

よって、
式E,式Fより、
$\mathrm{LI}=\sqrt{15}$
なので、セソとあわせて
$\mathrm{ZL}=4\sqrt{15}$
$\mathrm{ZJ}=\mathrm{ZK}$なので、
$\mathrm{ZK}=5\sqrt{15}$
となるので、
$\mathrm{ZL}:\mathrm{ZK}=4\sqrt{15}:5\sqrt{15}$
$\phantom{ \mathrm{ZL}:\mathrm{ZK} } =4:5$式G
であることが分かる。

ここで、図Dのグレーの三角形を考えると、$\ell$は$\angle \mathrm{KZL}$の二等分線なので、
$\mathrm{LN}:\mathrm{NK}=\mathrm{ZL}:\mathrm{ZK}$
とかける。

これに式Gを代入して、
$\mathrm{LN}:\mathrm{NK}=4:5$
より
$\displaystyle \frac{\mathrm{L}\mathrm{N}}{\mathrm{N}\mathrm{K}}=\frac{4}{5}$
となる。

解答タ:4, チ:5

別解

あんまりお勧めでもないけど、については、メネラウスの定理を使って次のような解き方もできる。

図E
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図E

$\mathrm{S}$における円$\mathrm{O}_{1}$と円$\mathrm{O}_{2}$の共通接線と、$\mathrm{ZX}$の交点を$\mathrm{P}$とする。

図Eの緑の三角形と直線$\ell$にメネラウスの定理を使うと、
$\displaystyle \frac{\mathrm{L}\mathrm{N}}{\mathrm{N}\mathrm{K}}\cdot\frac{\mathrm{K}\mathrm{Z}}{\mathrm{Z}\mathrm{P}}\cdot\frac{\mathrm{P}\mathrm{S}}{\mathrm{S}\mathrm{L}}=1$式H
とかける。

ここで、
$\mathrm{KZ}=\mathrm{ZJ}$
$\phantom{\mathrm{KZ}}=5\sqrt{15}$
$\mathrm{ZP}=\mathrm{ZL}$
$\phantom{\mathrm{ZP}}=4\sqrt{15}$
$\mathrm{PS}=\mathrm{SL}$ なので、式Hは
$\displaystyle \frac{\mathrm{L}\mathrm{N}}{\mathrm{N}\mathrm{K}}\cdot\frac{5\sqrt{15}}{4\sqrt{15}}\cdot 1=1$
となる。

これを整理して、
$\displaystyle \frac{\mathrm{L}\mathrm{N}}{\mathrm{N}\mathrm{K}}=\frac{4}{5}$
である。

解答タ:4, チ:5

(2) ツテ

もうひと息だ。
最後に、$\mathrm{SN}$を求めよう。

図F
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図F

図Fのように、$\mathrm{JK}$と$\ell$の交点を$\mathrm{Q}$とする。

このとき、
△$\mathrm{LSN}$(オレンジ)∽△$\mathrm{KQN}$(黄)
で、相似比はより
$4:5$
だから、$\mathrm{SN} : \mathrm{QN}$も
$4:5$
だ。

なので、$\mathrm{SQ}$(図Fの赤い線)の長さが分かれば、$\mathrm{SN}$は
$\displaystyle \mathrm{SN}=\frac{4}{4+5}\mathrm{SQ}$
$\phantom{ \mathrm{SN} } \displaystyle =\frac{4}{9}\mathrm{SQ}$式I
と表せる。

ということで、$\mathrm{SQ}$を求めよう。

図Fの青い三角形は、2角が◎と直角だ。
よって、式Cより、辺の比は
$\mathrm{ZS}:\mathrm{ZL}=\sqrt{15}:4$
となるので、
$\mathrm{ZS}:4\sqrt{15}=\sqrt{15}:4$
$4\mathrm{ZS}=4\sqrt{15}^{2}$
$\mathrm{ZS}=15$式J
である。

さらに、図中の2本の緑の線は平行なので、
$\mathrm{ZS}:\mathrm{SQ}=\mathrm{ZL}:\mathrm{LJ}$
とかける。

これにそれぞれの値を代入すると、
$15:\mathrm{SQ}=4\sqrt{15}:\sqrt{15}$
$\phantom{ 15:\mathrm{SQ} } =4:1$
$4\mathrm{SQ}=15$
$\displaystyle \mathrm{SQ}=\frac{15}{4}$
となり、$\mathrm{SQ}$が求められる。

これを式Iに代入して、
$\displaystyle \mathrm{SN}=\frac{4}{9}\cdot\frac{15}{4}$
$\phantom{ \mathrm{SN} } \displaystyle =\frac{5}{3}$
である。

解答ツ:5, テ:3

アドバイス

$\mathrm{SQ}$を求める方法は、上で解説したものの他に何通りも考えられるけど、どれも一長一短だし、ここでは解説しない。
どの方法が最善というわけでもないので、自分に合った方法を見つけてほしい。

別解

上の解と比べると気づきにくいかも知れないけど、もメネラウスの定理で求められる。

図G
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅠA第5問 解説図G

図Gの緑の三角形と赤い直線にメネラウスの定理を使うと、
$\displaystyle \frac{\mathrm{S}\mathrm{N}}{\mathrm{Z}\mathrm{S}}\cdot\frac{\mathrm{L}\mathrm{K}}{\mathrm{N}\mathrm{L}}\cdot\frac{\mathrm{P}\mathrm{Z}}{\mathrm{K}\mathrm{P}}=1$式K
とかける。

ここで、
式Jより、
$\mathrm{ZS}=15$
$\mathrm{NL}:\mathrm{LK}=4:9$ $\mathrm{KP}=\mathrm{JL}$
$\phantom{ \mathrm{KP} }=\sqrt{15}$
$\mathrm{PZ}=\mathrm{LZ}$
$\phantom{ \mathrm{PZ} }=4\sqrt{15}$
なので、式Kは
$\displaystyle \frac{\mathrm{S}\mathrm{N}}{15}\cdot\frac{9}{4}\cdot\frac{4\sqrt{15}}{\sqrt{15}}=1$
となる。

これを整理して、
$\displaystyle \frac{3}{5}\mathrm{SN}=1$
$\displaystyle \mathrm{SN}=\frac{5}{3}$
である。

解答ツ:5, テ:3