大学入試センター試験 2012年(平成24年) 追試 数学ⅡB 第5問 解説

(1)

まず、中央値のついての復習から。

復習

中央値は、データを小さい順(大きい順でもいいけど)に並べたとき、
データの大きさが奇数のときには、真ん中にある数 データの大きさが偶数のときには、中央2つの数の平均値

だった。

中央値Aは10個のデータの中央値なので、大きい方から(小さい方からでもいいけど)10番目と11番目の値の平均値を出せばよい。
でも、10個の数字を並べるのは手間がかかるので、問題中の表に印をつけよう。
表Aで、
1. まず、最小値の1と最大値の5をセットでチェックマークする。( 2. 残った1と、マークのついてない数字のうち最大の4をセットでマークする。( 3. マークのついてない数字のうち最小の2と、残った4をセットでマークする。( のような作業を、数字が2つになるまで続ける。
残った数字が中央の2値だ。

表A
教科1
生徒1 4
生徒2 5
生徒3 1
生徒4 4
生徒5 3
生徒6 4
生徒7 1
生徒8 2
生徒9 1
生徒10 4

表Aより、3と4が残ったので、中央値Aは、
$\displaystyle \mathrm{A}=\frac{3+4}{2}$
$\mathrm{A}$$=3.5$
である。

解答ア:3, イ:5


次は、平均値B。
10個くらいの数字なので普通に平均値を求めた方が早いような気もするけど、復習のために、ここでは3を仮平均として計算する。

表B
教科5
値-3
生徒1 5 2
生徒2 1 -2
生徒3 2 -1
生徒4 1 -2
生徒5 5 2
生徒6 1 -2
生徒7 2 -1
生徒8 4 1
生徒9 4 1
生徒10 3 0

2と-2,1と-1をセットで消すと、表Bの赤い数字は全部消えて、$-2$だけが残る。
なので、平均値Bは、
$\displaystyle \mathrm{B}=3+\frac{-2}{10}$
$\mathrm{B}$$=2.8$
である。

解答ウ:2, エ:8


それから、分散Cだけど、計算に入る前に分散の復習をしておこう。

復習

分散とは、$($値-平均値$)^{2}$の平均値だった。

式にすると、
データの大きさ$n$ 値が$x_{1}$,$x_{2}$,$\cdots$,$x_{n}$ 平均値が$\overline{x}$ のデータがあるとき、分散$s^{2}$は、
$s^{2}=\displaystyle \frac{1}{n}\{(x_{1}-\overline{x})^{2}+(x_{2}-\overline{x})^{2}+$
                 $\cdots+(x_{n}-\overline{x})^{2}\}$式A
$s^{2}=\overline{x^{2}}-(\overline{x})^{2}$式B
である。

式Aで計算すると、教科2は平均値が$3.7$なので$($値-平均値$)$は全部小数になる。これを2乗するのは面倒だから、式Bを使おう。

表C
教科2
値2乗
生徒1 3 9 $\Bigr\}$25
生徒2 4 16
生徒3 3 9
生徒4 5 25
生徒5 2 4
生徒6 3 9 $\Bigr\}$25
生徒7 4 16
生徒8 3 9
生徒9 5 25
生徒10 5 25

表Cで、16と9はたして25なので、25が5個、あとは9と4と9をたして10で割れば、2乗の平均値$\overline{x^{2}}$だ。
$\displaystyle \overline{x^{2}}=\frac{1}{10}(25\times 5+9+4+9)$
$\displaystyle \overline{x^{2}}=\frac{147}{10}$
$\overline{x^{2}}=14.7$

問題中の表より平均値$\overline{x}$は$3.7$なので、式Bを使って、
分散$s^{2}=\overline{x^{2}}-(\overline{x})^{2}$
分散$s^{2}$$=14.7-3.7^{2}$
分散$s^{2}$$=14.7-13.69$
分散$s^{2}$$=1.01$
である。

解答オ:1, カ:0, キ:1

(2)

クケは地味に数えるしかない。

表D
教科1 教科3
生徒1 4 1
生徒2 5 2
生徒3 1 5
生徒4 4 2
生徒5 3 4
生徒6 4 2
生徒7 1 5
生徒8 2 5
生徒9 1 2
生徒10 4 2

Dは教科1の順位が教科3の順位よりも高い生徒の数なので、表Dの赤文字の部分。
なので、5人である。

解答ク:5

表E
教科1 教科3
生徒1 3 2
生徒2 4 3
生徒3 3 4
生徒4 5 3
生徒5 2 1
生徒6 3 5
生徒7 4 3
生徒8 3 1
生徒9 5 3
生徒10 5 1

Eは教科2の順位が教科4の順位よりも高い生徒の数なので、表Eの赤文字の部分。
なので、2人である。

解答ケ:2

次の$w_{1}$と$w_{2}$の関係式だけど、⓪~③のどれかだっていうことが分かってるので、考えるよりも手を動かした方が早い。
ケより、教科2の順位が教科4の順位よりも高い生徒の数は、2人。
これが$w_{1}$だ。
一方、$w_{2}$は教科4の順位が教科2の順位よりも高い生徒の数で、表Eの青文字の部分なので8人。
このことから、正しいのは
$w_{1}+w_{2}=10$の②
だと考えられる。

解答コ:2

別解

例えば$j$と$k$が$1$と$2$のときを考えよう。
$j \lt k$のとき、$1 \lt 2$なので、$j=1$,$k=2$である。
このときの$w$を$w_{12}$とすると、$w_{12}$は教科1の順位が教科2の順位よりも高い生徒の数。
$j \gt k$のとき、$2 \gt 1$なので、$j=2$,$k=1$である。
このときの$w$を$w_{21}$とすると、$w_{21}$は教科2の順位が教科1の順位よりも高い生徒の数。
2つの教科の順位が等しいことはないので、教科1の順位が高いか、教科2の順位が高いかのどちらかしかない。
生徒数は10人なので、
$w_{12}+w_{21}=10$
である。

これは$j$と$k$が$1$と$2$のときだけじゃなくて、すべての組み合わせのときに成り立って、
$w_{\alpha\beta}+w_{\beta\alpha}=10$
と言える。
なので、選択肢のうち正しいのは
$w_{1}+w_{2}=10$の②。

解答コ:2


アドバイス

だんだん問題がややこしくなってきたけれど、問題文の重要なところに下線を引くなどして混乱を防ごう。
こういうタイプの問題は、上手なノートと言いたいけれど、センター試験じゃ計算用紙に制約があるから、上手なメモを心がける。試験本番は緊張して混乱しがちなので、情報をうまくまとめることが大切だ。

$u=$教科$j$の中央値-教科$k$の中央値
$v=$教科$j$の平均値-教科$k$の平均値
とするとき、
$j=2$,$k=3$のときの$u$,$v$を求よという。

$u=$教科2の中央値-教科3の中央値
なので、
$u=3.5-2.0$
$u$$=1.5$
である。

解答サ:1, シ:5

また、
$v=$教科2の平均値-教科3の平均値
なので、
$v=3.7-3.0$
$v$$=0.7$
である。

解答ス:0, セ:7


次は、$u$と$w$の相関図だ。
$20$個の$u$と$w$を求めるわけにはいかないので、特徴的な点だけ求めよう。
以下、説明のために
教科$j$の順位が教科$k$の順位よりも高い生徒の数を$w_{jk}$ 教科$j$の中央値-教科$k$の中央値を$u_{jk}$ 教科$j$の平均値-教科$k$の平均値を$v_{jk}$ とする。

⓪~⑤の相関図を見ると、$w=2$の点は1個または2個しかない。
なので、この場合を考える。

ケより、$w$が$2$になるのは、$w_{24}$のとき。
コより、$w_{jk}+w_{kj}=10$なので、
$w_{42}=8$
である。
⓪~⑤の相関図のうち、①③は$w=8$の点がないから、誤り。
なので、$w=2$の点は、$w_{24}$のときだけを考えればよい。

ということで、$u_{24}$と$v_{24}$を求めよう。
問題文中の表より
中央値は、
教科2は$3.5$ 教科4は$3.0$ なので、
$u_{24}=3.5-3.0$
$u_{24}$$=0.5$
平均値は
教科2は$3.7$ 教科4は$2.6$ なので、
$v_{24}=3.7-2.6$
$v_{24}$$=1.1$
である。

よって、
$u$と$w$の相関図は、$w=2$のとき$u=0.5$である④ $v$と$w$の相関図は、$w=2$のとき$v=1.1$である②

解答ソ:4, タ:2

別解

あんまりおすすめじゃないけれど、具体的に点を求めずに解くと次のようになる。

以下、説明のために
教科$j$の順位が教科$k$の順位よりも高い生徒の数を$w_{jk}$ 教科$j$の中央値-教科$k$の中央値を$u_{jk}$ 教科$j$の平均値-教科$k$の平均値を$v_{jk}$ とする。

コより、
$w_{jk}+w_{kj}=10$式C
である。
また、計算していて気づいた思うけど、
$u_{jk}=-u_{kj}$式D
$v_{jk}=-v_{kj}$式E
である。

式Cの両辺を$2$で割ると、
$\displaystyle \frac{w_{jk}+w_{kj}}{2}=5$
となって、$w_{jk}$と$w_{kj}$の平均値は必ず$5$になる。
よって、$w_{jk}$を
$ w_{jk}=5+\alpha$
と書くと、
$ w_{kj}=5-\alpha$
となるから、$w_{jk}$と$w_{kj}$は$w=5$に関して対称であることが分かる。

また、式Dと式Eから、
$u_{jk}$と$u_{kj}$は、$u=0$に関して対称である。 $v_{jk}$と$v_{kj}$は、$v=0$に関して対称である。 ことが分かる。

$u$と$w$の相関図を座標平面と考え、点の位置を$(u,w)$とすると、
上のA,Bより、$(u_{jk},w_{jk})$と$(u_{kj},w_{kj})$は
$u=0$に関して対称 $w=5$に関して対称 なので、$(u,w)=(0,5)$に関して点対称である。
よって、$u$と$w$の相関図は$(u,w)=(0,5)$に関して点対称である。
同様に、$v$と$w$の相関図も$(v,w)=(0,5)$に関して点対称である。
⓪~⑤の相関図のうち、点対称じゃない①,③は誤りである。


さらに、$w_{jk}$の意味を思い出すと、
$w_{jk}$は、教科$j$の順位が教科$k$の順位よりも高い生徒数
だった。
なので、$w_{jk}$の数字が大きい場合、教科$j$の順位の方が教科$k$の順位よりも高い傾向にあると言える。
順位が高ければ値は小さいので(例えば一番高い順位の1は、数字の値としては一番小さい)、教科$j$の値は教科$k$の値よりも小さい傾向にある。
つまり、中央値,平均値ともに教科$j$の方が小さいと考えられる。
よって、
$w_{jk}$が大きい→$u_{jk}$,$v_{jk}$がともに小さい
関係が想定できる。


それから、中央値,平均値ともに整数か小数点以下1桁の数だけど、
中央値の小数第1位は、$0$か$5$ 平均値の小数第1位はどんな数にもなる


以上より、$u$と$w$の相関図は、
$(u,w)=(0,5)$に関して点対称 $u$と$w$は負の相関 $u$の値の小数第1位は、$0$か$5$ なので、4である。

解答ソ:4

また、$v$と$w$の相関図は、
$(v,w)=(0,5)$に関して点対称 $v$と$w$は負の相関 $v$の値の小数第1位はどんな数にもなる なので、2である。

解答タ:2

$u$と$w$の相関図の④と、$v$と$w$の相関図の②を見比べると、ともに負の相関だけど、②の方が負の相関が強い。
なので、
$v$と$w$の相関係数$ \lt u$と$w$の相関係数$ \lt 0$
より
$r_{2} \lt r_{1} \lt 0$
である。

解答チ:5

(3)

すべての生徒はそれぞれの教科に1~5の順位をつけるので、一人の生徒がつけた順位の平均値は、
$\displaystyle \frac{1}{5}(1+2+3+4+5)=3$
である。

解答ツ:3

また、分散は
$\displaystyle \frac{1}{5}\{(1-3)^{2}+(2-3)^{2}+(3-3)^{2}+(4-3)^{2}+(5-3)^{2}\}$
$=\displaystyle \frac{1}{5}(4+1+1+4)$
$=2$
である。

解答テ:2


ツより$\overline{x}=\overline{y}=3$なので、トナの式の左辺の$\overline{x}$,$\overline{y}$に$3$を代入して変形すると、
$\displaystyle \sum_{k=1}^{5}(x_{k}-3)(y_{k}-3)$
$=\displaystyle \sum_{k=1}^{5}\{x_{k}y_{k}-3(x_{k}+y_{k})+9\}$
$=\displaystyle \sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-3\left(\sum_{k=1}^{5}x_{k}+\sum_{k=1}^{5}y_{k}\right)+\sum_{k=1}^{5}9$
$=\displaystyle \sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-3\left(\sum_{k=1}^{5}x_{k}+\sum_{k=1}^{5}y_{k}\right)+45$式F
ここで、
$\displaystyle \sum_{k=1}^{5}x_{k}=\sum_{k=1}^{5}y_{k}=1+2+3+4+5=15$
なので、式Fは
$=\displaystyle \sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-3\left(15+15\right)+45$
$=\displaystyle \sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-45$
となる。

解答ト:4, ナ:5

ここで、相関係数の復習をしよう。
まず、共分散の復習から。

復習

共分散とは、
$(x$の偏差 $\times\ y$の偏差$)$ の平均
つまり
$(x-\overline{x})(y-\overline{y})$ の平均
だった。

トナの式は$(x-\overline{x})(y-\overline{y})$の合計なので、これをデータの大きさ(教科数)の$5$で割ると共分散だ。
なので、共分散を$s_{xy}$とすると、
$s_{xy}=\displaystyle \frac{1}{5}\left(\sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-45\right)$式G
である。

復習

相関係数とは、共分散をそれぞれの変数の標準偏差の積で割ったものだった。
つまり、
$x$と$y$の共分散を$s_{xy}$ $x$の標準偏差を$s_{x}$ $y$の標準偏差を$s_{y}$ とすると、相関係数$r_{xy}$は
$r_{xy}=\displaystyle \frac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}}$
である。

テより、$x$も$y$も分散は$2$なので、標準偏差もともには$\sqrt{2}$である。
なので、$x$と$y$の相関係数$r$は、
$r=\displaystyle \frac{s_{xy}}{\sqrt{2}\cdot\sqrt{2}}$
式Gより、$s_{xy}=\displaystyle \frac{1}{5}\left(\sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-45\right)$なので、
$r=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}^{2}}\cdot\frac{1}{5}\left(\sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-45\right)$
$r\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{10}\left(\sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}-45\right)$式H
である。

解答ニ:1, ヌ:0


$m=3$,$n=6$のとき、$r$は生徒3と生徒6の相関係数である。
このとき、
$\displaystyle \sum_{k=1}^{5}x_{k}y_{k}=1\cdot 4+3\cdot 3+5\cdot 2+4\cdot 5+2\cdot 1$
            $=45$
これを式Hに代入して、
$r=\displaystyle \frac{1}{10}(45-45)=0$
となる。

解答ネ:0, ノ:0

相関係数が0なので、生徒3と生徒6の順位のつけ方に相関は認められない。
よって、当てはまるのは②である。

解答:ハ:2