大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学Ⅰ 第3問 [1] 解説

(1)

(i)

方針1にしたがって、2次関数
$y=x^{2}+ax+b$式A
の最小値を求める。

式Aは$x^{2}$の係数が正の2次関数だから、グラフは下に凸の放物線である。
なので、最小値になるのは頂点だ。
というわけで、頂点の$y$座標を求めよう。

平方完成してもいいんだけど、面倒なので

復習

$y=ax^{2}+bx+c \quad (a\neq 0)$
の頂点の$x$座標は、
$\dfrac{-b}{2a}$

を使う。

復習より、式Aの2次関数の頂点の$x$座標は、
$x=-\dfrac{a}{2}$
であることが分かる。

これを式Aに代入して、最小値となる$y$は、
$y=\left(-\dfrac{a}{2}\right)^{2}+a\left(-\dfrac{a}{2}\right)+b$

途中式 $\phantom{y}=\dfrac{a^{2}}{4}-\dfrac{a^{2}}{2}+b$
$\phantom{y}=-\dfrac{a^{2}}{4}+b$
$\phantom{y}=\dfrac{-1}{4}a^{2}+b$
である。

解答ア:-, イ:1, ウ:4, エ:2

式Aの放物線と$x$軸が共有点をもたないとき、不等式①の解はすべての実数になる。
また、①の解がすべての実数なら、式Aの放物線と$x$軸は共有点をもたない。
よって、①の解がすべての実数になる必要十分条件は、
式Aの放物線と$x$軸が共有点をもたない ことだといえる。

これを最小値を使っていうと、
最小値が正 つまり
$\dfrac{-1}{4}a^{2}+b \gt 0$ である。

解答オ:2


次は、方針2。

$x^{2}+ax+b=0$式B
に解の公式を使うと、
$x=\dfrac{-a\pm\sqrt{a^{2}-4\cdot 1\cdot b}}{2\cdot 1}$
$\phantom{x}=\dfrac{-a\pm\sqrt{a^{2}-4b}}{2}$式C
とかける。

解答カ:2, キ:4

式Cの根号の中が負のとき、式Bの方程式は実数解をもたない。
つまり、式Aの放物線と$x$軸が共有点をもたないから、不等式①の解はすべての実数になる。
また、①の解がすべての実数なら、式Bの方程式は実数解をもたないから、式Cの根号の中は負だ。
よって、①の解がすべての実数になる必要十分条件は、
式Cの根号の中が負 だといえる。

これを式で表すと、
$a^{2}-4b \lt 0$ である。

解答ク:0

方針1と方針2で違う式ができたみたいに見えるけど、の式を変形するとの式になる。

(ii)

今度は、不等式
$-x^{2}+cx-4 \lt 0$
つまり
$x^{2}-cx+4 \gt 0$式D
を考える。

(i)の作業を振り返ると、
$x^{2}+ax+b \gt 0$の解がすべての実数になる必要十分条件は
$a^{2}-4b \lt 0$
だった。

これをそのまま使おう。

$x^{2}+ax+b \gt 0$の
$a$を$-c$に $b$を$4$に 変えると不等式Dになる。

なので、
$a^{2}-4b \lt 0$

$a$を$-c$に $b$を$4$に 変えると、不等式Dの解がすべての実数となるための必要十分条件ができるはず。

以上より、求める必要十分条件は
$(-c)^{2}-4\cdot 4 \lt 0$
とかける。

これを計算して、答えは
$c^{2} \lt 4^{2}$
より
$-4 \lt c \lt 4$
であることが分かる。

解答ケ:-, コ:4, サ:4

(2)

(i)

2次不等式
$2024x^{2}+2023x-2022 \gt 0$式E
を考える。

$x=1$を式Eに代入すると、左辺は
$2024\cdot 1^{2}+2023\cdot 1-2022 \gt 0$
なので、
$x=1$は式Eを満たす ことが分かる。

解答シ:0

$x=\dfrac{1}{2}$を式Eに代入すると、左辺は
$2024\cdot\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}+2023\cdot\dfrac{1}{2}-2022 \lt 0$
なので、
$x=\dfrac{1}{2}$は式Eを満たさない ことになる。

解答ス:1

(i)

式Eの左辺を
$y=2024x^{2}+2023x-2022$式F
とすると、このグラフは下に凸の放物線になる。

また、放物線の軸(頂点の$x$座標)は、(1)(i)の復習より
$x=-\dfrac{2023}{2\cdot 2024}$
だけど、これは$-\dfrac{1}{2}$よりもわずかに大きい(グラフだとちょっと右の)値だ。

さらに、(i)の結果から、式Fのグラフは、
$x=1$ のとき $0 \lt y$ $x=\dfrac{1}{2}$ のとき $y \lt 0$ なので、$\dfrac{1}{2} \lt x \lt 1$の範囲で$x$軸と交わる。

以上より、式Fのグラフを描くと、図Aのようになる。
図では $-\dfrac{2023}{2\cdot 2024}$を $-\dfrac{1}{2}$よりもはっきりと右に描いたけど、$-\dfrac{2023}{2\cdot 2024}\doteqdot-0.4998$ なので 実際にはほとんど差がない。

図A
大学入学共通テスト2023年追試 数学Ⅰ第3問[1] 解説図A

図Aは、わずかにずれているけれど ほぼ $x=-\dfrac{1}{2}$ に関して対称だ。
よって、式Fのグラフが
$\dfrac{1}{2} \lt x \lt 1$ の範囲で$x$軸と交わる のであれば、$\dfrac{1}{2}$,$1$と $x=-\dfrac{1}{2}$ に関して対称な
$-2 \lt x \lt -\dfrac{3}{2}$ の範囲で$x$軸と交わる と考えられる。

なので、問題文にある値のうち、式Eの不等式を満たすものは、図Aの赤丸の
4個 あると推測できる。

ただし、式Fのグラフの軸は$-\dfrac{1}{2}$よりわずかに右にずれているから、図Aのオレンジの交点が本当に$-\dfrac{3}{2}$よりも左にあるかどうかは確認しておかなきゃいけない。

確認のために $x=-\dfrac{3}{2}$ を式Fに代入すると、
$2024\cdot\left(-\dfrac{3}{2}\right)^{2}+2023\cdot\left(-\dfrac{3}{2}\right)-2022 \lt 0$
なので、$x=-\dfrac{3}{2}$のときに式Fのグラフは$x$軸よりも下にある。

よって、図Aの通り、オレンジの交点は確かに$-\dfrac{3}{2}$よりも左にある。

以上より、の答えは、図Aの赤丸の
4個 である。

解答セ:4