大学入試センター試験 2016年(平成28年) 追試 数学ⅠA 第1問 [1] 解説
(1)
以下の説明では、「または」を$\cup$、「かつ」を$\cap$とかく。
まず、復習から始めよう。
復習
$\mathrm{A}\Rightarrow \mathrm{B}$の逆は、$\mathrm{A}\Leftarrow \mathrm{B}$
$\mathrm{A}\Rightarrow \mathrm{B}$裏は、$\overline{\mathrm{A}}\Rightarrow\overline{\mathrm{B}}$
$\mathrm{A}\Rightarrow \mathrm{B}$の対偶は、$\overline{\mathrm{A}}\Leftarrow\overline{\mathrm{B}}$
だった。
なので、命題Aの逆は、
「$x \gt 2$」ならば「$x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0$」
解答ア:4, イ:0
対偶は、
「$\overline{x \gt 2}$」ならば「$\overline{x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0}$」
となる。この$\overline{x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0}$の部分は、ド・モルガンの法則より
「$\overline{x \gt 2}$」ならば「$\overline{x^{2} \gt 2}\ \cap\ \overline{x^{3} \gt 0}$」
と書きなおせる。これはさらに
「$x\leqq 2$」ならば「$x^{2}\leqq 2\ \cap\ x^{3}\leqq 0$」
となる。
解答ウ:5, エ:3
(2)
頭の中だけで考えると混乱するので、面倒でも数直線を描こう。
そのためにまず不等式を解く。
$x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0$は、
$x^{2} \gt 2$
$x \lt -\sqrt{2},\ \sqrt{2} \lt x$
$x^{3} \gt 0$
$x \gt 0$
なので、図Aの範囲になる。
また、$x^{2}\leqq 2\ \cap\ x^{3}\leqq 0$は
$x^{2}\leqq 2$
$-\sqrt{2}\leqq x\leqq\sqrt{2}$
$x^{3}\leqq 0$
$x\leqq 0$
となり、図Bの範囲である。
以上から、命題Aとその逆,対偶を、それぞれ仮定を緑,結論を赤で数直線上に表すと、
命題A
命題Aの逆
命題Aの対偶
ここで命題の真偽について復習をしておこう。
復習
命題「[仮定]ならば[結論]である」について、
真になるのは
[仮定]$\subset$[結論]
[仮定]$=$[結論]
のとき。
つまり、[仮定]が[結論]からはみ出してなければ真。
だった。
このことから、図Cは緑の範囲(仮定)が赤い範囲(結論)よりも広いので、偽。
図Dは緑の範囲が赤い範囲に収まっているので、真。
図Eは緑の範囲が赤い範囲よりも広いので、偽。
なので、真は命題Aの逆だけである。
解答オ:1
アドバイス
命題と対偶の真偽は一致するので、この問題で対偶の真偽を確認する必要はないけれど、念のために説明した。
(3)
復習
条件$p$,$q$について、
$\left\{\begin{array}{l}
p\Rightarrow q ×\\
p\Leftarrow q \text{○}
\end{array}\right.$
のとき、$p$は$q$の必要条件
$\left\{\begin{array}{l}
p\Rightarrow q \text{○}\\
p\Leftarrow q ×
\end{array}\right.$
のとき、$p$は$q$の十分条件
$\left\{\begin{array}{l}
p\Rightarrow q \text{○}\\
p\Leftarrow q \text{○}
\end{array}\right.$
のとき、$p$は$q$の必要十分条件
$\left\{\begin{array}{l}
p\Rightarrow q ×\\
p\Leftarrow q ×
\end{array}\right.$
のとき、どちらでもない
だった。
(2)で 命題Aは偽,命題Aの逆は真であることが分かっている。
「$x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0$」$\Rightarrow$「$x \gt 2$」×
「$x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0$」$\Leftarrow$「$x \gt 2$」○
だから、必要条件。
解答カ:0
別解
アドバイス
$p$は$q$の何条件か考えるとき、上の解のように
$\left\{\begin{array}{l}
p\Rightarrow q ×\\
p\Leftarrow q \text{○}
\end{array}\right.$
なので、必要条件って解くことが多い。特に今回の問題では、命題と逆の真偽が分かっていたので上の解のように解いた。
しかし、命題と逆の真偽が分かっていない場合、○×の判定で混乱したり間違えたりすることが多い。なので、数直線やベン図で表せるときは、集合の大小で考える方がおすすめ。
ということで、集合で考える。
復習
条件$p$,$q$が表す集合が
これ以外のとき、$p$は$q$の必要条件でも十分条件でもない
もう一度図Cを見る。
緑の範囲($x^{2} \gt 2\ \cup\ x^{3} \gt 0$)が赤い範囲($x \gt 2$)を含んでいる。
復習の一番上のパターンなので、必要条件。
解答カ:0
アドバイス
いつも集合で考える方が解きやすいとは言えないけれど、多くの問題で集合で考える方がミスが少なくてシンプルに解ける。
まず、復習の内容を憶えよう。「大は小の必要条件。」呪文のように憶えておこう。