大学入試センター試験 2020年(令和2年) 追試 数学ⅡB 第2問 解説
(1)
まず、点Aにおける曲線$C_{1}$の接線から。
$f(x)$を微分すると
$f'(x)=3x^{2}$
なので、$C_{1}$の$x=-1$における接線の傾きは
$f'(-1)=3$
である。
解答ア:3
よって、接線は、点Aを通る傾き$3$の直線なので、
$y-(-2)=3\{x-(-1)\}$
より
$$
\begin{align}
y&=3x+3-2\\
&=3x+1 \class{tex_formula}{式A}
\end{align}
$$
となる。
解答イ:3, ウ:1
式Aを変形して
$3x-y+1=0$
として、点と直線の距離の公式に当てはめると、原点と直線$\ell$との距離$d$は、
$$ \begin{align} d&=\dfrac{\left|3\cdot 0-0+1\right|}{\sqrt{3^{2}+(-1)^{2}}}\\ &=\dfrac{1}{\sqrt{10}}\\ &=\dfrac{\sqrt{10}}{10} \end{align} $$ である。
解答エ:1, オ:0
(2)
式Aの直線が点Aで曲線$C_{2}$に接することを使って、$b$,$c$ を$a$で表そう。
$C_{2}$の式の$g(x)$を微分すると
$g'(x)=3x^{2}+2ax+b$式B
なので、
$$
\begin{align}
g'(-1)&=3\cdot(-1)^{2}+2a\cdot(-1)+b\\
&=-2a+b+3
\end{align}
$$
となる。
これが式Aの傾きと等しいので、
$g'(-1)=3$
とかける。
解答カ:3
よって、
$-2a+b+3=3$
より
$b=2a$式C
と表せる。
解答キ:2
また、曲線$C_{2}$は点Aを通るので、$y=g(x)$に$(-1,-2)$を代入して、
$(-1)^{3}+a(-1)^{2}+b(-1)+c=-2$
$-1+a-b+c=-2$
$a-b+c=-1$
これに式Cを代入して、
$a-2a+c=-1$
$c=a-1$
である。
解答ク:a, ケ:1
以上より、$g(x)$,$g'(x)$は、
$g(x)=x^{3}+ax^{2}+2ax+a-1$式D
$g'(x)=3x^{2}+2ax+2a$式B'
とかける。
(3)
$a=-2$のとき、
式Dより、
$g(x)=x^{3}-2x^{2}-4x-3$式E
式B'より、
$g'(x)=3x^{2}-4x-4$
である。
よって、$g'(x)=0$となるのは、
$3x^{2}-4x-4=0$
より
$(3x+2)(x-2)=0$
$x=-\dfrac{2}{3}$,$2$式F
のとき。
ここで、三次関数の形の復習をしておこう。
復習
三次関数のグラフは、
$x^{3}$の係数が正のとき、全体として右上がりの
のような形に、
$x^{3}$の係数が負のとき、全体として右下がりの
のような形になる。
$g(x)$の$x^{3}$の係数は正だから、$y=g(x)$のグラフは全体として右上がり。
また、$g'(x)=0$の解が2個あるので、グラフは極大値と極小値をもつ。
なので、$y=g(x)$の概形は図Aの左のグラフのような形である。
よって、$g(x)$は、式Fの2つの値のうち、
小さい方の$x=-\dfrac{2}{3}$のとき極大値
解答コ:-, サ:2, シ:3
大きい方の$x=2$のとき極小値
解答ツ:2
をとる。
あとは、計算だ。
極大値は、$x=-\dfrac{2}{3}$を式Eに代入して、
$$
\begin{align}
g\left(-\dfrac{2}{3}\right)&=\left(-\dfrac{2}{3}\right)^{3}-2\left(-\dfrac{2}{3}\right)^{2}\\
&\hspace{60px} -4\left(-\dfrac{2}{3}\right)-3
\end{align}
$$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{g\left(-\dfrac{2}{3}\right)}&=-\dfrac{2^{3}}{3^{3}}-\dfrac{2^{3}}{3^{2}}+\dfrac{2^{3}}{3}-3\\
&=-\dfrac{2^{3}}{3^{3}}-\dfrac{3\cdot 2^{3}}{3^{3}}+\dfrac{3^{2}\cdot 2^{3}}{3^{3}}-\dfrac{3^{4}}{3^{3}}\\
&=\dfrac{2^{3}\cdot(-1-3+9)-3^{4}}{3^{3}}\\
&=\dfrac{2^{3}\cdot 5-3^{4}}{3^{3}}\\
&=\dfrac{40-81}{3^{3}}
\end{align}
$$
解答ス:-, セ:4, ソ:1, タ:2, チ:7
極小値は、$x=2$を式Eに代入して、
$$
\begin{align}
g(2)&=2^{3}-2\cdot 2^{2}-4\cdot 2-3\\
&=-2^{3}-3\\
&=-11
\end{align}
$$
解答テ:-, ト:1, ナ:1
となる。
(4)
最後の小問は、
$$ \begin{align} C_{1}\ :\ y&=f(x)\\ &=x^{3}-1 \end{align} $$ $$ \begin{align} C_{2}\ :\ y&=g(x)\\ &=x^{3}+ax^{2}+2ax+a-1 \end{align} $$ $x=-2$ $x=1$
に囲まれた面積$S$を求める問題だ。
まず、$S$の左部分の$S_{1}$から考えよう。
$C_{1}$と$C_{2}$は$x=-1$で共有点をもつので、
$-2\leqq x\leqq-1$の範囲で
$C_{1}$の方が上にあれば、
$\displaystyle S_{1}=\int_{-2}^{-1}\{f(x)-g(x)\}\,dx$
$C_{2}$の方が上にあれば、
$\displaystyle S_{1}=\int_{-2}^{-1}\{g(x)-f(x)\}\,dx$
とかける。
この範囲で$C_{1}$と$C_{2}$の上下が入れ替わる場合は、選択肢にないので今は考えない。
というわけで、$-2\leqq x\leqq-1$の範囲で$C_{1}$と$C_{2}$どちらが上にあるか考えよう。
一番安直な方法は、$x$にこの範囲の値を代入してみることだ。
とりあえず$-\dfrac{3}{2}$あたりでやってみる。
$f(x)$に$x=-\dfrac{3}{2}$を代入すると、
$f\left(-\dfrac{3}{2}\right)=\left(-\dfrac{3}{2}\right)^{3}-1$式G
式Dに$x=-\dfrac{3}{2}$を代入すると、
$$
\begin{align}
g\left(-\dfrac{3}{2}\right)&=\textcolor{red}{\left(-\dfrac{3}{2}\right)^{3}}\textcolor{green}{+a\left(-\dfrac{3}{2}\right)^{2}}\\
&\qquad\textcolor{green}{+2a\left(-\dfrac{3}{2}\right)+a}\textcolor{red}{-1}
\end{align}
$$
式H
となる。
式Hの赤い部分は式Gの右辺と同じなので、緑の部分だけ考えよう。
式Hの緑の部分を計算すると
$$
\begin{align}
& a\left(-\dfrac{3}{2}\right)^{2}+2a\left(-\dfrac{3}{2}\right)+a\\
&\qquad =\dfrac{1}{4}a(9-12+4)\\
&\qquad =\dfrac{a}{4}
\end{align}
$$
なので、$f\left(-\dfrac{3}{2}\right)$と$f\left(-\dfrac{3}{2}\right)$の関係は
$g\left(-\dfrac{3}{2}\right)=f\left(-\dfrac{3}{2}\right)+\dfrac{a}{4}$
とかける。
$a \lt 0$なので、この式から
$g\left(-\dfrac{3}{2}\right) \lt f\left(-\dfrac{3}{2}\right)$
であることが分かる。
つまり、$f(x)$のグラフである$C_{1}$の方が上にある。
よって、$S_{1}$は
$\displaystyle S_{1}=\int_{-2}^{-1}\{f(x)-g(x)\}\,dx$式I
と表せる。
$S_{2}$でも同じことをしよう。
$-1\leqq x\leqq 1$に含まれる$x=0$を、$f(x)$と$g(x)$に代入する。
$f(x)$に$x=0$を代入すると、 $f(0)=-1$
式Dに$x=0$を代入すると、 $g(0)=a-1$
だけど、$a \lt 0$なので、
$g(0) \lt f(0)$
だ。
なので、$f(x)$のグラフである$C_{1}$の方が上にある。
よって、$S_{2}$は
$\displaystyle S_{2}=\int_{-1}^{1}\{f(x)-g(x)\}\,dx$式J
と表せる。
以上より、$S$は式Iと式Jをたした
$$ \begin{align} S&=\int_{-2}^{-1}\{f(x)-g(x)\}\,dx\\ &\hspace{80px}+\int_{-1}^{1}\{f(x)-g(x)\}\,dx\\ &=\int_{-2}^{1}\{f(x)-g(x)\}\,dx\class{tex_formula}{式K} \end{align} $$
である。
解答ニ:3
別解
$C_{1}$と$C_{2}$の上下関係を確認する方法は他にもある。 例えば、
$$ \begin{align} f(x)-g(x)&=(x^{3}-1)\\ &\qquad-(x^{3}+ax^{2}+2ax+a-1)\\ &=-a(x^{2}+2x+1)\\ &=-a(x+1)^{2} \end{align} $$ となるけど、
$a \lt 0$
$(x+1)^{2}\geqq 0$
なので、
$0\leqq-a(x+1)^{2}$
だ。
よって、点Aで接する以外は、$f(x)$のグラフである$C_{1}$が常に上にある。
などが考えられる。
最後に、式Kを使って$S$を求めよう。
式Kに$f(x)$の式と式Dを代入すると、
$$
\begin{align}
S=\int_{-2}^{1}\left\{
\begin{aligned}
(& x^{3}-1)\\
& -(x^{3}+ax^{2}+2ax+a-1)
\end{aligned}
\right\}\,dx
\end{align}
$$
途中式
$$
\begin{align}
S&=\int_{-2}^{1}-a(x^{2}+2x+1)\,dx\\
&=-a\int_{-2}^{1}(x^{2}+2x+1)\,dx\\
&=-a\left[\dfrac{x^{3}}{3}+x^{2}+x\right]_{-2}^{1}\\
&=-a\left\{\left(\dfrac{1}{3}+1+1\right)-\left(-\dfrac{8}{3}+4-2\right)\right\}\\
&=-a\left(\dfrac{1+3+3}{3}-\dfrac{8+12-6}{3}\right)\\
&=-a\cdot\dfrac{1+8}{3}
\end{align}
$$
である。
解答ヌ:-, ネ:3