大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅠA 第2問 [1] 解説
(1)
関数の式を
$y=ax^{2}+bx+c$式A
とする。
$\left\{\begin{array}{l}
a=2\\
b=-7\\
c=7
\end{array}\right.$
のときを考える。
このとき、式Aを平方完成すると
$y=2x^{2}-7x+7$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{y}&=2\left(x^{2}-\dfrac{7}{2}x\right)+7\\
&=2\left\{x^{2}-2\cdot\dfrac{7}{4}x+\left(\dfrac{7}{4}\right)^{2}-\left(\dfrac{7}{4}\right)^{2}\right\}+7\\
&=2\left(x-\dfrac{7}{4}\right)^{2}-2\cdot\left(\dfrac{7}{4}\right)^{2}+7\\
&=2\left(x-\dfrac{7}{4}\right)^{2}+7\left(-2\cdot\dfrac{7}{4^{2}}+1\right)\\
&=2\left(x-\dfrac{7}{4}\right)^{2}+7\left(-\dfrac{7}{8}+\dfrac{8}{8}\right)
\end{align}
$$
となる。
よって、このときの放物線の頂点の座標は
$\left(\dfrac{7}{4},\ \dfrac{7}{8}\right)$
である。
解答ア:7, イ:4, ウ:7, エ:8
(2)
問題文は長いけれど、要するに
関数のグラフが必ず点$\mathrm{P}$,点$\mathrm{Q}$を通るような
$b$,$c$ の条件を求めよ
ということだ。
グラフが点$\mathrm{P}(1,2)$を通るためには、
式Aに$(1,2)$を代入した
$a+b+c=2$式B
が成り立てばよい。
グラフが点$\mathrm{Q}(3,4)$を通るためには、
式Aに$(3,4)$を代入した
$9a+3b+c=4$式C
が成り立てばよい。
よって、両方の点を通るためには、式B,式Cがともに成り立てばよい。
つまり、ふたつの式の連立方程式を解けばよい。
$a$は答えに含まれてもいいので、数字だと思って解こう。
というわけで、式B,式Cの連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
a+b+c=2\class{tex_formula}{式B}\\
9a+3b+c=4\class{tex_formula}{式C}
\end{array}\right.$
を解く。
式Cから式Bを辺々引いて、
| $9a$ | $+3b$ | $+c$ | $=$ | $4$ | |
| $-)$ | $a$ | $+b$ | $+c$ | $=$ | $2$ |
| $8a$ | $+2b$ | $=$ | $2$ |
より
$2b=2-8a$
$b=1-4a$式D
解答オ:1, カ:4
これを式Bに代入すると、
$a+1-4a+c=2$
$$
\begin{align}
c&=2-1-a+4a\\
&=1+3a\class{tex_formula}{式E}
\end{align}
$$
解答キ:1, ク:3
が求められる。
以上より、式D,式Eを式Aに代入した
$y=ax^{2}+(1-4a)x+1+3a$①
のグラフは、必ず2点$\mathrm{P}$,$\mathrm{Q}$を通る。
(3)
太郎さんと花子さんの会話にあるように、$o \lt a$ のとき、関数①のグラフは
下に凸の放物線なので、グラフの最小値が頂点
だ。
これを言いかえると、
グラフ上にあるすべての点のうち、一番下にあるのは頂点
である。
なので、$0 \lt a$のとき、$a$の値にかかわらず、頂点の$y$座標は
点$\mathrm{P}$に注目すると
頂点が点$\mathrm{P}$のとき、$y=2$※
頂点が点$\mathrm{P}$以外のとき、$y \lt 2$
だから、
頂点の$y$座標 $\leqq 2$ 条件A
同様に、点$\mathrm{Q}$に注目すると、
頂点の$y$座標 $\leqq 4$ 条件B
となる。
頂点の$y$座標は この2つの条件を満たすから、図Aの赤い部分の
$y\leqq 2$
だ。
したがって、グラフの頂点の$y$座標の最大値は
$2$
である。
解答ケ:2
また、※より、グラフの頂点の$y$座標が$2$になるのは、
頂点が点$\mathrm{P(1,2)}$
のとき。
つまり、①式が
$y=a(x-1)^{2}+2$
と変形できるときだ。
これを展開して、
$y=ax^{2}\AKA{-2a}x+\MIDORI{a+2}$
これが①式
$y=ax^{2}+\AKA{(1-4a)}x+\MIDORI{1+3a}$①
と等しい。
このことから、
$\left\{\begin{array}{l}
\AKA{-2a}=\AKA{1-4a}\\
\MIDORI{a+2}=\MIDORI{1+3a}
\end{array}\right.$式F
ができる。
式Fのどちらの式を使っても、
$a=\dfrac{1}{2}$
となる。
解答コ:1, サ:2
(4)
(A),(B),(C)をひとつずつ考えてゆこう。
(A)
関数のグラフが点$(0,3)$を通るから、①式に$(0,3)$を代入すると
$1+3a=3$
なので、このときの$a$は
$3a=2$
$a=\dfrac{2}{3}$
だ。
いまは$a \lt 0$の場合を考えている。
したがって $a=\dfrac{2}{3}$は不適だから、
(A)は起こらない。
(B)
$a \lt 0$なので、関数のグラフは上に凸の放物線だ。
上に凸の放物線と$x$軸の負の部分が交わるのは、交点が
$x$軸の負の部分の異なる2点図B
$x$軸の負の部分とそれ以外図C
の2パターンある。
関数のグラフは点$\mathrm{P}$,点$\mathrm{Q}$を通る。
点$\mathrm{P}$も点$\mathrm{Q}$も第1象限にあるので、第1象限を通らない図Bのパターンは不適だ。
図Cのパターンだけを考えよう。
図Cのパターンになるのは、グラフと$\mathrm{y}$軸との交点(図Cの緑の点)が原点より上にあるとき。
つまり、①式に$x=0$を代入したときの$y$が正のときだから、①式の定数項が正のときだ。
よって、(B)が起こるのは
$1+3a \gt 0$
より
$a \gt -\dfrac{1}{3}$式G
のときである。
いまは$a \lt 0$のときを考えている。
$a \lt 0$と式Gは共通部分が存在する。(図D)
$a$の値がこの共通部分のとき グラフは図Cの状態になるから、
(B)は起こり得る。
(C)
復習
二次関数
$y=ax^{2}+bx+c$
の頂点の$x$座標は
$\dfrac{-b}{2a}$
とかける。
復習より、①式の関数のグラフの頂点の$x$座標は
$\dfrac{-(1-4a)}{2a}$
とかける。
(C)は これが$2$以下になる場合なので、
$\dfrac{-(1-4a)}{2a}\leqq 2$
のとき。
これを整理すると、$a \lt 0$なので
$-1+4a\geqq 4a$
より
$-1\geqq 0$
のとき。
これは起こり得ない式だから、
(C)は起こらない。
以上より、シにあてはまるものは、解答群の
②
である。
解答シ:2
別解
上の解説ではオーソドックスな方法を使ったけれど、この問題はグラフで解くこともできる。
ちょっと変わった解き方なので、誰にでもお勧めできるわけではない。
ただ、計算がほとんどないから早く解けるのは確かだ。
次のポイントを理解していれば、10秒もあれば余裕だと思う。
ポイント
平面上に3点があり、
$x$座標がすべて異なる
3点が同一直線上にない
とき、3点を通る二次関数のグラフが必ずひとつ存在する。
これの証明が共通テストで出題されることは多分ないし、説明すると長くなるので、証明は省略。
同じ理由で 2の証明も省略する。
二次関数のグラフ上に異なる3点をとり、両端の点を結ぶ線分と真ん中の点を考える。
このとき、図Eのように、
線分よりも点が
上 $\Leftrightarrow$ グラフは上に凸
下 $\Leftrightarrow$ グラフは下に凸
である。
二次関数のグラフは放物線なので、グラフ上に点が2つあった場合、
$y$座標が頂点に近い方が、放物線の軸にも近い
といえる。(図F)
上の1~3を頭に入れて、(A),(B),(C)をひとつずつ考えてゆこう。
(A)
3点$\mathrm{P}(1,2)$,$\mathrm{Q}(3,4)$,$(0,3)$ は、図Gのような位置関係にある。
3点は
$x$座標がすべて異なる
同一直線上にない
から、ポイントの1より、3点を通る二次関数のグラフがひとつ存在する。
また、両端の点($(0,3)$ と 点$\mathrm{Q}$)を結ぶ線分よりも 真ん中の点(点$\mathrm{P}$)が下にある。
よって、ポイントの2より、3点を通るグラフは下に凸で、$a \gt 0$ だ。
いまは $a \lt 0$ の場合を問われている。
$a \gt 0$ は不適なので
(A)は起こらない。
(B)
2点$\mathrm{P}$,$\mathrm{Q}$ を通る直線は、図Hのように $x$軸の負の部分と交わる。
この交点と原点の間(図Gの赤い部分)に点$\mathrm{A}$をとる。
このとき、3点$\mathrm{A}$,$\mathrm{P}$,$\mathrm{Q}$は
$x$座標がすべて異なる
同一直線上にない
から、ポイントの1より、3点を通る二次関数のグラフがひとつ存在する。
また、点$\mathrm{P}$と 線分$\mathrm{AQ}$の位置関係は
点$\mathrm{P}$が上
だから、ポイントの2より、3点を通るグラフは上に凸で、$a \lt 0$ だ。
したがって、$a \lt 0$ のとき、点$\mathrm{P}$,$\mathrm{Q}$を通り、$x$軸と図Gの赤い部分で交わる 二次関数のグラフが存在するので、
(B)は起こり得る。
(C)
点$\mathrm{P}$と点$\mathrm{Q}$について考える。
$a \lt 0$ のとき 関数のグラフは上に凸だから、
$y$座標が最大になるのは頂点
点$\mathrm{P}$の$y$座標より 点$\mathrm{Q}$の$y$座標が大きい
なので、ふたつの点のうち$y$座標が頂点に近いのは点$\mathrm{Q}$だ。
このことと ポイントの3から、放物線の軸との距離は
点$\mathrm{P} \gt$ 点$\mathrm{Q}$
であることが分かる。
したがって、放物線の軸は、点$\mathrm{P}$と点$\mathrm{Q}$の$x$座標のちょうど真ん中の
$x=\dfrac{1+3}{2}=2$
よりも 点$\mathrm{Q}$側(右側)にある。
よって、放物線の軸、つまり頂点の$x$座標は $2$より大きいので、
(C)は起こらない。
以上より、シにあてはまるものは、解答群の
②
である。
解答シ:2