大学入試センター試験 2016年(平成28年) 追試 数学ⅡB 第5問 解説

(1)

図A
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第5問 解説図A

平均$50$の正規分布のグラフは、図Aのようになる。図Aで、グラフと横軸の間の面積を$1$としたとき、$P(X\geqq 45.5)$は青い斜線の部分の面積、$P(X\geqq 63.5)$は赤い斜線の部分の面積にあたる。

問題の最後についている正規分布表は、図Bの正規分布のグラフで言うと、グラフと横軸の間の面積を$1$としたとき、緑の面積と$z_{0}$の関係を表にしたもの。ということは、正規分布表を見たら楽勝じゃんとか思うけど、ひとつ問題がある。

図B
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第5問 解説図B

正規分布表のは、平均$0$,標準偏差$1$の標準正規分布
問いの正規分布は、平均$50$,標準偏差$9$の正規分布
なので、そのまま比較ができないのだ。
というわけで、問いの正規分布を標準正規分布に変換する。この「平均値を$0$,標準偏差を$1$にする」作業を、標準化という。


復習

確率変数$X$の平均値を$\mu$,標準偏差を$\sigma$とする。標準化した確率変数を$Z$とすると、
$Z=\displaystyle \frac{X-\mu}{\sigma}$式A
である。

式Aを使って図Aを標準化する。
今、$\mu=50$,$\sigma=9$なので、$45.5$は、
$\displaystyle \frac{45.5-50}{9}=-0.5$
$63.5$は、
$\displaystyle \frac{63.5-50}{9}=1.5$
となる。
以上より、図Aを標準化すると、図Cのようになる。

図C
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第5問 解説図C

さて、図Cの青い斜線の面積と、赤い斜線の面積を求めよう。
まず、青い斜線の部分から。
正分布のグラフは左右対称なので、縦軸より右の面積は$0.5$。
それに、緑色の部分の面積を加えれば、青い斜線の面積$P(X\geqq 45.5)$だ。
緑色の部分の面積は正規分布表を見るんだけど、表には縦軸より右部分しか載ってない。なので、$-0.5$の縦軸に関して対称な$0.5$を使う。表で$z_{0}=0.5$を探すと、面積は$0.1915$であることが分かる。
以上より、
$P(X\geqq 45.5)=0.1915+0.5$
$P(X\geqq 45.5)$$=0.6915$
である。

解答ア:6, イ:9, ウ:1, エ:5

次は、赤い斜線の面積だ。
縦軸より右の面積は$0.5$で、これから黄色い部分の面積を引けば、赤い斜線の面積$P(X\geqq 63.5)$だ。
正規分布表で$z_{0}=1.5$を探すと、黄色い部分の面積は$0.4332$であることが分かる。
以上より、
$P(X\geqq 63.5)=0.5-0.4332$
$P(X\geqq 63.5)$$=0.0668$
である。

解答オ:0, カ:6, キ:6, ク:8

アドバイス

全く省略せずに説明したので長い話になったけど、やってることはかなり単純で、完全にワンパターンだ。なので、このやり方を憶えておいてほしい。

(2)

復習

母平均$\mu$,母標準偏差$\sigma$の母集団からランダムに大きさ$n$の標本を取り出し、その平均値を$\overline{X}$とするとき、
$\overline{X}$の
平均(期待値)$ E(\overline{X})=\mu$ 標準偏差$\displaystyle \sigma(\overline{X})=\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$ である。

なので、標本平均の平均値は母平均と同じで、$50$である。

解答ケ:5, コ:0

標準偏差は、
$\displaystyle \frac{9}{\sqrt{144}}=\frac{9}{12}=\frac{3}{4}=0.75$
である。

解答サ:0, シ:7, ス:5

(3)

ここで、母平均の信頼区間の復習をしよう。

復習

母平均$\mu$の信頼区間は、標本の大きさを$n$、標本平均を$\overline{X}$,母標準偏差を$\sigma$とすると、
$\displaystyle \overline{X}-z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\ \leqq\ \mu\ \leqq\ \overline{X}+z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$式B
信頼度95%のとき、$z=1.96$ 信頼度99%のとき、$z=2.58$ だった。

求める母平均を$\mu$とすると、式Bより
$\displaystyle 51-1.96\cdot\frac{9}{\sqrt{144}}\ \leqq\ \mu\ \leqq\ 51+1.96\cdot\frac{9}{\sqrt{144}}$式C
ここで、
$\displaystyle 1.96\cdot\frac{9}{\sqrt{144}}=1.96\displaystyle \cdot\frac{9}{12}$
$\hspace{98px} =1.96\displaystyle \cdot\frac{3}{4}$
$\hspace{98px} =1.47$
なので、式Cは
$51-1.47\ \leqq\ \mu\ \leqq\ 51+1.47$
$49.53\ \leqq\ \mu\ \leqq\ 52.47$

これを、問題文中のマスに合うように小数点以下2桁で四捨五入すると、
$49.5\ \leqq\ \mu\ \leqq\ 52.5$
となる。

解答セ:4, ソ:9, タ:5, チ:5, ツ:2, テ:5

(4)

二項分布の復習をしておこう。

復習

確率$p$で事象$\mathrm{A}$が起こる試行を$n$回繰り返し、$\mathrm{A}$が起こった回数を$Y$とすると、$Y$の確率分布は二項分布$B(n,p)$である。
このとき、確率変数$Y$の
平均(期待値)$E(Y)=np$式D 分散$\sigma^{2}(Y)=np(1-p)$ 標準偏差$\sigma(Y)=\sqrt{np(1-p)}$式E になる。

だった。

ついでに、信頼度についても軽く復習をしておこう。

復習

信頼度とは、求める値がその範囲に含まれる確率である。
例えば(3)で求めた母平均の信頼区間だけれど、信頼度95%で計算したので、母平均$\mu$は$0.95$の確率で求めた信頼区間の中に含まれる。

問題にもどって、確率変数$Y$は二項分布$B(n,p)$に従う。
試行回数$n$は、$304$($144$ではないので注意) 確率$p$は、信頼度についての復習から、$0.95$ より、式Dを使って、確率変数$Y$の平均$E(Y)$は、
$E(Y)=304\cdot 0.95$
$\phantom{E(Y)}=288.8$

解答ト:2, ナ:8, ニ:8, ヌ:8

標準偏差$\sigma(Y)$は、式Eを使って、
$\sigma(Y)=\sqrt{304\cdot 0.95(1-0.95)}$

途中式 $\sigma(Y)$$=\sqrt{304\cdot 0.95\cdot 0.05}$
$\sigma(Y)$$\displaystyle =\sqrt{\frac{304\cdot 95\cdot 5}{100^{2}}}$
$\sigma(Y)$$\displaystyle =\sqrt{\frac{4\times 4\times 19\cdot 19\times 5\cdot 5}{100^{2}}}$
$\displaystyle \sigma(Y)$$\displaystyle =\frac{4\cdot 19\cdot 5}{100}$
$\displaystyle \sigma(Y)$$\displaystyle =\frac{2\cdot 19}{10}$
$\sigma(Y)$$=3.8$
となる。

解答ネ:3, ノ:8


で、次の
$\displaystyle P(Y\leqq 285)=P\left(\frac{Y-\fbox{トナニ}.\fbox{ヌ}}{\fbox{ネ}.\fbox{ノ}}\leqq-\fbox{ハ}.\fbox{ヒフ}\right)$式F
の行が意味不明かも知れない。でも、よく見ると、式の右辺と左辺は同じ構造で、左辺の$Y$が、右辺では$\displaystyle \frac{Y-\fbox{トナニ}.\fbox{ヌ}}{\fbox{ネ}.\fbox{ノ}}$になっていることに気づく。
先に解いたようにトナニ.は$Y$の平均、.は標準偏差なので、$\displaystyle \frac{Y-\text{平均}}{\text{標準偏差}}$の形になっている。これは、標準化の式だ。(分からない人は式Aを見てね)。
ならば、$285$を標準化すれば、$-$.ヒフが求められるのではないか。

ということで、$285$を標準化する。
$\displaystyle \frac{285-288.8}{3.8}= \frac{-3.8}{3.8}$
$\hspace{92px} =-1$
より、式Fは、
$\displaystyle P(Y\leqq 285)=P\left(\frac{Y-\fbox{トナニ}.\fbox{ヌ}}{\fbox{ネ}.\fbox{ノ}}\leqq-1.00\right)$
とかける。

解答ハ:1, ヒ:0, フ:0


次は、二項分布と正規分布の復習だ。

復習

$n$が十分に大きい数であるとき、二項分布$B(n,p)$は、正規分布$N(np,np(n-p))$で近似できる

だった。

$Y$は二項分布$B(304,0.95)$に従う。
$304$を十分に大きい数とすると、この二項分布は正規分布で近似できる。
しかも、式Fの左辺を求めるときに標準化したので、式Fの左辺は平均値$0$,標準偏差$1$の標準正規分布で近似できる。
だから、ハヒフで求めた$-1.00$はそのまま使えて、図Dの赤い斜線の部分の面積を求めればよい。
あとは正規分布表を見るのだが、表には縦軸より右の面積しか載っていない。なので、表で$z_{0}=1.00$を探して、図中の緑の部分を求める。

図D
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第5問 解説図D

正規分布表より、緑の部分の面積は$0.3413$であることが分かる。これは図中の黄色い部分の面積と等しい。赤い斜線の面積と黄色い部分の面積の和は$0.5$なので、赤い斜線の面積は
$0.5-0.3413=0.1587\doteqdot 0.16$
となり、これが求める確率である。

解答ヘ:1, ホ:6