大学入試センター試験 2016年(平成28年) 追試 数学ⅡB 第3問 解説

(1)

領域$D$の各頂点は、境界線の方程式を連立させて求めよう。

図A
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第3問 解説図A

$\left\{\begin{array}{l} y=0\\ y=3x \end{array}\right.$
より、$(0,0)$
$\left\{\begin{array}{l} y=3x\\ y=-3x+12k \end{array}\right.$
より、$(2k,6k)$
$\left\{\begin{array}{l} y=0\\ y=-3x+12k \end{array}\right.$
より、$(4k,0)$
である。

解答ア:2, イ:6, ウ:4

ここまでの内容をグラフにすると、図Aになる。

図B
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第3問 解説図B

$k=1$のときは、考えるよりも数える方が早い。
図Bより、17個。

解答エ:1, オ:7


ここからの問題文が理解しにくい人も多いと思うので、問題文の流れに沿って、考え方を解説しつつ解いてゆく。

$k=1$以外のときの格子点の数を考えるために、まず$k=1$のときにどのように数えたかを考えてみよう。
図Bの赤い点を単純に数えてもいいんだけど、ちょっと数え方を工夫してみる。

図C
大学入試センター試験2016年追試 数学ⅡB第3問 解説図C

まず、領域の左半分(ちょうど真ん中を含む。図Cの青い部分)に含まれる格子点の数を数える。
$x=0$の点(つまり$y$軸上の点)は、1個。
$x=1$の点は、4個。
$x=2$の点は、7個。
で、$1+4+7$なんだけど、これは初項が$1$,公差が$3$の等差数列じゃないかと気づく。
まぁ、上の直線の傾きが$3$なので、当然と言えば当然ではある。

これを数列風に書き直してみる。
図Cの青い部分の格子点のうち、$x=j$である点の数を$a_{j}$とすると、
$a_{0}=1$
$a_{1}=4$
$a_{2}=7$
とかける。
この数列の一般項は、
$a_{j}=a_{1}+(j-1)\cdot 3$
$a_{j}$$=4+(j-1)\cdot 3$
$a_{j}=3j+1$式A
である。
$a_{j}=a_{0}+(j-1)\cdot 3$じゃないことに注意。

解答カ:3, キ:1

以上より、格子点の和は、等差数列の和の公式を使って
$a_{0}+a_{1}+a_{2}$
$=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 3(a_{0}+a_{2})$
$=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 3(1+7)=12$
となる。


じゃぁ$k=1$以外の場合も考えてみよう。
$k=1$のときは領域のちょうど真ん中は$x=2$だったけど、これが$x=2k$になる。これは問題の最初に求めた。
領域の左端は$x=0$で変わらない。
なので、領域の左半分(ちょうど真ん中を含む)に含まれる格子点の数は、$a_{0}$から$a_{2k}$まで、項数にして$2k+1$項の和と考えられる。

アドバイス

項数は$2k$項ではなくて$2k+1$項。
$a_{1}$から$a_{2k}$までが$2k$項。それに$a_{0}$の1項を加えて、$2k+1$項である。

この和$q$は、等差数列の和の公式を使って、
$q=a_{0}+a_{1}+\cdots+a_{2k}$
$q\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{2}(2k+1)(a_{0}+a_{2k})$

式Aより、$a_{2k}=3\cdot 2k+1$なので、
$q=\displaystyle \frac{1}{2}(2k+1)(1+3\cdot 2k+1)$
$q\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{2}(2k+1)(2\cdot 3k+2)$
$q$$=(2k+1)(3k+1)$
$q$$=6k^{2}+5k+1$
となる。

解答ク:6, ケ:5, コ:1


次は領域の右半分だ。
図Cを見ると、$k=1$のとき、領域の右半分(ちょうど真ん中を含まない。図Cの緑の部分)に含まれる格子点の数は、左半分より$a_{2}$だけ少ないことが分かる。
このことから、$k=1$以外の場合も考えると、右半分に含まれる格子点の数$S$は、
$S=a_{0}+a_{1}+\cdots+a_{2k-1}$
$S\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{2}\cdot 2k(a_{0}+a_{2k-1})$
式Aより、$a_{2k-1}=3(2k-1)+1$なので、
$S=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 2k\{1+3(2k-1)+1\}$
$S$$=k(6k-1)$
$S$$=6k^{2}-k$
となる。

以上より、領域全体に含まれる格子点の数$p$は、
$p=q+S$
$p$$=(6k^{2}+5k+1)+(6k^{2}-k)$
$p$$=12k^{2}+4k+1$式B
である。

解答サ:1, シ:2, ス:4, セ:1

(2)

アドバイス

問題の四つの不等式を見ると、「うへ~。空間領域か」とか思うかもしれないけれど、この問題は領域を考える必要はない。
(1)の領域と(2)の不等式を見比べると、ほとんど同じだけど$k$が$z$に変わってて、$1\leqq z\leqq 2n$ってのが増えてる。
なので、(1)の結果がそのまま使おう。

まず、$k$が$z$に変わったらどうなるか考えよう。
式Bは領域$D$に含まれる格子点の数$p$の式だけど、$p$は$k$の値によって変わる。なので、$p$は$k$の式になってる。で、式Bより、$k=z$のとき
$p=12z^{2}+4z+1$式B'
といえる。

$n=1$のときは$1\leqq z\leqq 2$。
なので、$z=1$のときの$p$と$z=2$のときの$p$をたせば、$n=1$のときの$r$が求められる。

$z=1$のときの$p$を$p_{1}$,$z=2$のときの$p$を$p_{2}$とすると、式B'より、
$p_{1}=12\cdot 1^{2}+4\cdot 1+1$ $p_{2}=12\cdot 2^{2}+4\cdot 2+1$ この和が$r$なので、
$r=p_{1}+p_{2}$
$r$$=(12\cdot 1^{2}+4\cdot 1+1)+(12\cdot 2^{2}+4\cdot 2+1)$
$r$$=74$
である。

解答ソ:7, タ:4


ここまでの計算で分かるように、$p_{1}$,$p_{2}$,$\ldots$は数列で、式B'がその一般項にあたる。つまり、
$p_{z}=12z^{2}+4z+1$式B''
だといえる。

また、$r$は、$n=1$のときの$r$を$r_{1}$,$n=2$のときの$r$を$r_{2}$とすると、
$n=1$のとき、$1\leqq z\leqq 2$より、$r_{1}=p_{1}+p_{2}$ $n=2$のとき、$1\leqq z\leqq 4$より、$r_{2}=p_{1}+p_{2}+p_{3}+p_{4}$ とかける。これも数列だと気づく。

この数列の一般項は
$r_{n}=p_{1}+\cdots+p_{2n}$
$r_{n}\displaystyle $$\displaystyle =\sum_{z=1}^{2n}p_{z}$式C
である。
この$r_{n}$が、問題で最後に問われている$r$だ。


あとは計算だ。
ついでに、$\displaystyle \sum$の公式を復習しておこう。

復習

$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$
$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^{2}=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$
$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^{3}=\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^{2}$
$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}r^{k}=\frac{r(1-r^{n})}{1-r}\qquad(r \neq 1)$

だった。

計算にもどって、式B''と式Cより、
$r=r_{n}$
$r\displaystyle $$\displaystyle = \sum_{z=1}^{2n}(12z^{2}+4z+1)$
$r\displaystyle $$\displaystyle =12\cdot\sum_{z=1}^{2n}z^{2}+4\cdot\sum_{z=1}^{2n}z+\sum_{z=1}^{2n}1$
$r\displaystyle $$\displaystyle =12\cdot\frac{1}{6}\cdot 2n(2n+1)(2\cdot 2n+1)$
            $ \displaystyle +4\cdot\frac{1}{2}\cdot 2n(2n+1)+2n$
$r$$=2n\{2(2n+1)(2\cdot 2n+1)+2(2n+1)+1\}$
$r$$=2n(16n^{2}+16n+5)$
$r$$=32n^{3}+32n^{2}+10n$
となる。

解答チ:3, ツ:2, テ:3, ト:2, ナ:1, ニ:0