大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 追試 数学Ⅰ 第1問 [2] 解説
ブラウザによっては、補集合の記号( の上線部分)が表示されないことがあるようです。
この場合、拡大(Windows:Ctrl++/Mac:command++)または縮小(Windows:Ctrl+-/Mac:command+-)していただくと、正常に表示されるようです。
はじめに
集合や必要条件・十分条件の問題は、決して頭の中だけで解いてはいけない。
必ず集合を図や表で表して、目で見ながら解くことがポイントだ。
このタイプの問題では図Aのような数直線を描くことが多いけど、せっかくだから今回は目先を変えて 表にしてみよう。
図Aを表にすると、表Bのようになる。
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$A$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
$B$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$C$ | ○ | ○ | |||||||
$D$ | ○ | ○ | ○ | ○ |
これを使って問題を解く。
(1)
最初に、集合で使う記号の復習をしておこう。
復習
$\in$
[要素]$\in$[集合]
の形で使い、[要素]が[集合]の要素であることを示す。
例:$a\in A$($a$は集合$A$の要素である)
$\ni$は$\in$の左右を入れ替えたもの。
$\subset$
[集合]$\subset$[集合]
の形で使い、左側の集合が右側の集合の部分集合であることを示す。
例:$A\subset B$($A$は$B$の部分集合である)
$\supset$は$\subset$の左右を入れ替えたもの。
$\cap$
[集合]$\cap$[集合]
の形で使い、ふたつの集合の共通部分(積集合)を示す。
例:$A\cap B$(図中の斜線部分)
$\cup$
[集合]$\cup$[集合]
の形で使い、ふたつの集合をあわせた部分(和集合)を示す。
例:$A\cup B$(図中の斜線部分)
復習が終わったところで、問題に移ろう。
$\{2,3\}$サ$A\cap B$
の式は、サの左も右も集合だ。
なので、サには集合同士の関係を表す記号が入る。
つまり、解答群のうち
$\subset$,$\supset$,$=$
のどれかだ。
サの右の$A\cap B$は、集合$A$と集合$B$の共通部分。
つまり、表Cの赤い部分にあたる。
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$A$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
$B$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$A\cap B$ | ○ |
表Cより、
$A\cap B=\{2\}$
であることが分かる。
これは、サの左の集合
$\{2,3\}$
の部分集合だ。
よって
$\{2,3\}\supset A\cap B$
と表せるので、正解は解答群の
③
だ。
解答サ:3
$5$シ$\overline{B}$
の式の、シの左は要素、右は集合である。
なので、シには集合と要素の関係を表す記号が入る。
解答群には、集合と要素の関係の記号は
$\in$,$\ni$
の2つあるけど、この2つの使い方は
[要素]$\in$[集合]
[集合]$\ni$[要素]
なので、シに$\ni$は入らない。
よって、消去法で、正解は解答群の
⓪
しかない。
解答シ:0
別解
$\overline{B}$を求めて解くと、次のようになる。
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$B$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$\overline{B}$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
集合$\overline{B}$は、表Dの赤い部分。
要素$5$はこの集合に含まれるので、
$5\in\overline{B}$
と表せるから、正解は解答群の
⓪
である。
余談
シの式が
$\{5\}$シ$\overline{B}$
であった場合、$\{5\}$は集合なので、シには集合同士の関係を表す記号が入る。
この場合、集合$\{5\}$は集合$\overline{B}$の部分集合なので、
$\{5\}\subset\overline{B}$
となる。
$B$ス$\overline{C}=U$
の式を見ると、スの左も右も集合だ。
なので、解答群のうち
$\in$,$\ni$
は入らない。
また、式の中に$=$があるので、
$\subset$,$\supset$,$=$
も入りにくい。
とりあえず保留。
詳しく
$\subset$や$\supset$や$=$が入ると、ひとつの式に集合同士の関係を表す記号が2つあることになる。
こういう式もありだけれど、共通テストやセンター試験には出たことがないように思う。
なので、保留。
保留しないときは、次のような考え方になる。
$\subset$,$\supset$は、不等号の$ \lt $,$ \gt $をイメージすると分かりやすいかも知れない。
$X \lt Y=Z$
や
$X \gt Y=Z$
や
$X=Y=Z$
のような式も作れるから、
$ B\subset \textcolor{red}{\overline{C}=U}$
や
$ B\supset \textcolor{red}{\overline{C}=U}$
や
$B= \textcolor{red}{\overline{C}=U}$
のような式だって可能だ。
けれど、この場合、式の赤い部分の
$\overline{C}=U$
が成り立たないので、どっちにしろ不適。
残りの
$\cup$,$\cap$
が入ると考えた場合、
集合$B\cup\overline{C}$は、表Eの赤い部分。
集合$B\cap\overline{C}$は、表Eのオレンジの部分。
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$B$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$C$ | ○ | ○ | |||||||
$\overline{C}$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
$B\cup\overline{C}$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
$B\cap\overline{C}$ | ○ |
赤い部分とオレンジの部分のふたつの集合のうち、全体集合$U$と等しいのは赤い部分の$B\cup\overline{C}$だ。
よって、正解は解答群の
⑤
である。
解答ス:5
(2)
いつものように、復習から。
復習
必要条件・十分条件の問題は、一般的には
$p\Rightarrow q$ ×
$p\Leftarrow q$ ○
なので、必要条件
って解くことが多い。
けれど、○×の判定で混乱したり間違えたりすることも多かったりする。
なので、図や表で表せるときは、集合の大小で考える方がおすすめ。
必要条件・十分条件と集合
右図で、
$p$は$q$の必要条件
$q$は$p$の十分条件
である。
つまり、片方の集合がもう片方の集合に含まれる(部分集合である)とき、
大きい集合は小さい集合の必要条件
小さい集合は大きい集合の十分条件
である。
「大は小の必要条件・小は大の十分条件。」
呪文のように憶えておこう。
右図のようにふたつの集合が等しい場合は、必要十分条件となる。
下図のように、片方がもう片方を含むような関係でない場合には、必要条件でも十分条件でもない。
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$B$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$D$ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
$\overline{D}$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
$B\cap\overline{D}$ | ○ |
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$A$ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
$\overline{A}$ | ○ | ○ | ○ |
集合$B\cap\overline{D}$は、表Fの赤い部分 集合$\overline{A}$は、表Gの赤い部分 である。
ふたつの集合を見比べると、集合$\overline{A}$が集合$B\cap\overline{D}$を含んでいる。
復習の考え方だと、
集合$B\cap\overline{D}$が小さい集合
集合$\overline{A}$が大きい集合
にあたる。
よって、
$x\in B\cap\overline{D}$は、$x\in\overline{A}$であるためのセ
は
小さい集合は大きい集合であるためのセ
なので、
十分条件であるが必要条件ではない
ことが分かる。
解答セ:1
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$\overline{A}$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$B$ | ○ | ○ | ○ | ||||||
$\overline{A}\cup B$ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
$D$ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
$(\overline{A}\cup B)\cap D$ | ○ | ○ |
$\cdots$ | $-4$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$C$ | ○ | ○ |
集合$(\overline{A}\cup B)\cap D$は、表Hの赤い部分 集合$C$は表I である。
見比べると、ふたつの集合は等しい。
よって、$x\in(\overline{A}\cup B)\cap D$は、$x\in C$であるための
必要十分条件である
ことが分かる。
解答ソ:2