大学入学共通テスト 2018年(平成30年) 試行調査 数学ⅠA 第4問 解説

(1)

図Aの状態で天秤が釣り合ったという。

図A
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第4問 解説図A

左辺を皿A,右辺を皿Bとして、図Aの状態を式にすると
$M+8\times 1=3\times 5$式A
となる。

解答ア:1, イ:5

これを解いて、
$M+8=15$
$M=7$
である。

解答ウ:7

アドバイス

式Aは
$ 3\times$$5$$+8\times$$(-1)$$=$$M$式A'
と変形できるから、
$(x,y)=(5,-1)$
は、$M=7$のときの、1次不定方程式
$3$$x$$+8$$y$$=$$M$
の整数解のひとつである。

この2つの式の、
緑の部分は3gの分銅の数 青い部分は8gの分銅の数 赤い部分は物体Xの質量 にあたる。

なので、すべて正の値だけど、式A'の青い部分(8gの分銅の数)は負になっている。
これは、式Aから式A'に変形したときに移項したため。
このことから、物体Xと同じ皿にのせた分銅の数は負の値になることが分かる。

(2)

$M=1$のとき、皿Aにのせる8gの分銅の数を$y$とすると、図Bの状態で天秤が釣り合うという。

図B
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第4問 解説図B

左辺を皿A,右辺を皿Bとして、図Bの状態を式にすると、
$1+8\times y=3\times 3$式B
となる。

これを解くと、
$1+8y=9$
$y=1$
である。

解答エ:1

$y=1$なので、式Bは
$1$$+8\times$$1$$=3\times$$3$
より
とかける。
赤い部分は物体Xの質量,青い部分は8gの分銅の数,緑の部分は3gの分銅の数にあたる。

この式の両辺を$M$倍すると、
$M$$+8\times$$M$$=3\times$$3M$式B'
となるから、物体Xの質量$M$がどんな自然数でも
皿Aに
物体X 8gの分銅を$M$個
皿Bに
3gの分銅を$3M$個
のせると、天秤が釣り合うことが分かる。

解答オ:1, カ:4

アドバイス

式B'を、さらに
$3\cdot$$3M$$+8\times$$(-M)$$=$$M$
と変形すると、
$($$x$$,$$y$$)=($$3M$$,$$-M$$)$
は、1次不定方程式
$3$$x$$+8$$y$$=$$M$
の整数解のひとつである。

(1)のアドバイスにも書いたけど、この解の$y$が負の値になっているのは、8gの分銅は物体Xと同じ皿にのせたから。

(3) キ,ク

$M=20$のとき、図Cの状態で天秤が釣り合うとする。

図C
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第4問 解説図C

左辺を皿A,右辺を皿Bとして、図Cの状態を式にすると、
$20+3\times p=8\times q$
より、1次不定方程式
$3\cdot(-p)+8q=20$式C
ができる。

式Cの$0$以上の整数解を求めれば、それが問題の$(p,q)$だ。


(2)の式B'を変形すると
$3\cdot 3M+8\cdot(-M)=M$
とかける。

これに$M=20$を代入して、
$3\cdot 60+8\cdot(-20)=20$式D
として、式Cから辺々引くと、

$3\cdot(-p)$$+8q$$=$$20$
$-)$$3\cdot60$$+8\cdot(-20)$$=$$20$
$3(-p-60)$$+8(q+20)$$=$$0$

となるから、
$3(p+60)=8(q+20)$
とかける。

この式が成り立つためには、$3$と$8$は互いに素なので、$m$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}
p+60=8m\\
q+20=3m
\end{array}\right.$
でなければならない。

よって、式Cのすべての解は
$\left\{\begin{array}{l}
p=8m-60\\
q=3m-20
\end{array}\right.$式E
と表せる。


いま、$p$,$q$は分銅の個数なので、$0$以上の整数のはず。
なので、式Eより
$\left\{\begin{array}{l}
0\leqq 8m-60\\
0\leqq 3m-20
\end{array}\right.$
とかける。

これを計算して、
$60\leqq 8m$
$\displaystyle \frac{15}{2}\leqq m$
$7.5\leqq m$
$20\leqq 3m$
$\displaystyle \frac{20}{3}\leqq m$
$6.\dot{6}\leqq m$
より、
$8\leqq m$式F
でなければならない。

このときの$p$が最小となる$(p,q)$の組を問われているんだけど、式Eを見ると、$m$が小さいほど$p$も小さい。
なので、式Fを満たす最小の$m$の
$m=8$
を式Eに代入すると、求める$(p,q)$は
$\left\{\begin{array}{l}
p=8\cdot 8-60\\
q=3\cdot 8-20
\end{array}\right.$
より
$(p,q)=(4,4)$
となる。

解答キ:4, ク:4

アドバイス

問題文では$p$,$q$を自然数としていて$0$を考えていないけれど、これは$p=0$または$q=0$は明らかに解ではないため。
$p$,$q$を自然数としても$0$以上の整数としても、答えには影響がない。

(3) ケ~シ

次に、1次不定方程式
$3x+8y=20$式G
のすべての解を求めよという。

式Gは式Cとほとんど同じなので、これまでの作業を利用する方向で解こう。

で見つけた$(p,q)$の解を式Cに代入して
$ 3\cdot(-4)+8\cdot$$4$$=20$式H
として、式Gから辺々引くと、

$3x$$+8y$$=$$20$
$-)$$3\cdot(-4)$$+8\cdot$$4$$=$$20$
$3(x+4)$$+8(y-$$4$$)$$=$$0$

となるから、
$-3(x+4)=8(y-$$4$$)$
とかける。

この式が成り立つためには、$3$と$8$は互いに素なので、$n$を整数として

$x+4=8n$
$y-$$4$$=-3n$

でなければならない。

よって、式Gの解は

$x=-4+8n$式I
$y=$$4$$-3n$

と表せる。

解答ケ:-, コ:4, サ:8, シ:3

アドバイス

式Gから辺々引く式としては、
$3\cdot 60+8\cdot(-20)=20$式D $3\cdot(-4)+8\cdot 4=20$式H が候補になるけど、どちらを使った方が有利か考えてみる。

は$4$で、問題文に
$y=$$-$$n$
とあるので、求める$y$は
$y=4-$$n$
の形で答えなきゃいけない。

上の解説の式Iから式Hに計算をさかのぼってもらうと分かるように、式Iのオレンジ色の$4$は、式Hのオレンジ色の$4$からきている。
つまり、式Iのオレンジの部分を$4$にしたいのなら、式Hのオレンジの部分は$4$でないといけない。
こういうわけで、上の解説では式Gから式Hを辺々引いた。

これに気がつかないと、式Dを使ってしまうかも。
この場合でも解けるけど、、別解1のように作業量が増えてしまう。

別解1

お勧めじゃないけど、式Dを使っても次のように解ける。

式Gから式Dを辺々引くと、

$3x$$+8y$$=$$20$
$-)$$3\cdot60$$+8\cdot(-20)$$=$$20$
$3(x-60)$$+8(y+20)$$=$$0$

となるから、
$-3(x-60)=8(y+20)$
とかける。

この式が成り立つためには、$3$と$8$は互いに素なので、$\ell$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}
x-60=8\ell\\
y+20=-3\ell
\end{array}\right.$
でなければならない。

よって、式Gの解は
$\left\{\begin{array}{l}
x=60+8\ell\\
y=-20-3\ell
\end{array}\right.$式J
と表せる。

これを

$x=$ケコ$+$$n$式K
$y=4-$$n$

の形に変える。

アドバイス

式Jと式Kは同じ方程式の解なので、同じ数の集まりを表している。

いま、ここに$10$の倍数の集まり
$\{\cdots$,$-20$,$-10$,$0$,$10$,$20$,$30$,$40$,$\cdots\}$
があったとする。

この数字の集まりを、 $-10$を基準として表すと、整数$j$を使って
$-10+10j$ または
$-10-10j$ と表せる。方法A
$30$を基準として表すと、整数$k$を使って
$30+10k$ または
$30-10k$ と表せる。方法B

例えば$10$は、
方法Aでは
$j=2$として、$-10+10\cdot 2$ または
$j=-2$として、$-10-10\cdot(-2)$
方法Bでは
$k=-2$として、$30+10\cdot(-2)$ または
$k=2$として、$30-10\cdot 2$
と表せる。

式Jと式Kの違いもこれと同じことで、基準になる数の違いだといえる。

よって、式Jと式Kの$x$の式同士,$y$の式同士では、$\ell$の係数と$n$の係数の絶対値は等しいので、
$=3$
となる。

このとき、$y$の式より
$-20-3\ell=4-3n$
なので、
$3\ell=3n-24$
$\ell=n-8$
とかける。

これを式Jの$x$の式に代入して、
$x=60+8(n-8)$
$x$$=-4+8n$
である。

解答ケ:-, コ:4, サ:8, シ:3

別解2

を求める途中で分かったように、1次不定方程式
$3\cdot(-p)+8q=20$式C
のすべての解は
$\left\{\begin{array}{l}
p=8m-60\\
q=3m-20
\end{array}\right.$式E
だった。

式Cを、
$3x+8y=20$式G
と見比べると、
$\left\{\begin{array}{l}
x=-p\\
y=q
\end{array}\right.$式L
とすると、2つの式は等しくなることが分かる。

なので、式Gのすべての解は、式Eを式Lに代入して
$\left\{\begin{array}{l}
x=-8m+60\\
y=3m-20
\end{array}\right.$
とかける。

これを

$x=$ケコ$+$$n$
$y=4-$$n$

の形に変える。

ここから先は、別解1のアドバイス以降とほぼ同じ作業になるので省略する。

(4)

3gの分銅の数を$s$,8gの分銅の数を$t$とすると、天秤が釣り合うとき、
$3s+8t=M$
とかける。

同様に、2種類の分銅の質量を$W_{1}$,$W_{2}$,それぞれの分銅の数を$s$,$t$,物体Xの質量を$7$とすると
$W_{1}s+W_{2}t=7$式M
とかける。
この1次不定方程式が$s$,$t$の整数解をもつとき、天秤は釣り合う。

ということで、選択肢から、式Mが整数解をもたない分銅の質量の組合せを探す。

まず復習から。

復習

$ax+by=1$が$x$,$y$の整数解を持つ
          ↑↓
$a$と$b$が互いに素

だった。

また、(2)で考えたように、
$ax+by=1$
が解をもてば、
$ax+by=M$
も解をもつ。

これを頭に入れて、選択肢をひとつずつ確認しよう。


式Mに$W_{1}=3$,$W_{2}=14$を代入すると
$3s+14t=7$
ができる。

$s$と$t$の係数の$3$と$14$は互いに素なので、この方程式は整数解をもつ。
よって、天秤を釣り合わせることができる分銅の数の組合せが存在する。

式Mに$W_{1}=3$,$W_{2}=21$を代入すると
$3s+21t=7$
ができる。

$s$と$t$の係数の$3$と$21$は互いに素ではないので、この方程式は整数解をもたない。
よって、天秤を釣り合わせることはできない。

式Mに$W_{1}=8$,$W_{2}=14$を代入すると
$8s+14t=7$
ができる。

$s$と$t$の係数の$8$と$14$は互いに素ではないので、この方程式は整数解をもたない。
よって、天秤を釣り合わせることはできない。

式Mに$W_{1}=8$,$W_{2}=21$を代入すると
$8s+21t=7$
ができる。

$s$と$t$の係数の$8$と$21$は互いに素なので、この方程式は整数解をもつ。
よって、天秤を釣り合わせることができる分銅の数の組合せが存在する。

以上より、天秤を釣り合わせることができない組合せは
①と②
である。

解答ス:1,2

アドバイス

問題にはなかったけれど、例えば分銅の重さが
14gと21g
だったりした場合、式Mに代入すると
$14s+21t=7$式N
ができる。

このとき、
「$s$と$t$の係数の$14$と$21$は互いに素ではないので、この方程式は整数解をもたない」
と考えてはダメ

式Nは両辺が$7$で割れて、
$2s+3t=1$式N'
と変形できる。 式N'の形だと、$s$と$t$の係数は互いに素なので、整数解を持つことが分かる。

このように、両辺が同じ数で割れる場合は割って、必ず係数が一番簡単な整数になるようにしてから考えよう。

(5) セ~タ

アドバイス

話は変わって、物体Xと分銅を別の皿に載せた場合、釣り合わない物体Xの質量を考えよという。

(4)と同じように
$3x+8y=M$
として考えてもいいけど、その先が簡単には思いつかない。

こんなとき、マークシート問題なら、上を見て下を見る。
つまり、これまでに解いてきた道筋を振り返って、何かヒントがないか考える。
それでダメなら、問題の先を見て、これから先の流れを確認する。
その中にヒントがあることも多い。


問題文の先を読むと、$x$を$0$以上の整数として、ソタより大きい数はすべて

(i)$3x+8\times 0$ (ii)$3x+8\times 1$ (iii)$3x+8\times 2$

のいずれかに当てはまるという。

実際にやってみたら、何かつかめるかも知れない。
あれこれ考えるよりも、やってみよう。

問題文から、釣り合わない$M$はソタ以下の数で、通りある。
は一桁なので、きっとソタはそれほど大きい数じゃない。
とりあえず$20$くらいまでの自然数を書いた表Aをつくって、確認しよう。

まず、(i)だ。
$3x+8\times 0=3x$
なので、問題文にも書いてあるけど、(i)に含まれるのは$3$の倍数である。
表Aの青い部分がこれにあたる。

次に、(ii)。
$3x+8\times 1=3x+8$
$3x+8\times 1$$=3x+3\times 2+2$
$3x+8\times 1$$=3(x+2)+2$
なので、問題文にも書いてあるけど、(ii)に含まれるのは、$8$以上の$3$で割ると$2$余る数だ。
表Aの緑の部分がこれにあたる。

最後に、(iii)。
$3x+8\times 2=3x+16$
$3x+8\times 2$$=3x+3\times 5+1$
$3x+8\times 2$$=3(x+5)+1$
なので、問題文にも書いてあるけど、(iii)に含まれるのは、$16$以上の$3$で割ると$1$余る数。
表Aのオレンジの部分がこれにあたる。

表A
$1$$2$$3$
$4$$5$$6$
$7$$8$$9$
$10$$11$$12$
$13$$14$$15$
$16$$17$$18$
$19$$20$$\cdots$

ここまでやってみると、
(i)は、3gの分銅だけ (ii)は、8gの分銅1個と 3gの分銅 (iii)は、8gの分銅2個と 3gの分銅 を使って作れる質量であることに気づく。

8gの分銅を3個使う場合は、
8g$\times$3個 $=$ 3g$\times$8個なので、作れる質量は(i)に含まれる。
8gの分銅を4個使う場合は、
8g$\times$4個 $=$ 8g$\times$1個$+$3g$\times$8個なので、作れる質量は(i)に含まれる。
同様に、8gの分銅を5個使う場合は(iii)に含まれるし、6個使う場合は(i)に含まれる。
なので、8gの分銅が3個以上の場合は考えなくていい。


以上より、釣り合わない$M$は、表Aの色がついていない部分の
7通り
あり、最も大きい値は、
$13$
である。

解答セ:7, ソ:1, タ:3

(5) チ~ト

次は、
$3x+2018y$
で表せない自然数の最大値だ。

ソタと同じように考えよう。

(i)を
$3x+2018\times 0$
とかける数の集合とする。
このとき、(i)に含まれるのは$3$の倍数だ。

(ii)を
$3x+2018\times 1$
とかける数の集合とする。
このとき、
$3x+2018\times 1=3x+3\times 672+2$
$3x+2018\times 1$$=3(x+672)+2$
より、(ii)に含まれるのは、$2018$以上の$3$で割ると$2$余る数。

(iii)を
$3x+2018\times 2$
とかける数の集合とする。
このとき、
$3x+2018\times 2=3x+4036$
$3x+2018\times 1$$=3x+3\times 1345+1$
$3x+2018\times 1$$=3(x+1345)+1$
より、(iii)に含まれるのは、$4036$以上の$3$で割ると$1$余る数。

これを表Aと同じように表すと、表Bができる。

表B
$1$$2$$3$
$4$$5$$6$
$\vdots$$\vdots$$\vdots$
$2011$$2012$$2013$
$2014$$2015$$2016$
$2017$$2018$$2019$
$2030$$2031$$2032$
$\vdots$$\vdots$$\vdots$
$4030$$4031$$4032$
$4033$$4034$$4035$
$4036$$4037$$4038$
$4039$$4040$$4041$
$\vdots$$\vdots$$\vdots$

(i),(ii),(iii)に含まれる数は
$3x+2018y$
と表すことができるので、(i),(ii),(iii)に含まれない最大の数が、問われているチツテトだ。

よって、求めるチツテトは、表Bの色がついていないマスで一番大きな数字(赤文字の数字)の
$4033$
である。

解答チ:4, ツ:0, テ:3, ト:3

別解

上の解説では、イメージがつかみやすいように表Bを書いて考えた。
けれど、大学入学共通テスト本番では、時間節約のため、できれば表は書かずにすませたい。
(i),(ii),(iii)のルールが理解できれば、次のような解き方ができる。

ソタでは、表Aの一番左の列にある色がついてないマスのうち、一番下にある数の$13$が答えだった。
これは、(iii)に含まれる最小の数である$16$よりも$3$小さい数といえる。

チツテトでも同様に考えると、(iii)に含まれる最小の数である$4036$よりも$3$小さい数が答えだと分かる。
よって、求めるチツテト
$4036-3=4033$
である。

解答チ:4, ツ:0, テ:3, ト:3