大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 本試 数学ⅠA 第4問 解説

はじめに

ここでは、$n$進法の原理、つまり「なぜこういう計算をするのか」については説明しない。
それについてはこのページで解説してあるので、自信がない人は下の解説を見る前に読んでほしい。

最初に確認しておくと、それぞれのタイマーの表示は、
T3:経過時間を$3$進数で表したものの下3桁 T4:経過時間を$4$進数で表したものの下3桁 T6:経過時間を$6$進数で表したものの下3桁 にあたる。

これを頭に入れて、問題を解こう。

(1)

T6の表示は、経過時間を$6$進数で表したものの下3桁だった。
ということで、経過時間の$40_{(10)}$を$6$進数にする。

$40$を、$6$進数の基数である$6$で割る。
その商をまた基数の$6$で割って、という作業を商が$0$になるまでくり返すと、次のような計算になる。

大学入学共通テスト2024年本試 数学ⅠA第4問 解説

この計算ででた余り(赤文字の部分)を右から順に並べた
$104_{(6)}$
が、$6$進数で表した$40_{(10)}$になる。

以上より、$40_{(10)}$秒後のT6の表示は
$104$
である。

解答ア:1, イ:0, ウ:4


T4の表示は、経過時間を$4$進数で表したものの下3桁だった。
ということで、$10011_{(2)}$を$4$進数にする。

ここでは、$2$進数をいったん$10$進数にしてから$4$進数にする。
$2$進数から$4$進数へ直接変換する方法は、別解で説明する。


$10011_{(2)}$は
$2^{4}$が$1$つ $2^{3}$が$0$ $2^{2}$が$0$ $2^{1}$が$1$つ $2^{0}$が$1$つ 集まった数だ。

なので、$10011_{(2)}$を$10$進数にすると
$$ \begin{align} 10011_{(2)}&=2^{4}+2^{1}+2^{0}\\ &=19_{(10)} \end{align} $$ となる。

これを$4$進数で表す。
アイウを求めたときと同様の作業をすると、次のような計算になる。

$ 19\div 4=4\ldots\textcolor{red}{3}$
$ 4\div 4=1\ldots\textcolor{red}{0}$
$ 1\div 4=0\ldots\textcolor{red}{1}$

この計算ででた余り(赤文字の部分)を右から順に並べた
$103_{(4)}$
が、$6$進数で表した$19_{(10)}$、つまり$10011_{(2)}$だ。

以上より、$10011_{(2)}$秒後のT4の表示は
$103$
である。

解答エ:1, オ:0, カ:3

別解

上の解では、$10011_{(2)}$をいったん$10$進数になおしてから$4$進数に変換した。
この方法はどんな場合でも使えるからおすすめだ。

一方で、この問題のような
$2$進数 $\rightarrow 4$進数($2^{2}$進数) などの $n$進数 $\leftrightarrow\ n^{m}$進数 ($m$は整数)は、直接計算ができる。
別解ではその方法を説明する。

使いどころが限られるから、興味がない人はスルーしても大丈夫。


例として、$1111.11_{(2)}$を$8$進法で表すことを考える。

$n$進数を$n^{\textcolor{red}{m}}$進数に変換するときは、まず $\textcolor{red}{m}$桁ずつのブロックに区切る。
いまは$2$進数を$8$進数($2^{\textcolor{red}{3}}$進数)にするので、桁ずつのブロックに区切る。
このとき、
区切る場所の基準は小数点 小数部分がちょうど$3$桁のセットにならないときには、後ろに$0$をたす ようにする。

$1111.11_{(2)}$をこの方法で区切ると
$\colorbox{#ffbcdd}{$1$}\colorbox{#bcffbc}{$111$}.\colorbox{#bcddff}{$110$}_{(2)}$
となって、整数部分が$2$つ,小数部分が$1$つ,合計3個のブロックに分けられる。

各ブロックが変換後の$8$進数の1桁にあたる。
したがって、変換後の$8$進数は整数部分が$2$桁,小数部分が$1$桁になる。

次に、それぞれのブロックごとに、$2$進数を$8$進数に変換する。

ピンクのブロックの$1_{(2)}$を$10$進数にすると$1$だけど、$10$進数の$1$は$8$進数でも$1$だ。
変換先の基数$\ell$が$10$以下であれば、ブロックを変換した$10$進数と$\ell$進数は必ず同じ数字になる。
なので、一番上の桁は$1$だ。

緑のブロックの$111_{(2)}$を$10$進数にした$7$は、$8$進数でも$7$だ。
なので、2番目の桁は$7$になる。

青いブロックの$110_{(2)}$を$10$進数にした$6$は、$8$進数でも$6$だ。
なので、小数部分は$6$になる。

以上より、$1111.11_{(2)}$を$8$進法で表すと
$17.6_{(8)}$
である。

以上より、下のような関係が成り立つことが分かる。

大学入学共通テスト2024年本試 数学ⅠA第4問 解説

この方法で問題の$10011_{(2)}$を$4$進数($2^{2}$進数)にすると、次のようになる。

$2$進数を$2^{\textcolor{red}{2}}$進数にするので、$10011_{(2)}$を小数点の位置を基準に桁ずつに区切ると
$\colorbox{#ffbcdd}{$1$}\colorbox{#bcffbc}{$00$}\colorbox{#bcddff}{$11$}_{(2)}$
となって、3個のブロックに分けられる。
ブロックが3つできたので、変換後の$4$進数は$3$桁だ。

この3つのブロックをそれぞれ$4$進数で表すと、
ピンクのブロックの$1$を$10$進数にした$1$は$4$進数でも$1$なので、一番上の桁は$1$ 緑のブロックの$00$を$10$進数にした$0$は$4$進数でも$0$なので、2番目の桁は$0$ 青いブロックの$11$を$10$進数にすると
$2^{1}\times 1+2^{0}\times 1=3$
だから $4$進数でも$3$なので、一番下の桁は$3$
になる。

よって、$10011_{(2)}$を$4$進数にすると
$103_{(4)}$
と表せる。

解答エ:1, オ:0, カ:3

(2)

T4の表示は、経過時間を$4$進数で表したものの下3桁だった。
なので、スタート後
$1000_{(4)}$秒 ごとに表示は$000$に戻る。

$1000_{(4)}$は
$4^{3}$が$1$つ $4^{2}$が$0$ $4^{1}$が$0$ $4^{0}$が$0$ 集まった数なので、$10$進数にすると
$4^{3}$
とかける。

つまり、T4の表示は
$4^{3}$秒 ごとにが$000$に戻る。

したがって、スタート後初めてT4の表示が$000$に戻るのは
$4^{3}$秒後$=64$秒後
であることが分かる。

解答キ:6, ク:4


同様に考えると、T6の表示は、スタート後
$1000_{(6)}$秒 ごとに$000$に戻る。

$1000_{(6)}$は
$6^{3}$が$1$つ $6^{2}$が$0$ $6^{1}$が$0$ $6^{0}$が$0$ 集まった数なので、$10$進数にすると
$6^{3}$
とかける。

したがって、T4の表示は
$6^{3}$秒 ごとにが$000$に戻る。

以上より、T4とT6のタイマーの表示が両方とも$000$に戻るのは、
$4^{3}$と$6^{3}$の最小公倍数 秒ごとであることが分かる。

$\left\{\begin{array}{l}
4^{3}=2^{3}\times 2^{3}\\
6^{3}=2^{3}\times 3^{3}
\end{array}\right.$
なので、$4^{3}$と$6^{3}$の最小公倍数は
$2^{3}\times 2^{3}\times 3^{3}=1728$
だ。

よって、スタート後初めてT4とT6の両方の表示が$000$に戻るのは
$1728$秒後
である。

解答ケ:1, コ:7, サ:2, シ:8

(3)

T4の表示は、経過時間を$4$進数で表したものの下3桁だった。
なので、T4の表示が$012$であることは、
経過時間$\ell$を$4$進数で表すと、下3桁が$012$である つまり
$\ell$を$1000_{(4)}$で割った余りが$12_{(4)}$である ことと同じだ。

これを$10$進法で書きかえると、
キクより、$1000_{(4)}=64$ $12_{(4)}=4^{1}\times 1+4^{0}\times 2=6$ なので、
$\ell$を$64$で割った余りが$6$である となる。

解答ス:6, セ:4, ソ:6

よって、整数$x$を使って
$\ell\div 64=x\ldots 6$
より
$\ell=64x+6$式A
とかける。


T3についても同様に考えると、T3の表示が$012$であることは
経過時間を$1000_{(3)}$で割った余りが$12_{(3)}$である といえる。

これを$10$進法で書きかえると、
$1000_{(3)}=3^{3}=27$ $12_{(3)}=3^{1}\times 1+3^{0}\times 2=5$ なので、
経過時間を$27$で割った余りが$5$である となる。

タイマーがスタートしてから$\ell$秒後にT3の表示も$012$であったとすると、整数$y$を使って
$\ell\div 27=y\ldots 5$
より
$\ell=27y+5$式B
とかける。


ここで問われているのは、初めてT3とT4両方に$012$と表示されるまでの経過時間$m$だ。
つまり、式A,Bで表した$\ell$の最小の正の値を問われている。 なので、式A,Bを連立方程式として考える。

式A,Bから$\ell$を消去すると、
$64x+6=27y+5$
より、1次不定方程式
$64x-27y=-1$式C
ができる。

式Cの解をひとつ見つけて 式Aまたは式Bに代入すると、T3とT4両方に$012$と表示されるまでの経過時間がひとつ分かる。
ということで、式Cの解をひとつ見つけよう。
方法は、お約束の互除法だ。

$x$と$y$の係数の$64$と$27$でユークリッドの互除法を行うと、
$64\div 27=2\ldots 10$式D1
$27\div 10=2\ldots 7$式D2
$10\div 7=1\ldots 3$式D3
$7\div 3=2\ldots 1$式D4

これを「=余り」の形に変形して、
$64-27\cdot 2=10$式D1'
$27-10\cdot 2=7$式D2'
$10-7\cdot 1=3$式D3'
$7-3\cdot 2=1$式D4'

式D4'に式D3'を代入して、
$10\cdot(-2)+7\cdot 3=1$
これに式D2'を代入して、
$27\cdot 3+10\cdot(-8)=1$
これに式D1'を代入すると
$64\cdot(-8)+27\cdot 19=1$
となる。

この式が式Cと同じ形になるように、両辺に$-1$をかけると
$64\cdot 8-27\cdot 19=-1$
とかけるから、
$\left\{\begin{array}{l} x=8 \class{tex_formula}{式E}\\ y=19 \end{array}\right.$
は方程式Cの解のひとつだ。


解のひとつが見つかったから、経過時間がひとつ分かる。

式Eを式Aに代入すると
$$ \begin{align} \ell&=64\cdot 8+6\\ &=518 \class{tex_formula}{式F} \end{align} $$ だから、タイマーがスタートしてから$518$秒後には、T3,T4両方の表示が$012$であることが分かる。

また、
キクで考えたように、T4は$4^{3}$秒ごとに同じ数が表示される 同様に考えて、T3は$3^{3}$秒ごとに同じ数が表示される ことから、T3,T4ともに同じ数が表示されるのは、$4^{3}$と$3^{3}$の最小公倍数の
$4^{3}\times 3^{3}=1728$
秒ごとである。

よって、$518$秒後よりも前に ふたつのタイマーの表示が$012$になることはない。

以上より、T3,T4の表示が初めて同時に$012$になるのは、式Fの
$518$秒後
であることが分かる。

解答タ:5, チ:1, ツ:8


T6についても同様に考えると、T6の表示が$012$であることは
経過時間を$1000_{(6)}$で割った余りが$12_{(6)}$である といえる。

これを$10$進法で書きかえると、
$1000_{(6)}=6^{3}$ $12_{(6)}=6^{1}\times 1+6^{0}\times 2=8$ なので、
経過時間を$6^{3}$で割った余りが$8$である となる。

タイマーがスタートしてから$\ell$秒後にT6の表示も$012$であったとすると、整数$z$を使って
$\ell\div 6^{3}=z\ldots 8$
より
$\ell=6^{3}z+8$式G
とかける。

さっきと同じように、式Aと式Gから1次不定方程式をつくると
$64x+6=6^{3}z+8$
より
$64x-6^{3}z=2$
$32x-6^{2}\cdot 3z=1$
となるけど、$x$と$z$の係数の$32$と$6^{2}\cdot 3$は互いに素じゃないから、この式を満たす$x$,$z$の整数解は存在しない。

よって、T4とT6が同時に$012$と表示されることはないので、解答群のうち正しいものは

である。

解答テ:3