大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学Ⅱ 第3問 解説

(1)

$(x-1)^{2}+y^{2}=r^{2}$式A
は、
中心$(1,\ 0)$,半径$r$の円の式 である。

解答ア:1, イ:0

円$C$が$y$軸と接するのは
中心の$x$座標$=$半径 のときなので、このときの$r$は
$r=1$
である。

解答ウ:1

(2)

円$C$の式(式A)と 直線$\ell$の式($y=kx$)を連立方程式として解くと、$C$と$\ell$の共有点の座標が求められる。

なので、$y=kx$を式Aに代入して$y$を消去した
$(x-1)^{2}+(kx)^{2}=r^{2}$式B
の解は、$C$と$\ell$の共有点の$x$座標$\alpha$,$\beta$である。

式Bを計算すると
$x^{2}-2x+1+k^{2}x^{2}=r^{2}$
より
$(1+k^{2})x^{2}-2x+1-r^{2}=0$式B'
とかける。

よって、解と係数の関係から、

$\alpha+\beta=-\dfrac{-2}{1+k^{2}}$
$\phantom{ \alpha+\beta } =\dfrac{2}{1+k^{2}}$

解答エ:0

$\alpha\beta=\dfrac{1-r^{2}}{1+k^{2}}$

解答オ:2

であることが分かる。

(3)

$r=\dfrac{2}{3}$のとき、式B'は
$(1+k^{2})x^{2}-2x+1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{2}=0$
より
$3^{2}(1+k^{2})x^{2}-3^{2}\cdot 2x+3^{2}-2^{2}=0$
$3^{2}(1+k^{2})x^{2}-3^{2}\cdot 2x+5=0$式C
となる。

円$C$と直線$\ell$が共有点をもつのは 方程式Cが実数解をもつときなので、判別式が$0$以上のとき。
つまり
$(-3^{2}\cdot 2)^{2}-4\cdot 3^{2}(1+k^{2})\cdot 5\geqq 0$式D
のとき。

これを解いて

途中式 $\cancel{3^{2}}\cdot 3^{2}\cdot \cancel{2^{2}}- \cancel{4}\cdot \cancel{3^{2}}(1+k^{2})\cdot 5\geqq 0$
$3^{2}-5-5k^{2}\geqq 0$
$5k^{2}\leqq 4$
$k^{2}\leqq\dfrac{4}{5}$式E
$-\dfrac{2}{\sqrt{5}}\leqq k\leqq\dfrac{2}{\sqrt{5}}$
分母を有理化して
$-\dfrac{2\sqrt{5}}{5}\leqq k\leqq\dfrac{2\sqrt{5}}{5}$
のとき。

解答カ:2, キ:5, ク:5


また、直線$\ell$が図Aの緑の直線とオレンジの直線のどちらかのとき、円$C$と$\ell$は接する。

図A
大学入学共通テスト2023年追試 数学Ⅱ第3問 解説図A

このとき、
図Aの緑の直線とオレンジの直線は$x$軸に関して対称なので、
点$\mathrm{Q}_{1}$の$x$座標$=$点$\mathrm{Q}_{2}$の$x$座標
である。

円$C$と直線$\ell$が接するのは 方程式Cの判別式が$0$のときだから、式Dが等号成立のとき。
したがって、式Dを計算した式Eも等号成立なので、
$k^{2}=\dfrac{4}{5}$式E'
のとき。

このとき 方程式Cは重解をもつので、2つの解$\alpha$と$\beta$は
$\alpha=\beta$式F
である。

よって、求める接点の$x$座標を$\alpha$とすると、に式E',式Fを代入して
$\alpha+\alpha=\dfrac{2}{1+\cfrac{4}{5}}$
より、接点の$x$座標$\alpha$は
$\alpha=\dfrac{1}{\cfrac{9}{5}}$
$\phantom{ \alpha } =\dfrac{5}{9}$
である。

解答ケ:5, コ:9

(4)

次は、円$C$と直線$\ell$の2つの交点$\mathrm{P}_{1}$,$\mathrm{P}_{2}$の中点$\mathrm{P}$の軌跡だ。

点$\mathrm{P}$の座標を$(x,\ y)$とおくと、

$\mathrm{P}_{1}$,$\mathrm{P}_{2}$の$x$座標が$\alpha$,$\beta$なので、中点$\mathrm{P}$の$x$座標は
$x=\dfrac{\alpha+\beta}{2}$
とかける。

より
$\alpha+\beta=\dfrac{2}{1+k^{2}}$
なので、①式はさらに
$x=\dfrac{2}{1+k^{2}}\cdot\dfrac{1}{2}$
$\phantom{ x } =\dfrac{1}{1+k^{2}}$
$x\neq 0$なので、
$1+k^{2}=\dfrac{1}{x}$①'
と表せる。

点$\mathrm{P}_{1}$,$\mathrm{P}_{2}$ともに直線$\ell$上にあるから、その中点$\mathrm{P}$も直線$\ell$上にある。
よって、点$\mathrm{P}$の座標$(x, y)$の関係式は
$y=kx$
となり、さらに $x\neq 0$ なので、
$k=\dfrac{y}{x}$②'
とかける。


①',②'から$k$を消去して$x$と$y$だけの関係式をつくれば、それが点$\mathrm{P}$の軌跡の式だ。

なので、①'に②'を代入した
$1+\left(\dfrac{y}{x}\right)^{2}=\dfrac{1}{x}$
が、求める軌跡の式である。

この式だとよく分からないので、分かりやすい形にしよう。

両辺に$x^{2}$をかけて
$x^{2}+y^{2}=x$

これを変形すると、点$\mathrm{P}$の軌跡は
$x^{2}-x+y^{2}=0$
$x^{2}-2\cdot\dfrac{1}{2}x+\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}+y^{2}=0$
$\left(x-\dfrac{1}{2}\right)^{2}+y^{2}=\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}$
$\hspace{110px} =\dfrac{1}{4}$
と表せる。

解答サ:1, シ:2, ス:1, セ:4


③式より、求める軌跡は
中心が$\left(\dfrac{1}{2},\ 0\right)$ 半径が$\dfrac{1}{2}$ の円
だけど、これは解答群にない。
というわけで、グラフを描いてみよう(図B)。

点$\mathrm{P}$は$\ell$と円$C$の2つの交点の中点なので、円$C$の内部にしか存在しない。
よって、点$\mathrm{P}$の軌跡は、③式の円が円$C$の内部にある部分、つまり図Bの赤い実線部分だ。

図B
大学入学共通テスト2023年追試 数学Ⅱ第3問 解説図B

図Bより、点$\mathrm{P}$の軌跡は
$(0,\ 0)$と$(1,\ 0)$を直径の両端とする円
円$C$の内部にある部分、つまり
$x \gt \dfrac{5}{9}$の部分
であることが分かる。

解答ソ:0, タ:5, チ:9

(5)

(4)での作業を振り返ってみると、
で求めた
$\alpha+\beta=\dfrac{2}{1+k^{2}}$

直線$\ell$の式
$y=kx$
を使って、軌跡の式である③式を求めた。

つまり、軌跡の式を求めるときに、$r$(円$C$の半径)は使っていない。
なので、$r$の値にかかわらず、軌跡の式は③式で変わらないといえる。

以上より、$r=3$のときの点$\mathrm{P}$の軌跡もと同じ
解答群の⓪の図形 である。

解答ツ:0