大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 本試 数学ⅡB 第1問 [2] 解説
(1)
方程式
$S(x)=0$
の解は、解の公式より
$x=\dfrac{-4\pm\sqrt{4^{2}-4\cdot 1\cdot 7}}{2\cdot 1}$
とかける。
これを計算して、求める$x$は
$$
\begin{align}
x&=\dfrac{-4\pm\sqrt{4(4-7)}}{2}\\
&=\dfrac{-4\pm 2\sqrt{-3}}{2}\\
&=-2\pm\sqrt{3}i
\end{align}
$$
である。
解答コ:-, サ:2, シ:3
また、$P(x)$を$S(x)$で割ると
$2x$ | $-1$ | ||||
$x^{2}+4x+7$ | $)$ | $2x^{3}$ | $+7x^{2}$ | $+10x$ | $+5$ |
$2x^{3}$ | $+8x^{2}$ | $+14x$ | |||
$-x^{2}$ | $-4x$ | ||||
$-x^{2}$ | $-4x$ | $-7$ | |||
$12$ |
なので、
$\left\{\begin{array}{l}
T(x)=2x-1\\
U(x)=12
\end{array}\right.$
となる。
解答ス:2, セ:1, ソ:1, タ:2
(2)
(i)
チだけど、問題の意味がよく分からないかも知れない。
要するに、
$\left\{\begin{array}{l}
P(x)=S(x)T(x)+k\class{tex_formula}{式A}\\
S(\alpha)=S(\beta)=0\class{tex_formula}{式B}\\
P(\alpha)=P(\beta)=k\class{tex_formula}{式C}
\end{array}\right.$
の3式について、どれを材料にしてどれが導かれているかが問われている。
それぞれの選択肢の内容を図で表すと、次のようになる。
⓪
①
②
③
ということで、式A~式Cがどのように導かれるか考えよう。
式A
問題文の
「$P(x)$を$S(x)$で割ったときの商を$T(x)$,余りを$U(x)$とする」
から
$P(x)=S(x)T(x)+U(x)$式D
とかける。
これに、問題文の
$U(x)=k$
を代入すると、式Aの
$P(x)=S(x)T(x)+k$式A
ができる。
式B
問題文の
「$S(x)=0$は異なる二つの解$\alpha$,$\beta$をもつとする」
から、式Bの
$S(\alpha)=S(\beta)=0$式B
ができる。
式Aに$ x=\alpha$,$\beta$を代入すると、
$\left\{\begin{array}{l}
P(\alpha)=S(\alpha)T(\alpha)+k\\
P(\beta)=S(\beta)T(\beta)+k
\end{array}\right.$
となるけど、これに式Bを代入すると
$\left\{\begin{array}{l}
P(\alpha)=0\times T(\alpha)+k\\
P(\beta)=0\times T(\beta)+k
\end{array}\right.$式E
なので、式Cの
$P(\alpha)=P(\beta)=k$式C
ができる。
以上より、
式A,式Bは問題文から直接導かれる
式Cは式Aと式Bから導かれる
ことが分かる。
よって、選択肢のうち正しいのは
③
である。
解答チ:3
次はツ。
チが③だったから、問題文のこの部分は
「(前略) … $P(\alpha)=P(\beta)=k$となることが導かれる。したがって,余りが定数になるとき,ツが成り立つ」
となる。
つまり、ツに入るのは、式Cの
$P(\alpha)=P(\beta)=k$式C
から分かることだ。
なので、解答群のうち正しいのは、式Cの前半と同じ
①
である。
解答ツ:1
余談
解答群の他の選択肢についても説明しておくと、
⓪,②
式Cを求める途中、式Eで$T(\alpha)$,$T(\beta)$の両方とも$0$をかけて消えるから、$T(\alpha)=T(\beta)$であっても$T(\alpha)\neq T(\beta)$であっても結果には影響がない。
つまり ⓪と②のどちらでもいいので、両方とも不適
③
式Cと矛盾するから不適
である。
以上より、
余りが定数$\Rightarrow P(\alpha)=P(\beta)$
が成り立つ。
(ii)
次に、
余りが定数$\Leftarrow P(\alpha)=P(\beta)$
が成り立つかどうか考えよう。
$U(x)$は$x$の整式を$x$の2次式で割った余りなので、$x$の1次以下の式だ。
なので、$m$,$n$を定数として
$U(x)=mx+n$式F
とおける。
これを式Dに代入すると、
$P(x)=S(x)T(x)+mx+n$
とかける。
解答テ:1
これに$ x=\alpha$,$ x=\beta$を代入すると、
$\left\{\begin{array}{l}
P(\alpha)=S(\alpha)T(\alpha)+m\alpha+n\\
P(\beta)=S(\beta)T(\beta)+m\beta+n
\end{array}\right.$
となるけど、$S(\alpha)=S(\beta)=0$なので、これはさらに
$\left\{\begin{array}{l}
P(\alpha)=m\alpha+n\\
P(\beta)=m\beta+n
\end{array}\right.$式G
と表せる。
解答ト:1
今は
余りが定数$\Leftarrow P(\alpha)=P(\beta)$
が成り立つがどうか考えている。
なので、
$P(\alpha)=P(\beta)$
と仮定すると、式Gより
$m\alpha+n=m\beta+n$
だから
$ m\alpha=m\beta$式H
が成り立つ。
問題文より$\alpha\neq\beta$なので、式Hが成り立つためには
$m=0$
でなければならない。
解答ナ:3
これを式Fに代入すると、$U(x)$は
$$
\begin{align}
U(x)&=0x+n\\
&=n
\end{align}
$$
となるから、$P(x)$を$S(x)$で割った余りは定数である。
したがって、
余りが定数$\Leftarrow P(\alpha)=P(\beta)$
は成り立つ。
これと、(i)で考えた
余りが定数$\Rightarrow P(\alpha)=P(\beta)$
とを合わせると、
余りが定数$\Leftrightarrow P(\alpha)=P(\beta)$
であることが分かる。
よって、
$P(x)$を$S(x)$で割った余りが定数になることと、$P(\alpha)=P(\beta)$であることは同値である
といえる。
(3)
(2)では
2次方程式$S(x)=0$が異なる2つの解$\alpha$,$\beta$をもつとき、
$P(x)$を$S(x)$で割った余りが定数になることと、$P(\alpha)=P(\beta)$であることは同値
余りを$k$とすると、
$P(\alpha)=P(\beta)=k$式C
であることが分かった。
これを使う方針で解こう。
まず、方程式$S(x)=0$の解を求める。
$$
\begin{align}
S(x)&=x^{2}-x-2\\
&=(x-2)(x+1)
\end{align}
$$
より、方程式$S(x)=0$の解は
$x=-1,2$
だから、$S(x)=0$は異なる2つの解をもつ。
よって、式Cより、$P(x)$を$S(x)$で割った余りが定数$k$のとき、
$P(-1)=P(2)=k$式I
であるはず。
$P(-1)\text{,}P(2)$を求めると、
$$ \begin{align} P(-1)&=(-1)^{10}-2\cdot(-1)^{9}-p(-1)^{2}-5\cdot(-1)\\ &=1+2-p+5\\ &=-p+8\class{tex_formula}{式J} \end{align} $$
$$ \begin{align} P(2)&=2^{10}-2\cdot 2^{9}-p\cdot 2^{2}-5\cdot 2\\ &=-4p-10 \end{align} $$
$P(x)$を$S(x)$で割った余りが定数になるときは この2式が等しいので、
$-p+8=-4p-10$
より
$3p=-18$
$p=-6$
であることが分かる。
解答ニ:-, ヌ:6
式Iより、余り$k$は$P(-1)$と$P(2)$のどちらを求めてもいい。
ここでは$P(-1)$を求めることにする。
式Jにニヌを代入して、求める余りは
$-(-6)+8=14$
である。
解答ネ:1, ノ:4