大学入試センター試験 2018年(平成30年) 本試 数学ⅠA 第2問 [2] 解説
(1)
まず、箱ひげ図の復習をしよう。
復習
範囲は、最大値$-$最小値
四分位範囲は、第3四分位数$-$第1四分位数
だった。
復習が終わったところで、⓪~⑥の選択肢をひとつずつ確認する。
⓪ 問題文中の図2を見ると、範囲が最も大きいのは男子短距離。なので誤り。
①
四分位範囲は、箱ひげ図の箱の幅にあたる。
問題文中の図2の点線で描かれた目盛は、2刻み。箱の幅が一番大きい男子短距離でも約5目盛分だから、10前後である。なので、正しい。
② 問題文中の図2より、男子長距離の中央値は176付近。図1のヒストグラムを見ると、度数が最大の階級は170以上175未満。この階級に中央値は含まれないので、誤り。
③ 問題文中の図2より、女子長距離の第1四分位数は161付近。図1のヒストグラムを見ると、度数が最大の階級は165以上170未満。この階級に第1四分位数は含まれないので、誤り。
④ 問題文中の図2より、最大値が最も大きいのは男子短距離。なので、誤り。
⑤ 問題文中の図2より、最小値が最も小さいのは女子短距離。なので、誤り。
⑥ 問題文中の図2より、男子短距離の中央値も、男子長距離の第3四分位数も、181付近。なので、正しい。
以上より、正しいものは①⑥である。
解答サ:1, シ:6 (順不同)
(2)
せっかくだから、散布図について復習しておこう。
復習
ここに載せた散布図は、全て横軸$\alpha$は右が大きい値、縦軸$\beta$は上が大きい値であるとする。
図A・図Bのように、点が直線状に連なっているとき、$\alpha$と$\beta$の間には相関があるという。
図Aのように右上がりの場合を「正の相関」といい、図Bのように右下がりの場合を「負の相関」という。
また、同じ正の相関であっても、図Aと図Cを比較すると、図Aの方がより直線状になっている。このような場合、図Aの方が「相関が強い」といい、図Cの方が「相関が弱い」という。
さて、今回も⓪~⑤の選択肢をひとつずつ確認しよう。
⓪ $X$と$W$に負の相関がある場合、復習の図Bのように右下がりの分布になる。問題文中の図3の散布図はどれも右上がりの分布なので、誤り。
ここからは、$Z$について考えないといけない。
$Z=\displaystyle \frac{W}{X}$
なので、原点からその点に引いた直線の傾きと考えられる。
例えば、$X$が$3.5$,$W$が$70$の選手の$Z$は
$\displaystyle \frac{70}{3.5}=20$
だけど、これは原点から$(3.5,70)$に引いた直線の傾きである。(図D)
言いかえると、散布図で傾きが$20$の直線上にある点は、$Z$の値が$20$である。
問題文中の図3の散布図だと、$l_{1}$上の点は$Z$が$15$であり、$l_{2}$上の点は$Z$が$20$である。また、$l_{1}$と$l_{2}$の間にある点は、$Z$が$15$と$20$の間の値であると考えられる。
図3の散布図を見ると、点の分布の中心が
男子短距離は、$l_{2}$と$l_{3}$の間
男子長距離は、$l_{2}$付近
女子短距離は、$l_{2}$より若干上
女子長距離は、$l_{1}$と$l_{2}$の間
にあるので、$Z$の中央値は
男子短距離は、$20$と$25$の間
男子長距離は、$20$付近
女子短距離は、$20$よりちょっと大きい
女子長距離は、$15$と$20$の間
にあると考えられる。
また、$Z$の最大値、つまり最も左上にある点は、
男子短距離は、$l_{4}$付近
男子長距離は、$l_{3}$と$l_{4}$の間の$l_{4}$寄り
女子短距離は、$l_{3}$と$l_{4}$のちょうど真ん中あたり
女子長距離は、$l_{2}$と$l_{3}$の間
にあるので、$Z$の最大値は
男子短距離は、$30$付近
男子長距離は、$25$と$30$の間の$30$寄り
女子短距離は、$27$~$28$付近
女子長距離は、$20$と$25$の間
にあると考えられる。
以上より、箱ひげ図は
男子短距離が、(a)
男子長距離が、(c)
女子短距離が、(b)
女子長距離が、(d)
であることが分かる。
ここまで分かったところで、選択肢の検討を続けよう。
① 問題文中の図4より、中央値が一番大きいのは(a)の男子短距離。なので、誤り。
② 問題文中の図4より、範囲、つまり箱ひげ図の幅が最小なのは(d)の女子長距離。なので、誤り。
③ 問題文中の図4より、(a)の男子短距離は、四分位範囲、つまり箱ひげ図の箱の幅は最大である。なので、誤り。
④ 問題文中の図4より、(d)の女子長距離の最大値は25未満。なので、正しい。
⑤ 男子長距離の箱ひげ図は(c)なので、正しい。
以上より、正しいものは④⑤である。
解答ス:4, セ:5 (順不同)
(3)
まず、共分散の復習から。
復習
データ$a_{1},a_{2},\cdots,a_{n}$と$b_{1},b_{2},\cdots,b_{n}$があり、それぞれの平均値を$\overline{a}$,$\overline{b}$とするとき、共分散$s_{ab}$は
$s_{ab}=\displaystyle \frac{1}{n}\{$$(a_{1}-\overline{a})(b_{1}-\overline{b})+(a_{2}-\overline{a})(b_{2}-\overline{b})+$
$\cdots+(a_{n}-\overline{a})(b_{n}-\overline{b})$$\}$式A
$s_{ab}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{n}$$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}a_{k}\cdot b_{k}$$-\overline{a}\cdot\overline{b}$式B
だった。
これを知っていれば、問題文中の
$(x_{1}-\overline{x})(w_{1}-\overline{w})+(x_{2}-\overline{x})(w_{2}-\overline{w})+$
$\cdots+(x_{n}-\overline{x})(w_{n}-\overline{w})$
は、式Aの赤い部分
$x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n}$
は、式Bの赤い部分
であることに気づく。
なので、式A,式Bより
$\displaystyle \frac{1}{n}\{(x_{1}-\overline{x})(w_{1}-\overline{w})+(x_{2}-\overline{x})(w_{2}-\overline{w})+$
$\cdots+(x_{n}-\overline{x})(w_{n}-\overline{w})\}$
$=\displaystyle \frac{1}{n}(x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n})-\overline{x}\cdot\overline{w}$
とかける。
この式の両辺を$n$倍すると
$(x_{1}-\overline{x})(w_{1}-\overline{w})+(x_{2}-\overline{x})(w_{2}-\overline{w})+$
$\cdots+(x_{n}-\overline{x})(w_{n}-\overline{w})$
$=x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n}-n\cdot\overline{x}\cdot\overline{w}$
となるので、正解は2である。
解答ソ:2
別解
上の解法は計算が簡単でいいんだけど、式A,式Bを知らないとできない。
その場合、計算だけで解くと次のようになる。
ソの式の左辺を変形すると、
$(x_{1}-\overline{x})(w_{1}-\overline{w})+(x_{2}-\overline{x})(w_{2}-\overline{w})+$
$\cdots+(x_{n}-\overline{x})(w_{n}-\overline{w})$
$=(x_{1}w_{1}-x_{1}\overline{w}-w_{1}\overline{x}+\overline{x}\cdot\overline{w})$
$+(x_{2}w_{2}-x_{2}\overline{w}-w_{2}\overline{x}+\overline{x}\cdot\overline{w})+$
$\cdots+(x_{n}w_{n}-x_{n}\overline{w}-w_{n}\overline{x}+\overline{x}\cdot\overline{w})$
$=(x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n})$
$-(x_{1}\overline{w}+x_{2}\overline{w}+\cdots+x_{n}\overline{w})$
$-(w_{1}\overline{x}+w_{2}\overline{x}+\cdots+w_{n}\overline{x})$
$+(\overline{x}\cdot\overline{w}+\overline{x}\cdot\overline{w}+\cdots+\overline{x}\cdot\overline{w})$
$=(x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n})$
$-($$x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{n}$$)\overline{w}$
$-($$w_{1}+w_{2}+\cdots+w_{n}$$)\overline{x}$
$+n\cdot\overline{x}\cdot\overline{w}$式C
ここで、
$\displaystyle \overline{x}=\frac{x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{n}}{n}$
と
$\displaystyle \overline{w}=\frac{w_{1}+w_{2}+\cdots+w_{n}}{n}$
の両辺を$n$倍して、
$n\cdot\overline{x}=$$x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{n}$式D
$n\cdot\overline{w}=$$w_{1}+w_{2}+\cdots w_{n}$式E
これで、式Cの青い部分と緑の部分ができた。
式Dの青い部分と、式Eの緑の部分を式Cにそれぞれ代入すると、
$(x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n})$
$-n\cdot\overline{x}\cdot\overline{w}-n\cdot\overline{x}\cdot\overline{w}+n\cdot\overline{x}\cdot\overline{w}$
$=x_{1}w_{1}+x_{2}w_{2}+\cdots+x_{n}w_{n}-$$n\cdot\overline{x}\cdot\overline{w}$
となって、ソの式の右辺ができる。
この式の赤い部分がソだ。
よって、正解は2である。
解答ソ:2