大学入試センター試験 2020年(令和2年) 追試 数学ⅠA 第5問 解説
ア
まず、$\mathrm{PA}$から。
図Aのような状態で、赤い線分の長さを問われている。
見るからに、方べきの定理だ。
方べきの定理より、
$\mathrm{PA}\cdot \mathrm{PB}=\mathrm{PC}\cdot \mathrm{PD}$式A
とかける。
$\mathrm{PA}=x$
とおくと、上の式は
$x\cdot(x+2)=2\cdot 12$
より
途中式
$x^{2}+2x-24=0$
$(x+6)(x-4)=0$
となるけど、$0 \lt x$なので
である。
解答ア:4
イ~ク
図Bのように、$\mathrm{AB}$の中点を$\mathrm{M}$,$\mathrm{CD}$の中点を$\mathrm{N}$とする。
$\mathrm{AB}$を直径とする円(図Bの青い円)と$\mathrm{CD}$を直径とする円(図Bの緑の円)が点$\mathrm{E}$で接するという。
このとき、
$\mathrm{ME}$は青い円の半径なので、$1$
$\mathrm{NE}$は緑の円の半径なので、$5$
だから、
$$
\begin{align}
\mathrm{MN}&=\mathrm{ME}+\mathrm{NE}\\
&=1+5\\
&=6
\end{align}
$$
となる。
解答イ:6
さらに、$\mathrm{PE}$(図Bの赤い線分の長さ)を求める。
センター試験でこのタイプの問題が出たのは多分初めてだ。
解き方を知っていれば簡単なんだけど、知らないと悩むかも知れない。
ポイントは、$\mathrm{PE}$は青い円と緑の円の共通接線である、ということ。
性質
右の図で、点$\mathrm{T}$は2つの円の接点とする。
このとき、
$a \cdot b = c \cdot d$ならば、赤い線は2つの円の共通接線である。
赤い線が円の接線なら、$a \cdot b = c \cdot d$である。
センター試験を解くだけなら、これだけ知っていればいい。
一応理由を説明しておくけど、必要ないと思う人は読み飛ばしてもらってかまわない。
理由
もし、$\mathrm{PE}$が二つの円の共通接線でなければ、図Cのどちらかの図のようになる。
図中、点$\mathrm{Q}$,点$\mathrm{R}$は、それぞれ青い円,緑の円と直線$\mathrm{PE}$との交点だ。
どちらの図においても、方べきの定理より、
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{PA}\cdot \mathrm{PB}=\mathrm{PQ}\cdot \mathrm{PE}\\
\mathrm{PC}\cdot \mathrm{PD}=\mathrm{PE}\cdot \mathrm{PR}
\end{array}\right.$式B
である。
ところが、$\mathrm{PQ}\neq \mathrm{PR}$なので、
$\mathrm{PQ}\cdot \mathrm{PE}\neq \mathrm{PE}\cdot \mathrm{PR}$
だから、式Bより
$\mathrm{PA}\cdot \mathrm{PB}\neq \mathrm{PC}\cdot \mathrm{PD}$
となってしまい、話がおかしくなる。
こんなことになってしまった原因は、$\mathrm{PE}$が二つの円の共通接線でないと考えて、図Cを描いたため。
以上より、$\mathrm{PE}$は二つの円の共通接線である。
逆の説明は省略。
性質より、$\mathrm{PE}$は青い円と緑の円の接線なので、もう一度方べきの定理だ。
使うのは青い円でも緑の円でもいいんだけど、ここでは青い円を使っておく。
方べきの定理より、
$$
\begin{align}
\mathrm{PE}^{2}&=\mathrm{PA}\cdot \mathrm{PB}\\
&=4\cdot 6
\end{align}
$$
なので、
$$
\begin{align}
\mathrm{PE}&=\sqrt{4\cdot 6}\\
&=2\sqrt{6}
\end{align}
$$
である。
解答ウ:2, エ:6
次は、$\cos\angle \mathrm{MPN}$だ。
$\triangle\mathrm{PMN}$は三辺の長さが分かっているので、この三角形で余弦定理を使おう。
$\triangle\mathrm{PMN}$に余弦定理を使うと
$\mathrm{MN}^{2}=\mathrm{PM}^{2}+\mathrm{PN}^{2}-2\mathrm{PM}\cdot \mathrm{PN}\cos\angle \mathrm{MPN}$
とかける。
これにそれぞれの値を代入して、
$6^{2}=5^{2}+7^{2}-2\cdot 5\cdot 7\cos\angle \mathrm{MPN}$
より
$\cos\angle \mathrm{MPN}=\dfrac{5^{2}+7^{2}-6^{2}}{2\cdot 5\cdot 7}$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{\cos\angle \mathrm{MPN}}&=\dfrac{38}{2\cdot 5\cdot 7}\\
&=\dfrac{19}{5\cdot 7}
\end{align}
$$
となる。
解答オ:1, カ:9, キ:3, ク:5
アドバイス
円の接線は、接点と中心を通る直線に直交する。
なので、
$\mathrm{PE}$⊥$\mathrm{MN}$
である。
ケ~セ
図がややこしくなってきた。
ちょっと整理して、ケコ~セを求めるのに必要な部分だけ描き出すと、図Dができる。
まず、$\mathrm{PF}$から。
図Dの緑の直角三角形を使うのは想像がつくけど、$\mathrm{FM}$がすぐには分からないので、三平方の定理はとりあえず除外する。
考えてみると、直前に求めたのは$\cos\angle \mathrm{MPN}$だった。
これを使う方向でいってみよう。
図Dの緑の三角形は直角三角形なので、
$\dfrac{\mathrm{PF}}{\mathrm{PM}}=\cos\angle \mathrm{MPN}$
とかける。
これにそれぞれの値を代入して、
$\dfrac{\mathrm{PF}}{5}=\dfrac{19}{35}$
より
$\mathrm{PF}=\dfrac{19}{7}$
となる。
解答ケ:1, コ:9, サ:7
同様に、斜線の三角形から
$\dfrac{\mathrm{PG}}{\mathrm{PN}}=\cos\angle \mathrm{MPN}$
より
$\dfrac{\mathrm{PG}}{7}=\dfrac{19}{35}$
$\mathrm{PG}=\dfrac{19}{5}$
である。
解答シ:1, ス:9, セ:5
別解
手間がかかるのでお薦めではないけど、$\mathrm{FM}$や$\mathrm{GN}$を求めて三平方の定理を使うことも可能ではある。
図Eの赤い三角形の面積を$S$とすると、
$$
\begin{align}
S&=\dfrac{1}{2}\times\text{底辺}\times\text{高さ}\\
&=\dfrac{1}{2}\cdot \mathrm{MN}\cdot \mathrm{PE}
\end{align}
$$
より
$$
\begin{align}
S&=\dfrac{1}{2}\cdot 6\cdot 2\sqrt{6}\\
&=6\sqrt{6}
\end{align}
$$
である。
同じ$S$を、$\mathrm{PN}$を底辺として求めると、
$$
\begin{align}
S&=\dfrac{1}{2}\cdot \mathrm{PN}\cdot \mathrm{FM}\\
&=\dfrac{1}{2}\cdot 7\cdot \mathrm{FM}
\end{align}
$$
なので、
$\dfrac{7}{2}\mathrm{FM}=6\sqrt{6}$
だから、
$\mathrm{FM}=\dfrac{2\cdot 6\sqrt{6}}{7}$
である。
図Eの緑の直角三角形に三平方の定理を使うと、
$\mathrm{PF}^{2}+\mathrm{FM}^{2}=\mathrm{PM}^{2}$
とかける。
これにそれぞれの値を代入して、
$\mathrm{PF}^{2}+\left(\dfrac{2\cdot 6\sqrt{6}}{7}\right)^{2}=5^{2}$
より
途中式
$$
\begin{align}
\mathrm{PF}^{2}&=5^{2}-\left(\dfrac{2\cdot 6\sqrt{6}}{7}\right)^{2}\\
&=\dfrac{7^{2}\cdot 5^{2}-12^{2}\cdot 6}{7^{2}}\\
&=\dfrac{361}{7^{2}}\\
&=\dfrac{19^{2}}{7^{2}}
\end{align}
$$
となるから、
である。
解答ケ:1, コ:9, サ:7
同様に、$S$を$\mathrm{PM}$を底辺として表すと$\mathrm{GN}$が分かる。
これを使って、斜線の三角形に三平方の定理を用いると、
$\mathrm{PG}=\dfrac{19}{5}$
が求められる。
実際の計算は省略する。
解答シ:1, ス:9, セ:5
ソ~ツ
これまでに分かったことを整理すると、図Fができる。
図が複雑になってきたので、必要な部分、つまり$\triangle\mathrm{PMN}$だけ取り出して拡大してみた。
復習
三角形のそれぞれの頂点から対辺(または、その延長)に下ろした3本の垂線は一点で交わる。(垂心)
なので、直線$\mathrm{PE}$は点$\mathrm{J}$を通る。
今問われているのは、図Fの赤い線分の長さだ。
解法は何通りか考えられるけれど、ここでは
相似を使った解法
メネラウスの定理による解法
方べきの定理を使った解法
を説明しておく。
相似を使った解法
図Gで、斜線の三角形と緑の三角形は相似だ。
なので、
$\mathrm{PJ}:\mathrm{PG}=\mathrm{PM}:\mathrm{PE}$
より
$\mathrm{PJ}\cdot \mathrm{PE}=\mathrm{PG}\cdot \mathrm{PM}$
とかける。
これにそれぞれの値を代入して、
$\mathrm{PJ}\cdot 2\sqrt{6}=\dfrac{19}{5}\cdot 5$
より、$\mathrm{PJ}$は
$$
\begin{align}
\mathrm{PJ}&=\dfrac{19}{2\sqrt{6}}\\
&=\dfrac{19\sqrt{6}}{12}
\end{align}
$$
であることが分かる。
よって、求める$\mathrm{JE}$は、
$$
\begin{align}
\mathrm{JE}&=\mathrm{PE}-\mathrm{PJ}\\
&=2\sqrt{6}-\dfrac{19\sqrt{6}}{12}\\
&=\dfrac{(12\cdot 2-19)\sqrt{6}}{12}\\
&=\dfrac{5\sqrt{6}}{12}
\end{align}
$$
である。
解答ソ:5, タ:6, チ:1, ツ:2
アドバイス
$\triangle\mathrm{PFJ}$と$\triangle\mathrm{PEN}$を使っても、同様に解くことができる。
メネラウスの定理による解法
図Hの緑の三角形と青い直線を使ってメネラウスの定理を考えると、次のような解法になる。
メネラウスの定理より、
$\dfrac{\mathrm{GM}}{\mathrm{PG}}\cdot\dfrac{\mathrm{NE}}{\mathrm{MN}}\cdot\dfrac{\mathrm{JP}}{\mathrm{JE}}=1$
とかける。
これにそれぞれの値を代入して、
$\dfrac{5-\dfrac{19}{5}}{\dfrac{19}{5}}\cdot\dfrac{5}{6}\cdot\dfrac{\mathrm{JP}}{\mathrm{JE}}=1$
より
途中式
$$
\begin{align}
&\dfrac{6}{19}\cdot\dfrac{5}{6}\cdot\dfrac{\mathrm{JP}}{\mathrm{JE}}=1\\
&\dfrac{5}{19}\cdot\dfrac{\mathrm{JP}}{\mathrm{JE}}=1\\
&\dfrac{\mathrm{JP}}{\mathrm{JE}}=\dfrac{19}{5}\\
\end{align}
$$
なので
であることが分かる。
よって、
$$
\begin{align}
\mathrm{JE}:\mathrm{PE}&=\mathrm{JE}:\mathrm{JE}+\mathrm{JP}\\
&=5:5+19\\
&=5:24
\end{align}
$$
となるから、
$\mathrm{JE}=\dfrac{5}{24}\mathrm{PE}$
だ。
これに$\mathrm{PE}$の値を代入して、
$$
\begin{align}
\mathrm{JE}&=\dfrac{5}{24}\cdot 2\sqrt{6}\\
&=\dfrac{5\sqrt{6}}{12}
\end{align}
$$
である。
解答ソ:5, タ:6, チ:1, ツ:2
アドバイス
$\triangle\mathrm{PEN}$と直線$\mathrm{FM}$を使っても、同様に解くことができる。
方べきの定理を使った解法
図Iの緑の四角形は$\angle \mathrm{E}+\angle \mathrm{G}=180^{\circ}$なので、図のようにオレンジの円に内接する。
なので、青い線分$+$赤い線分で方べきの定理を使うと、
$\mathrm{PJ}\cdot \mathrm{PE}=\mathrm{PG}\cdot \mathrm{PM}$
とかける。
これにそれぞれの値を代入して、
$\mathrm{PJ}\cdot 2\sqrt{6}=\dfrac{19}{5}\cdot 5$
より、$\mathrm{PJ}$は
$$
\begin{align}
\mathrm{PJ}&=\dfrac{19}{2\sqrt{6}}\\
&=\dfrac{19\sqrt{6}}{12}
\end{align}
$$
であることが分かる。
よって、求める$\mathrm{JE}$は、
$$
\begin{align}
\mathrm{JE}&=\mathrm{PE}-\mathrm{PJ}\\
&=2\sqrt{6}-\dfrac{19\sqrt{6}}{12}\\
&=\dfrac{(12\cdot 2-19)\sqrt{6}}{12}\\
&=\dfrac{5\sqrt{6}}{12}
\end{align}
$$
である。
解答ソ:5, タ:6, チ:1, ツ:2
アドバイス
四角形$\mathrm{ENFJ}$も円に内接するので、線分$\mathrm{PE}$と線分$\mathrm{PN}$を使っても、同様に解くことができる。