大学入試センター試験 2020年(令和2年) 追試 数学ⅡB 第1問 [2] 解説

(1)

関数
$\displaystyle f(x)=\sqrt{3}\cos\left(3x+\frac{\pi}{3}\right)+\sqrt{3}\cos 3x$
$f(x)$$=\sqrt{3} \Bigl\{$$\displaystyle \cos\left(3x+\frac{\pi}{3}\right)$$+\cos 3x \Bigr\}$式A
について考える。

式Aの赤い部分は、加法定理より
$\displaystyle \cos\left(3x+\frac{\pi}{3}\right)=\cos 3x\cos\frac{\pi}{3}-\sin 3x\sin\frac{\pi}{3}$
                    $=\displaystyle \frac{1}{2}\cos 3x-\frac{\sqrt{3}}{2}\sin 3x$
とかける。

なので、式Aは、
$\displaystyle f(x)=\sqrt{3}\left(\frac{1}{2}\cos 3x-\frac{\sqrt{3}}{2}\sin 3x+\cos 3x\right)$
$f(x)$$\displaystyle =-\frac{3}{2}\sin 3x+\frac{3\sqrt{3}}{2}\cos 3x$式B
と変形できる。

解答タ:3, チ:2, ツ:3, テ:3


図A
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図A

さらに、式Bを
$f(x)=\displaystyle \frac{3}{2}($$-\sin 3x+\sqrt{3}\cos 3x$$)$
                    式B'
と変形する。

赤い部分は、三角関数の合成をすると、図Aより、
$\displaystyle -\sin 3x+\sqrt{3}\cos 3x=2\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)$
である。

よって、式B'は
$f(x)=\displaystyle \frac{3}{2}\cdot 2\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)$
$f(x)$$\displaystyle =3\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)$式C
となる。

解答ト:3, ナ:2, ニ:3


(1)では、$x$の範囲は特に指定されてない。
なので、定義域はすべての実数だ。
よって、$ 3x+\displaystyle \frac{2}{3}\pi$はすべての実数をとる。

$ 3x+\displaystyle \frac{2}{3}\pi$がすべての実数のとき、
$-1\leqq\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)\leqq 1$
なので、
$-3\leqq 3\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)\leqq 3$
だから、これに式Cを代入すると
$-3\leqq f(x)\leqq 3$
となる。

以上より、$f(x)$の最大値は
$3$
であることが分かる。

解答ヌ:3


ここで、グラフの移動と拡大縮小について復習しておこう。

復習

$y=f(x)$のグラフを①とする。

平行移動 $y=f(x-p)$のグラフは、①を$x$軸方向に$p$平行移動したもの $y-q=f(x)$のグラフは、①を$y$軸方向に$q$平行移動したもの

対称移動 $y=f(-x)$のグラフは、①を$y$軸に関して対称移動したもの $-y=f(x)$のグラフは、①を$x$軸に関して対称移動したもの

拡大 $\displaystyle y=f\left(\frac{x}{a}\right)$のグラフは、①を$x$軸方向に$a$倍したもの $\displaystyle \frac{y}{b}=f(x)$のグラフは、①を$y$軸方向に$b$倍したもの

縮小 $y=f(ax)$のグラフは、①を$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{a}$にしたもの $by=f(x)$のグラフは、①を$y$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{b}$にしたもの

である。

グラフの移動と拡大縮小が分かったところで、$y=f(x)$のグラフを考よう。

式Cより、このグラフは
$\displaystyle y=3\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)$
とかける。

これをちょっと変形して
$\displaystyle \frac{y}{3}=\sin 3\left(x+\frac{2}{9}\pi\right)$
とすると、復習より、このグラフは、$y=\sin x$のグラフを
$y$軸方向に$3$倍に拡大 $x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{3}$に縮小 $x$軸方向に$-\displaystyle \frac{2}{9}\pi$平行移動 したものであることが分かる。

今問われているのは周期なので、必要なのは$x$軸方向の拡大縮小だけだ。
もとの$y=\sin x$のグラフの周期は
$ 2\pi$
だった。
$y=f(x)$のグラフは、これを$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{3}$にしたものなので、周期も$\displaystyle \frac{1}{3}$になって
$\displaystyle \frac{2}{3}\pi$
である。

解答ネ:2, ノ:3

(2)

$f(x)=t$
に式Cを代入すると
$\displaystyle 3\sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)=t$
より、
$\displaystyle \sin\left(3x+\frac{2}{3}\pi\right)=\frac{t}{3}$式D
とかける。

ここで、
$3x+\displaystyle \frac{2}{3}\pi=A$
とおくと、式Dは
$\displaystyle \sin A=\frac{t}{3}$式D'
となる。


見慣れた三角方程式になった。
あとはいつものように解こう。

まず、$A$の範囲を求める。

$x$の範囲は
$ 0\leqq x\leqq 2\pi$
だけど、これを変形すると
$ 0\leqq 3x\leqq 6\pi$
より
$\displaystyle \frac{2}{3}\pi\leqq 3x+\frac{2}{3}\pi\leqq 6\pi+\frac{2}{3}\pi$
となる。

よって、
$\displaystyle \frac{2}{3}\pi\leqq A\leqq 6\pi+\frac{2}{3}\pi$
である。
$ 2\pi$で円を一周だから、$ 6\pi$は3周分。
つまり、$A$の範囲は、
$\displaystyle \frac{2}{3}\pi$から始まって3周分
となる。

これを図で表すと、図Bができる。

図B
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図B

$|t| \gt 3$を絶対値を使わずに書くと
$t \lt -3$,$3 \lt t$
である。

この両辺を$3$で割ると
$\displaystyle \frac{t}{3} \lt -1$,$1 \lt \displaystyle \frac{t}{3}$
なので、式D'は
$\sin A \lt -1$,$1 \lt \sin A$
となる。

よって、解はないので、
$N=0$
だ。

解答ハ:0

$t=3$のとき、式D'は
$\displaystyle \sin A=\frac{3}{3}$
$\sin A$$=1$
となる。

この解は、図Bの緑の範囲と、直線$y=1$の共通部分にあたる。
図にすると、図Cの赤い点だ。

図C
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図C

図Cの赤い点は3個。
なので、
$N=3$
である。

解答ヒ:3

式Cより
$\displaystyle f(0)=3\sin\left(3\cdot 0+\frac{2}{3}\pi\right)$
$ f(0)$$\displaystyle =3\sin\frac{2}{3}\pi$
なので、このとき、式D'は
$\displaystyle \sin A=\frac{3}{3}\sin\frac{2}{3}\pi$
$\displaystyle \sin A$$\displaystyle =\sin\frac{2}{3}\pi$
となる。

図D
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図D

この解は図Dの赤い点なので、
$N=7$
だ。

解答フ:7

$|t| \lt 3$かつ$t\neq f(0)$は、図Eの青い範囲(境界線を除く)。

図E
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図E

この範囲で、例えば赤い線のときを考えると、
$N=6$
である。

解答ヘ:6

$t=-3$のとき、解は図Fの赤い点だ。

図F
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図F

なので、
$N=3$
である。

解答ホ:3

別解

三角関数のグラフを描くのが苦じゃなければ、次のような方法がお勧めだ。

(1)で考えたように、$y=f(x)$のグラフは、$y=\sin x$のグラフを
① $y$軸方向に$3$倍に拡大・$x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{3}$に縮小して、
② $x$軸方向に$-\displaystyle \frac{2}{9}\pi$平行移動したもの
だった。
この考え方でグラフを描く。

① まず、$y=\sin x$のグラフを
$y$軸方向に$3$倍に拡大 $x$軸方向に$\displaystyle \frac{1}{3}$に縮小 すると、図Gができる。

図G
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図G

② さらに、図Gを
$x$軸方向に$-\displaystyle \frac{2}{9}\pi$平行移動 すると、図Hになる。

図H
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図H

図Hの赤い曲線が、$y=f(x)$のグラフだ。


いま、$x$の定義域は
$ 0\leqq x\leqq 2\pi$
なので、$y=f(x)$のグラフと定義域は図Iのようになる。
この図で、黒い実線と、直線
$y=t$
の共有点が $f(x)=t$となる点だ。

図I
大学入試センター試験2020年追試 数学ⅡB第1問[2] 解説図I

$|t| \gt 3$のとき、
$y=t$のグラフは、$3$より上 または $-3$より下にある。
なので、黒い実線との共有点はない。

解答ハ:0

$t=3$のとき、
$y=t$のグラフは、図Iの青い線。
黒い実線との共有点は、青い点の3個だ。

解答ヒ:3

$t=f(0)$のとき、
$y=t$のグラフは、図Iの赤い線。
これと黒い実線との共有点は7個。

解答フ:7

$|t| \lt 3$かつ$t\neq f(0)$のとき、
$y=t$のグラフは、例えば図Iのオレンジの線。
なので、黒い実線との共有点は6個ある。

解答ヘ:6

$t=-3$のとき、
$y=t$のグラフは、図Iの紫の線。
これと黒い実線との共有点は3個だ。

解答ホ:3