大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅡB 第1問 [4] 解説

(1)

問題の式を
$\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)$式A
とする。

アドバイス

ポイントは、解答Aと解答Bの少なくとも一方は間違いなんだけれど、なぜ間違いか、ってことだ。
問題文中で花子さんが言っているように、どちらの解答も計算は間違えていない。

間違い部分を探すために、まず相加平均と相乗平均の関係の復習をしよう。

復習

正の実数$A$,$B$について、
$A+B\geqq 2\sqrt{AB}$
とかける。
(等号成立は$A=B$のとき)

復習より、間違い部分は、問題文に書かれていない
等号成立は$A=B$のとき
って部分じゃないかと予想ができる。

その方向で考えてみよう。

まず、解答Aから。

式Aが$8$になるのは、①,②より
$\left\{\begin{array}{l} \displaystyle x+\frac{1}{y}=2\sqrt{\frac{x}{y}}\\ \displaystyle y+\frac{4}{x}=4\sqrt{\frac{y}{x}} \end{array}\right.$式B
のとき。

式Bが成り立つのは ①,②の等号が成立するときで、
$\left\{\begin{array}{l} \displaystyle x=\frac{1}{y}\\ \displaystyle y=\frac{4}{x} \end{array}\right.$式C
の2つの式が両方とも成り立つとき。

式Cの2つの式の分母を払うと
$\left\{\begin{array}{l}
xy=1\\
xy=4
\end{array}\right.$
となるので、この両方の式を同時に満たす$x$,$y$の値は存在しない。

なので、式Aの値が、解答Aの最小値である
$8$
になることはない。

おぉ。いきなり間違いか所を見つけてしまった。

なので、は、上の説明と同じ内容の

が当てはまる。

解答シ:2

別解

上の考え方をしない場合、選択肢をひとつずつ検討することになる。


$xy+\displaystyle \frac{4}{xy}=4$を満たす$x$,$y$の値がない場合、
$xy+\displaystyle \frac{4}{xy}\neq 4$式D
になる。

このとき、解答Bの1行目より、
式A$=$$xy+\displaystyle \frac{4}{xy}$$+5$
だけど、この式の赤い部分は$4$にはならないので、
式A$\neq 9$
といえる。

これは、問題文中の太郎さんの発言の
「$x=2$,$y=1$のときの値は$3\times 3=9$になる」
と矛盾する。

これに気づけば、計算しなくても⓪は誤りであることが分かる。

別解

気づかなければ、計算だ。

$xy+\displaystyle \frac{4}{xy}=4$は解答Bの3行目で、この式が成り立つのは、復習より$xy=\displaystyle \frac{4}{xy}$のとき。

この
$xy=\displaystyle \frac{4}{xy}$
の両辺に$xy$をかけて分母を払うと、
$(xy)^{2}=4$
より
$xy=\pm 2$
である。

$x$,$y$は正の実数なので、$xy=2$である$x$,$y$の値は無数に存在する。
よって、⓪は誤り。


$x+\displaystyle \frac{1}{y}=2\sqrt{\frac{x}{y}}$は、解答Aの①。
$xy+\displaystyle \frac{4}{xy}=4$は、解答Bの途中式。

この両方を満たす$x$,$y$の値があってもなくても、それぞれの解答の正誤には関係ない。
なので、計算するまでもなく、誤り。


$x+\displaystyle \frac{1}{y}=2\sqrt{\frac{x}{y}}$は解答Aの①で、この式が成り立つのは、復習より$x=\displaystyle \frac{1}{y}$のとき。
$y+\displaystyle \frac{4}{x}=4\sqrt{\frac{y}{x}}$は解答Aの②で、この式が成り立つのは、復習より$y=\displaystyle \frac{4}{x}$のとき。
よって、この両方の式が成り立つのは、
$\left\{\begin{array}{l}
x=\frac{1}{y}\\
y=\frac{4}{x}
\end{array}\right.$式C
の両方が成り立つとき。

式Cの2つの式の分母を払うと
$\left\{\begin{array}{l}
xy=1\\
xy=4
\end{array}\right.$
となるので、この両方の式を同時に満たす$x$,$y$の値は存在しない。

よって、②は正しい。


②での計算より、③は誤り。


以上より、に当てはまるのは

である。

解答シ:2

(2)

(1)より、解答Aは①と②が同時に成り立たないので、
式A$=8$
にはならない。

一方、解答Bは
$xy+\displaystyle \frac{4}{xy}=4$
を満たす$x$,$y$の値が存在するから、最小値の
式A$=9$
は存在する

よって、式Aの最小値は、解答Bの
$9$
である。

解答:ス:9