大学入試センター試験 2020年(令和2年) 追試 数学ⅡB 第5問 解説
(1) ア~シ
前回投票 | 前回棄権 | 前回選挙権なし | |
---|---|---|---|
今回投票 | $ 45\%$ | アイ$\%$ | $ 3\%$ |
今回棄権 | $ 10\%$ | $ 29\%$ | $ 1\%$ |
表Aの値の和は$ 100\%$なので、
$45+$アイ$+3+10+29+1=100$
より
アイ$=12(\%)$
である。
解答ア:1, イ:2
なので、有権者全体において、
今回投票の人は
$45+12+3=60(\%)$
前回投票の人は
$45+10=55(\%)$
である。
よって、有権者全体から無作為に一人を選ぶとき、
今回投票の人が選ばれる確率は
$60(\%)=0.60$
前回投票の人が選ばれる確率は
$55(\%)=0.55$
となる。
解答ウ:6, エ:0, オ:5, カ:5
また、今回棄権かつ前回投票の人の母比率は
$10(\%)=0.10$
なので、この母集団から大きさ$900$の標本を無作為に抽出したとき、標本に含まれる 今回棄権かつ前回投票の人数は、二項分布
$B(900,0.10)$
に従う。
解答キ:1, ク:0
ここで、二項分布についての復習をしておこう。
復習
確率変数$X$が二項分布$B(n,p)$に従うとき、
$X$の
平均$E(X)=np$
分散$V(X)=np(1-p)$
標準偏差$\sigma(X)=\sqrt{np(1-p)}$
である。
復習より、
$X$の平均(期待値)$E(X)$は、
$E(X)=900\times 0.10$
$=90$
$X$の標準偏差$\sigma(X)$は、
$\sigma(X)=\sqrt{900\times 0.10(1-0.10)}$
$=\sqrt{9 \times 10^{2}\times 0.1^{2}\times 9}$
$=9.0$
となる。
解答ケ:9, コ:0, サ:9, シ:0
(1) スセ
この$X$が$105$以上である確率を求める。
グラフ的には、$X$の確率分布をグラフにすると図Bができるけど、この赤い部分の面積を問われている。
図Bはイメージをつかむために載せただけで、この図が描ける必要はない。
ここから先はお決まりの解き方なので、解説は最小限にする。
詳しくはこのページを見てほしい。
標本サイズの$900$は大きい数なので、図Bの二項分布は正規分布$N(90,9.0^{2})$で近似できる。
$N(90,9.0^{2})$のグラフを図Bに描きたすと、図Cのようになる。
この$N(90,9.0^{2})$を使って、赤い部分の面積を求める。
面積の計算は正規分布表を使うけど、正規分布表に載っているのは
標準正規分布の$N(0,1)$
図Cの分布は
$N(90,9.0^{2})$
なので、そのままでは比較できない。
図Cの正規分布を標準化して$N(0,1)$にしよう。
標準化の式は問題文中のケ~シの式で、
$Z=\displaystyle \frac{X-E(X)}{\sigma(X)}$式A
だった。
これを使って図Cの分布を標準化する。
図中の$105$を標準化すると、式Aより
$\displaystyle \frac{105-E(X)}{\sigma(X)}$
だけど、いま
ケコより、$E(X)=90$
サシより、$\sigma(X)=9.0$
なので、
$\displaystyle \frac{105-90}{9.0}=1.\dot{6}$
となる。
よって、図Cを標準化すると図Dができる。
図Dの赤い部分の面積を求めるので、正規分布表の$1.67$を見ると
$0.4525$
とある。
これが、図Dの緑の面積だ。
緑の面積と赤い面積の合計は$0.5$なので、
赤$=0.5-$緑
より、
赤$=0.5-0.4525$
$=0.0475$
$\doteqdot 0.05$
となる。
解答ス:0, セ:5
(2)
次は、母比率の推定だ。
まず、母比率を推定する式の復習から。
公式
標本比率を$r$,標本の大きさを$n$とすると、母比率$p$の信頼区間を求める式は
$r-z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\leqq p\leqq r+z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}$
ただし、$z$は
信頼度95%のとき、$1.96$
信頼度99%のとき、$2.58$
である。
公式より、$p$に対する信頼度95%の信頼区間は、
$r-1.96\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\leqq p\leqq r+1.96\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}$
とかける。
よって、信頼区間の幅$L$は
$L=\left(r+1.96\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\right)-\left(r-1.96\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\right)$
なので、
$L=2\times 1.96\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}$
より
$L=1.96\times 2\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}$式B
となる。
解答ソ:5
アドバイス
これじゃ原理がゼンゼン分からないけど、原理通り解くと時間がかかるから、センター試験本番では機械的に公式を使おう。
原理に関してはこのページを参照してほしい。
$r=0.5$のとき、式Bの値が$0.1$になるようにしたい。
式Bに$L=0.1$,$r=0.5$を代入すると、
$1.96\times 2\sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{n}}=0.1$
より
$1.96\sqrt{\frac{1}{n}}=0.1$
$\displaystyle \sqrt{\frac{1}{n}}=\frac{0.1}{1.96}$
となる。
この式の両辺を2乗すると
$\displaystyle \frac{1}{n}=\frac{0.1^{2}}{1.96^{2}}$
より
$n=\displaystyle \frac{1.96^{2}}{0.1^{2}}$
$n$$=1.96^{2}\times 10^{2}$式C
とかける。
問題文に$1.96^{2}=3.84$として計算するように指示があるので、式Cは
$n=3.84\times 100$
$n$$=384$
となる。
解答タ:3, チ:8, ツ:4
標本の大きさが$384$のとき、信頼区間の幅$L$は、式Bに式Cを代入して、
$L=1.96\times 2\sqrt{\frac{r(1-r)}{1.96^{2}\times 10^{2}}}$
$L$$\displaystyle =\frac{1.96\times 2\sqrt{r(1-r)}}{1.96\times 10}$
$L$$\displaystyle =\frac{\sqrt{r(1-r)}}{5}$式D
と表せる。
式Dを見ると、$L$は$r$の値によって変化することが分かる。
式Dで$r$が含まれている部分の
$r(1-r)$
について考えてみると、
$r$は標本比率なので、値の範囲は
$0\leqq r\leqq 1$
である。
横軸を$r$としてグラフを描くと、$r(1-r)$は図Eのような形になる。
図Eより、$r(1-r)$は
$r=0.5$
のときに最大。
よって、$\sqrt{r(1-r)}$も
$r=0.5$
のときに最大なので、
$L$は$r=0.5$のとき最大である。
解答テ:1