大学入試センター試験 2018年(平成30年) 本試 数学ⅠA 第4問 解説
(1)
$144$を素因数分解して、
$2\underline{)144}$
$2\underline{)72}$
$2\underline{)36}$
$2\underline{)18}$
$3\underline{)9}$
$3$
より、
$144=2^{4}\times 3^{2}$
である。
解答ア:4, イ:3, ウ:2
この4個の$2$,2個の$3$からいくつか選んでかけ合わせると、$144$の約数ができる。
例えば$2$を2個,$3$を1個選んでかけ合わせた
$2^{2}\cdot 3^{1}=12$
は$144$の約数であるし、
$2$を0個,$3$を0個選んでかけ合わせた
$2^{0}\cdot 3^{0}=1$
も$144$の約数である。
なので、約数は数字の選び方の数だけ存在する。
$2$の選び方は、0個,1個,2個,3個,4個の5通り
$3$の選び方は、0個,1個,2個の3通り
だから、数字の選び方は全部で
$5\times 3=15$通り
ある。よって、約数も
$15$個
ある。
解答エ:1, オ:5
復習
自然数$a$が
$ a=b^{\ell}\cdot c^{m}\cdot d^{n}\cdots$
($b$,$c$,$d$,$\cdots$ は素数、$\ell$,$m$,$n$,$\cdots$ は$0$以上の整数)
と素因数分解されるとき、$a$の正の約数の個数は
$(\ell+1)(m+1)(n+1)\cdots$
である。
(2)
一次不定方程式はお約束の解き方があるので憶えておこう。
$144x-7y=1$式A
を解く。
$x$と$y$の係数の$144$と$7$でユークリッドの互除法を行うと、
$144\div7=20\ldots4$式B1
$7\div4=1\ldots3$式B2
$4\div3=1\ldots1$式B3
これを「=余り」の形に変形して、
$144-7\cdot20=4$式B1'
$7-4\cdot1=3$式B2'
$4-3\cdot1=1$式B3'
式B3'に式B2'を代入して、
$4-(7-4\cdot 1)\cdot 1=1$
$4-7+4=1$
$-7+4\cdot2=1$
これに式B1'を代入して、
$-7+(144-7\cdot 20)\cdot 2=1$
$-7+144\cdot 2-7\cdot 40=1$
$144\cdot2-7\cdot41=1$式C
ができる。
式Aから式Cを辺々引くと、
$144x$ | $-7y$ | $=$ | $1$ | |
$-)$ | $144\cdot2$ | $-7\cdot41$ | $=$ | $1$ |
$144(x-2)$ | $-7(y-41)$ | $=$ | $0$ |
となるから、
$144(x-2)=7(y-41)$式D
とかける。
ここで、$144$と$7$は互いに素なので、式Dが成り立つためには、$\ell$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}x-2=7\ell\\y-41=144\ell\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}x=7\ell+2\\y=144\ell+41\end{array}\right.$式E
でなければならない。
ここでは、解のうち$|x|$が最小のものを問われているので、$x=0$付近を探せばよい。
式Eに$x=0$を代入して、
$7\ell+2=0$
$\ell= \displaystyle -\frac{2}{7}$
$\ell$は整数なので、$\displaystyle -\frac{2}{7}$に一番近い整数のとき、$|x|$は最小になる。
よって、$\ell=0$のとき、
式Eより、
$\left\{\begin{array}{l}x=2\\y=41\end{array}\right.$
解答カ:2, キ:4, ク:1
さらに、$\ell$は整数なので、$k$を整数として$\ell=k$とおくと、式Eは
$\left\{\begin{array}{l}
x=7k+2\\
y=144k+41
\end{array}\right.$
となるので、すべての整数解は
$x=7k+2$,$y=144k+41$
と表せる。
解答ケ:7, コ:1, サ:4, シ:4
(3)
求める自然数は$144$の倍数なので、$m$を自然数として
$144m$
とかける。
これを$7$で割ると$1$余るので、商を整数$n$とすると、
$144m\div 7=n\ldots 1$
より
$144m-7n=1$式F
とかける。
(2)より、$144x-7y=1$の整数解は、$k$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}
x=7k+2\\
y=144k+41
\end{array}\right.$
なので、式Fの$m$も
$m=7k+2$
とかける。
よって、求める自然数は
$144(7k+2)$
と表せる。
さらに、(1)より、$144=2^{4}\times 3^{2}$だから、求める自然数は
$2^{4}\cdot 3^{2}(7k+2)$式G
と表せる。
あとは、考えるよりも手を動かした方がたぶん早い。センター試験だし。
式Gの$2^{4}\cdot 3^{2}(7k+2)$は自然数なので、
$0 \lt 2^{4}\cdot 3^{2}(7k+2)$
より
$0 \lt 7k+2$
$-2 \lt 7k$
$-\displaystyle \frac{2}{7} \lt k$
この$k$は整数だから
$0\leqq k$
である。
ということで、式Gの$k$に$0$から順に整数を代入してみよう。
$k=0$のとき、式Gは
$2^{4}\cdot 3^{2}(7\cdot 0+2)$
$=2^{4}\cdot 3^{2}\cdot 2$
$=2^{5}\cdot 3^{2}$
この数の正の約数の個数は、(1)の復習より、
$(5+1)(2+1)=6\cdot 3=18$個。
おぉ。いきなり答えにあたってしまった。
正の約数の個数が$18$個である最小のものは
$144\times 2$
である。
解答ス:2
あとはセソだ。
$k=1$のとき、式Gは
$2^{4}\cdot 3^{2}(7\cdot 1+2)$
$=2^{4}\cdot 3^{2}\cdot 9$
$=2^{4}\cdot 3^{4}$
この数の正の約数の個数は、
$(4+1)(4+1)=5\cdot 5=25$個
なので、不適。
$k=2$のとき、式Gは
$2^{4}\cdot 3^{2}(7\cdot 2+2)$
$=2^{4}\cdot 3^{2}\cdot 16$
$=2^{8}\cdot 3^{2}$
この数の正の約数の個数は、
$(8+1)(2+1)=9\cdot 3=27$個
なので、不適。
$k=3$のとき、式Gは
$2^{4}\cdot 3^{2}(7\cdot 3+2)$
$=2^{4}\cdot 3^{2}\cdot 23$
$=2^{4}\cdot 3^{2}\cdot 23^{1}$
この数の正の約数の個数は、
$(4+1)(2+1)(1+1)=5\cdot 3\cdot 2=30$個。
見つけた。
正の約数の個数が$30$個である最小のものは
$144\times 23$
である。
解答セ:2, ソ:3
別解
式G以降は、手よりも頭を使うと この別解のような方法になる。
上の解き方よりもかなり時間がかかる。
センター試験では、こういう問題のときは頭を使うよりも手を使った方が早い。
けれど、大学入学共通テストでは出題傾向が変わるかも知れないので、この別解の方法も知っておくと良い。
まず、確認から。
$7$で割ると$1$余る場合、求める自然数は、$k$を整数として
$144\cdot(7k+2)=2^{4}\cdot 3^{2}(7k+2)$式G
と表せる。
この$k$が整数のとき、式Gは$7$で割ると$1$余る。
問われているス,セソは、式Gの$(7k+2)$の部分だ。
以下、「$7$で割ると$1$余る」を条件Aとする。
$a$,$b$,$c$,$d$,$\ldots$を$0$以上の整数、$p$,$q$,$\ldots$を$3$より大きい素数として、
$ 7k+2=2^{a}\cdot 3^{b}\cdot p^{c}\cdot q^{d}\cdot\ldots$式H
とおくと、式Gより、求める自然数は
$ 2^{4}\cdot 3^{2}\cdot 2^{a}\cdot 3^{b}\cdot p^{c}\cdot q^{d}\cdot\ldots$
$=2^{4+a}\cdot 3^{2+b}\cdot p^{c}\cdot q^{d}\cdot\ldots$
とかける。
この自然数の正の約数の個数は、(1)の復習より、
$(4+a+1)(2+b+1)(c+1)(d+1)\ldots$
$=(a+5)(b+3)(c+1)(d+1)\ldots$式I
と表せる。
正の約数の個数が$18$個のとき、式Iより
$(a+5)(b+3)(c+1)(d+1)\ldots=18$
$(a+5)(b+3)(c+1)(d+1)\ldots$$=2\cdot 3^{2}$
とかける。
このとき、
$\left\{\begin{array}{l}
5\leqq a+5\\
3\leqq b+3
\end{array}\right.$
なので、
$\left\{\begin{array}{l}
a+5=2\cdot 3\\
b+3=3\\
c+1=1\\
d+1=1\\
\vdots
\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}
a=1\\
b=0\\
c=0\\
d=0\\
\vdots
\end{array}\right.$
でなければならない。
これを式Hに代入すると、
$ 7k+2=2^{1}\cdot 3^{0}\cdot p^{0}\cdot q^{0}\cdot\ldots$
$ 7k+2$$=2$式J
$7k=0$
$k=0$
より、$k$は整数になるから、条件Aにあうので答えだ。
よって、式Jより、スは
$2$
である。
解答ス:2
同様に考えて、正の約数の個数が$30$個のとき、式Iより
$(a+5)(b+3)(c+1)(d+1)\ldots=30$
$(a+5)(b+3)(c+1)(d+1)\ldots$$=2\cdot 3\cdot 5$
とかける。
このとき、
$\left\{\begin{array}{l}
5\leqq a+5\\
3\leqq b+3
\end{array}\right.$
なので、
パターン1
$\left\{\begin{array}{l}
a+5=5\cdot 2\\
b+3=3\\
c+1=1\\
d+1=1\\
\vdots
\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}
a=5\\
b=0\\
c=0\\
d=0\\
\vdots
\end{array}\right.$式K
パターン2
$\left\{\begin{array}{l}
a+5=5\\
b+3=3\cdot 2\\
c+1=1\\
d+1=1\\
\vdots
\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}
a=0\\
b=3\\
c=0\\
d=0\\
\vdots
\end{array}\right.$式L
パターン3
$\left\{\begin{array}{l}
a+5=5\\
b+3=3\\
c+1=2\\
d+1=1\\
\vdots
\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}
a=0\\
b=0\\
c=1\\
d=0\\
\vdots
\end{array}\right.$式M
の3つのパターンのどれかである。
パターン1のとき
式Kを式Hに代入すると、
$ 7k+2=2^{5}\cdot 3^{0}\cdot p^{0}\cdot q^{0}\cdot\ldots$
$7k+2$$=32$
$7k=30$
となる。
$k$は整数にならないから、条件Aに合わない。
なので、不適。
パターン2のとき
式Lを式Hに代入すると、
$ 7k+2=2^{0}\cdot 3^{3}\cdot p^{0}\cdot q^{0}\cdot\ldots$
$7k+2$$=27$
$7k=25$
となる。
$k$は整数にならないから、条件Aに合わない。
なので、不適。
パターン3のとき
3つのパターンのうち2つが不適だったので、これが答えになるはず。
式Mを式Hに代入すると、
$ 7k+2=2^{0}\cdot 3^{0}\cdot p^{1}\cdot q^{0}\cdot\ldots$
$7k+2$$=p$
と表せる。
ここで、$k$は整数,$p$は$3$より大きい素数である。
よって、$7$の倍数に$2$をたして、$3$より大きい素数になる場合を探せばよい。
$k=0$のとき、
$7k+2=2$
となる。
$2$は素数だけど、$3$より大きくないので不適。
$k=1$のとき、
$7k+2=9$
となる。
$9$は素数じゃないので不適。
$k=2$のとき、
$7k+2=16$
となる。
$16$は素数じゃないので不適。
$k=3$のとき、
$7k+2=23$
となる。
$23$は$3$より大きい素数なので、これが答えだ。
以上より、セソは
$23$
である。
解答セ:2, ソ:3