大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅠA 第1問 [2] 解説
(1)
$A=60^{\circ}$の△$\mathrm{ABC}$について考える。
まず、$B=90^{\circ}$の場合から。
このとき、△$\mathrm{ABC}$のそれぞれの角は
$A=60^{\circ}$
$B=90^{\circ}$
$C=30^{\circ}$
となる。
なので、
$\cos B=\cos 90^{\circ}$
$\cos B$$=0$
$\sin C=\sin 30^{\circ}$
$\displaystyle \sin C$$\displaystyle =\frac{1}{2}$
である。
解答オ:0, カ:3
これを$X$の式に代入すると、
$X=4\displaystyle \cdot 0^{2}+4\cdot\left(\frac{1}{2}\right)^{2}-4\sqrt{3}\cdot 0\cdot\frac{1}{2}$
$X$$=4\cdot\left(\frac{1}{2}\right)^{2}$
$X$$=1$
になる。
(2)
次に、$B=13^{\circ}$のとき。
このとき、△$\mathrm{ABC}$のそれぞれの角は
$A=60^{\circ}$
$B=13^{\circ}$
$C=107^{\circ}$
となる。
このうち、$C$の$107^{\circ}$の$\sin$を三角比の表から求める。
そのためには、$\sin 107^{\circ}$を$0^{\circ}$~$90^{\circ}$の三角比で表さないといけない。
ここで、$ 90n^{\circ}\pm\theta$の三角比の値について復習しておこう。
復習
$\sin(90^{\circ}\pm\theta)=\cos\theta$
$\cos(90^{\circ}\pm\theta)=\mp\sin\theta$
$\displaystyle \tan(90^{\circ}\pm\theta)=\mp\frac{1}{\tan\theta}$
$\sin(180^{\circ}\pm\theta)=\mp\sin\theta$
$\cos(180^{\circ}\pm\theta)=-\cos\theta$
$\tan(180^{\circ}\pm\theta)=\pm\tan\theta$
復号同順
私はこの公式は好きじゃなくて、このページの方法を使って考える方が好きだ。
この辺は人によるので、自分に合った方法で計算してほしい。
復習が終わったところで、問題にもどる。
$107^{\circ}$を図にすると、図Aの赤い線のような角度だ。
図Aより、
$107^{\circ}=90^{\circ}+17^{\circ}$
または
$107^{\circ}=180^{\circ}-73^{\circ}$
とかける。
$107^{\circ}=90^{\circ}+17^{\circ}$
だと、$17^{\circ}$を$\theta$として、
$\sin(90^{\circ}+\theta)=\cos\theta$
という式になるけど、選択肢にこの式はないから使えない。
$107^{\circ}=180^{\circ}-73^{\circ}$
だと、$73^{\circ}$を$\theta$として、
$\sin(180^{\circ}-\theta)=\sin\theta$
という式になる。
同じ式が選択肢の④にあるので、これが答えだ。
解答キ:4
さらに、単位円と三角比の値の復習をしよう。
復習
座標平面において、$x$軸から左回りに$\theta$の角度で 原点から引いた半直線(図Aの緑の線)と、単位円との交点(赤い点)を考える。
この交点の
$x$座標を$\cos\theta$
$y$座標を$\sin\theta$
とする。
復習より、$\sin 107^{\circ}$の値は、図Aの赤い点の$y$座標にあたる。
円の半径は$1$なので、赤い点の$y$座標は正で$1$に近い数だ。
なので、選択肢のうちで当てはまるのは、②の
$0.9563$
である。
解答ク:2
(3)
まず、(a)について。
明らかに誤りだけど、ひとつ例を考えてみよう。
こういう証明がアリなのであれば、次のようなことも出来てしまう。
$2000$を$2001$で割ると
$\displaystyle \frac{2000}{2001}=0.9995\ldots$
となる。
この右辺を小数第4位で四捨五入して、
$\displaystyle \frac{2000}{2001}\doteqdot 1.000$
とすることで
$\displaystyle \frac{2000}{2001}=1$
が証明できるとすれば、両辺に$2001$をかけて
$2000=2001$
が証明できてしまう。
次に、(b)について。
これも明らかに誤りだけど、ちょっと復習しよう。
復習
命題「AであればBである」について、
偽の場合、「AであるがBでない」例(反例)を一つあげれば証明したことになる
けれど、
真の場合、「AであってBである」例をあげるだけでは証明したことにはならない。
復習より、
$A=60^{\circ}$,$B=90^{\circ}$のとき$X=1$
$A=60^{\circ}$,$B=13^{\circ}$のとき$X=1$
の2例をあげただけでは、この命題の証明にはならない。
こういう証明がアリなのであれば、
鳥のダチョウは飛べない。
鳥のペンギンは飛べない。
なので、鳥は飛べない
ってことが証明できてしまう。
渡りは徒歩かな、やっぱり。
以上より、選択肢のうちで正しいのは
③
である。
解答ケ:3
(4)
次は、$\mathrm{BC}$を外接円の半径$R$で表す。
外接円の半径が出てきたので、これが含まれる公式を思い出すと、
正弦定理の
$\displaystyle \frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}=2R$
三角形の面積の公式の
$S=\displaystyle \frac{abc}{4R}$
の2つがあった。
いまは面積の公式は使えないので、正弦定理だ。
正弦定理より、
$\displaystyle \frac{\mathrm{BC}}{\sin A}=2R$
なので、
$\mathrm{BC}=2R\sin A$
とかける。
$A=60^{\circ}$
なので、これはさらに
$\mathrm{BC}=2R\sin 60^{\circ}$
より
$\displaystyle \mathrm{BC}=2R\cdot\frac{\sqrt{3}}{2}$
$\mathrm{BC}$$=\sqrt{3}R$式A
となる。
解答コ:3
$\displaystyle \frac{c}{\sin C}$,$\displaystyle \frac{b}{\sin B}$でも同じ作業を繰りかえすと、
$\displaystyle \frac{\mathrm{AB}}{\sin C}=2R$
より
$\mathrm{AB}=2R\sin C$式B
$\displaystyle \frac{\mathrm{AC}}{\sin B}=2R$
より
$\mathrm{AC}=2R\sin B$式C
となる。
解答サ:5, シ:1
(5)
$B$が鋭角のとき、点$\mathrm{C}$から辺$\mathrm{AB}$に下ろした垂線の足を$\mathrm{H}$とすると、図Cができる。
図Cの青い三角形は直角三角形なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{AH}}{\mathrm{AC}}=\cos A$
より
$\mathrm{AH}=\mathrm{AC}\cos 60^{\circ}$
とかける。
これに式Cを代入して、
$\mathrm{AH}=2R\sin B\cos 60^{\circ}$
より
$\displaystyle \mathrm{AH}=2R\sin B\cdot\frac{1}{2}$
$\mathrm{AH}$$=R\sin B$式D
である。
また、図Cの斜線の三角形も直角三角形なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{BC}}=\cos B$
より
$\mathrm{BH}=\mathrm{BC}\cos B$
とかける。
これに式Aを代入して、
$\mathrm{BH}=\sqrt{3}R\cos B$式E
である。
ここで、
$\mathrm{AB}=\mathrm{AH}+\mathrm{BH}$
なので、これに式D,式Eを代入すると、
$\mathrm{AB}=R\sin B+\sqrt{3}R\cos B$式F
と表せる。
解答ス:3, セ:5
設問には関係ないけれど、この先の解説もしておく。
ここで、式B$=$式Fなので、
$R\sin B+\sqrt{3}R\cos B = 2R\sin C$
より
$\sin B+\sqrt{3}\cos B=2\sin C$
$\sin B=2\sin C-\sqrt{3}\cos B$
とかける。
この式の両辺を2乗して、
$\sin^{2}B=4\sin^{2}C-4\sqrt{3}\cos B\cos C+3\cos^{2}B$
$\sin^{2}B$$=3\cos^{2}B+4\sin^{2}C-4\sqrt{3}\cos B\cos C$
両辺に$\cos^{2}B$をたすと、
$\sin^{2}B+\cos^{2}B$
$=4\cos^{2}B+4\sin^{2}C-4\sqrt{3}\cos B\cos C$
と変形できる。
この式の左辺は$1$,右辺は$X$なので、$B$が鋭角のとき、
$X=1$
である。
(6)
$B$が鈍角のときは、図Dのようになる。
図Dで(5)と同じ作業をしてみよう。
図Dの青い三角形は直角三角形なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{AH}}{\mathrm{AC}}=\cos A$
より
$\mathrm{AH}=\mathrm{AC}\cos 60^{\circ}$
とかける。
これに式Cを代入して、
$\mathrm{AH}=2R\sin B\cos 60^{\circ}$
より
$\displaystyle \mathrm{AH}=2R\sin B\cdot\frac{1}{2}$
$\mathrm{AH}$$=R\sin B$式D
である。
ここまでは$B$が鋭角のときと同じ。
図Cの斜線の三角形も直角三角形だけど、この三角形を使ってできるのは、$B$が鋭角のときとは違って
$\displaystyle \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{BC}}=\cos(180^{\circ}-B)$
という式だ。
これを変形すると
$\mathrm{BH}=\mathrm{BC}\cos(180^{\circ}-B)$
$\mathrm{BH}$$=-\mathrm{BC}\cos B$
となるから、下線部②は修正しないといけない。
これに式Aを代入して、
$\mathrm{BH}=-\sqrt{3}R\cos B$式G
である。
図Dでは、$B$が鋭角のときとは違って
$\mathrm{AB}=\mathrm{AH}-\mathrm{BH}$式H
になるから下線部③も修正だ。
解答 (い)下線部② $\mathrm{BH}=\mathrm{BC}\cos(180^{\circ}-B)$
または
$\mathrm{BH}=-\mathrm{BC}\cos B$
下線部③ $\mathrm{AB}=\mathrm{AH}-\mathrm{BH}$
設問には関係ないけれど、この先は、式Hに式D,式Gを代入すると
$\mathrm{AB}=R\sin B+\sqrt{3}R\cos B$
となって、式Fと同じ式になる。
(7)
まず、必要条件と十分条件についての復習をしよう。
アドバイス
必要条件・十分条件の問題は、一般的には
$p\Rightarrow q$ ×
$p\Leftarrow q$ ○
なので、必要条件
みたいに解くことが多いけど、○×の判定で混乱したり間違えたりすることが多い。なので、図や表で表せるときは、次の復習のように集合の大小で考える方がおすすめ。
復習
図Eで、
$p$は$q$の必要条件
$q$は$p$の十分条件
である。
つまり、片方の集合がもう片方に含まれるとき、
大きい集合は小さい集合の必要条件
小さい集合は大きい集合の十分条件
である。
「大は小の必要条件・小は大の十分条件。」
呪文のように憶えておこう。
図Fのようにふたつの集合が等しい場合は、必要十分条件となる。
図Gのように、片方がもう片方を含むような関係でない場合には、必要条件でも十分条件でもない。
というわけで、条件$p$,$q$の表す集合のベン図を描こう。
これまでの流れを振り返ると、
(4)(5)(6)で「$A=60^{\circ}$ならば$X=1$である」ことを証明した。
(7)で「$A=120^{\circ}$,$B=30^{\circ}$ならば$X=1$」を発見した。
だった。
よって、条件$p$,$q$の表す集合を$P$,$Q$として、上の2つをあてはめると、図Hができる。
図Hを見ると、集合$Q$は集合$P$を含んでいる。
なので、復習より、
$p$は$q$であるための十分条件
で、必要条件ではない。
以上より、正しいのは
②
である。
解答ソ:2