大学入試センター試験 2016年(平成28年) 本試 数学ⅡB 第1問 [2] 解説
(1)
①の両辺に$\sin^{2}x\cdot\cos^{2}x$をかけるのだけど、式がややこしくなるので
$\sin^{2}x=S$
$\cos^{2}x=C$
と書くことにする。
$SC\left\{C-S+k\left(\frac{1}{C}-\frac{1}{S}\right)\right\}=0$
$SC(C-S)+k(S-C)=0$
$SC(C-S)-k(C-S)=0$
$(SC-k)(C-S)=0$
となる。
この$S$,$C$をもとにもどして、
$(\sin^{2}x\cdot\cos^{2}x-k)(\cos^{2}x-\sin^{2}x)=0$
$\{(\sin x\cdot\cos x)^{2}-k\}(\cos^{2}x-\sin^{2}x)=0$式A
である。
ここで、2倍角の公式の復習をすると、
公式
$\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta$式B1
$\cos 2\theta=\cos^{2}\theta-\sin^{2}\theta$式B2
$\cos 2\theta$$=1-2\sin^{2}\theta$式B3
$\cos 2\theta$$=2\cos^{2}\theta-1$
$\displaystyle \tan 2\theta=\frac{2\tan\theta}{1-\tan^{2}\theta}$
より、式B1,式B2をちょっと変形して
$\displaystyle \sin x\cos x=\frac{\sin 2x}{2}$
$\cos^{2}x-\sin^{2}x=\cos 2x$
として、式Aに代入すると、
$\left(\frac{\sin^{2}2x}{4}-k\right)\cos 2x=0$②
となる。
解答チ:4
②が成り立つためには
$\cos 2x=0$
または
$\displaystyle \frac{\sin^{2}2x}{4}-k=0$式C
であればよい。
$\cos 2x=0$のとき、$k$の値に関係なく②が成り立つから、①も成り立つ。
まず、この場合を解決しておこう。
問題文より、$x$の範囲は
$0 \lt x \lt \displaystyle \frac{\pi}{2}$
なので、$2x$の範囲は
$ 0 \lt 2x \lt \pi$
である。
この範囲で$\cos 2x=0$となるのは、
$2x=\displaystyle \frac{\pi}{2}$
つまり
$x=\displaystyle \frac{\pi}{4}$
のときである。
解答ツ:4
次に、式Cの場合を考える。
式Cを変形して、
$\sin^{2}2x=4k$式C'
とする。
確認だけど、問題文より
$0 \lt k$
である。
$0 \lt x \lt \displaystyle \frac{\pi}{2}$より$ 0 \lt 2x \lt \pi$なので、
$0 \lt \sin 2x\leqq 1$
より
$0 \lt \sin^{2}2x\leqq 1$
となる。
だから、
$1 \lt 4k$
つまり
$\displaystyle \frac{1}{4} \lt k$
のとき、式C'は解をもたない。
このとき、①の解は、ツの
$x=\displaystyle \frac{\pi}{4}$
の1個だけである。
解答テ:1, ト:4
アドバイス
次に、これ以外の場合、つまり
$0 \lt k\displaystyle \leqq\frac{1}{4}$
のときの式C'の解の個数を求めるんだけど、解法がいくつか考えられる。
どの方法も一長一短なので、長くなるけど3種類説明する。
解法1
$0 \lt \sin 2x$
$0 \lt k$
なので、$2x=\theta$とおくと、式C'は
$\sin \theta=2\sqrt{k}$式D
とかける。
$\theta$の範囲、つまり定義域は
$ 0 \lt 2x \lt \pi$
より
$ 0 \lt \theta \lt \pi$
なので、グラフを描くと図Aができる。
グラフ中の緑の範囲が定義域だ。
式Dの右辺の$2\sqrt{k}$が、
$0 \lt 2\sqrt{k} \lt 1$
のとき、グラフは図Bのようになる。
$0 \lt 2\sqrt{k} \lt 1$だと分かりにくいので、各辺を2乗して、
$0 \lt 4k \lt 1$
各辺を$4$で割って、
$0 \lt k \lt \displaystyle \frac{1}{4}$
と変形しておこう。
このとき、式Dを満たすのは、図Bの赤い点の2個。
また、ツより
$x=\displaystyle \frac{\pi}{4}$
も解だけど、これは
$2x=\displaystyle \frac{\pi}{2}$
と変形すると、
$\theta=\displaystyle \frac{\pi}{2}$
で、図Bのオレンジの点になるから、赤い点とは重ならない。
よって、このとき、①を満たす$x$の個数は3個ある。
解答ナ:3
式Dの右辺の$2\sqrt{k}$が、
$2\sqrt{k}=1$
のとき、グラフは図Cのようになる。
今回も$2\sqrt{k}=1$を変形して、
$k=\displaystyle \frac{1}{4}$
としておこう。
このとき、式Dを満たすのは、図Cの赤い点の1個。
これは、ツの
$\theta=\displaystyle \frac{\pi}{2}$
と同じ点で、重解である。
よって、このとき、①を満たす$x$の個数は1個である。
解答ニ:1
式Dの右辺の$2\sqrt{k}$が、
$2\sqrt{k}\leqq 0$と$1 \lt 2\sqrt{k}$の場合については、
$0 \lt \sqrt{k}$なので、$2\sqrt{k}\leqq 0$にはならない
$1 \lt 2\sqrt{k}$を変形すると$\displaystyle \frac{1}{4} \lt k$だけど、これはテトで解決済み
なので、考えなくてよい。
解法2
2倍角の公式の復習の式B3をちょっと変形して、
$\cos 4x=1-2\sin^{2}2x$
$2\sin^{2}2x=1-\cos 4x$
$\displaystyle \sin^{2}2x=\frac{1-\cos 4x}{2}$
として、式C'に代入すると
$\displaystyle \frac{1-\cos 4x}{2}=4k$
となる。
これを変形して、$4x=\theta$とおくと、
$\cos \theta=1-8k$式E
ができる。
$\theta$の範囲、つまり定義域は
$ 0 \lt 4x \lt 2\pi$
より
$ 0 \lt \theta \lt 2\pi$
なので、グラフを描くと図Dができる。
グラフ中の緑の範囲が定義域だ。
式Eの右辺の$1-8k$が、
$-1 \lt 1-8k \lt 1$
のとき、グラフは例えば図Eのようになる。
$-1 \lt 1-8k \lt 1$だと分かりにくいので、変形して、
$-2 \lt -8k \lt 0$
$\displaystyle \frac{1}{4} \gt k \gt 0$
$0 \lt k \lt \displaystyle \frac{1}{4}$
としておこう。
このとき、式Eを満たすのは、図Eの赤い点の2個。
また、ツより
$x=\displaystyle \frac{\pi}{4}$
も解だけど、これは
$ 4x=\pi$
より
$ \theta=\pi$
と変形すると、図Eのオレンジの点になるから、赤い点とは重ならない。
よって、このとき、①を満たす$x$の個数は3個ある。
解答ナ:3
式Eの右辺の$1-8k$が、
$1-8k=-1$
のとき、グラフは図Fのようになる。
$1-8k=-1$を変形して、
$k=\displaystyle \frac{1}{4}$
としておこう。
このとき、式Eを満たすのは、図Cの赤い点の1個。
これは、ツの
$ \theta=\pi$
と同じ点で、重解である。
よって、このとき、①を満たす$x$の個数は1個である。
解答ニ:1
式Eの右辺の$1-8k$が、
$1-8k \lt -1$と$1\leqq 1-8k$の場合については、
$1-8k \lt -1$を変形すると$\displaystyle \frac{1}{4} \lt k$だけど、これはテトで解決済み
$1\leqq 1-8k$より$k\leqq 0$だけど、問題文より$0 \lt k$だから、$k\leqq 0$にはならない
なので、考えなくてよい。
解法3
2倍角の公式の復習の式B3をちょっと変形して、
$\cos 4x=1-2\sin^{2}2x$
$2\sin^{2}2x=1-\cos 4x$
$\displaystyle \sin^{2}2x=\frac{1-\cos 4x}{2}$
として、式C'に代入すると
$\displaystyle \frac{1-\cos 4x}{2}=4k$
となる。
これを変形して、
$\cos 4x=1-8k$式E'
ができる。
ここまでは解法2と同じだ。
この式E'の解の個数を考える。
式E'を、連立方程式
$y=\cos 4x$式E1
$y=1-8k$式E2
を解いている途中式だと考える。
このとき、式E'の方程式の解は、式E1,E2の連立方程式の解である。
また、連立方程式の解は、2つのグラフの共有点の座標に等しい。
よって、式E'の解の個数は、式E1,E2のグラフの共有点の個数である。
というわけで、式E1のグラフを描く。
さらに、ツより、$x=\displaystyle \frac{\pi}{4}$のときには$k$の値にかかわらず①が成り立つので、
$x=\displaystyle \frac{\pi}{4}$
のグラフもいっしょに描くと、図Gができる。
図Gを見ながら、グラフの共有点の数を考えるわけだ。
例えば、$1-8k=\displaystyle \frac{1}{2}$のとき、
式E2は
$y=\displaystyle \frac{1}{2}$
となる。
これをグラフに書き込むと、図Hのオレンジの直線になる。
オレンジの直線と黒いグラフの共有点は3個。
よって、このとき、①を満たす$x$は3個ある。
また、同様に、
$1-8k=-1$のとき、
式E2のグラフは図Hの赤い直線で、黒いグラフとの共有点は1個。
よって、このとき、①を満たす$x$は1個。
である。
一方、問題文より$k$は正の数なので、
$0 \lt k$
だから
$1-8k \lt 1$
である。
よって、$y=1-8k$のグラフが、図Iの、
黄色の範囲のとき、解は1個
赤い線と重なるとき、解は1個
オレンジの範囲のとき、解は3個
グレーの範囲に入ることはない
である。
以上をまとめると、
$1-8k \lt -1$
つまり
$\displaystyle \frac{1}{4} \lt k$のとき、
解は1個。
解答テ:1, ト:4
$1-8k=-1$
つまり
$\displaystyle \frac{1}{4}=k$のとき、
解は1個。
解答ニ:1
$-1 \lt 1-8k \lt 1$
つまり
$0 \lt k \lt \displaystyle \frac{1}{4}$のとき、
解は3個である。
解答ナ:3
(2)
式C'に$k=\displaystyle \frac{4}{25}$を代入して、
$\displaystyle \sin^{2} 2x=4 \cdot \frac{4}{25}$
$\displaystyle \sin^{2}2x=\left(\frac{4}{5}\right)^{2}$
$\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt 2x \lt \pi$より$0 \lt \sin 2x$なので、
$\displaystyle \sin 2x=\frac{4}{5}$
解答ヌ:4, ネ:5
$\sin^{2}\theta+\cos^{2}\theta=1$なので、
$\sin^{2}2x+\cos^{2}2x=1$
$\displaystyle \left(\frac{4}{5}\right)^{2}+\cos^{2}2x=1$
$\displaystyle \cos^{2}2x=1-\left(\frac{4}{5}\right)^{2}$
$\cos^{2}2x$$\displaystyle =\frac{5^{2} - 4^{2}}{5^{2}}$
$\cos^{2}2x$$\displaystyle =\left(\frac{3}{5}\right)^{2}$
$\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt 2x \lt \pi$なので、$\cos 2x \lt 0$だから、
$\displaystyle \cos 2x=-\frac{3}{5}$式F
解答ノ:-, ハ:3, ヒ:5
ここで、半角公式の復習をしよう。
復習
$\displaystyle \sin^{2}\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{2}$
$\displaystyle \cos^{2}\frac{\theta}{2}=\frac{1+\cos\theta}{2}$式G
$\displaystyle \tan^{2}\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}$
だった。
式Gの$\theta$に$2x$を代入して、
$\displaystyle \cos^{2}x=\frac{1+\cos 2x}{2}$
これに式Fを代入して、
$\displaystyle \cos^{2}x=\frac{1-\frac{3}{5}}{2}$
$\displaystyle \cos^{2}x$$\displaystyle =\frac{1}{5}$
$\displaystyle \frac{\pi}{4} \lt x \lt \frac{\pi}{2}$なので、$0 \lt \cos x$だから、
$\displaystyle \cos x=\frac{1}{\sqrt{5}}$
$\displaystyle \cos x$$\displaystyle =\frac{\sqrt{5}}{5}$
となる。
解答フ:5, ヘ:5