大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅡB 第1問 [3] 解説

アドバイス

まず最初にグラフの移動や拡大・縮小について復習しておこう。

復習

$y=f(x)$のグラフの式の

平行移動 $x$に$x-p$を代入
→グラフは$x$軸方向に$p$平行移動
$y$に$y-q$を代入
→グラフは$y$軸方向に$q$平行移動
対称移動 $x$に$-x$を代入
→グラフは$y$軸に関して対称移動
$y$に$-y$を代入
→グラフは$x$軸に関して対称移動
拡大 $x$に$\displaystyle \frac{x}{a}$を代入
→グラフは$y$軸を中心として$x$軸方向に$a$倍に拡大
$y$に$\displaystyle \frac{y}{b}$を代入
→グラフは$x$軸を中心として$y$軸方向に$b$倍に拡大
縮小 $x$に$ax$を代入
→グラフは$y$軸を中心として$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{a}$倍に縮小
$y$に$by$を代入
→グラフは$x$軸を中心として$y$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{b}$倍に縮小

である。

復習の「拡大」と「縮小」は同じことを言いかえているだけなので、片方憶えておけば大丈夫。

(1)

復習

$y=\sin x$のグラフの形を確認しておくと、図のような形だった。

大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅡB第1問[3] 復習図

つまり、最大値と最小値は$1$と$-1$で、$x$軸の正の向きとの交点は、順に$\pi$,$2\pi$,$\ldots$だった。
このことを頭に入れて、問題を解く。

(i)

$y=\sin 2x$式A
は、
$y=\sin x$式B
の $x$ に $2x$ を代入したもの。

なので、復習より、式Aのグラフは、
式Bのグラフを$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{2}$倍に縮小
したもの(図A)。

図A
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅡB第1問[3] 解説図A

よって、グラフは

である。

解答ケ:4


(ii)

$\displaystyle y=\sin\left(x+\frac{3}{2}\pi\right)$式C
は、
$y=\sin x$式B
の $x$ に $ x+\displaystyle \frac{3}{2}\pi$ を代入したもの。

なので、復習より、式Cのグラフは、
式Bのグラフを$x$軸方向に$-\displaystyle \frac{3}{2}\pi$平行移動
したもの(図B)。

図B
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅡB第1問[3] 解説図B

よって、グラフは

である。

解答コ:6

(2)

問題のグラフは、$y=\sin x$のグラフからでも、$y=\cos x$のグラフからでも作れそうだ。

ただ、$y=\sin x$も$y=\cos x$も
周期は$ 2\pi$ 最大値は$1$,最小値は$-1$ だけど、問題のグラフは
周期は$\pi$ 最大値は$2$,最小値は$-2$ だから、拡大縮小しないといけない。

なので、$y=\sin x$と$y=\cos x$を
$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{2}$倍 $y$軸方向に$2$倍 してから平行移動しよう。


まず、$y=\sin x$からつくってみる。

$y=\sin x$を
$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{2}$倍 $y$軸方向に$2$倍 すると、復習より、
$\displaystyle \frac{1}{2}y=\sin 2x$
とかける。

これを変形して、
$y=2\sin 2x$式D
としてグラフを描くと、図Cのようになる。

青いグラフが $y=2\sin 2x$、黒いグラフが問題のグラフだ。

図C
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅡB第1問[3] 解説図C

図Cより、青いグラフを黒いグラフに重ねるには、
ピンクの矢印のように、$x$軸方向に$\displaystyle \frac{\pi}{4}$平行移動する オレンジの矢印のように、$x$軸方向に$-\displaystyle \frac{3}{4}\pi$平行移動する の2つの方法がある。


ピンクの矢印の移動の場合、式は、復習より、式Dの$x$に$x-\displaystyle \frac{\pi}{4}$を代入して
$\displaystyle y=2\sin 2\left(x-\frac{\pi}{4}\right)$
とかける。
選択肢に、同じ式は存在しない。

この式を変形すると、
$\displaystyle y=2\sin\left(2x-\frac{\pi}{2}\right)$
となる。
この式は選択肢の①だ。

オレンジの矢印の移動の場合、式は、復習より、式Dの$x$に$ x+\displaystyle \frac{3}{4}\pi$を代入して
$\displaystyle y=2\sin 2\left(x+\frac{3}{4}\pi\right)$
とかける。
選択肢に、同じ式は存在しない。

この式を変形して
$\displaystyle y=2\sin\left(2x-\frac{3}{2}\pi\right)$
としても、選択肢に同じ式は存在しない。


次に、$y=\cos x$を材料にしてみよう。

$y=\cos x$を
$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{2}$倍 $y$軸方向に$2$倍 すると、復習より、
$\displaystyle \frac{1}{2}y=\cos 2x$
とかける。

これを変形して、
$y=2\cos 2x$式E
としてグラフを描くと、図Dのようになる。

青いグラフが $y=2\cos 2x$、黒いグラフが問題のグラフだ。

図D
大学入学共通テスト2017年試行調査 数学ⅡB第1問[3] 解説図D

図Cより、青いグラフを黒いグラフに重ねるには、
ピンクの矢印のように、$x$軸方向に$\displaystyle \frac{\pi}{2}$平行移動する オレンジの矢印のように、$x$軸方向に$-\displaystyle \frac{\pi}{2}$平行移動する の2つの方法がある。


ピンクの矢印の移動の場合、式は、復習より、式Eの$x$に$x-\displaystyle \frac{\pi}{2}$を代入して
$\displaystyle y=2\cos 2\left(x-\frac{\pi}{2}\right)$
とかける。
この式は選択肢の⑤だ。

オレンジの矢印の移動の場合、式は、復習より、式Eの$x$に$x+\displaystyle \frac{\pi}{2}$を代入して
$\displaystyle y=2\cos 2\left(x+\frac{\pi}{2}\right)$
とかける。
この式は選択肢の⑥だ。


以上より、問題の図の関数の式として正しいものは
①,⑤,⑥
である。

解答サ:156