大学入試センター試験 2018年(平成30年) 追試 数学ⅡB 第5問 解説

(1)

確率変数$X$は正規分布$N(50.2,0.4^{2})$に従っているので、$X$が$50$未満である確率は図Aの緑の部分の面積にあたる。

図A
大学入試センター試験2018年追試 数学ⅡB第5問 解説図A

この面積を正規分布表から求めるんだけど、
正規分布表に載っているのは、$N(0,1)$ 面積を求めたいのは、$N(50.2,0.4^{2})$ だから、そのままでは正規分布表は使えない。
$N(50.2,0.4^{2})$を標準化して、$N(0,1)$に変換しよう。

復習

確率変数を、
平均$0$ 標準偏差$1$ に変換することを、標準化という。

もとの確率変数を$X$とし、
$X$の平均値を$m$ $X$の標準偏差を$\sigma$ 変換後の標準化された確率変数を$Z$ とすると、変換式は
$Z=\displaystyle \frac{X-m}{\sigma}$
である。

つまり、問題文中の$Z=\displaystyle \frac{X-m}{\sigma}$は確率変数を標準化する式だ。

ここで、
$X$の平均$m$は$50.2$ $X$の標準偏差$\sigma$は$0.4$

なので、
$X \lt 50$
の両辺を復習の方法で標準化すると、
$\displaystyle \frac{X-m}{\sigma} \lt \frac{50-50.2}{0.4}$
より
$Z \lt -0.5$
という式が出来る。

つまり、
$N(50.2,0.4^{2})$で$X \lt 50$である確率 と、
$N(0,1)$で$Z \lt -0.5$である確率 は等しいということだ。

解答ア:0, イ:5


あとは、この確率、つまり図Bの緑の面積を求めればよい。

図B
大学入試センター試験2018年追試 数学ⅡB第5問 解説図B

正規分布表に載っているのは、$0$より右の数と、$0$との間の面積。
なので、緑の面積を直接求めることはできない。

まず、正規分布表で、$0.50$をさがすと、$0.1915$とある。
これが、図Bの青い部分の面積だ。
正規分布は左右対称なので、図Bの黄色い部分の面積も$0.1915$である。

$Z$は確率変数なので、図Bのグラフ全体の面積は$1$だ。
さらに、図Bは左右対称なので、緑$+$黄は$0.5$である。

なので、求める緑の部分の面積は、
緑$=0.5-0.1915$
$=0.3085$
$\doteqdot 0.31$
だから、求める確率は、
$0.31$
である。

解答ウ:3, エ:1

(2)

次は、図Cの緑の部分の面積が$0.04$となるような平均$m$を求める。

図C
大学入試センター試験2018年追試 数学ⅡB第5問 解説図C

(1)では、平均値と標準偏差が分かっていて、$50$g未満の製品の確率を求めた。
今度は、標準偏差と$50$g未満の製品の確率が分かっていて、平均値を求めたい。
ということなので、(1)の作業の逆をしよう。

図Cを標準化して、図Dをつくる。

図D
大学入試センター試験2018年追試 数学ⅡB第5問 解説図D

図Dの緑の部分の面積が$0.04$になればよい。
問題文より、ちょうど$0.04$ではなく、$0.0401$になる$.$カキを探すようだ。

$Z$は確率変数なので、図Dのグラフ全体の面積は$1$だ。
さらに、図Dは左右対称なので、緑$+$黄は$0.5$である。

なので、緑の面積が$0.0401$なら、黄色の面積は
$0.5-0.0401=0.4599$
であり、青の面積も同じ$0.4599$だ。

正規分布表で$0.4599$を探すと、
$1.75$
のときであることが分かる。

解答オ:1, カ:7, キ:5

図Cを標準化したものが図Dなので、$50$を標準化すると$-1.75$になるはずだ。
なので、
$\displaystyle \frac{50-m}{\sigma}=-1.75$
という式ができる。
今、標準偏差は$0.4$なので、この式は
$\displaystyle \frac{50-m}{0.4}=-1.75$
となる。

これを解いて、
$50-m=-1.75\times 0.4$
$m=50+1.75\times 0.4$
$m$$=50.7$
である。

解答ク:5, ケ:0, コ:7

(3)

まず、標本平均について復習しておこう。

復習

平均$m$,標準偏差が$\sigma$である母集団から、ランダムに大きさ$n$の標本を取り出し、標本平均を$\overline{X}$とする。
このとき、
$\overline{X}$の平均$E(\overline{X})=m$ $\overline{X}$の標準偏差$\displaystyle \sigma(\overline{X})=\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$ となる。

復習より、
$X_{1}$,$X_{2}$,$\cdots$,$X_{9}$の平均値を$\overline{X}$とすると、
$\overline{X}$の平均$E(\overline{X})=50.2$式A $\overline{X}$の標準偏差$\displaystyle \sigma(\overline{X})=\frac{0.4}{\sqrt{9}}$
                         $=\displaystyle \frac{0.4}{3}$式B
である。

あ、先にの答えが出てしまった。

解答チ:3

さらに、$\overline{X}$と$Y$の関係を考えると、
$\displaystyle \overline{X}=\frac{X_{1}+X_{2}+\cdots+X_{9}}{9}$
より、
$X_{1}+X_{2}+\cdots+X_{9}=9\overline{X}$
$Y=X_{1}+X_{2}+\cdots+X_{9}+80$ なので、
$Y=9\overline{X}+80$式C
とかける。

ここで、確率変数の変換について復習しよう。

復習

確率変数$A$の
平均値を$E(A)$ 分散を$V(A)$ 標準偏差を$\sigma(A)$ とする。

$A$と定数$\alpha$,$\beta$を用いて、確率変数$B$を
$ B=\alpha A+\beta$
と定める。

このとき、$B$の
平均$ E(B)=\alpha E(A)+\beta$ 分散$V(B)=\alpha^{2}V(A)$ 標準偏差$\sigma(B)=|\alpha|\sigma(A)$ となる。

復習より、式Cの$Y$の平均$E(Y)$と標準偏差$\sigma(Y)$は、$\overline{X}$の平均値を$E(\overline{X})$,標準偏差を$\sigma(\overline{X})$として、
$E(Y)=9E(\overline{X})+80$ $\sigma(Y)=9\sigma(\overline{X})$ といえる。
これに式A,式Bを代入して、
$E(Y)=9\cdot 50.2+80$
       $=531.8$
$\displaystyle \sigma(Y)=9\cdot\frac{0.4}{3}$
       $=1.2$
である。

解答サ:5, シ:3, ス:1, セ:8, ソ:1, タ:2


標本平均について、さらに復習する。

復習

母平均$\mu$,母標準偏差$\sigma$の母集団から大きさ$n$の標本を取り出す。
このとき、標本平均は
母集団が正規分布に従うときには $n$の値にかかわらす完全に、 母集団がその他の分布のときには $n$が大きければ近似的に、 正規分布
$\displaystyle N\left(\mu,\frac{\sigma^{2}}{n}\right)$
に従う。

なので、$\overline{X}$は正規分布
$N\left(50.2,\frac{0.4^{2}}{9}\right)$
に従う。
その$\overline{X}$が$50$未満である確率は、図Eの緑の面積だ。

図E
大学入試センター試験2018年追試 数学ⅡB第5問 解説図E

グラフについての補足 センター試験を解くのには必要ないことだけど、疑問に思う人もいるだろうから一応説明しておく。
図Eのグラフは、(1)の図Aと比べて、分散が$\displaystyle \frac{1}{9}$、つまり標準偏差が$\displaystyle \frac{1}{3}$になっているので、グラフは横方向に$\displaystyle \frac{1}{3}$になっている。
一方、グラフと横軸の間の面積は$1$で変わらないから、縦方向には$3$倍になる。

図Eの緑の面積を求めるには、(1)と同じことをすればよい。
詳しい説明は(1)を見てもらって、ここでは計算だけ載せておく。

$50$を標準化して、
$\displaystyle \frac{50-50.2}{\frac{0.4}{3}}=\frac{-0.2}{\frac{0.4}{3}}$

途中式               $=\displaystyle \frac{-0.2\times 3}{\frac{0.4}{3}\times 3}$
              $=\displaystyle \frac{-0.2\times 3}{0.4}$
              $=-\displaystyle \frac{3}{2}$
              $=-1.5$

符号を$+$にした$1.5$を、正規分布表で探すと、
$0.4332$
これを$0.5$から引いて、
$0.5-0.4332=0.0668$
$0.5-0.4332$$\doteqdot 0.07$
である。

解答ツ:0, テ:7

(4)

最初に、母平均の推定について復習しておく。

復習

母平均$m$の信頼区間は、標本の大きさを$n$,標本平均を$\overline{X}$,母標準偏差を$\sigma$とすると、
$\displaystyle \overline{X}-z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq\overline{X}+z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$式D
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$ 信頼度$ 99\%$のどき、$z=2.58$ だった。

問題文より、
母標準偏差は$0.2$ 標本の大きさは$100$ 標本平均は$50.10$ だから、式Dより、母平均$m$の信頼度$ 95\%$での信頼区間は、
$50.10-$$1.96\displaystyle \cdot\frac{0.2}{\sqrt{100}}$$\leqq m\leqq 50.10+$$1.96\displaystyle \cdot\frac{0.2}{\sqrt{100}}$式E
とかける。

式Eの赤い部分は
$1.96\displaystyle \cdot\frac{0.2}{\sqrt{100}}=1.96\cdot\frac{0.2}{10}$
                $=1.96\cdot 0.02$
                $=0.0392$
だけど、たしたり引いたりする相手が$50.10$で小数点以下2桁だし、答えも小数点以下2桁まで出せばよいので、これも小数点以下2桁の
$1.96\displaystyle \cdot\frac{0.2}{\sqrt{100}}\doteqdot 0.04$式F
としておこう。

式Fを式Eに代入して、求める信頼区間は
$50.10-0.04\leqq m\leqq 50.10+0.04$
$50.06\leqq m\leqq 50.14$
となる。

解答ト:0, ナ:6, ニ:1, ヌ:4

アドバイス

以上、母平均の推定は復習の式だけを使って解いた。
センター試験は時間との戦いなので、この方法がお薦めなんだけど、これだと原理が全然分からない。
その辺の解説は、このページを見てほしい。

この信頼区間の幅を半分にするためには、式Eの赤い部分の値が半分になればよい。
式Eの赤い部分は、式Dの
$u\displaystyle \cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$
の部分にあたる。
$u$も$\sigma$も同じ値を使うので、求める標本の大きさを$x$として、
$u\displaystyle \cdot\frac{\sigma}{\sqrt{x}}=\frac{1}{2}\times u\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{100}}$
となるような$x$を求めればよい。

これを解いて、
$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{x}}=\frac{1}{2\sqrt{100}}$
$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{x}}=\frac{1}{\sqrt{400}}$
$x=400$
である。

解答ネ:5