大学入試センター試験 2019年(平成31年) 本試 数学ⅡB 第2問 解説

(1)

$f(x)$が$x=-1$で極値をとるので、
$f'(-1)=0$式A
である。

解答ア:0

ここで
$f'(x)=3x^{2}+2px+q$
だから、式Aより
$3(-1)^{2}+2(-1)p+q=0$
なので
$3-2p+q=0$
$q=2p-3$式B
とかける。

また、$x=-1$のときの極値が$2$なので、
$f(-1)=2$
となるから
$(-1)^{3}+(-1)^{2}p+(-1)q=2$
より
$-1+p-q=2$
$p-q=3$式C
となる。

式Bと式Cの連立方程式を解く。
式Cに式Bを代入して、
$p-(2p-3)=3$
$p-2p+3=3$
$p=0$

これを式Bに代入して、
$q=2\cdot 0-3$
$q$$=-3$
である。

解答イ:0, ウ:-, エ:3

よって、
$f(x)=x^{3}-3x$
$f'(x)=3x^{2}-3$式D
$f'(x)$$=3(x^{2}-1)$
$f'(x)$$=3(x+1)(x-1)$
となる。


以上より増減表を書くと、

$x$ $\cdots$ $-1$ $\cdots$ $1$ $\cdots$
$f'(x)$ $\nearrow$ $0$ $\searrow$ $0$ $\nearrow$
$f(x)$ $2$ $f(1)$
となる。
増減表より、極小値は
$x=1$
のとき
$f(1)=1^{3}-3\cdot 1$
$f(1)$$=-2$
である。

解答オ:1, カ:-, キ:2

別解

上の解は教科書通りの解き方だけど、慣れてくるとこの別解の方が早く解けるのでお薦め。

別解の説明に入る前に、$n$次関数の偶関数・奇関数の復習をしておこう。

復習

$k$を$0$以外の実数として、
$y=kx^{n}$
のグラフは、
$n$が偶数のとき、
グラフは$y$軸に関して対称(偶関数)
$n$が奇数のとき、
グラフは原点に関して対称(奇関数)
になる。
さらに
偶関数の和は偶関数 奇関数の和は奇関数 である。

$f(x)$は
$f(x)=x^{3}-3x$
だから、復習より
$y=x^{3}$は奇関数 $y=-3x$は奇関数 奇関数の和は奇関数 なので、
$y=f(x)$は奇関数 である。

$y=f(x)$は奇関数だから原点に関して対称なので、
$x=-1$のとき極値$2$ をとるならば、原点に関して$(-1$,$2)$と対称な点$(1$,$-2)$についても
$x=1$のとき極値$-2$ をとるはずである。

以上より、$y=f(x)$は
$x=-1$のとき極大値$2$ $x=1$のとき極小値$-2$ をとることが分かる。

解答オ:1, カ:-, キ:2

(2)

次は放物線の接線の問題だ。

基本に忠実に、まずは接線$\ell$の傾きから。
$D$の式
$y=-kx^{2}$
を微分して、
$y'=-2kx$
点Aにおける接線なので、これに$x=a$を代入して、接線$\ell$の傾きは
$-2ka$
である。

また、$\ell$は点A$(a$,$-ka^{2})$を通る。

よって、$\ell$の式は
$y-(-ka^{2})=-2ka(x-a)$
とかける。
これを変形して、$\ell$の式は
$y=-2kax+2ka^{2}-ka^{2}$
$y$$=-2kax+ka^{2}$
である。

解答ク:-, ケ:2, コ:2

$\ell$と$x$軸の交点の$x$座標は、式①に$y=0$を代入して、
$-2kax+ka^{2}=0$
$2kax=ka^{2}$
$x\displaystyle =\frac{a}{2}$
である。

解答サ:a, シ:2


ここまでで分かったことを図にすると、図Aができる、

図A
大学入試センター試験2019年本試 数学ⅡB第2問 解説図A

図Aのオレンジの部分の面積$S$を求める。
問題文の流れ通り、赤で囲んだ部分の面積から青い部分の面積を引こう。

赤で囲んだ部分の面積は、
赤 $=-\displaystyle \int_{0}^{a}(-kx^{2})dx$

途中式 $=\displaystyle \int_{0}^{a}kx^{2}dx$
$=\displaystyle \left[\frac{k}{3}x^{3}\right]_{0}^{a}$
$\displaystyle =\frac{k}{3}a^{3}$
である。

解答ス:3, セ:3

青い部分の面積は、三角形の面積の公式より、
青 $=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot$底辺$\cdot$高さ

途中式 $\displaystyle =\frac{1}{2}\cdot\left(a-\frac{a}{2}\right)(0-ka^{2})$
$\displaystyle =\frac{1}{2}\cdot\frac{a}{2}\cdot ka^{2}$
$\displaystyle =\frac{k}{4}a^{3}$
である。

$S=$赤$-$青
なので、
$S=\displaystyle \frac{k}{3}a^{3}-\frac{k}{4}a^{3}$

途中式 $S$$=\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{4}\right)ka^{3}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{12}ka^{3}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{k}{12}a^{3}$
となる。

解答ソ:1, タ:2

(3)

点Aが$C$上にあり、$\ell$が$C$に接するので、図Bのようなグラフが考えられる

図B
大学入試センター試験2019年本試 数学ⅡB第2問 解説図B

このとき、
点Aが$C$上にあるので、$(a$,$-ka^{2})$を$C$の式に代入して、
$-ka^{2}=a^{3}-3a$
$k=\displaystyle \frac{a^{3}-3a}{-a^{2}}$

途中式 $k\displaystyle $$\displaystyle =\frac{a^{3}}{-a^{2}}+\frac{-3a}{-a^{2}}$
$k\displaystyle $$\displaystyle =-a+\frac{3}{a}$
$k\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3}{a}-a$式E
である。

解答チ:3, ツ:a, テ:a

さらに、$\ell$が$C$に接するので、(2)で式①をつくったように $\ell$の式をもうひとつ作ろう。
$C$と$\ell$の接点を$(b$,$b^{3}-3b)$とする。

まずは接線$\ell$の傾きから。
$(b$,$b^{3}-3b)$における接線なので、式Dに$x=b$を代入して、接線$\ell$の傾きは
$3b^{2}-3$
である。

また、$\ell$は$(b$,$b^{3}-3b)$を通る。

よって、$\ell$の式は
$y-(b^{3}-3b)=(3b^{2}-3)(x-b)$

途中式 $y=(3b^{2}-3)(x-b)+(b^{3}-3b)$
$y$$=(3b^{2}-3)x-(3b^{3}-3b)+(b^{3}-3b)$
$y=3(b^{2}-1)x-2b^{3}$
である。

解答ト:3, ナ:1, ニ:2


ここまでは悩むことはないけど、次の行の
$f(x)-g(x)=(x-$$)^{2}(x+$$b)$
の左辺の
$f(x)-g(x)$
が何を意味するのか分からない人もいると思う。
この式の意味が分からなくても問題は解けるけど、せっかくだから説明しておこう。

説明1

図C
大学入試センター試験2019年本試 数学ⅡB第2問 解説図C

$y=f(x)$は$C$の式なので、
$f(x)$は曲線$C$の$y$座標の式だ。
例えば$f(1)$は図Cの緑の点の$y$座標である。
式②の右辺を$g(x)$とおくから、$y=g(x)$は$\ell$の式。
よって、$g(x)$は直線$\ell$の$y$座標の式だ。
例えば$g(1)$は図Cの青い点の$y$座標である。
以上より、例えば$f(1)-g(1)$は、$x=1$のときの$C$と$\ell$との$y$軸方向の距離、つまり図Cの赤い線の長さだ。
なので、$f(x)-g(x)$は$C$と$\ell$との$y$軸方向の距離を表している。
$C$より$\ell$が上にあるときは負の値になるけど。
ということは、
$f(x)-g(x)=0$
のとき、$C$と$\ell$とは距離が$0$、つまり共有点になる。

言いかえると、$C$と$\ell$の共有点の$x$座標は、方程式
$f(x)-g(x)=0$
の解である。

説明2

$y=f(x)$は$C$の式
式②の右辺を$g(x)$とおくので、$y=g(x)$は$\ell$の式
だから、$C$と$\ell$の共有点を求めるには、連立方程式
$\left\{\begin{array}{l} y=f(x)\\ y=g(x) \end{array}\right.$
を解けばよい。

加減法をして、

$y$ $=$ $f(x)$
$-)$ $y$ $=$ $g(x)$
$0$ $=$ $f(x)-g(x)$

より、$C$と$\ell$の共有点の$x$座標は、方程式
$f(x)-g(x)=0$
の解である。

以上の説明より
$f(x)-g(x)=0$式F
の解は$C$と$\ell$の共有点だけど、$f(x)-g(x)$を作っているので共有点を求めよと言うのだろう。

$f(x)=x^{3}-3x$ $g(x)=3(b^{2}-1)x-2b^{3}$ なので、
$f(x)-g(x)=(x^{3}-3x)-\{3(b^{2}-1)x-2b^{3}\}$

途中式 $f(x)-g(x)$$=x^{3}-3x-3(b^{2}-1)x+2b^{3}$
$f(x)-g(x)$$=x^{3}-3(1+b^{2}-1)x+2b^{3}$
$f(x)-g(x)$$=x^{3}-3b^{2}x+$$2b^{3}$式G
とかける。

この式Gからの式をつくる。
三次式なので面倒に見えるけど、$C$と$\ell$は$x=b$で接する。
なので、式Fは$x=b$の重解をもつはずだから、式Gは
$f(x)-g(x)=(x-b)^{2}(x+$$Q$$)$式G'
と因数分解できるはずだ。

解答ヌ:b

ここまでくると、式Gを因数分解して式G'を作るより、式G'を展開して式Gと見比べた方が早い。
今は$Q$が分かればよいので、定数項だけを展開して、
$(-b)^{2}\times Q=Qb^{2}$
これが式Gの定数項(赤い部分)だから、
$Qb^{2}=2b^{3}$
$Q=2b$
なので、式G'は
$f(x)-g(x)=(x-b)^{2}(x+$$2b$$)$
となる。

解答ネ:2

以上より、$C$と$\ell$の共有点の$x$座標は
$b$,$-2b$
であることが分かった。

一方、図Bより、$C$と$\ell$の共有点の$x$座標は
$b$,$a$
だから、
$a=-2b$式H
である。


また、式①の
$y=$$-2ka$$x$$+ka^{2}$
と、式②の
$y=$$3(b^{2}-1)$$x$$-2b^{3}$
は両方とも$\ell$の式だから、同じ式である。
2つの式の$x$の係数(赤い部分)・定数項(青い部分)は等しいので、

$-2ka=3(b^{2}-1)$式I
$ka^{2}=-2b^{3}$式J

とかける。

傾きを使うように指示があるので、式Iを使う。
式Jを使っても同じ答えが出るけど、計算が面倒だ。

$a^{2}$の値を求めるんだけど、式Iを見ると、
$k$ $b^{2}$ が含まれている。
じゃまなので消そう。

式Hの両辺を2乗して、
$a^{2}=4b^{2}$
$b^{2}=\displaystyle \frac{a^{2}}{4}$
これと、式Eを式Iに代入して、
$-2\left(\frac{3}{a}-a\right)a=3\left(\frac{a^{2}}{4}-1\right)$

途中式 $-6+2a^{2}=\displaystyle \frac{3}{4}a^{2}-3$
$2a^{2}-\displaystyle \frac{3}{4}a^{2}=3$
両辺を$4$倍して、
$8a^{2}-3a^{2}=12$
$5a^{2}=12$
$a^{2}=\displaystyle \frac{12}{5}$式K
となる。

解答ノ:1, ハ:2, ヒ:5


もう少しだ。
最後に、このときの$S$を求める。

(2)のソタで求めたように、$S$は
$S=\displaystyle \frac{k}{12}a^{3}$式L
だった。
まず$k$を消す。

式Lに式Eを代入して、
$S=\displaystyle \frac{\frac{3}{a}-a}{12}\cdot a^{3}$

途中式 $S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{12}\left(\frac{3}{a}-a\right)a^{3}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{12}(3a^{2}-a^{4})$

これに式Kを代入して、このときの$S$は、
$S=\displaystyle \frac{1}{12}\left\{3\cdot\frac{12}{5}-\left(\frac{12}{5}\right)^{2}\right\}$

途中式 $S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3}{5}-\frac{12}{5^{2}}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{15}{25}-\frac{12}{25}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3}{25}$
である。

解答フ:3, ヘ:2, ホ:5