数学A : 場合の数と確率 大学入試センター試験 2008年本試 数学ⅠA第4問 解説

アドバイス

ここで解説した2008年度本試の問題だけど、お勧めの解法は樹形図一択だ。
ほかの方法でも解けるけど、樹形図よりも面倒で、その結果ミスの確率も上がるのでお勧めしない。
特に、計算だけで解こうとすると混乱しがちなので やめた方がいいと思う。ここで解説もしない。

以下の解説では、説明を簡単にするために、
「文字Aを書く」を 操作A 「文字Bを書く」を 操作B 「何も書かない」を 操作C と書くことにする。

樹形図を使った解法

問題を解く準備

図A
大学入試センター試験2008年本試 数学ⅠA第4問 解説図A

問題から樹形図を描くと、図Aができる。
図中のは、何も書かれていないときの文字の列を表している。

最初に、さいころを3回投げてできる(1)(27)の$27$個の文字の列それぞれの場合の数を考えておこう。

例えば、(1)のAAAになるためには、3回の操作のうち
1回目は、操作A
2回目も、操作A
3回目も、操作A

でなければならない。
よって、3回ともさいころの目はまたはのどちらかなので、場合の数は
$2^{3}=8$通り
となる。

同様に、(2)のAABも、(3)のAも、場合の数は8通りである。
このことから予想できるけど、(1)(27)のどれも場合の数は8通りで、すべて確率は等しい。

以上を頭において、問題を解こう。

(1)

図Aを見ると、文字の列がAAAなのは、(1)の1か所。
なので、目の出方は8通り。

解答ア:8

図Aを見ると、文字の列がABなのは、(20)の1か所。
なので、この場合も、目の出方は8通り。

解答イ:8

(2)

図Aを見ると、文字の列がAなのは5か所。
また、すべての文字の列は(1)(27)の$27$個で、上で考えたように どの場合も確率は等しい。
なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{5}{27}$
となる。

解答ウ:5, エ:2, オ:7

図Aを見ると、文字の列がなのも5か所。
よって、求める確率は、この場合も
$\displaystyle \frac{5}{27}$
である。

解答カ:5, キ:2, ク:7

(3)

図Aを見ると、字数が3なのは8か所。
なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{8}{27}$
となる。

解答ケ:8, コ:2, サ:7

図Aを見ると、字数が2なのは4か所。
なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{4}{27}$
である。

解答シ:4, ス:2, セ:7


アドバイス

次に問われている期待値は、今の教育課程からは外れている。
一応解説は書いておくけど、読み飛ばしてもらってかまわない。

図Aを見ると、
字数が3なのは8か所
字数が2なのは4か所
字数が1なのは10か所
字数が0なのは5か所

である。

どの文字列になる確率も等しいので、期待値は(1)(27)の字数の平均と等しい。
よって、求める期待値は、
$$ \begin{align} \frac{3\cdot 8+2\cdot 4+1\cdot 10+0\cdot 5}{27}&=\frac{42}{27}\\ &=\frac{14}{9} \end{align} $$ となる。

解答ソ:1, タ:4, チ:9

表を使った解法

あんまりお勧めじゃないけど、樹形図の代わりに表を書くという手もある。
ただし、この問題ではさいころを3回投げるので、表の書き方をちょっと工夫しないといけない。

お勧めは、表Bのように、1回目にが出たとき,が出たとき,が出たときの3つの表に分けて書く方法だ。


表B
1回目にが出たとき
A3回目
2回目AAAAAAABA
ABABAABBA
AB
1回目にが出たとき
B3回目
2回目BABAABABB
BBBBABBBB
AB
1回目にが出たとき
3回目
2回目AAAAB
BBABB
AB

表中、緑のマスはさいころを1回投げた後の文字の列、青いマスは2回投げた後の文字の列を表している。

表Bを使って答えを求める方法は、図Aを使う場合とほとんど変わらないので省略する。

発展

センター試験の問題は 操作A,B,Cの確率がすべて等しかったので解きやすかった。
けれど、いつも確率が等しいとは限らない。
確率がばらばらのときを考えてみよう、

例題

のとき、操作A
のとき、操作B
のとき、操作C

として、このとき、字数が1になる確率を求めなさい。

さっきの問題では、お薦めの方法は樹形図だった。
今度の問題では、お薦めの方法は表だ。
理由は[発展:樹形図を使った解法]の最後で説明する。

発展:表を使った解法

表Bと同様に、表Cを作る。
ポイントは、2回目・3回目とも、の6つの行や列をつくること。
こうすると、各表の中で全てのマスの確率が等しくなる。

ただし、表がごちゃごちゃするのを避けるため、表Cでは操作が同じ場合はまとめて表示した。
例えば、表中の赤文字の部分は 罫線を省略して3マス分をひとつに、青文字の部分は6マス分をひとつにまとめてある。


表C
表C1:1回目にが出たとき
A3回目
2回目AAAAAAABA
ABABAABBA
AB
表C2:1回目にが出たとき
B3回目
2回目BABAABABB
BBBBABBBB
AB
表C3:1回目にが出たとき
3回目
2回目AAAAB
BBABB
AB

字数が1なのは、表Cの赤い部分。
このマスを数える。

ただし、表Cの3つの表は起こる確率が異なる。
1回目がのときを基準に考えると、
1回目がになるのは2倍
1回目がになるのは3倍

の割合で起こる。
なので、表C2のマスの数は2倍,表C3は3倍にする。

表C1では、赤いマスは$18$個。 表C2でも赤いマスは$18$個だけど、
$2$倍するので $18\times 2$個。
表C3では、赤いマスは$9$個だけど、
$3$倍するので $9\times 3$個。
合計すると、赤いマスは
$$ \begin{align} 18+18\cdot 2+9\cdot 3&=9(2+2\cdot 2+3)\\ &=9^{2}\\ &=3^{4}\text{個} \end{align} $$

表C1~表C3の全部のマスは、表1つあたり$6\times 6$個なので、
$$ \begin{align} 6\cdot 6 + 6\cdot 6\times 2 + 6\cdot 6\times 3 &=6\cdot 6(1+2+3)\\ &=6^{3}\text{個} \end{align} $$

よって、確率は、
$$ \begin{align} \frac{3^{4}}{6^{3}}&=\frac{3}{2^{3}}\\ &=\displaystyle \frac{3}{8} \end{align} $$ である。

解答$\displaystyle \frac{3}{8}$

発展:樹形図を使った解法

まず(1)(27)の文字の列になる確率を考えておこう。

例えば文字の列がAAAとなる場合の数は、
1回目は、操作A
2回目も、操作A
3回目も、操作A

でなければならないから、
$1^{3}=1$通り。

BBBとなる場合の数は、
1回目は、操作B
2回目も、操作B
3回目も、操作B

でなければならないから、
$2^{3}=8$通り。

このことから予想できるけど、それぞれの文字の列はできる確率が結構ばらばらだ。

図D
大学入試センター試験2008年本試 数学ⅠA第4問 解説図D

図Dのように樹形図を作って、確率ごとに番号を色分けしてみたけど、本当にばらばらなのが分かると思う。

この図を使って例題を解くと、次のようになる。


字数がAになるのは、(3)(6)(7)(8)(12)(15)(16)(17)(25)(26)のとき。
それぞれの場合の数は、

(3)
$1 \times 1 \times 3 = 3$通り
(6)
$1 \times 2 \times 3 = 6$通り
(7)
$1 \times 3 \times 1 = 3$通り
(8)
$1 \times 3 \times 2 = 6$通り
(12)
$2 \times 1 \times 3 = 6$通り
(15)
$2 \times 2 \times 3 = 12$通り
(16)
$2 \times 3 \times 1 = 6$通り
(17)
$2 \times 3 \times 2 = 12$通り
(25)
$3 \times 3 \times 1 = 9$通り
(26)
$3 \times 3 \times 2 = 18$通り

なので、あわせて
$3\times 2+6\times 4+9\times 1+12\times 2+18\times 1=81$式A
通り。

全部の場合の数は、さいころを3回投げるので
$6^{3}$
通り。

よって、確率は
$\displaystyle \frac{81}{6^{3}}=\frac{3^{4}}{6^{3}}$
     $=\displaystyle \frac{3}{2^{3}}$
     $=\displaystyle \frac{3}{8}$
である。

解答$\displaystyle \frac{3}{8}$

アドバイス

以上、樹形図を使って例題を解いてみたけれど、式Aにたどり着くまでがややこしい。
確率がばらばらなのはしかたがないけれど、図Dで そのばらばらの確率が不規則に並んでいるのが良くないのだ。作業がややこしいと、ミスも招きやすい。
なので、例題のように確率がばらばらの場合は、樹形図はお勧めできない