大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 本試 数学Ⅱ 第4問 解説

(1)

$S(x)=0$
つまり
$(x-2)\{x^{2}-2(p+1)x+2p^{2}-2p+5\}=0$
の解は、
$x-2=0$ $x^{2}-2(p+1)x+2p^{2}-2p+5=0$ のふたつの方程式の解を合わせたもの。

$x-2=0$ の解は$2$で実数なので、全ての解が実数になるのは、方程式①が実数解をもつときだ。

①式の判別式は
$\{-2(p+1)\}^{2}-4\cdot 1\cdot(2p^{2}-2p+5)$

途中式 $=4\{(p+1)^{2}-(2p^{2}-2p+5)\}$
$=4(p^{2}+2p+1-2p^{2}+2p-5)$
$=4(-p^{2}+4p-4)$式A
とかける。

よって、①が実数解をもつのは
$4(-p^{2}+4p-4)\geqq 0$
より
$p^{2}-4p+4\leqq 0$
のとき。

解答ア:4, イ:4

これを解いて、①が実数解をもつのは
$(p-2)^{2}\leqq 0$
$p=2$
のとき。

解答ウ:2

これを①式に代入すると

途中式 $x^{2}-2(2+1)x+2\cdot 2^{2}-2\cdot 2+5=0$
$x^{2}-6x+9=0$
$(x-3)^{2}=0$
となるから、このときの方程式①の解は
$x=3$
の重解である。

解答エ:3


$p\neq 2$のときの方程式①の解を求めるのには、解の公式を使う。
解の公式の根号の中は判別式なので、式Aが使えて
$x= \dfrac{2(p+1)\pm\sqrt{4(-p^{2}+4p-4)}}{2\cdot 1}$
と表せる。

これを計算すると、①の解は

途中式 $x= \dfrac{2(p+1)\pm 2\sqrt{-p^{2}+4p-4}}{2}$
$\phantom{ x }=p+1\pm\sqrt{-(p^{2}-4p+4)}$
$\phantom{ x } =p+1\pm\sqrt{i^{2}(p-2)^{2}}$
より
$x=p+1\pm(p-2)i$
となる。

解答オ:1, カ:2

(2)

$T(x)=0$ の解のひとつが $x=r$ なので、$T(x)=0$ に $x=r$ を代入して
$r^{3}+r+q=0$
より
$q=-r^{3}+r$
とかける。

解答キ:3

これを$T(x)$の式に代入すると、
$T(x)=x^{3}+x-r^{3}-r$
となる。

この式の右辺を
$T(x)=x^{3}-r^{3}+x-r$
と変形して因数分解すると、
$T(x)=(x-r)(x^{2}+rx+r^{2})+x-r$
$\phantom{ T(x) }=(x-r)(x^{2}+rx+r^{2}+1)$
と表せる。

解答ク:2, ケ:1

よって、$T(x)=0$ の $x=r$ 以外の解は、方程式
$x^{2}+rx+r^{2}+1=0$式B
の解である。

式Bの判別式を$D$とすると、
$D=r^{2}-4\cdot 1\cdot(r^{2}+1)$
$\phantom{ D } =-3r^{2}-4$式C
だ。

ここで、すべての実数$r$について
$-3r^{2}-4 \lt 0$
だから、$D$は必ず
$D \lt 0$
になる。

解答コ:0

また、式Bの解は、解の公式より
$x= \dfrac{-r\pm\sqrt{D}}{2}$式D
とかける。

いま
$D \lt 0$
だから、式Dの根号の中は負の値だ。
この根号の中を正の値にすると
$x= \dfrac{-r\pm\sqrt{-D}i}{2}$式D'
となる。

詳しく

$D \lt 0$
だから
$-D \gt 0$
だ。

なので、式Dの根号の中を正の値の$-D$にしたい。

$D=-D\times(-1)$
と考えると、
$D=-Di^{2}$
とかける。

これを式Dに代入すると、
$x= \dfrac{-r\pm\sqrt{-Di^{2}}}{2}$
$\phantom{ x }=\dfrac{-r\pm\sqrt{-D}i}{2}$式D'
となって、根号の中が正の値になる。

解答サ:6

以上より、式Bの解、つまり $T(x)=0$ の $x=r$ 以外の解$\alpha'$,$\beta'$は
虚数であり、互いに共役な複素数である ことが分かる。

解答シ:2

この共役な複素数は、式D'に式Cを代入して、
$x= \dfrac{-r\pm\sqrt{-(-3r^{2}-4)}i}{2}$
$\phantom{ x }=-\dfrac{r}{2}\pm\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}i}{2}$
である。

(3)

ここで、これまでに分かったことをまとめておく。

まとめ

$S(x)=0$ の解は、
$p=2$ のとき
$2$(実数) $3$(実数の重解)
$p\neq 2$ のとき
$2$(実数) $p+1\pm(p-2)i$(虚数)

$T(x)=0$ の解は
$r$(実数) $- \dfrac{r}{2}\pm\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}i}{2}$(虚数)

これをもとに、$S(x)=0$ と $T(x)=0$ の共通の解を考える。

(i)

まとめより、$x=2$ が共通の解になるのは、
$T(x)=0$ の実数解$r$が$2$であるとき だけしかない。

よって、このときの$r$の値は
$r=2$ の1個存在する ことになる。

解答ス:1

(ii)

$S(x)=0$ の実数解は$2$と$3$しかない。
よって、共通の実数解が $x=2$ 以外のとき、
共通の実数解は $x=3$ しかない。

このとき、
$S(x)=0$ が解 $x=3$ をもつので、$p=2$ $T(x)=0$ が解 $x=3$ をもつので、$r=3$ である。

解答セ:2, ソ:3

(iii)

共通の解が虚数のとき、
$p+1 \pm(p-2)i=-\dfrac{r}{2}\pm\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}i}{2}$
または
$p+1 \pm(p-2)i=-\dfrac{r}{2}\mp\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}i}{2}$
である。(複合同順)

このことから、連立方程式
$p+1=- \dfrac{r}{2}$式E $p-2= \pm\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}}{2}$式F ができる。

これを解く。

式Eより
$p=- \dfrac{r}{2}-1$式E'

これを式Fに代入して、

途中式 $- \dfrac{r}{2}-1-2=\pm\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}}{2}$
$- \dfrac{r}{2}-3=\pm\dfrac{\sqrt{3r^{2}+4}}{2}$
$-r-6=\pm\sqrt{3r^{2}+4}$

この両辺を2乗すると、

途中式 $(-r-6)^{2}=3r^{2}+4$
$r^{2}+12r+36=3r^{2}+4$
$2r^{2}-12r-32=0$
$r^{2}-6r-16=0$
と変形できる。

この左辺を因数分解すると、
$(r-8)(r+2)=0$
なので、
$r=-2$,$8$
である。

これを式E'に代入して、$p$は
$r=-2$ のとき、
$p=- \dfrac{-2}{2}-1=0$
$r=8$ のとき、
$p=- \dfrac{8}{2}-1=-5$
となる。

以上より、
共通の解が虚数のとき、
$(p, r)=(0, -2)$,$(-5, 8)$
であることが分かる。

解答タ:0, チ:-, ツ:2, テ:-, ト:5, ナ:8