大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅠA 第4問 解説
はじめに
問題中のソフトを再現してみた。
領域内でドラッグして四面体を回転させて、イメージをつかんでみよう。
(1)
図Aの緑の四角形が正方形であることを証明する問題だ。
まず、4つの辺の長さが等しいことを証明する。
まず、面$\mathrm{ACD}$について考える。
点$\mathrm{F}$,点$\mathrm{G}$はそれぞれ辺$\mathrm{AC}$,$\mathrm{AD}$の中点なので、中点連結定理より、
$\displaystyle \mathrm{FG}=\frac{1}{2}\mathrm{CD}$
とかける。
同様に、
面$\mathrm{BCD}$について考えれば、
$\displaystyle \mathrm{HJ}=\frac{1}{2}\mathrm{CD}$
面$\mathrm{CAB}$について考えれば、
$\displaystyle \mathrm{FH}=\frac{1}{2}\mathrm{AB}$
面$\mathrm{DAB}$について考えれば、
$\displaystyle \mathrm{GJ}=\frac{1}{2}\mathrm{AB}$
であることが分かる。。
$\mathrm{ABCD}$は正四面体なので、四面体のすべての辺の長さは等しい。
よって、$\mathrm{AB}=\mathrm{CD}$なので、
$\mathrm{FG}=\mathrm{HJ}=\mathrm{FH}=\mathrm{GJ}$
である。
以上より、図Aの緑の四角形の4つの辺の長さは等しい。
解答ア:3, イ:3
(2)
4辺の長さが等しい四角形は、ひし形である。
ひし形のうち、対角線の長さが等しい(四つの角が等しいでもいいけど)性質を持つものが正方形だ。
よって、正方形の集合は、ひし形の集合に含まれる。
ここで、集合と必要条件・十分条件の復習をしよう。
復習
図Bで、
$p$は$q$の必要条件
$q$は$p$の十分条件
である。
つまり、片方の集合がもう片方に含まれるとき、
大きい集合は小さい集合の必要条件
小さい集合は大きい集合の十分条件
である。
「大は小の必要条件・小は大の十分条件。」
呪文のように憶えておこう。
図Cのようにふたつの集合が等しい場合は、必要十分条件となる。
図Dのように、片方がもう片方を含むような関係でない場合には、必要条件でも十分条件でもない。
今、正方形はひし形に含まれるので、図Bの$p$がひし形、$q$が正方形にあたる。
よって、ひし形であることは正方形であるための
必要条件であって、十分条件ではない
ことが分かる。
解答ウ:0
次に
$\mathrm{FJ}=\mathrm{GH}$
つまり 図Eの2本の赤い線が等しいことを証明したい。
そのために、
$\triangle \mathrm{FJC} \equiv \triangle \mathrm{GHD}$
つまり 図Eで
黄色い三角形 $\equiv$ 青い三角形
を証明したい。
だけど、この証明は難しいので、他の三角形の組に着目するという。
で、その着目する三角形を問われているんだけど、
問題にわざわざ$\triangle \mathrm{FJC} \equiv \triangle \mathrm{GHD}$を証明したいと書いている
ので、きっと△$\mathrm{FJC}$や△$\mathrm{GHD}$を含む三角形だ。
選択肢のうち、△$\mathrm{FJC}$や△$\mathrm{GHD}$を含むのは、
②$\mathrm{AJC}$
③$\mathrm{AHD}$
のふたつで、図Fの黄色い三角形と青い三角形だ。
見るからに合同っぽいし、最終的に証明したい赤い線も含んでいる。
解答エ:2, オ:3 (順不同)
別解
上の考え方をしない場合、選択肢を全部比較すれば答えは見つかる。
⓪の△$\mathrm{AGH}$はひとつの辺が赤い線なので有望だ。
しかし、選択肢のうちに、もう片方の赤い線である$\mathrm{FJ}$を一辺とする三角形がないので不適。
①の△$\mathrm{AIB}$,④の△$\mathrm{AHC}$,⑤の△$\mathrm{AJD}$は、赤い線を含んでないから不適。
なので、残る
②$\mathrm{AJC}$
③$\mathrm{AHD}$
が答えだ。
解答エ:2, オ:3 (順不同)
エオより、△$\mathrm{AJC}$と△$\mathrm{AHD}$を使って、$\mathrm{FJ}=\mathrm{GH}$を証明する。
△$\mathrm{AJC}$(図Fの黄色い三角形)について、
辺$\mathrm{AJ}$は、四面体の面$\mathrm{ABD}$の中線
辺$\mathrm{CJ}$は、四面体の面$\mathrm{CBD}$の中線
である。
また、△$\mathrm{AHD}$(図Fの青い三角形)について、
辺$\mathrm{AH}$は、四面体の面$\mathrm{ABC}$の中線
辺$\mathrm{DH}$は、四面体の面$\mathrm{CBD}$の中線
である。
ここで、四面体$\mathrm{ABCD}$のすべての面は合同な正三角形なので、
$\mathrm{AJ}=\mathrm{CJ}=\mathrm{AH}=\mathrm{DE}$
$\mathrm{AC}=\mathrm{AD}$
である。
以上より、3辺の長さが等しいので、
$\triangle \mathrm{AJC} \equiv \triangle \mathrm{AHD}$
であり、
△$\mathrm{AJC}$は$\mathrm{AJ}=\mathrm{CJ}$の、△$\mathrm{AHD}$は$\mathrm{AH}=\mathrm{DE}$の二等辺三角形である。
解答カ:1
また、$\mathrm{F}$,$\mathrm{G}$は辺$\mathrm{AC}$,$\mathrm{AD}$の中点だから、$\mathrm{J}$,$\mathrm{H}$を頂角としたときの△$\mathrm{AJC}$,△$\mathrm{AHD}$の高さにあたる。
合同な三角形の高さなので、
$\mathrm{FJ}=\mathrm{GH}$である。
(3)
次は、$\mathrm{EI}$⊥$\mathrm{CD}$を証明する問題。
問題文中の(a)を詳しく書くと、次のようになる。
△$\mathrm{ACD}$,△$\mathrm{BCD}$は正三角形なので、頂角から底辺の中点に引いた直線は、底辺の垂直二等分線である。
よって、
$\mathrm{CD}$⊥$\mathrm{AI}$
$\mathrm{CD}$⊥$\mathrm{BI}$
である。
これを使って(b)を証明する。
いつものように図を描いて見ながら考えよう。
図Gでは、4点$\mathrm{ABEI}$を通る平面を$\alpha$として 茶色で表した。
図Gを見て気づくのは、$\mathrm{AI}$(青い線)も$\mathrm{BI}$(緑の線)も$\mathrm{EI}$(オレンジの線)も平面$\alpha$上にあること。
なので、平面と直線の垂直を使う方向で考えてみよう。
まず、平面と直線の垂直の復習から。
復習
平面$\alpha$上の平行でない2つの直線を$\ell$,$m$とするとき、
直線$h$⊥$\ell$,$h$⊥$m$なら、$h$⊥$\alpha$
である。(A)
$h$⊥$\alpha$のとき、$h$は$\alpha$上のすべての直線と垂直である(B)
よって、
復習の(A)より、図Gにおいて、
赤⊥青 $\cap$ 赤⊥緑 $\Rightarrow$ 赤⊥ $\alpha$
復習の(B)より、図Gにおいて、
赤⊥ $\alpha\ \Rightarrow$ 赤⊥オレンジ
となるので、(a)から(b)が証明できる。
以上から、選択肢のうちで、復習の(A),(B)と同じ内容の
①,②
が答えだ。
解答キ:1,2
(4)
太郎さんの条件、花子さんの条件のそれぞれについて考えてみよう。
太郎さんの条件
$\mathrm{AC}=\mathrm{AD}$のとき、△$\mathrm{ACD}$は二等辺三角形になる。
二等辺三角形の頂角から底辺の中点に引いた直線は、底辺の垂直二等分線なので、
$\mathrm{AI}$⊥$\mathrm{CD}$
である。
同様に、
$\mathrm{BI}$⊥$\mathrm{CD}$
といえる。
以上より、太郎さんの条件を満たす四面体は、問題文中の下線部(a)の性質を持つ。
よって、(3)より、問題文中の下線部(b)は常に成り立つ。
花子さんの条件
$\mathrm{BC}=\mathrm{AD}$,$\mathrm{AC}=\mathrm{BD}$のとき、例えば図Hのような四面体が考えられる。
図中の同じ色の辺は等しい。
△$\mathrm{ABC}$と△$\mathrm{BAD}$において、
$\mathrm{AB}$は共通
$\mathrm{BC}=\mathrm{AD}$
$\mathrm{AC}=\mathrm{BD}$
より、3辺が等しいので
$\triangle \mathrm{ABC} \equiv \triangle \mathrm{BAD}$
である。
なので、
$\mathrm{EC}=\mathrm{ED}$
といえる。
△$\mathrm{ECD}$(図Hの黄色い三角形)において、
$\mathrm{EC}=\mathrm{ED}$
より、△$\mathrm{ECD}$は二等辺三角形なので、
$\mathrm{EI}$⊥$\mathrm{CD}$
である。
よって、問題文中の下線部(b)は常に成り立つ。
以上より、問題文中の下線部(b)は、太郎さんの条件でも花子さんの条件でも常に成り立つ。
なので、正しい選択肢は
⓪
である。
解答ク:0