大学入試センター試験 2020年(令和2年) 本試 数学ⅡB 第1問 [2] 解説

(1)

指数が分数だと、何となく分かりにくいという人も多いと思う。

この問題に出てくるのは
$t^{\frac{1}{3}}$,$t^{-\frac{1}{3}}$,$t^{\frac{2}{3}}$,$t^{-\frac{2}{3}}$,$t$,$t^{-1}$
だ。
なので、イメージがつかみにくければ
$t^{\frac{1}{3}}=T$
とおくという手もある。

すると、
$t^{\frac{1}{3}}=T$,$t^{-\frac{1}{3}}=T^{-1}$
$t^{\frac{2}{3}}=T^{2}$,$t^{-\frac{2}{3}}=T^{-2}$
$t=T^{3}$,$t^{-1}=T^{-3}$
となって、指数がすべて整数で表せる。


以上より、問題文の式を$T$を使って書きかえると、
$T-T^{-1}=-3$式A
のとき、
$T^{2}+T^{-2}$
が問われていることになる。

式Aの両辺を2乗して、
$\left(T-T^{-1}\right)^{2}=(-3)^{2}$
より
$T^{2}-2T\cdot T^{-1}+T^{-2}=9$
$T^{2}+T^{-2}=9+2T\cdot T^{-1}$式B
となる。

ここで、
$T\displaystyle \times T^{-1}=T\times\frac{1}{T}$
             $=1$
なので、式Bは
$T^{2}+T^{-2}=9+2$
              $=11$
である。

解答タ:1, チ:1


次は、
$t^{\frac{1}{3}}+t^{-\frac{1}{3}}$
つまり
$T+T^{-1}$
を求める。

タチより
$T^{2}+T^{-2}=11$
$T\cdot T^{-1}=1$
より、
$2T\cdot T^{-1}=2$
を辺々たして、
$T^{2}+2T\cdot T^{-1}+T^{-2}=11+2$
なので
$(T+T^{-1})^{2}=13$式C

ここで、$t$は正の実数なので、$t^{-\frac{1}{3}}$も正の実数だ。
なので、
$\left\{\begin{array}{l}
0\lt T\\
0\lt T^{-1}
\end{array}\right.$
だから、
$0\lt T+T^{-1}$
である。

よって、式Cより、
$T+T^{-1}=\sqrt{13}$
となる。

解答ツ:1, テ:3


この小問の最後は、
$t+t^{-1}$
つまり
$T^{3}-T^{-3}$
だ。

この$T^{3}-T^{-3}$を因数分解すると、
$T^{3}-T^{-3}=(T-T^{-1})(T^{2}+T\cdot T^{-1}+T^{-2})$式D
とかける。

ここで、
$\left\{\begin{array}{l}
T-T^{-1}=-3\\
T^{2}+T^{-2}=11\\
T\cdot T^{-1}=1
\end{array}\right.$
なので、式Dは
$T^{3}-T^{-3}=-3(11+1)$
より
$T^{3}-T^{-3}=-36$
である。

解答ト:-, ナ:3, ニ:6

別解

ちょっと手間はかかるけど、式Aの両辺を3乗しても解ける。

式Aの
$T-T^{-1}=-3$
の両辺を3乗すると、
$T^{3}-3T^{2}\cdot T^{-1}+3T\cdot T^{-2}-T^{-3}=-27$式E
となる。

ここで
$T\cdot T^{-1}=1$
なので、式Eは
$ T^{3}-3T\cdot$$T\cdot T^{-1}$$+3$$T\cdot T^{-1}$$\cdot T^{-1}-T^{-3}=-27$
より
$T^{3}-3T+3T^{-1}-T^{-3}=-27$
$T^{3}-3(T-T^{-1})-T^{-3}=-27$

これに式Aを代入して、
$T^{3}-3(-3)-T^{-3}=-27$
$T^{3}+9-T^{-3}=-27$
$T^{3}-T^{-3}=-36$
である。

解答ト:-, ナ:3, ニ:6

(2)

②を変形すると、
$\log_{3}x+\log_{3}\sqrt{y}\leqq 5$
$\log_{3}x+\log_{3}y^{\frac{1}{2}}\leqq 5$
$\displaystyle \log_{3}x+\frac{1}{2}\log_{3}y\leqq 5$
$2\log_{3}x+\log_{3}y\leqq 10$
となる。

よって、
$\log_{3}x=X$,$\log_{3}y=Y$とおくと、
$2X+Y\leqq 10$
とかける。

解答ヌ:2, ネ:1, ノ:0


③は底が$81$なので、まず底を変換して$3$にそろえよう。

③より
$\displaystyle \frac{\log_{3}\frac{y}{x^{3}}}{\log_{3}81}\leqq 1$
$\displaystyle \log_{3}\frac{y}{x^{3}}\leqq\log_{3}81$
である。

これを変形して、
$\log_{3}y-\log_{3}x^{3}\leqq 4$
$\log_{3}y-3\log_{3}x\leqq 4$
より
$Y-3X\leqq 4$
これを問題文の⑤の形になおして、
$3X-Y\geqq-4$
となる。

解答ハ:3, ヒ:-, フ:4


$XY$平面に④⑤のグラフを描いて、共通する領域を求めると、図Aの緑の範囲のようになる。(境界線を含む)

図A
大学入試センター試験2020年本試 数学ⅡB第1問[2] 解説図A

領域の境界になる直線は、④と⑤より
$\left\{\begin{array}{l} 2X+Y=10\\ 3X-Y=-4 \end{array}\right.$ 式④'
式⑤'
だ。
この2式の連立方程式を解くと、2つの直線の交点(図Aの黒い点)の座標が分かる。

④'$\times 3-$⑤'$\times 2$より、

$6X$ $+3Y$ $=$ $30$
$-)$ $6X$ $-2Y$ $=$ $-8$
$5Y$ $=$ $38$

より、
$Y=\displaystyle \frac{38}{5}$
なので、図Aのように、2つの直線の交点は$Y=7$と$Y=8$の間にある。

以上より、図Aの緑の範囲に含まれる$Y$の最大の整数値は
$Y=7$
である。

解答ヘ:7


このとき、$X$の範囲は、図Aの赤い線。
最大値は、④'に$Y=7$を代入して、
$2X+7=10$
$2X=3$
$X=\displaystyle \frac{3}{2}$
最小値は、⑤'に$Y=7$を代入して、
$3X-7=-4$
$3X=3$
$X=1$
なので、$X$の範囲は
$1\displaystyle \leqq X\leqq\frac{3}{2}$式F
とかける。

ここで、$\log_{3}x=X$なので、式Fは
$1\displaystyle \leqq\log_{3}x\leqq\frac{3}{2}$式F'
となるけど、中辺が対数,左辺と右辺が対数じゃないので、この式は計算できない。
なので、左辺と右辺を対数にしよう。

式F'の左辺と右辺に$1$($=\log_{3}3$)をかけて、
$\displaystyle \log_{3}3\leqq\log_{3}x\leqq\frac{3}{2}\log_{3}3$
より
$\log_{3}3\leqq\log_{3}x\leqq\log_{3}3^{\frac{3}{2}}$
$\log_{3}3\leqq\log_{3}x\leqq\log_{3}\sqrt{3}^{3}$
$\log_{3}3\leqq\log_{3}x\leqq\log_{3}3\sqrt{3}$

いま、底の$3$は$1$より大きいので、この式の真数部分を取り出して、
$3\leqq x\leqq 3\sqrt{3}$式F''
とかける。

$\sqrt{3}\doteqdot 1.7$
より
$3\sqrt{3}\doteqdot 5.1$
だから、式F''より、$x$の最大の整数値は
$x=5$
である。

解答ホ:5