大学入試センター試験 2018年(平成30年) 追試 数学ⅡB 第4問 解説
(1)
アドバイス
空間ベクトルの問題だ。今回は図がなくても解けるけど、イメージをつかむために描いた方がいい。図を見ながら考えると、ミスも減るし。
空間座標に忠実に図を描くと、図Aみたいなのができる。
だけど、センター試験本番でこんな図を描いてはいけない。時間がかかるから。
お薦めは、図Bだ。
まず、$\vec{p}$,$\vec{q}$の大きさだ。
$|\vec{p}|=\sqrt{2^{2}+(-1)^{2}+(-1)^{2}}$
$|\vec{p}|$$=\sqrt{6}$
$|\vec{q}|=\sqrt{0^{2}+1^{2}+(-1)^{2}}$
$|\vec{q}|$$=\sqrt{2}$
である。
解答ア:6, イ:2
次は2つのベクトルのなす角なので、内積から考えよう。
それぞれのベクトルの成分から、
$\vec{p}\cdot\vec{q}=2\cdot 0+(-1)\cdot 1+(-1)(-1)$
$=0$
より、内積が$0$なので、なす角は
$90^{\circ}$
である。
解答ウ:9, エ:0
(2)
$\vec{n}=(1,y,z)$
とおく。
$\vec{n}$⊥$\vec{p}$なので、
$\vec{n}\cdot\vec{p}=1\cdot 2+y\cdot(-1)+z\cdot(-1)=0$
だから、
$y+z=2$式A
である。
$\vec{n}$⊥$\vec{q}$なので、
$\vec{n}\cdot\vec{q}=1\cdot 0+y\cdot 1+z\cdot(-1)=0$
だから、
$y-z=0$
$y=z$式B
である。
式Aと式Bの連立方程式を解く。
式Bを式Aに代入して、
$y+y=2$
$y=1$
これを式Bに代入して、
$z=1$
となるので、
$\vec{n}=(1,1,1)$
となる。
解答オ:1, カ:1
ここで、$\vec{n}$の意味を考えておこう。
平面に垂直なベクトルについて復習すると、
復習
平面$\alpha$上に、$\vec{0}$でも平行でもない2つのベクトル$\vec{a}$,$\vec{b}$があるとき、
$\vec{c}$⊥$\vec{a}$,$\vec{c}$⊥$\vec{b}$ $\Leftrightarrow$ $\vec{c}$が平面$\alpha$と垂直
である。
詳しくはこのページ参照。
だった。
復習より、$\vec{n}$は平面$\alpha$と垂直である。
また、点$\mathrm{A}$の座標と$\vec{n}$の成分より、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{n}=6\cdot 1+(-1)\cdot 1+1\cdot 1$
$=6$
$\vec{n}\cdot\vec{n}=1\cdot 1+1\cdot 1+1\cdot 1$
$=3$
である。
別解
$\vec{n}\cdot\vec{n}$は、
$\vec{n}\cdot\vec{n}=|\vec{n}|^{2}$
$=\sqrt{1^{2}+1^{2}+1^{2}}^{2}$
$=3$
としても求められる。
解答キ:6, ク:3
アドバイス
ここからは
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}=r\vec{n}+s\vec{p}+t\vec{q}$
に、$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}$,$\vec{n}$,$\vec{p}$,$\vec{q}$の成分を代入して
$(6,-1,1)=r(1,1,1)+s(2,-1,-1)+t(0,1,-1)$
$(6,-1,1)$$=(r,r,r)+(2s,-s,-s)+(0,t,-t)$
$(6,-1,1)$$=(r+2s,r-s+t,r-s-t)$
から、連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
r+2s=6\\
r-s+t=-1\\
r-s-t=1
\end{array}\right.$
をつくり、これを解くのが一般的だ。
けれど、今回は問題文が違う解法に誘導しているから、それに従って解く。
連立方程式を解く方法は、別解で説明する。
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}=r\vec{n}+s\vec{p}+t\vec{q}$
とおいたので、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{n}=\left(r\vec{n}+s\vec{p}+t\vec{q}\right)\cdot\vec{n}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{n}$$=r\vec{n}\cdot\vec{n}+s\vec{p}\cdot\vec{n}+t\vec{q}\cdot\vec{n}$式C
ここで、
キより$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{n}=6$
クより$\vec{n}\cdot\vec{n}=3$
$\vec{n}$⊥$\vec{p}$より$\vec{n}\cdot\vec{p}=0$
$\vec{n}$⊥$\vec{q}$より$\vec{n}\cdot\vec{q}=0$
なので、式Cは
$r\cdot 3+s\cdot 0+t\cdot 0=6$
$3r=6$
$r=2$
となる。
解答ケ:2
同じ作業を$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{p}$と$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{q}$でも行う。
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{p}=\left(r\vec{n}+s\vec{p}+t\vec{q}\right)\cdot\vec{p}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{p}$$=r\vec{n}\cdot\vec{p}+s\vec{p}\cdot\vec{p}+t\vec{q}\cdot\vec{p}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{p}$$=r\vec{n}\cdot\vec{p}+s\left|\vec{p}\right|^{2}+t\vec{q}\cdot\vec{p}$式D
ここで、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{p}=6\cdot 2+(-1)(-1)+1\cdot(-1)$
$=12$
アより$\left|\vec{p}\right|=\sqrt{6}$
$\vec{n}$⊥$\vec{p}$より$\vec{n}\cdot\vec{p}=0$
$\vec{p}$⊥$\vec{q}$より$\vec{p}\cdot\vec{q}=0$
なので、式Dは
$r\cdot 0+s\cdot\sqrt{6}^{2}+t\cdot 0=12$
$6s=12$
$s=2$
となる。
解答コ:2
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{q}=\left(r\vec{n}+s\vec{p}+t\vec{q}\right)\cdot\vec{q}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{q}$$=r\vec{n}\cdot\vec{q}+s\vec{p}\cdot\vec{q}+t\vec{q}\cdot\vec{q}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{q}$$=r\vec{n}\cdot\vec{q}+s\vec{p}\cdot\vec{q}+t\left|\vec{q}\right|^{2}$式E
ここで、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{q}=6\cdot 0+(-1)\cdot 1+1\cdot(-1)$
$=-2$
イより$\left|\vec{q}\right|=\sqrt{2}$
$\vec{n}$⊥$\vec{q}$より$\vec{n}\cdot\vec{q}=0$
$\vec{p}$⊥$\vec{q}$より$\vec{p}\cdot\vec{q}=0$
なので、式Eは
$r\cdot 0+s\cdot 0+t\cdot\sqrt{2}^{2}=-2$
$2t=-2$
$t=-1$
となる。
解答サ:-, シ:1
アドバイス
以上、問題文の誘導するとおりに解いた。
でも、この解き方をすると計算が面倒になりがちなので要注意だ。今回 面倒な計算にならなかったのは、基準となるベクトル$\vec{n}$,$\vec{p}$,$\vec{q}$が互いに垂直だったから。
一般的な解法で解くと、次の別解のようになる。センター試験本番では、別解の方法で解いてもらっても全く問題ない。
別解
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}=r\vec{n}+s\vec{p}+t\vec{q}$
に、$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}$,$\vec{n}$,$\vec{p}$,$\vec{q}$の成分を代入して
$(6,-1,1)=r(1,1,1)+s(2,-1,-1)+t(0,1,-1)$
$(6,-1,1)$$=(r,r,r)+(2s,-s,-s)+(0,t,-t)$
$(6,-1,1)$$=(r+2s,r-s+t,r-s-t)$
なので、連立方程式
$r+2s=6$式F1 | |
$r-s+t=-1$式F2 | |
$r-s-t=1$式F3 |
ができる。これを解く。
式F2から式F3を辺々引いて、
$r$ | $-s$ | $+t$ | $=$ | $-1$ | |
$-)$ | $r$ | $-s$ | $-t$ | $=$ | $1$ |
$2t$ | $=$ | $-2$ |
解答サ:-, シ:1
これを式F2に代入して、
$r-s-1=-1$
$r-s=0$
$r=s$式G
これを式F1に代入して、
$s+2s=6$
$3s=6$
$s=2$
解答コ:2
これを式Gに代入して、
$r=2$
解答ケ:2
となる。
次は$u$だ。
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}\cdot\vec{n}$を使ってケを求めたのと同じことを、$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}\cdot\vec{n}$でもやる。
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}=u\vec{n}+v\vec{p}+w\vec{q}$
とおいたので、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}\cdot\vec{n}=\left(u\vec{n}+v\vec{p}+w\vec{q}\right)\cdot\vec{n}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}\cdot\vec{n}$$=u\vec{n}\cdot\vec{n}+v\vec{p}\cdot\vec{n}+w\vec{q}\cdot\vec{n}$式H
ここで、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}\cdot\vec{n}=1\cdot 1+6\cdot 1+2\cdot 1$
$=9$
クより$\vec{n}\cdot\vec{n}=3$
$\vec{n}$⊥$\vec{p}$より$\vec{n}\cdot\vec{p}=0$
$\vec{n}$⊥$\vec{q}$より$\vec{n}\cdot\vec{q}=0$
なので、式Hは
$u\cdot 3+s\cdot 0+t\cdot 0=9$
$3u=9$
$u=3$
となる。
解答ス:3
アドバイス
スも、ケ~サシの別解のように解くのが一般的だ。
一般的な方法で解くと、次の別解のようになる。センター試験本番では、こちらの方法で解いてもらっても全く問題ない。
別解
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}=u\vec{n}+v\vec{p}+w\vec{q}$
に、$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}$,$\vec{n}$,$\vec{p}$,$\vec{q}$の成分を代入して
$(1,6,2)=u(1,1,1)+v(2,-1,-1)+w(0,1,-1)$
$(1,6,2)$$=(u,u,u)+(2v,-v,-v)+(0,w,-w)$
$(1,6,2)$$=(u+2v,u-v+w,u-v-w)$
なので、連立方程式
$u+2v=1$式I1 | |
$u-v+w=6$式I2 | |
$u-v-w=2$式I3 |
ができる。これを解く。
式I2と式I3を辺々たして、
$u$ | $-v$ | $+w$ | $=$ | $6$ | |
$+)$ | $u$ | $-v$ | $-w$ | $=$ | $2$ |
$2u$ | $-2v$ | $=$ | $8$ |
これと式I1を辺々たして、
$2u$ | $-2v$ | $=$ | $8$ | |
$+)$ | $u$ | $+2v$ | $=$ | $1$ |
$3u$ | $=$ | $9$ |
となる。
解答ス:3
(3)
アドバイス
ここから先、問題文が何をやっているのか分からない人もいるだろから、先にストーリーを説明しておく。
図形と方程式の単元で、次のような問題を見たことがあるだろう。
例題
$xy$平面上に、点$\mathrm{A}(-1,3)$,点$\mathrm{B}(4,8)$と、直線$\ell : y=\displaystyle \frac{1}{2}x+1$上に点$\mathrm{M}$がある。
このとき、$\mathrm{AM}+\mathrm{BM}$が最小となる、点$\mathrm{M}$の座標を求めなさい。
このタイプの問題は、図Cのように、直線$\ell$に関して点$\mathrm{A}$と対称な点$\mathrm{C}$をとり、直線$\ell$と$\mathrm{BC}$の交点を求めて解いていた。
以下では、これと同じことを空間で行う。
平面$\alpha$に関して点$\mathrm{A}$と対称な点$\mathrm{C}$をとり、平面$\alpha$と$\mathrm{BC}$の交点を考える。
ケ~サシより、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}=-2\vec{n}+2\vec{p}-\vec{q}$
これに各ベクトルの成分を代入して、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}=-2(1,1,1)+2(2,-1,-1)-(0,1,-1)$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}$$=(-2,-2,-2)+(4,-2,-2)+(0,-1,1)$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}$$=(-2+4,-2-2-1,-2-2+1)$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}$$=(2,-5,-3)$
である。
解答セ:2, ソ:-, タ:5, チ:-, ツ:3
以上より、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}=2\vec{n}+2\vec{p}-\vec{q}=(6,-1,1)$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}=3\vec{n}+v\vec{p}+w\vec{q}=(1,6,2)$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}=-2\vec{n}+2\vec{p}-\vec{q}=(2,-5,3)$
であることが分かった。
図Dのように、$\mathrm{BC}$と平面$\alpha$の交点を$\mathrm{M}$、点$\mathrm{A}$,点$\mathrm{B}$から平面$\alpha$に下ろした垂線の足を点$\mathrm{H}$,点$\mathrm{I}$とする。
$\vec{p}$,$\vec{q}$は平面$\alpha$上のベクトル
$\vec{n}$⊥$\vec{p}$,$\vec{n}$⊥$\vec{q}$なので、平面$\alpha$と$\vec{n}$は垂直
なので、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{A}}=$$2\vec{n}$$+$$2\vec{p}-\vec{q}$
の赤い部分が$\vec{\mathrm{H}\mathrm{A}}$,緑の部分が$\vec{\mathrm{O}\mathrm{H}}$にあたる。
同様に、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}=$$3\vec{n}$$+$$v\vec{p}+w\vec{q}$
の赤い部分が$\vec{\mathrm{I}\mathrm{B}}$,緑の部分が$\vec{\mathrm{O}\mathrm{I}}$に、
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}=$$-2\vec{n}$$+$$2\vec{p}-\vec{q}$
の赤い部分が$\vec{\mathrm{H}\mathrm{B}}$,緑の部分が$\vec{\mathrm{O}\mathrm{H}}$にあたる。
以上より、
$\mathrm{IB}:\mathrm{HC}=3:2$
点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{C}$は平面$\alpha$に関して対称な点
であることが分かる。
よって、図Dの緑の三角形と青い三角形は相似で、相似比は
$3:2$
だから、
$\mathrm{AM}:\mathrm{CM}=3:2$
である。
解答テ:2
このことから、点$\mathrm{M}$は線分$\mathrm{BC}$を$3:2$に内分する点なので、
$\displaystyle \vec{\mathrm{O}\mathrm{M}}=\frac{2\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}+3\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}}{3+2}$
と表せる。
これに$\vec{\mathrm{O}\mathrm{B}}$,$\vec{\mathrm{O}\mathrm{C}}$の成分を代入して、
$\displaystyle \vec{\mathrm{O}\mathrm{M}}=\frac{2(1,6,2)+3(2,-5,-3)}{3+2}$
途中式
$\displaystyle \vec{\mathrm{O}\mathrm{M}}$$\displaystyle =\frac{(2,12,4)+(6,-15,-9)}{5}$
$\displaystyle \vec{\mathrm{O}\mathrm{M}}$$\displaystyle =\frac{(8,-3,-5)}{5}$
$\vec{\mathrm{O}\mathrm{M}}$$=\left(\frac{8}{5},\frac{-3}{5},\frac{-5}{5}\right)$
である。
解答ト:8, ナ:5, ニ:-, ヌ:3, ネ:5, ノ:-, ハ:1