大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 本試 数学Ⅰ 第1問 [2] 解説

(1)

$a=4$,$b=5$のとき、集合$A$,$B$は表Aのようになる。

表A
$U$ $2$ $3$ $4$ $5$ $6$ $7$ $8$ $9$
$A$
$B$

表Aより、
$A\cup B=\{4,5,8\}$
である。

解答シ:4, ス:5, セ:8

(2)

$a=2$,$b=3$のとき、集合$A$,$B$は表Bのようになる。
集合$\overline{B}$は表Bの緑の部分だ。

表B
$U$ $2$ $3$ $4$ $5$ $6$ $7$ $8$ $9$
$A$
$B$

表Bより、
$A\cap\overline{B}=\{2,4,8\}$
である。

解答ソ:2, タ:4, チ:8

(3)

(i)

ド・モルガンの法則より
$\overline{C}\cap\overline{D}=\overline{C\cup D}$
なので、

図C
大学入学共通テスト2024年本試 数学Ⅰ 第1問 [2] 解説図C

$A\cup B=\overline{C}\cap\overline{D}$

$A\cup B=\overline{C\cup D}$
より
$C\cup D=\overline{A\cup B}$
とかける。

これをベン図で表すと、図Cのような関係である。

また、$\overline{A\cup B}$は表Bの$A$にも$B$にも○がない部分なので、
$\overline{A\cup B}=\{5,7\}$
だ。

よって、この問題では
$C\cup D=\{5,7\}$
になる場合を問われていることになる。

この$5$と$7$については、
$5$は$5$の倍数の集合にしか含まれない $7$は$7$の倍数の集合にしか含まれない から、$c$,$d$の一方は$5$,もう一方は$7$だけど、
$c \lt d$
なので、
$c=5$,$d=7$
であることが分かる。

解答ツ:5, テ:7

(ii)

図Cより、(i)のとき
$(A\cup B)\ \cup\ (C\cup D)\ =\ U$
が成り立っている。

よって、求める$a$,$b$,$c$,$d$は、(i)と同じ
$a=2$,$b=3$,$c=5$,$d=7$
である。

解答ト:2, ナ:3, ニ:5, ヌ:7


上の方法では(i)の結果を使って解いた。
下に、(i)を使わない解法を2つ載せておく。

ひとつは「やってみる」系の、頭よりも手を使う方法。
もうひとつは手よりも頭を使う方法だ。

別解(手を使う方法)

$A\cup B\cup C\cup D=U$
なので、
集合$U$のすべての要素が、$A$,$B$,$C$,$D$どれかの集合に含まれるようにする という方針で考える。
もちろん。ひとつの要素が複数の集合に含まれてもかまわない。

集合$U$のすべての要素は表Dのとおり。

表D
$U$ $2$ $3$ $4$ $5$ $6$ $7$ $8$ $9$

このうちの最小の数である$2$に着目すると、
$2$が$A$,$B$,$C$,$D$どれかの集合に含まれるためには、$a$,$b$,$c$,$d$のどれかが$2$ でなければならない。

このとき、
$a$,$b$,$c$,$d$は集合$U$の要素なので、
$2$は$a$,$b$,$c$,$d$のうちで最小の数
問題文より、$a \lt b \lt c \lt d$
だから、
$a=2$
であることが分かる。

解答ト:2

よって、$A$は表Eのような集合だ。

表E
$U$$2$$3$$4$$5$$6$$7$$8$$9$
$A$

これで、表Eの緑の部分は、集合$A$に含まれることで解決した。
次に、未解決の赤い部分を考える。

このうちの最小の数である$3$に着目すると、
$3$が$B$,$C$,$D$どれかの集合に含まれるためには、$b$,$c$,$d$のどれかが$3$ だから、$2$のときと同様の理由で
$b=3$
であることが分かる。

解答ナ:3

表Eに集合$B$を書き加えると、表Fができる。

表F
$U$$2$$3$$4$$5$$6$$7$$8$$9$
$A$
$B$

ここまでで、表Fの緑の部分は、集合$A$または$B$に含まれることで解決した。
さらに、未解決の赤い部分を考える。

このうちの最小の数である$5$に着目して、これまでと同様に考えると、
$c=5$
であることが分かる。

解答ニ:5

表Fに集合$C$を書き加えると、表Gができる。

表G
$U$$2$$3$$4$$5$$6$$7$$8$$9$
$A$
$B$
$C$

以上で、集合$U$の要素のうち 未解決なのは表Gの赤い部分の$7$だけになった。

よって、
$d=7$
である。

解答ヌ:7

別解(頭を使う方法)

突然だけど、ここで素数について考えてみる。

素数とは
$2$以上の自然数で、正の約数が2個($1$とその数自身)しかないもの だった。

なので、$2$以上の自然数の倍数の集合を考えたとき、素数は自分自身の倍数の集合にしか含まれない。

よって、集合$U$に含まれる4つの素数について、
$2$は $2$の倍数の集合にしか含まれない。 $3$は $3$の倍数の集合にしか含まれない。 $5$は $5$の倍数の集合にしか含まれない。 $7$は $7$の倍数の集合にしか含まれない。

したがって、$A\cup B\cup C\cup D$に 4つの素数が含まれるとき、
$a$,$b$,$c$,$d$のどれかが$2$で、どれかが$3$で、どれかが$5$で、どれかが$7$ なんだけど、
$a\lt b\lt c\lt d$
だから
$a=2$,$b=3$,$c=5$,$d=7$式A であることが分かる。


また、素数でも$1$でもない自然数を合成数というけど、合成数は その数より小さい$2$個以上の素数の積の形で表せる。
なので、
集合$U$に含まれるすべての合成数(素数以外の数)は、$U$に含まれる素数の倍数 である。

したがって、
式Aのとき、集合$U$に含まれるすべての合成数は、集合$A$,$B$,$C$,$D$の少なくとも1つに含まれる ことが分かる。

以上より、式Aのとき、集合$U$のすべての要素は$A\cup B\cup C\cup D$に含まれるから、
式Aのとき $A\cup B\cup C\cup D=U$が成り立つ といえる。

解答ト:2, ナ:3, ニ:5, ヌ:7

(iii)

アドバイス

必要条件・十分条件の問題は、一般的には
$p\Rightarrow q \quad$×
$p\Leftarrow q\quad$○
なので、必要条件

みたいに解くことが多いけど、○×の判定で混乱したり間違えたりすることが多い。なので、図や表で表せるときは、集合の大小で考える方がおすすめ。

必要条件・十分条件と集合

図H
大学入学共通テスト2024年追試 数学Ⅰ第1問[2] 復習図H

図Hで、
$p$は$q$の必要条件 $q$は$p$の十分条件 である。
つまり、片方の集合がもう片方に含まれるとき、
大きい集合は小さい集合の必要条件 小さい集合は大きい集合の十分条件 である。

大は小の必要条件・小は大の十分条件。」
呪文のように憶えておこう。

また、

図I
大学入学共通テスト2024年追試 数学Ⅰ第1問[2] 復習図I

図Iのように ふたつの集合が等しい場合は、必要十分条件

図Jのように、片方がもう片方を含むような関係でない場合には、必要条件でも十分条件でもない

図J
大学入学共通テスト2024年追試 数学Ⅰ第1問[2] 復習図J 大学入学共通テスト2024年追試 数学Ⅰ第1問[2] 復習図J

ことになる。

$a=2$のとき、集合$A$は
$A=\{2,4,6,8\}$
となるので、
$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$
である。

$a\neq 2$のとき、

$a$は$2$より大きい数だから、
$2 \lt a \lt b \lt c$
となるので、$A$も$B$も$C$も$2$の倍数の集合じゃない。

$2$は$2$の倍数の集合にしか含まれない。

よって、$2$は集合$A$にも$B$にも$C$にも含まれないから、
$\{2,6,8\}\not\subset A\cup B\cup C$
である。

これを表にすると、表Kができる。

表K
$a=2$ $a\neq 2$
$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$ $\{2,6,8\}\not\subset A\cup B\cup C$

表Kを見ると、
$a=2$である集合は、緑の部分 $\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$である集合は、赤い部分 だから、ふたつの集合は等しい。

これは復習の図Iの関係なので、
$a=2$であることは $\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$ であるための必要十分条件 であることが分かる。

解答ネ:2

別解

集合の大小を使わずに解くと、次のようになる。

$a=2$のとき、集合$A$は
$A=\{2,4,6,8\}$
となるので、
$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$
である。

つまり
$a=2 \Rightarrow\ \{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$
は成り立つ。

$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$のとき、
$2$は$2$の倍数の集合にしか含まれないから、
$a$,$b$,$c$のどれかが$2$
$a \lt b \lt c$なので、$a$,$b$,$c$のうちで
$2$になることができるのは$a$だけ
だから、
$a=2$
である。

つまり
$a=2 \Leftarrow\ \{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$
は成り立つ。

以上より、
$a=2 \left\{\begin{array}{l} \Rightarrow\text{○}\\ \text{○}\Leftarrow \end{array}\right\}\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$
なので、
$a=2$であることは $\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$ であるための必要十分条件 である。

解答ネ:2

で考えたように、$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$ が成り立つかどうかは$a$の値だけで決まる。
$b$の値は関係ない。

なので、
$b=6$であることは $\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$ であるための必要条件でも十分条件でもない といえる。

解答ノ:3

別解

$a$,$b$,$c$の数の選び方は
${}_{7}\mathrm{C}_{3}$
通りあるけど、この中には、$a=2$であるものも、$b=6$であるものも含まれる。
これをベン図にすると図Lのようになる。

図L
大学入学共通テスト2024年本試 数学Ⅰ 第1問 [2] 解説図L

より、$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$の集合は$a=2$の集合と等しい。
よって、図Lにおいて、
$\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$の集合は赤い部分 $b=6$の集合は緑の部分 である。

この2つの集合は 復習の図Jの左図と同じ関係なので、
$b=6$であることは $\{2,6,8\}\subset A\cup B\cup C$ であるための必要条件でも十分条件でもない ことになる。

解答ノ:3