大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅠA 第2問 [1] 解説

(1)

まず、$x$(横軸)に価格、$y$(縦軸)に販売数をとったグラフを描きたい。
$y$(縦軸)の販売数は、「その価格のときにTシャツが何枚売れるか」だ。

ここで、
人数は、その価格を、買ってもいい価格の上限と答えた生徒の数 累積人数は、その価格が、買ってもいい価格の範囲に入っている生徒の数 である。

よって、$y$(縦軸)に使うのには、累積人数が適している。

解答ア:1


こうしてできるのは$x$と$y$の関係式のグラフで、問題文より直線になるという。

つまり、
$y$は$x$の1次関数
である。

解答イ:5

よって、実数$a$,$b$を使って、
$y=ax+b$式A
と表せる。


問題文中の式より、
(売上額) $=$ (Tシャツ1枚の価格) $\times$ (販売数)
で、この式の
売上額を$S(x)$ Tシャツ1枚の価格を$x$ 販売数を$y$ とおくので、
$S(x)=xy$式B
とかける。

これに式Aを代入すると、
$S(x)=x(ax+b)$
       $=ax^{2}+bx$式C
なので、
$S(x)$は$x$の2次関数
である。

解答ウ:6

(2)

このとき、グラフは図Aのようになる。
生徒会執行部が考えた直線は、4つの点のうち、両端の点(赤い点)を通るという。
なので、図中の赤い直線にあたる。

このときの$y$が表しているのは、
黒い折れ線では、累積人数 赤い直線では、(予想される)販売数 だ。

図A
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図A

$S(x)$が最大になるときの$x$を問われているので、$S(x)$の式(式C)を完成させないといけない。
つまり、$a$,$b$を求めないといけない。

というわけで、図Aの赤い線の式(式A)を求めよう。

左端の点は$(500,200)$ 右端の点は$(2000,50)$ なので、直線の傾き$a$は
$a=\displaystyle \frac{y\text{の増加量}}{x\text{の増加量}}$

途中式 $a$$\displaystyle =\frac{50-200}{2000-500}$
$a$$\displaystyle =\frac{-150}{1500}$
$a$$\displaystyle =-\frac{1}{10}$
である。

よって、式Aは
$y=-\displaystyle \frac{1}{10}x+b$
とかける。

この直線が、右端の点$(2000,50)$を通るので、
$50=-\displaystyle \frac{1}{10}\cdot 2000+b$
より
$b=50+200$
$b$$=250$
となる。

この$a$,$b$を式Aに代入して、$y$は
$y=-\displaystyle \frac{1}{10}x+250$式A'
$a$,$b$を式Cに代入して、$S(x)$は
$S(x)=-\displaystyle \frac{1}{10}x^{2}+250x$式C'
である。

この部分の別解

数Ⅱの内容を使うと、図Aの赤い直線は次のように求められる。

復習

2点$(a_{x}, a_{y})$,$(b_{x}, b_{y})$を通る直線の式は、
$\displaystyle y-a_{y} = \frac{a_{y}-b_{y}}{a_{x}-b_{x}}(x-a_{x})$
とかける。

復習より、図Aのふたつの赤い点を通る直線の式は、
$\displaystyle y-50 = \frac{50-200}{2000-500}(x-2000)$
より

途中式 $\displaystyle y = \frac{-150}{1500}(x-2000) + 50$
$y$$\displaystyle = -\frac{1}{10}(x-2000) + 50$
$y$$\displaystyle = -\frac{1}{10}x +200 + 50$
なので、
$y=-\displaystyle \frac{1}{10}x+250$式A'
となる。

これを式Bに代入して、$S(x)$は
$S(x)=-\displaystyle \frac{1}{10}x^{2}+250x$式C'
である。

式C'で、$S(x)$が最大になる$x$(つまり、売上額が最大になる価格)を求める。
式C'のグラフは上に凸の放物線なので、最大は頂点だ。

復習

$y=ax^{2}+bx+c$のグラフの頂点の$x$座標は
$\displaystyle \frac{-b}{a}$

なので、式C'のグラフの頂点の$x$座標は
$x=\displaystyle \frac{-250}{2\left(-\frac{1}{10}\right)}$
より
$x=\displaystyle \frac{2500}{2}$
$x$$=1250$式D
である。

いま、
$x$はTシャツの価格なので、定義域は
$0 \lt x$
また、問題文より、
価格は$50$の倍数 にすることになっている。
$x=1250$
はこの2つの条件に合うので、答えだ。

解答エ:1, オ:2, カ:5, キ:0

アドバイス

販売数($y$)は正なので、式A'から、
$\displaystyle -\frac{1}{10}x+250 \gt 0$
より
$x \lt 2500$
も定義域である。

けれど、今は
$S(x)=xy$ で、$0 \lt S(x)$ かつ $0 \lt x$なので、
$0 \lt y$
は明らか。

なので、マークシート問題でもあるし、
$x \lt 2500$
は省略した。

(3)

Tシャツは$120$枚つくるので、販売数の上限は$120$だ。
このとき、図Aの赤い線は図Bのように変わる。

図B
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図B

$y$は販売数なので、
図Bの赤い点より左では、つくった$120$枚が全部売れて
$y=120$
赤い点より右では、式A'のままで
$y=-\displaystyle \frac{1}{10}x+250$
と変わる。

図Bの赤い点の$y$座標は$120$。
なので、$x$座標は、式A'より
$-\displaystyle \frac{1}{10}x+250=120$
$\displaystyle \frac{1}{10}x=130$
$x=1300$
だ。

よって、図Bの赤い線の式は
$y=\left\{\begin{array}{ll} 120 & (x\leqq 1300)\\ -\frac{1}{10}x+250 & (1300 \lt x) \end{array}\right.$式A''
とかける。


$y$の式が変わったので、$S(x)$の式も変わる。

式A''を式Bに代入して、
$x\leqq 1300$のとき、
$S(x)=120x$
$1300 \lt x$のとき、式C'のままで、
$S(x)=-\displaystyle \frac{1}{10}x^{2}+250x$
である。

これをまとめて、
$S(x)=\left\{\begin{array}{ll} 120x & (x\leqq 1300)\\ -\frac{1}{10}x^{2}+250x & (1300 \lt x) \end{array}\right.$式B''
と表せる。


ここで問われているのは、利益が最大になるときのTシャツ一枚の価格。

いま、利益は
利益$=$売上額$-$原価合計
で、
原価合計$=400\cdot 120$
だ。

原価合計は定数だから、売上額が最大のときに利益も最大になる。
なので、売上額が最大、つまり$S(x)$が最大のときの$x$を求めればよい。


以上より、式B''が最大のときの$x$を求める。

式B''のグラフを描くと、図Cの赤い線のようになる。

図C
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図C

このグラフの放物線の部分の頂点の$x$座標は、式Dで求めたように
$x=1250$
なので、赤いグラフには含まれない。

図Cより、$S(x)$が最大になるのは、赤い点の
$x=1300$
のとき。

よって、利益が最大になるのも
$x=1300$
のときである。

解答ク:1, ケ:3, コ:0, サ:0