大学入試センター試験 2017年(平成29年) 追試 数学ⅡB 第5問 解説

(1)

まず、二項分布について復習しておこう。

復習

確率$p$で事象$\mathrm{A}$が起こる試行を$n$回繰り返し、$\mathrm{A}$が起こった回数を$R$とすると、$R$の確率分布は二項分布$B(n,p)$である。
$B(n,p)$の
平均(期待値)$\mu=np$ 分散$\sigma^{2}=np(1-p)$ になる。

これだけじゃ分かりにくいので、もうちょっと説明する。
上の説明を言いかえると、表Aのような確率変数$R$があったとき、

表A
$R$ $0$ $1$ $\cdots$ $n$
確率 ${}_{n}\mathrm{C}_{0}\cdot p^{0}\cdot(1-p)^{n}$ ${}_{n}\mathrm{C}_{1}\cdot p^{1}\cdot(1-p)^{n-1}$ $\cdots$ ${}_{n}\mathrm{C}_{n}\cdot p^{n}\cdot(1-p)^{0}$ $1$

$R$の
平均(期待値)$E(R)=np$ 分散$V(R)=np(1-p)$ である。

復習より、確率変数$W$は二項分布$\displaystyle B\left(4,\frac{3}{5}\right)$に従うので、
平均(期待値)は
$4\displaystyle \cdot\frac{3}{5}=\frac{12}{5}$
分散は
$4\displaystyle \cdot\frac{3}{5}\left(1-\frac{3}{5}\right)=\frac{24}{25}$
である。

解答ア:1, イ:2, ウ:5, エ:2, オ:4, カ:2, キ:5


今回の試行回数は$4$なので、白球が出る回数を$W$とすると、赤球が出る回数は
$4-W$
とかける。
なので、
$X=W-(4-W)$
より
$X=2W-4$式A
となる。

解答ク:2, ケ:4

ここで、確率変数の変換の復習をしよう。

復習

確率変数$R$の
平均(期待値)が$E(R)$ 分散が$V(R)$ であるとする。

$R$を使って
$Q=aR+b$ ($a$,$b$は定数)
とするとき、確率変数$Q$の
平均(期待値)$E(Q)=aE(R)+b$式G 分散$V(Q)=a^{2}V(R)$ である。

式Aと復習より、確率変数$X$の
平均(期待値)は
$2\displaystyle \cdot\frac{12}{5}-4=\frac{4}{5}$
分散は
$2^{2}\displaystyle \cdot\frac{24}{25}=\frac{96}{25}$
である。

解答コ:4, サ:5, シ:9, ス:6, セ:2, ソ:5

(2)

球が全部で$10$個で、白球の割合が$\displaystyle \frac{3}{5}$なので、袋の中には
白球が$6$個 赤球が$4$個 入っていることになる。

$P(Y=0)$は白球が$1$個も出ない確率。
言いかえると、赤球が$4$個出る確率なので、
$P(Y=0)=\displaystyle \frac{{}_{4}C_{4}}{{}_{10}C_{4}}$
$P(Y=0)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{4\cdot 3\cdot 2\cdot 1}{10\cdot 9\cdot 8\cdot 7}$
$P(Y=0)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{10\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=0)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{210}$
となる。

解答タ:1, チ:2, ツ:1, テ:0

$P(Y=1)$は白球が$1$個、赤球が$3$個出る確率なので、
$P(Y=1)=\displaystyle \frac{{}_{6}C_{1}\cdot {}_{4}C_{3}}{{}_{10}C_{3}}$
ここで、$P(Y=0)$の計算から、
$\displaystyle \frac{1}{{}_{10}C_{4}}=\frac{1}{10\cdot 3\cdot 7}$
なので、
$P(Y=1)=\displaystyle \frac{{}_{6}C_{1}\cdot {}_{4}C_{3}}{10\cdot 3\cdot 7}$
${}_{4}C_{3}={}_{4}C_{1}$だから、
$P(Y=1)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{6\cdot 4}{10\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=1)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{4}{5\cdot 7}$
$P(Y=1)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{4}{35}$
である。

解答ト:4, ナ:3, ニ:5


同様に、$P(Y=2)$,$P(Y=3)$,$P(Y=4)$を求めると、
$P(Y=2)=\displaystyle \frac{{}_{6}C_{2}\cdot {}_{4}C_{2}}{{}_{10}C_{3}}$
$P(Y=2)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{6\cdot 5}{2\cdot 1}\cdot\frac{4\cdot 3}{2\cdot 1}\cdot\frac{1}{10\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=2)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3\cdot 5\cdot 3}{5\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=3)=\displaystyle \frac{{}_{6}C_{3}\cdot {}_{4}C_{1}}{{}_{10}C_{3}}$
$P(Y=3)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{6\cdot 5\cdot 4}{3\cdot 2\cdot 1}\cdot\frac{4}{10\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=3)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{5\cdot 2\cdot 4}{5\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=4)=\displaystyle \frac{{}_{6}C_{4}}{{}_{10}C_{3}}$
$P(Y=4)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{6\cdot 5}{2\cdot 1}\cdot\frac{1}{10\cdot 3\cdot 7}$
$P(Y=4)\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3\cdot 5}{2\cdot 5\cdot 3\cdot 7}$
となる。

以上から確率分布表を書くと、

表B
$Y$ $0$ $1$ $2$ $3$ $4$
$P(Y)$ $\displaystyle \frac{1}{210}$ $\displaystyle \frac{4}{5\cdot 7}$ $\displaystyle \frac{5\cdot 3}{5\cdot 7}$ $\displaystyle \frac{5\cdot 2\cdot 4}{3\cdot 5\cdot 7}$ $\displaystyle \frac{5}{2\cdot 5\cdot 7}$ $1$

となる。
表Bから$Y$の平均$\overline{Y}$を計算すると、
$\displaystyle \overline{Y}=0\cdot\frac{1}{210}+1\cdot\frac{4}{5\cdot 7}+2\cdot\frac{5\cdot 3}{5\cdot 7}$
            $\displaystyle +3\cdot\frac{5\cdot 2\cdot 4}{3\cdot 5\cdot 7}+4\cdot\frac{5}{2\cdot 5\cdot 7}$

途中式 $\displaystyle \overline{Y}$$\displaystyle =\frac{4}{5\cdot 7}+\frac{2\cdot 5\cdot 3}{5\cdot 7}+\frac{5\cdot 2\cdot 4}{5\cdot 7}+\frac{2\cdot 5}{5\cdot 7}$
$\displaystyle \overline{Y}$$\displaystyle =\frac{4+2\cdot 5\cdot 3+2\cdot 5\cdot 4+2\cdot 5}{5\cdot 7}$
$\displaystyle \overline{Y}$$\displaystyle =\frac{84}{5\cdot 7}$
$\displaystyle \overline{Y}$$\displaystyle =\frac{12}{5}$
となる。

解答ヌ:1, ネ:2, ノ:5

(3)

まず、$p$と$r$の意味を確認しておこう。
$p$は、袋に入っている白球の割合。
袋に入っている$m$個の球が母集団なので、母集団における白球の割合である。これを母比率という。
確率変数$W$は白球の出る回数。
$w$は$W$のとる値なので、実際に$n$回の復元抽出をした場合に出た白球の数だ。
$r=\displaystyle \frac{w}{n}$なので、$r$は、実際に$n$回の復元抽出をした場合に白球が出た比率である。これを標本比率という。

ここで、標本比率から母比率の信頼区間を求める式の復習をしておく。

復習

標本比率を$r$,標本の大きさを$n$とすると、母比率$p$を推定する式は、
$\displaystyle r-z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\leqq p\leqq r+z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}$式H
ただし、$z$は
信頼度95%のとき、$1.96$
信頼度99%のとき、$2.58$
だった。

問題文より、信頼度を$ 95\%$としたときの信頼区間を
$A\leqq p\leqq B$
とするので、復習の式Hから
$\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle A=r-z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\\
\displaystyle B=r+z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}
\end{array}\right.$
より、信頼区間の幅$B-A$は
$\displaystyle B-A=\left(r+z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\right)-\left(r-z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}\right)$
$B-A$$\displaystyle =2z\sqrt{\frac{r(1-r)}{n}}$式I
とかける。

ここで、
$z$は、信頼度95%なので、$z=1.96$で定数 $n$は試行回数なので定数 だから、式Iに含まれる文字のうち、変数は$r$だけである。

以上より、式Iが最大になるのは、
$r(1-r)$
が最大になるとき。
また、$r$は標本比率なので、
$0\leqq r\leqq 1$
である。

図C
大学入試センター試験2017年追試 数学ⅡB第5問 解説図C

よって、$r(1-r)$のグラフを描くと、図Cができる。
図Cより、$r(1-r)$が最大になるのは
$r=\displaystyle \frac{1}{2}$
$r$$=0.5$
のとき。
なので、式Iが最大になる、つまり$B-A$が最大になるのも
$r=0.5$式J
のときである。

解答ハ:5


式I,式Jより、
$\displaystyle L_{1}=2z\sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{n}}$
また、式Iに$r=0.8$を代入して、
$\displaystyle L_{2}=2z\sqrt{\frac{0.8(1-0.8)}{n}}$
なので、
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}=\frac{2z\sqrt{\frac{0.8(1-0.8)}{n}}}{2z\sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{n}}}$

途中式 これを約分して、
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}=\frac{\sqrt{\frac{0.8(1-0.8)}{n}}}{\sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{n}}}$
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}$$\displaystyle =\sqrt{\frac{\frac{0.8(1-0.8)}{n}}{\frac{0.5(1-0.5)}{n}}}$
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}$$\displaystyle =\sqrt{\frac{0.8(1-0.8)}{0.5(1-0.5)}}$
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}$$\displaystyle =\sqrt{\frac{0.8\times 0.2}{0.5^{2}}}$
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}$$\displaystyle =\sqrt{\frac{8\times 2}{5^{2}}}$
$\displaystyle \frac{L_{2}}{L_{1}}$$\displaystyle =\sqrt{\frac{4^{2}}{5^{2}}}$
    $=\displaystyle \frac{4}{5}$
    $=0.8$
となる。

解答ヒ:0, フ:8

アドバイス

これだと なぜ答えが出るのか全く分からないので、こちらのページで原理を説明してある。ただし、式Hを使わずに原理から解くと結構手間がかかる。なので、センター試験本番では上の解説のように公式を使って解くことをおすすめする。